※この作品はR-18です。

孤独の蟲王   作:cas_mi

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束の間の平和

 ヒルマと共に暮らし始め先ず行ったのは彼女の食事変更による体型改善だった、素材の良さがあり、いくら俺に好意的態度を示していたとしても病的な痩身を改善せねば対外的な評価に差し障りがある。

 以前の経験から適した食事を知っていたのは幸いだった。

 何故知っているのかとヒルマに問われた際、内部から臓腑を焼かれ回復魔法を使用しない外科的方法での治療を行われた経験を話せば彼女以外の同僚は一様に絶句していた様子には面食らった。

 大規模な犯罪組織の元幹部と言っても知識が少ないのだろうか?それとも文化水準からくる知識の乏しさ故か。

 気になって受けていた精神訓練の概要を話したが触りを聞いただけでの反応から見るにやはりそこまでの知識を必要としなかったのだろう。

 食事に関しては村で再現可能な栄養流動食と、ヒルマ専用に薬効がある香草を混ぜた高カロリーなもののレシピを教えた。

 驚いたことにこちらの植生は確かに違いがあったが、知識として知っているあちらの植生と近いものが多かった。

 この点に関しては製薬企業に勤めていたことが幸運だった、薬効の高いものを精製する為素材の改良に携わっていた主人には頭が上がらないな。

 高栄養の食事と運動によって体型の改善が見られ始め、ヒルマに至っては咀嚼を行わないと顔がたるみ易くなることを遠回しに教えれば必死になってトラウマの克服に挑み始めた。

 全く以て健気で可愛らしい女だ。

 

 一方俺個人はと言うと空き時間がないほどにやることが多かった。

 住民との交流、現地の情報収集、移住計画の立ち上げ、アルベドのスキル再現を行う為の状況再現による実験方法や、彼女を擁護する為の方便をまとめた報告書の作成。

 数回人目を避けて頭部破壊実験を行ったが俺のスキルは問題なく発動した為、やはりあの絶死の一撃はアルベドが発動したスキルによるものの可能性が高い。

 遣いに訪れたエントマに書類と偶然確保できた食材を渡すと、態度こそ崩さなかったもののそれなりに喜んでもらうことができた。

 ただアインズの目があるからとナザリックではなく、その場で包装を解いて食べだしたのには頭を抱えた。

 その行動のお陰で警戒を解き始めていた村人との関係がマイナスになり、期間内に打ち解けることはできなくなったと思っていたのだが、そこでヒルマが活躍した。

 彼女は巧みに村人の恐怖心を解くと私との仲を取りなし、関係改善に努めてくれた。

 元娼婦でありながら裏社会で成り上がった経歴は伊達ではないのだろう、人間相手の立ち回りと人心掌握術には舌を巻くものがあった。

 

 エ・ランテルへの移住については伝言でアルベドに使用人数名を雇っても違和感がない中流層の住居を用意してもらうこと、簡単な商売をする予定と言う事だけを伝えた。

 彼女も今は俺に構っていられるほど暇ではないだろう、一応アインズが暴走しない様に配慮はしたから後のことはアインズとアルベド次弟だ。

 エ・ランテルで行う商売については女性向けとして行うことにした。

 やはりと言うべきかこちらにおける女性の社会的立場について例外はあれどまだ弱い、女性をターゲットにした商品開発も遅れている様だったのでヒルマに市場開拓と商会を任せることにした。

 開業資金については魔導国から一端借り入れることになったが返済は早めに行っておこう。

 村から移住するのは最初に俺とヒルマと使用人三名、商会の準備が整い次弟運送と、金銭の取り扱いに長けたニ名を呼ぶ予定だ。

 それ以上はエ・ランテルでの求人が上手くいかなかった時に頼るとしよう。

 

 身体操作の細かい確認が済んでからこちらの神話や民間伝承を集めていると興味深い話しもあった。

 六大神、八欲王、十三英雄。

 これらについては恐らくはプレイヤーであろう、人間種の姿をした絶対的強者が前触れもなく現れ救いをもたらした。

 絶対的な力で大陸全土を支配した。

 魔神と呼ばれる敵対種族を尽く滅ぼした。

 十三英雄については神話というよりは英雄譚であり、どちらかと断定しにくいがプレイヤーの可能性が高いだろう。

 六大神が凡そ六百年前、八欲王が五百年前、十三英雄が二百年前。

 六大神が最初に転移し約百年後に八欲王が転移していると仮定すれば、プレイヤーの転移は百年毎に起こっている?ただ八欲王が上位種族に攻撃したことで転移関係者によるプレイヤーの殲滅が行われ始め、十三英雄のみ力不足で見逃された。

 だがその説は俺の存在で否定できるだろう、ナザリックの転移からまだ数年しか経っていないのにこちらに来たのだから。

 ただそれに関しては俺の執着心によってシステムに関係者とみなされ起こったバグか?どちらにせよ情報が足りなすぎて断定することはできない、アインズの問題が一段落した後に情報をすり合わせるか。

 

 こちらでの情報、あちらとユグドラシルでの身体操作の差異を埋める為の最適化、それらの研究をしていればあっという間に移住期日が近くなり、それに合わせ申請していた面会の許可が降りた。

 転移門で連れて来られた豪奢な部屋には黄色の軍服を着たドッペルゲンガー、パンドラズ・アクターが出迎えてくれた。

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