「………………ごちそうさまでした」
食べ終わり、また手を合わせる。
お腹いっぱい、ではないが、
とりあえず空腹ではなくなった。
お腹に少しの物悲しさを感じながらも、食べ終わった食器を重ねる。
米粒一つ、野菜一欠片も残っていない、
綺麗すぎる食後の食器。
それを見るたびに、
少しでも残すと怒られた幼少期を思い出す。
怒られるのは嫌ではあったが、食べ物を粗末にしないという習慣はついたので
その点は、今では、感謝している。
………………厳しい家庭だった。
妹のように、奔放に、強かに、自由に生きられれば良かったのに、
私は
………………………………今更、か。
軽くため息をして、お皿を両手に持って立ち上がる。
………と、
急に後ろから抱きしめられた。
「カナ!」
ああ、まただ。
子犬のような声で、
子犬のようにじゃれてくる、彼。
鬱陶しいくらいに
私を愛してくれる、彼。
「カナ、ご飯食べ終わった?」
先程、レンジで肉野菜炒めを温めていた時と同じように、
後ろからぎゅっと抱きしめてくる。
小さな子どものように、
無邪気に、
こちらの都合など、気にすることなく。
「遊ぼ?………ねぇ、いいでしょ?遊ぼう?」
ぎゅぅ、と後ろから抱きしめ、
私のうなじに鼻を擦り付けてくる。
柔らかい頬と、硬い鼻が、
上下にすりすりと
こすりつけられる。
「カナぁ………………………」
寂しがり屋の
子犬のように、
私を求めてくる。
「………………ダメ………
先に、お皿、洗わせて………………」
振り向きもせず、私は
伏目がちに答える。
「えー、寂しいよカナ!ボクと遊んでよ!」
私のうなじに頬と鼻を擦り付けている様子は、
本当に子犬のようだ。
求められるのは、誰かから愛されるのは、嬉しい。
でも
「………………ダメ」
「えーっ、そんなぁ………………………!」
私の身体を抱きしめる彼の腕を見ながら、答える。
両手は、食器で塞がっている。
これでは、彼の手に、私の手を添えることなんか
できはしない。
手をそわせたい。
その手を取って、握りたい。
でも
「カナぁ………………」
「………………後で………ね」
手の中の食器を見ながら、答える。
多分、このまま振り向いたら、
しょんぼりと耳が垂れ下がった
大きな子犬がいるんだろう。
それを想像して、口元が緩んだ。
でも
それは
全て
「………カナぁ………………」
頭の中に、彼の声が聞こえる。
それに、どことなく虚しさを感じながら
私は、
食器を持ってキッチンへと、歩いていった。
背中から抱きしめてくる
彼の重さを
一切
感じることなく。
彼の名は、ソウジ。
私の、彼氏。
………………………………妄想上の。
あの日、欲望に耐えきれず、
初めてをそれに捧げてから
私の世界は一変した。
イマジナリーフレンド、と言うのだろうか。
理想の相手を作り、彼と、彼らと、何度も交わるようになった。
ベッドの中で、
キッチンで、
バスタブで、
電車の中で、
事務所で、
トイレで、
食堂で、
コンビニで、
道端で、
それこそ
24時間、
起きている間
ずっと
………………いや、それは言い過ぎか。
でも、そのくらい。
一時期など、
道ですれ違う、いいなと思った男性を見た瞬間、
求め、抱かれ、誘い、熱く貫かれ、
交わり、溶け合い、
終わることなく愛される、
そんな妄想をしたことも、
あった。
穢らわしい。
狂ってる。
反吐が出る。
そんな自分を、嫌悪した。
私は、痴女じゃない。
そんな自分に、吐気がした。
私は、誰も彼もに体を許す気はない。
そんな自分に、失望した。
私は、そんな、
そんな
そんな………………………
………………
ただ、
普通に、恋をして、
普通に、好きな人と、結ばれて、
普通に、子どもを、産んで
普通に、家庭を、築いて
ただ
それだけで
満足なのに
ただ
それだけで
いいのに
ただ
それだけで
そんな
夢すらも
だからなのか
私の身体の火照りは止まらず、
心を置きざりにして
妄想の中で
温もりを、快楽を、
狂ったように
延々と
求め続けた。
