由良は顔に雨のように降りかかる尿を浴びながら、それを出来る限り口で受け止めた。
生暖かい感触と共にツンとする刺激臭が鼻を継ぐ、そして口の中には薬草のような苦味が広がる。
ビチャビチャ……ビチビチ……
「由良、すまんな、こんな事をさせて」
「いえ、私ごときが姫様のお小水を頂けるなど光栄です」
由良が言うと蜜羅はクスリと笑った。
「そんなに遜らずともよい。お主はワラワの側室なのじゃぞ。もっと気位を高くもて」
「はっ…はい!もったいなき、お言葉ありがとうございます」
「ふふっ…ほんにお主は可愛い奴よのぉ」
突然、蜜羅は自らの左の乳房に爪を立て傷をつけた。
鋭い爪が乳首の下から脇の辺りにかけて、真っ赤な傷口を描く。
自らの艶めかしい肌の上を鮮血がしたたり落ちるのを見て蜜羅が妖しく微笑む。
「姫様、一体何をなさるのです?大事なお体を傷つけて…」
由良が声を荒げた。
恐怖や保身ではなく本心からの声だった。
いつの間にか暴君でしかなかった蜜羅の事を慕い始めていたのだ。
「ワラワはもっと、そなたを近くに感じたい……ワラワの妹になってはくれぬか?」
蜜羅はまるで子供が甘えるような口調で、由良に頼んだ。
その目はまるで涙ぐむように潤んでいる。
「姫様……」
「ワラワの血を舐めるのじゃ。そうすれば、そなたもワラワと同じ鬼になれる」
「……はい」
チュピ…ピチャピチャ…
由良は蜜羅の乳房から流れ出た血を舐めた。
舌の音が鳴り響き、口の中が血の味で満たされていく。
乳房から落ちて腹にこぼれた血まで丁寧に舐めとる。
由良に不安はなかった。
むしろ、目の前の蜜羅のように美しく強い鬼としての生を生きる事への憧れだけが心を支配していた。
由良の全身を蜜羅の血液を通して入った『鬼の気』が駆け巡る。
台風のような激しい力が体の内側で渦巻き、心臓の鼓動、血の流れが速くなる。
「ウガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーッ!!!」
由良が獣のような雄たけびを上げながら身悶える。
その口元にはオオカミのように尖った犬歯が見えた。
「どうじゃ由良、今の気持ちは?」
「ううっ…凄い!!体の中で何かが暴れてるッ!それが何か私には分かるんです。新しい私が早く世に出たがって暴れてる…そんな感じが…うう…グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
由良は獣のように鋭い爪で蜜羅の胸元を引っ搔いた。
真っ赤な血が胸元から流れ出す。
まだ、自分の中の鬼が制御できていないのだ。
理性を失った由良が蜜羅に馬乗りになり、首筋に嚙みついた。
鋭い牙が皮膚を突き破り、肉に食い込む。
「ああっ、良いぞ、良いぞ。ワラワの首で良かったら、いくらでも噛むが良いぞ」
蜜羅は心地よさそうに目を細めた。
しばらくすると、由良は急に赤ん坊のようにスヤスヤと眠ってしまった。
まだ、人間の部分を多く残した体で、鬼の力を宿したため短時間で激しく披露したのだろう。
「ふぅ、目が覚める頃には完全な鬼として、生まれ変わっているじゃろう。そう、ワラワの姉妹として…」
鬼の血を受け入れた人間は鬼化するだけではなく、自分に血を与えた鬼の性質や能力を受け継ぐと言われている。
ふと見ると、いつの間にか由良の頭には2本の立派な角も生えてきていた。