報告が終わった俺は再び玉座の間に戻るとそこには相変わらず震えながら土下座したままのシュグネウスと和風メイド服を着た蟲人と思われるメイドが涎を垂らして立っていた。
「お待ちしておりましたロータス様、ご命令通り女の管理をしておりました」
口も動かさず発せられた声に思わず驚く、発せられたその声は俺が発する喋り声とは違い完璧に人間の声だったからだ。
「遅クナリ申シ訳アリマセンデシタエントマ様、態々管理シテイタダキ有難ウゴザイマス。ソシテ遅レバセナガラ始メマシテ、私ハ陛下ヨリ魔導国ノ福利厚生ニオケル相談役ヲ拝命サセテイタダキマシタロータスト申シマス」
「これはご丁寧にどうも、私は戦闘メイドプレアデスが一人、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータと申します」
そう言いエントマは零れそうになった涎を袖で受け止めながら頭を下げる。
「所デ不躾ナ質問トナリマスガエントマ様ハドウイッタ風ニ発声シテイラッシャルノデスカ?技術的ナモノデアレバ是非ゴ教授オ願イシタク」
「お恥ずかしながら、口唇蟲を使用しております」
口唇蟲か、なんだったか設定自体は聞いたことある様な気もするが思い出せない。
蟲ということは人間の声帯を模倣する生物でそれを喉か口腔に忍ばせ代わりに発声させるといった所か。
「ナルホドソウデシタカ、今後私ガ行ウ業務ニテ必要ニナリソウデスノデヨロシケレバ後ホド飼育方法ト共ニ一匹頂イテモヨロシイデショウカ?」
「畏まりました、準備が出来次第お届け致します」
「有難ウゴザイマス、デハ転移門ヲ使用シタイノデシャルティア様ノ下ヘゴ案内頂ケマスカ」
「それではこちらへどうぞ」
「エエ……シュグネウス、行キマスヨ」
「は、はい!」
悲鳴の様な返事をしたものの足が痺れたのか立ち上がろうとしたがよろけて倒れそうになったシュグネウスを受け止める。
「も、申し訳ございません!!!」
最早絶叫とも言える謝罪をし額を何度も叩きつけるシュグネウスを止める。
「大丈夫デスヨ気ニシテイマセンカラ、足ガ痺レテシマッタノデショウ?仕方アリマセンヨ、タダ私モ急イデイマスノデ少々失礼シマス」
それだけ言って有無を言わさずシュグネウスを抱えエントマの後に続く。
「も、申し訳ありません!この様な畏れ多いこと!」
「オ気ニナサラズ、貴女ハコレカラ共ニ仕事ヲ行ウ同士ナノデスカラ」
怯えようから考えるにシュグネウスは甘く優しい扱いをした方が良いだろう、その証拠にシュグネウスの体からは先ほどよりも力が抜けこちらへ身を預け始めた。
彼女の態度に問題がなくなったことを確認して前を向けば立ち止まったエントマがこちらを見ていた。
「ロータス様はお優しいのですね」
「イエイエ、タダ男トイウモノハ女性相手ニカッコツケタクナルモノナノデスヨ。特ニ陛下ヨリゴ恩寵ヲ受ケシ者ナラ殊更ニ」
表情の変わらぬ顔、擬態か?であったがそれでもこちらを訝しむ様な雰囲気は伝わってきた。
「その食料がアインズ様のご恩寵を?お戯れを」
「劣等種タル人間種ガ仕事ヲ任サレマシテヤコノ場デ生キテ存在シテイル時点デゴ恩寵ト言ウ他アリマセン、元来コノ地ハツイゾ誰一人トシテ到達ヲ許サナカッタ至高ナル地、本来私デスラ目ニ映スコトモ許サレナイノデスカラ」
「……それもそうですね」
理解はしたが納得はしていない、それを暗に態度で示したエントマは再び歩き出す。メイドでありながら俺の態度を諌めようとしないことから分かってはいたが。
「所デエントマ様ハ人間種ノ肉ヲ好ムノデスカ?」
「ええ、特に筋肉質な男のものをとても」
エントマはそう言い口下を拭う。
先ほどから語られる会話は人間であるこの女にはさぞ恐ろしいのだろう、抱えている強張った体の震えはどんどん大きくなっていた。
「デアレバ質ノ良イ肉ヲ探スコトモ念頭ニオイテオキマショウカ、プレアデスノ皆様デ他ニ人肉ヲ好ム方ハイラッシャルノデスカ?」
「人肉を好むと言う点であれば一人、特に無垢な生き餌を好んでいますね。他は過程を楽しむかそもそも興味がないか」
幼児に破壊願望か。
個人的に試したいことも多いし、やはり将来的に箱庭を二、三確保しても良さそうだな、折角福利厚生を任せられたのだから準備は大切だ。
「ナルホドナルホド、デアルナラ将来的ナ計画ニ加エテオキマショウカ。勿論仕入レガ済ミ次第エントマ様ニハ優先シテオ届ケ致シマスノデ」
「お構いなく……と言いたい所ですがやはり美味しいお肉は食べたいので楽しみに待っていましょうか」
「エエ、是非ニ」
頭の中で理想への道筋を組み立てていく、全ての知性体が甘い夢を見られる世界を。