シンクの中に食器を置き、軽くぬるま湯をかける。
冷たい水では、食器の油がちゃんと取れない。
綺麗にならない。
ゴム手袋をして、スポンジで食器を洗う。
洗剤は、手荒れしやすい。
保湿クリームを塗っても、塗っても、
まだカサついているように感じる。
ずっと乾いている。
肌荒れしやすいから、余計に気を使う。
食器の泡をぬるま湯で流し、水切りラックに置いていく。
一枚一枚丁寧に汚れを洗い取り、汚れがないことを目でしっかり確認してから、ラックに置く。
ポタリ、ポタリと食器から滴る雫を見ながら、
私は頭の中で、
彼、
ソウジのことを考えていた。
あの日から
爛れた妄想はとめどなく続き、
しかしそれでも、誰からも愛されることはなく、
孤独と寂しさに押し潰されそうになって
ついに
死んでしまいたい、と思ったその日に
作り上げたのが、
彼、ソウジだった。
年下の甘えん坊。
何をしても、何をやっても許してくれる。
愛してくれる。
認めてくれる。
共感して、慰めてくれる。
ずっと求め、恋焦がれてくれる。
いつもそばにいてくれる。
連絡を取る煩わしさも、
くだらない喧嘩も、
会えない寂しさも、
気分が乗らない時に求められることも、
演じないといけないことも、
浮気されることも、
悲しい別れも、
何もない。
無償の愛。
決して、裏切られることのない、愛。
完璧な、彼。
理想の、彼。
心地良い、妄想。
………………怖気がするほどの、毒。
「カナ!!!」
急に、考えが中断した。
そうだった。
完全に忘れていた。
今は
ソウジに、
後ろから抱かれて
「ひどいよカナ、いつなら遊んでくれるの!?」
ずっと、構ってほしいと言っていたのに、
全然構ってあげなかったので
さすがにソウジが拗ね出した。
私の頭の中の人物とはいえ、彼は彼なりの自我がある
………らしい。
彼は、私ではない。
私は、彼ではない。
だから、理想ではあるものの、完璧に理想的な行動は、してくれない。
「寂しいよぉ………お願い………カナ………………」
ソウジはまだ私に抱きついている。
だんだん、その手は、
さっきと同じく、
胸やお腹を、優しく撫で始めていた。
触れるか、触れないかの所で、
さわ………
さわ………
さわ、さわ………………と
下腹部に、
何とも言い難い、
もどかしい
熱が
生まれる。
「………ダ………、………………んっ………………」
………………今日は、比較的落ち着いてたのに。
今日は、寝るまで、耐えられると思ったのに。
「………………カナ………………………………」
ソウジの指が、隙間から中へ滑り込み、
ゆっくりと下へと入っていく。
今度は、
焦らすことなく、
まっすぐに。
先程よりも
深く、
さらに深く
「………………………」
そして
一番大事な所を、手のひらで全部包み込まれた。
じんわりとした、温かさを感じる。
少し指を曲げたら
そこに
触れてしまうような
でも
決して触れてこない
そんな触れ方が
もどかしくて
「………………カナ………………」
「………………………………………………」
そして
彼の中指が
少しだけ
曲がり
私の
一番柔らかい部分に
触れた。
「………………………………っ………………!」
あれほど欲しかった指が
敏感な、そこを
優しく
ゆっくり、
何度も
愛撫している
「………………………………っ………………あ………………」
さっき、無理矢理押さえつけた劣情が
お腹の中から、
ぬるり、と、
あふれてきたのが
わかった。
シンクに手をつく。
力が入らない。
身体の全てを、それに預けてしまいたい
何もかも
忘れて
快楽に
身を任せて
全て
どろどろに
溶けて
しまいたい
ラックの中の食器たちは、
ポタリ、ポタリと
雫を落としている。
「………………………カナ………………………」
ぬる、ん、
という感触と共に、
中に
硬いものが入ってきた。
「…………………っ………………………!」
急に差し込まれたため、
異物に反応した身体が反射的にこわばる。
ぎゅう………っと、
