※この作品はR-18です。

孤独の蟲王   作:cas_mi

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柑橘類の皮は掃除に便利らしいよね、つかったことないけど


作家はどこも奇人変人

 交配実験は今の所上手くいっている、ヒルマも蝗人としての姿での性行為を勧められる様になった。

 しかしこの姿だとあの様に生殖器が出てくるのだな。

 性行為を行おうとすると股間部の外骨格が開きそこから生殖器が露出する仕組みになっていた、生殖器も虫のものとは思えない軟質なもので人間との性行為で相手に傷をつけることもなかった。

 形状については人間のものとは違いグロテスクなものだったがヒルマが言うには人間種のものより快楽を感じるとのことだった。

 正直性行為についてはあちらでの経験から少し心配していたのだが、流石は元娼婦ということもありそれほど問題にはならなかった。

 やはりその手の職業から成り上がったことだけはあるな。

 それと薄々だが、ヒルマは俺が元人間であると考えている様に感じる。

 ただ俺の妙な知識の多さや演奏技術などのせいで確証を持てていないといった感じか、千年近い文明の開きがある場所から来たのだから無理もないが。

 

 また現地民に披露する歌についても大体固まってきた。

 悲しいことにまだ魔導国で活動する様な吟遊詩人は少なく、現地の音楽についての知見はそう深まらなかったが広場での演奏に足を止める人間の割合が増えてきた。

 尤も件のデスナイトが来るとやはり足が離れてくのだが。

 しかしこのデスナイトも結構面白い、メタル系の曲が気に入っているのは分かるがあちらで代表されるデスメタルバンドの曲を何曲か披露してみるとかなり気に入った様だった。

 歌っていたのならまだ分かるがただリュートで演奏しているだけなのに何故気がつくのか、本能で嗅ぎ取ったのだろうか?ナザリックにエレキやアンプがあればコピーバンドをつくって演奏を聞かせてみるのもおもしろいかもしれない。

 この件もアインズに報告しておこう、前回報告した時も興味を持っていた様だが今回の件は流石に笑い出すかもしれない。

 そうして毎日午後の決まった時間に演奏をしているとある日見窄らしい身なりをした一人の男が声をかけてきた。

 

「アンタの曲を楽譜に起こさせてくれ!」

 血走った目で掴みかからん勢いで叫ぶ男に若干引き気味になる。

「どうも、所で貴方どこのどなたですか?」

 そう告げれば男は我に返り身なりを整えて挨拶をする。

「はじめまして、私はフランク・ブラムス。作曲家を生業としているものです」

「はあ、私はロータス・ウェヌスです。それで?曲を楽譜に?」

「そうだ!」

 フランクは再び恐慌状態になりこちらへ詰め寄ってきたので思わず頭を掴んでしまった。

「だだだ痛い痛い痛い!」

「あ、すいませんつい」

 手を離されその場にへたり込むフランク、正直介抱したくなかったが周囲の目もあったのでやむを得ず手を貸す。

「大丈夫ですか?正直いきなり詰め寄られるとこちらとしても困るので落ち着いてもらえると」

「い、いやこちらこそすまない、少々興奮してしまったようだ」

 少々どころではなかったと思いながらもアイアンクローを放った詫びとして近くの食堂に行くことになった。

 

