アインズの私室にて報告を許された俺は興奮を抑え先ず業務連絡をすることにした。
「此度ハ不肖ナル我ガ身ノ願イ聞キ入レテクダサリ感謝致シマス」
「良い、ロータスには今後も世話になるだろうからな、褒美の先渡しだ」
「誠ニ有難ク、ツキマシテハ魔導国首都エ・ランテルニテアルベド様ノ配下デアル人間種ノ女、シュグネウスト共ニ暮ラスコトヲオ許シ頂キタク」
名前に思い当たる者が居なかったのかアインズは少し思案すると思い出した様に口を開く。
「ああ、あの女か。それで、何故エ・ランテルでその者と暮らすのだ?」
「聞ケバエ・ランテルハ元々人間種ノ土地デアアルトカ、偉大ナル魔導国ニヨル統治ノ素晴ラシサヲ理解スルノハ愚カナ人間種ニハ難シイト思ワレマス」
「そうだな、多少改善はしてきたがまだ暮らしている者達の中には不満を持っている者も居る」
「エエ、ナノデ異形種デアル私ト人間種デアルシュグネウスガ夫婦トシテ暮ラスコトデ人間種ガ持ツ愚カナ思想ノ改善ヲ促シテミヨウカト」
「なるほど、試してみる価値はありそうだな。許可しよう、詳しい計画についてはアルベドと相談し実行する様に、頼んだぞアルベド」
「仰せのままに」
「ソシテコチラガ本題ナノデスガ」
抑えていた興奮を隠しきれず、それに気がついたアインズは興味を抱き、アルベドは気まずそうな表情を浮かべる。
「先程アルベド様ヲカラカイ過ギテ殴ラレマシテ」
「いやおま、何をしているのだロータス」
「私モアルベド様モタダナンノコトナク殴ルモノダト思ッテ放タレタ拳ガ即死回避スキルヲ貫通スル絶死ノ一撃トナリマシタ」
「えっなっはぁっ!?」
精神抑制をもってしても抑え切れず狼狽えるアインズを無視して話し続ける。
「意識ガ途切レル寸前ニ蘇生アイテムヲ使用シマシタノデ確実ニ死亡シタト思イマス、確認デスガアルベド様ニソウイッタスキルハ?」
「い、いやそんなスキルはない筈だ、そもそもただ殴るだけで即死付与?あり得るのか?」
「実際ニ体験シマシタカラ、私ノ様ナ者デモ問題ナク蘇生デキルコトヲ確認デキタノハ嬉シイ誤算デシタ」
その言葉にアインズは僅かにたじろぐ、確認しているかは不明だがプレイヤーの蘇生が可能というのは有用な情報だろう。
「ソレニ私ノ死亡回避スキルモ特殊デシテ。先ズ<脱皮>コチラハ死亡シタ時HPガ1割、防御力半減デ復活スルスキル、ソシテ<虫の息>コチラハ数値ニシテ1ノミHPヲ残シドンナ攻撃ニモ耐エル、私ハコノ二ツノ即死回避スキルガアリマス。アルベド様ノ一撃ハソレラヲ完全ニ無視シタモノデス、食ラッタ瞬間頭部ガ弾ケ飛ビ、スキル発動ノ気配モ全クナカッタ」
「……それは、いやそんなことが」
「ワカリマスカ陛下、我々ハコチラデアチラノ仕様外ノ力ヲ得ラレル可能性ガアリマス。特殊条件下デ発動スル新タナスキル、知識ノ研鑽ニヨル魔法ノ習得、修練ノ果テノ武術ノ習得、レベルモ職業モ関係ナイ新タナ力ヲ得ルコトガデキル可能性ガ」
「可能性としては、否定はできない、か。確かにコチラにも異能、武技の存在がある、それらを習得できる可能性……」
「無論、私ノスキルニ何カ条件ガ付加サレタ可能性モアリマス。今回ハ頭部破壊ニオケル死亡デシタノデ<脱皮><虫の息>ト字面カラ想像デキル現象ヲ再現デキナカッタカラ発生シタイレギュラーダッタ可能性、検証シテミナクテハワカリマセンガ」
「よ、よい!ロータス、お前は既に魔導国に忠誠を誓った身!そんなお前がそう何度も死ぬ様な痛みを感じさせることは私が望むところではない!」
「陛下ノ深イゴ配慮ニ感謝ヲ」
「しかし新たな力か……フフフ、そうか、フフフ」
新たな可能性に喜ぶアインズと同様の感情を抱くが、発端となったアルベドはどこか居心地が悪そうだった。
「タダ陛下ニ一ツ留意シテイタダキコトガ」
「ふむ、なんだ?」
「今回ノ再現ヲシヨウトスルトドウシテモアルベド様ニ恥辱ヲ感ジサセル必要ガアリマス、流石ニ衆人環視ノ元デ行ウコトハ沽券ニ関ワリマスノデ行ウ際ハアルベド様トオ二人ダケデ見ラレナイ様ニ万全ノ配慮ガ必要カト」
「あ」
そう言って固まるアインズとアルベド、アインズは興奮で何も考えていなかった故の硬直、アルベドは降って湧いた想い人に恥辱を与えられる可能性故の硬直。過程は違えど結果が同じなのは見ていて愉快だ。
「申シ訳ケアリマセン悪戯ガ過ギマシタネ」
「あ、あ、あ、アンタホントッ!」
「ドノ道アレヲ完璧ニ再現デキル様ニナレバ強力ナ手札ニナリマショウ、ヤル必要性ハ確カニアリマスガ最低限ノ配慮ハ必要デス」
「ま、まあそうだな、アルベドがもしそれが再現できれば圧倒的な切り札の一つになるだろう。正直、再現方法についてはお前に多大なる負荷をかけることになるが協力してくれるか?」
アインズにそう言われればアルベドはすぐ恋する乙女の様な表情を浮かべ、わざとらしくもあるような潤んだ瞳で見つめる、あざといが恐らく本心でやっているのだから質が悪い。
「無論、アインズ様の頼みとあればこの守護者統括アルベド、幾らでも身を捧げる所存……しかしやはり他の者に見られるのは少々憚られますので、その……」
「それは当然の処置だ、再現実験はお前と私二人。決して誰にも見られることのない場所で行うことを約束しよう」
「アインズ様!」
言質を取ったアルベドは少女の様な笑みと我が世の春が来たとばかりと恍惚とした空気を醸し出す。釘だけ刺しておくか。
「陛下、後ニ状況ヲ文字ニ起コシタモノト考エラレル発生原因ヲ記シタ書類ヲ提出致シマス。ソノ際オ心ヲ乱スト思ワレル情報ガアリマスガ何卒冷静ニゴ判断クダサイ」
「……そうだな、他でもないロータスの進言だ心に止めておこう」
そう告げればアインズは薄々感じていたのであろう、覚悟を決めた様に了解し。アルベド
は先程とは打って変わり絶望に満ちた表情を浮かべる。
「ゴ安心ヲアルベド様、陛下ハ最初カラ全テヲゴ存ジデス」
慰めになるかはわからない、ただこの無垢な女を放置するのは気が引けた。
やったねアルベド二人になれるよ!