指を締め付ける。
わかる。
彼の指が、私の中で
ゆっくり
うごめいているのが、
わかる。
押したり、
こすったり、
引っ掻いたり、
叩いたり………
ひたすら
優しく
私の中を
愛撫していく。
「………っ………………んっ!………ふ………ぅ………………!」
大きな声が出そうになり、口を押さえた。
異物が、身体の中にある。
うごめいている。
指が曲がり、
気持ちいい所を
何度も、
何度も、
こすられる。
指に合わせ、腰が動いてしまう。
嫌だから、抜いてほしいのか
快感だから、もっとしてほしいのか
もはやわからない。
「………………ん………………っんん………………………」
ただ
わかることは
私の腰は
身体は
もう
理性では
止めることができないほど
悶えて、
濡れて、
悦んで、
しまって
いる
ことだけ
だ
「カナ………………………」
ぬ、りゅ………………
彼の指が、ゆっくりと引き抜かれていく。
「………………ぁ………………」
抜けていく。
抜けてしまう。
このままだと
指が
抜けてしまう。
早く抜いて、と思う理性に反して
私は無意識に、下半身に力を入れた。
だめ
まだ、抜かないで
あと少し、
あと少しで、きっと
私は
だから
抜かないで、
まだ、
抜いちゃ、だめ、
待って、
それ
以上は
待っ
抜
や
ぁ
「………………愛してる」
指が抜けるか抜けないかの
その瞬間、
ぐっ!と
指が
一気に奥まで押し込まれた。
「………………ひぁっ………………!!」
中指が、奥の、
深い、深い所を突く。
ビクン!
と
腰が
跳ねた。
………お腹の中から来た快感の波は
ぶるぶるっ、と腰を振るわせ、
胸に到達して心を飲み込み、
あっという間に脳を溺れさせ、
後頭部を突き抜け、
全ての理性を
押し流して、しまった。
数瞬の眩暈の後、
自分が今、何をしているのか、
わからなくなる。
頭の中が、チカチカと、している。
目の前が、ぼんやりと、している。
身体は、まだ、快感の余韻で、震えている。
感情は蜜となって、とめどなくあふれ出ている。
そして
あそこには、まだ、深く、
彼の指が
入っていて
もう、ダメだ。
もう、我慢、できない。
欲しい。
私の
お腹の
中
奥深く
まで
全て
満たして
ほしい
お願い
はやく
あなた
の
それ
を
………………………ぬるっ、
と、
急に
指が抜かれた。
「………………っあ………………」
抜かれた瞬間、また何かが押し寄せ
ぶるっ、と震えてしまう。
喪失感。
そして、
言いようのない、期待感。
私の
あそこは
もう
パンツに
違和感を感じるほど
感情が
あふれて
止まらなく
なって
いる
「カナ………………………………」
シンクに手をつく私の腰を
彼は後ろから
両手で掴んで引き寄せ、
さっきまで彼が触れていた
私の
そこに
彼の
下半身
を
押し当てた。
「………………………ぁ………………」
ジャージ越しに
私のお尻に押しつけられたそれは
熱くて
硬くて
たくましくて
愛おしくて
おぞましい
塊
それが、ゆっくり上下に動きだす。
両手で腰を押さえられ、逃げられない私の
一番敏感な所を
こすりながら
「………………あ………………んっ………………ゃ………」
もどかしさが高まる。
さっきまで直接触れていたのに、
このまま入れてくれればいいのに、
わずか数枚の布の先に、
快楽を
熱を
硬さを
感じて、いるのに
それ
を
押し付けられ
て
擦れ
た
布が
身体の
奥
からの
欲望
を
吸って
染みを
作っ
て
いく
「カナ………………わかる………………?」
耳元でささやかれる。
熱い吐息が、うなじにかかる。
心臓が、高鳴っている。
息が、荒くなる。
それが何かは、
わかっている
それが何をしているのかも
わかっている
これから何をされるのか
これから何をされてしまうのか
全部
全部
わかっている
「………………………………………」
私の身体は
震え
期待する。
この次の
展開を
鼓動は早鐘のように鳴っている。
顔は火が出るほど火照り、