 食堂は何度か通っていたので店員にも好意的に迎え入れられたが、まだ些か緊張している様にも見える、俺は席につき二人分の酒と食事を注文した。

「それで?私が弾いていた曲を楽譜に起こしたいとのことでしたが」

「そうだ!あの様な斬新な旋律聞いたことがない!私としては是非あれを発表し広く」

「落ち着いてくださいまた頭掴みますよ、ほらお酒も来ましたから」

 なんとかフランクを宥めながら店員から受け取ったエールを飲む、味については他の店と比べてみたがここが値段と味が最も釣り合っている様に感じる。

 フランクもエールを一気に呷って少し落ち着いた様だった。

「それで楽譜に起こすとのことでしたけど貴方対価払えるんですか?」

「対価?何をいっている、私が楽譜に起こして広めることが対価になるではないか」

 フランクの発言に頭を抱える、見窄らしいとはいえ着ている服はそれなりのものであったから想像こそしていたが。

「私が楽譜を書けるってことは考えてないんですか?それにたとえ楽譜に起こしたとしても貴方の身なりからとてもじゃないが伝手があるように見えないんですが」

「私はリ・エスティーゼ王国のクルベルク伯爵家の元で働いていたのだぞ、伝手などいくらでもある」

「魔導国の首都で魔導国に制裁を下された国の名前出しても何の意味もないでしょ、それとも何ですか?私は異形種だから同等の立場にすらないとお考えで?」

 幾分か低い声でそう告げればフランクはたじろいだ、この身なりだから下手に威圧かける訳にもいかないからこれだけで済んで良かった。

 

「お、お待たせしました!」

 店員が叫ぶ様に分厚いステーキが乗った皿を持ってきた。

「すいませんお騒がせしてしまいまして」

「い、いえ!そんなお構いなく!」

「そういう訳にもいかないですよ、ホラ、私こんな見た目なのに騒ぎ起こしてしまって。一応こちら謝罪ですので後で店主さんにもお伝えください」

 そう言って俺は硬貨の入った革袋を渡す、店員が恐る恐る受け取るそれをフランクが見つめていることに正直怒りを覚えたが何とか飲み込む。

「ま、話しは食べてからですね。さ、フランクさんも先程の謝罪ですので食べてください、ゆっくり食べるので私が食べ終わるまでに納得できる提案をしてくださいね」

「あ、ああ恩に着る」

 そう言って彼はしばらく何も食べていなかったのか文字通り貪る様にステーキを飲み込んでいく。

 そういえばここのステーキも美味いのだがやはり牧場で食べたのは格別だったな、調理法による問題なのかそれとも種族的な味覚によるものなのかはまだわからないが、少なくとも人間向けの食べ物でも問題はないからこれもいつか調査しておくか。

 宣言通り時間をかけ丁寧に食べているとフランクはこちらの様子を伺いながらも色々と考えているようだった。

 思えば勝手に楽譜に起こさないで態々許可を求めてきたことと言い、軽く不快感を覚えたとは言えしっかり礼を言って食事を取る様子からそう悪い人間ではないと思う。

 自分に言い聞かせる様にそう思考を巡らせていると食べ終わり追加のエールを頼む、それが

運ばれてきたところで答えを聞くことにした。

 

「さて、どうしますフランクさん」

 そう問われればフランクは迷った様な表情を浮かべていたがこちらを見据えると腹を決めたようだった。

「先ず先程は不躾なことを申したことを謝罪します」

 そう言って頭を下げる。

「謝罪を受け入れましょう、それで?貴方は対価になにを?」

「今の私がお渡しできるものはありません、ですが私はどうしてもあの曲を譜面に起こしたい、そこから学ぶことで新たな扉が開くと思うのです、今の私が持つものは最早音楽に対する情熱だけ、金も名誉も今は何もないのです……ですがそれでも、どうか」

 そう言い頭を下げようとするフランクの肩に手を置く。

「良いでしょう、貴方が私に誠実な態度を示した様に私もそれにお返ししましょう」

「おお!それでは!」

「ええ、ですが準備も必要でしょうから作業自体はまた後日にしましょうか。ちなみにどちらにお住まいですか?」

「今は王国側の門付近の住居に住んでおります」

 門付近となると一応低層の住宅街だったか、そちらにも顔を出しておく必要もあるか。

「ふむ、ではそちらで行うことにしましょう作曲家なのですから楽器の類はお持ちですよね?」

「そう、ですね……金に困っていくらかは売ってしまいましたがまだ残っているものもあります」

「でしたら妻と共に伺いますので、お持ちの楽器を触らせて頂いても?私が演奏できる他のものがあるかもしれませんし」

 

 ヒルマと共に行けば新しい商売の種も見つかるだろう、それにたまには彼女と街を歩くのも悪くない、最近はまた商会が忙しくなって時間も取りづらくなってきたしな。

「とりあえず予定は七日後にしましょうか、いつも通り広場で演奏していますのでお声がけください。準備も必要でしょうからそれまでにお願いしますね」

「わかりました!では七日後にまたお願いしますロータス様!」

 そう言って俺とフランクは握手を交わした。

 

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