「さて、轟雷を追うとするかのお・・・」
蜜羅は静かに呟いた。
食い荒らされた内臓や筋肉が再生していく。
やがて、切り開かれた腹や乳首も元通りの姿に戻った。
蜜羅は血と汚汁に塗れたベッドから降りると全裸のまま部屋を出た。
「誰か!誰かおらぬかーーー!?」
廊下で蜜羅が叫ぶ。
すると、甲冑を纏い帯剣した兵士がやって来た。
「姫!!どうされましたか!?」
兵士が心配そうに尋ねる。
「いや、轟雷がワラワを犯して殺そうとした挙句の果てに逃走したのじゃ」
蜜羅が物騒な事を落ち着いた笑みを浮かべながら言った。
「何と!!轟雷が、そのような事を・・・・姫よくぞ御無事で・・・」
兵士が深刻な顔で言った。
「大丈夫、ワラワは淫鬼の姫じゃ。めったな事では死なぬぞ」
蜜羅はそう言って兵士の肩を軽く叩いた。
「しかし、轟雷の犯した罪は許されません!!どうか、彼奴を討伐するよう御命令下さい!!」
兵士の顔には主君を傷つけられた怒りが浮かんでいた。
「いや、その必要はない。ワラワが自ら轟雷を探しに行く」
蜜羅は、そう言って兵士に微笑みかけた。
「何ですと!?相手は謀反を起こした大罪人、あまりに危険でございますッ!!」
兵士は蜜羅を制止した。
「心配はいらぬ。それよりも其方に一つ頼みがある」
「何でしょうか?」
「その剣と帯を貸してくれぬか?」
蜜羅は兵士に対して手を差し出す。
兵士は戸惑いながらも剣を剣帯ごと外し蜜羅に手渡した。
蜜羅は全裸のまま剣帯を巻き付ける。
そして、近くの窓の窓枠に飛び乗った。
「姫!危のうございますッ!!!今すぐ、お降りください」
兵士が慌てて蜜羅を制止した。
「ワラワを誰だと思っておる?淫鬼の姫、蜜羅じゃぞ。何も心配はいらぬ。そなたは持ち場に戻っておれ」
蜜羅が、そう言うと兵士は心配そうな表情のまま去っていった。
窓から吹き込む冷たい風が裸体を撫でる。
「では、轟雷を探しに行くとするかのお・・・」
蜜羅は、そう呟くと自らの陰部に手を伸ばす。
「ああっ・・・んっ・・・はぁん」
肉襞を指先で撫でまわしながら妖しい吐息を漏らす。
手淫でも始めたかと思ったら、急に力いっぱい肉襞を左右に引っ張った。
すると、不思議な事に肉襞が雑煮の餅のようにビヨンと伸びた。
引っ張り続けると肉襞が蜜羅の全身を包めるほどに広がった。
蜜羅は肉の絨毯を目いっぱい広げる。
そして、上部の端を左右の手で握りしめ、下部の端を左右の足で固定した。
「これをやるのは久々じゃな・・・淫術、肉むささび!!!!」
そう叫ぶと蜜羅は窓から飛び降りた。
そして、肉襞を広げて、ハングライダーのように凶骨樹の森の上を滑空する。
凶骨樹は上空を飛ぶ蜜羅からも精力を奪う。
その量は微かだったが蜜羅は軽い疲れを感じていた。
耳を澄ますと、森の中から呪詛のような低い呻き声が聞こえる。
それは、凶骨樹に精力を奪われ息絶えた者たちの怨霊の叫びだった。
「ん?あれは・・・」
しばらく飛び続けていると、森の中で立ち尽くす男鬼の姿が目に留まった。
背格好といい角の感じ等、轟雷によく似ている。
蜜羅は肉襞を器用に使い下降して男鬼のいる場所の側に着地した。
近くで見ると間違いなく轟雷であった。
「ごっ・・・轟雷・・・・」
蜜羅が柄にもなく強張った声で名を呼んだ。
轟雷は何も言わず、虚ろな目で虚空を見つめている。
おそらく凶骨樹に精力を吸い尽くされ廃人同然となってしまったのだろう。
謀反を起こした男を生かしておくわけにはいかない。
だが、蜜羅は迷子の子供のように呆然と立ち尽くす轟雷の姿を見ると何とも言えない気持ちになった。