感情はとめどなくあふれ、
身体の奥の熱で脳髄まで焼かれ、
おかしくなってしまいそうだ。
………………急に、彼の動きが止まり、
硬いものが
あそこから離れた。
そして、
ジャージのズボンとパンツに
ゆっくりと
指が
かかり、
焦らすように
少しずつ
腿まで
下ろされた。
顕になったそこが、
風の冷たさを感じることで
はしたなく濡れていることが
わかる。
わかって、しまう。
「………………………………ぁ………………」
だめ………………
こんな、
所で、
そんな
あ………………
私の感情が
蜜として
あそこから
とめどなくあふれ出て
いるのが
全て
彼に
見られて
しまって
いる
「カナ………………愛してる、カナ………………」
羞恥と
期待と
快感と
いろいろな感情が
ごちゃまぜになり
震えている
私の
そこに
指よりも
もっと
太くて
熱くて
たくましい
それ
の
先端が
触れ
た。
「カナ………………いく………よ………」
「………………………ゃ………………ぁ………………」
もはや、ほとんど残されていない理性で
弱々しく抵抗する。
本当は
ここでやめられたら、狂ってしまうかもしれない。
一気に突いてほしい
あのビリビリとした快楽を味わいたい
溺れたい
全てを投げ出したい
でも
だめ
はしたない
私は
そんな
こんなところ
で
流され
る
まま
に
してしま
う
へんた
い
なんか
じゃ
な
ほしい
やめて
みたして
いれないで
私の身体を
私の理性を
こわして
「愛してる………………カナ………………」
ぬ
りゅ……………………
入口は少し抵抗感があったものの、
私のあふれた感情が
潤滑油となって
柔らかい肉を持った
硬くて
熱い
それが
ゆっくりと
私の肉を
押し広げ
中へと
入って
いく
「はぁ………ぁ………ぅ……………っあ…………あぁ………」
彼の
熱を持った
それは
私の
愛の蜜と
肉に
包まれながら
私の
お腹の
奥の
子宮の
入り口に
優しく
キスをして
全てを
満たした
「………………ぁ………………ぁあ………………ぁ………」
頭が
くらっとして
全てが
どうでもよくなって
口からは
声にならない
言葉しか
出てこなく
なって
理性は
もう
これっぽっちも
のこって
なく
て
彼の
硬くて
熱いものに
全て
満たさ
れて
私
は
「………はぁっ、はぁっ………………カナ………………カナ………………」
繋がったまま、
後ろから抱きしめられた。
彼のものは
私を深く貫いて、
火傷しそうな
その熱で
身体の奥にある
一番
大事な所に
その
先端を
触れ
させたまま
彼と
私は
舌を
絡ませ
燃える
ような
キス
を
した。
ぬる
ぬるとした
舌が
ふれあう
と
わたし
の
かんじょうは
めちゃく
ちゃ
になり
中
から
どんどん
あふ
れだして
とま
らなく
なっ
た
わたし
の
かん
じょう
は
かれ
の
ものを
やさしく
ぬら
し
からだ
は
ひく
ひく、と
よろ
こんで
かれ
を
やさしく
つつ
み
こみ
もう
この
せかいに
は
かれ
と
わたしが
つなが
った
そこ
の
かんかく
し
か
な
く
て
「………………………っ………………ぁあ………………」
なにも
かんがえ
られな
い
ひとつ
に
なっ
て
とけあ
って
からだの
おく
の
おく まで
ふかく
つな
がって
みたされ
て
「………カナ…………うご、く………よ………………」
「………………………ん………………ぁ………」
もう
だめ
わかん
ない
きも
ち
い
ぬる、
ぬるる、
ぬる るる………
や
ぬけ
ちゃ
かれ
の
が
ゆっく
り
ぬけ
ちゃ
その
ふと
い
カリ
が
わたし
の
かんじ
る
その
ばしょ
の
にく
を
こす
り
な
がら
ぬ
け
て
ぃ
く
とちゅん!
あ
いき
な
り
わた
し
の
おく
ふか
く
き
た
「………っあ……………あぁーーーーー…………!!」
私の
身体は
びくん!と大きくはね、
そこからは
もう
なにも
わからなく
なった