フランクに音楽教室を任せてからしばらく経った。
俺が広場でほぼ毎日演奏していたことから一部の住民間では音楽に対する興味が高まっており、中流層向けにやや高めの値段設定であったのにも関わらず生徒数はそれなりに増えていた。
それからフランクには庶民に受け入れられやすい楽曲の提供と、部分的に知っている音楽理論をいくつか教えたこともあり、オリジナルの曲が出来上がってきていた。
以前の見窄らしい身なりをこちらに見合ったものに整えたものの、音楽教室と楽曲制作に熱を上げすぎてやつれ始めてきたので強制的に休める目的で食事を共にすることが多くなった。
そして食事中するのは専ら音楽談義なので酒が進めば歌い始め、主人に許可をもらって演奏することになる。
やがてそれが評判となり食堂の客足が増えていき、俺達以外にも歌い、演奏する様な客層が出来上がっていった。
店主は儲けの一部で店内に演奏用のスペースをつくり、俺はヒルマに頼んでリュートと打楽器をいくつか店主に送ると甚く感謝され、住民との関係はより深まってきた。
最近では食堂の者含め世間話をする様な間柄の住人も増えていき、妻が稼いでいるのに自分はこの街での稼ぎ方が分からないと無知を装えば、いくつか演奏の依頼を受けられる様にもなった。
技術が優れていることと演奏する楽曲の珍しさから徐々に依頼は増え始め、俺個人の弾き語りの収入も中々に増えてきた。
まあ商会主のヒルマと比べれば微々たるものだが、それでも現地基準で妻と三人の使用人を養える程度には稼げている。
それと交配実験についてはまだ結果は出ていない、その為試験的に使用人とも日常的に交配を行うことにした。
ただヒルマと同様の扱いとはいかないのでジュリアとイリーナは人間態でのみ、リリアンは蝗人のみで行っている。
その為一日の三分の一は性交に時間を費やすという中々に爛れた生活を行っている。
月のものを目安に交配を行うという案も出したのだが、三人がそれを望まなかったのでこの様なことになってしまった。
一応性交を楽しむ為に避妊薬を接種することは許さないと厳命したが管理はヒルマに任せている。
何かと任せてしまっていることが増えてしまっているので、日頃の感謝ということでを稼いだ金と伝手を使って、彼女の為だけにディナーショーを行ったのだが喜んでもらえた。
正直こういったことは慣れているだろうと思っていたのだが、その夜はいつも以上に盛り上がったのでちゃんと喜んでもらえていたのだと感じた。
そして今日は魔導国が運営する孤児院にヒルマと共にやってきた。
商会の利益がかなり増え、利益の一部を寄付することにしたのでその視察だ。
「お待ちしておりましたロータス様、ヒルマ様、わん」
とってつけた様な語尾で挨拶をする獣人?のメイド、ペストーニャに迎えられ挨拶を返す。
「ペストーニャさん本日は見学を受け入れてくださりありがとうございます、魔導王陛下の多大なる御慈悲に倣いまして私共も何かご助力できればと思い参りました」
「それはそれは、真に有難うございます。それでは施設の案内を致しますのでこちらへどうぞ」
俺とヒルマはペストーニャに続いて孤児院の中へ歩を進めた。
孤児院というにはどこか違和感がある施設は、リ・エスティーゼ王国侵攻の際親を失った子どもを受け入れて育てているとのことだったがその正体にはすぐに気がついた。
子どもの年齢が揃い過ぎているのだ、大凡三、四歳ぐらいといった者が大半で、恐らく王国侵攻の年にはまだ物心が付く前の乳幼児のみ回収して収容したのだろう。
それでも何も知らずに過ごす子どもは皆笑顔で、職員もそんな子ども達を慈しみ、しっかりと面倒を見ていることは感じられた。
「素晴らしいですね、皆純粋に笑顔で過ごしている。陛下の御慈悲は勿論ですが、職員の皆様におかれましても慈しみを持って子どもたちと生活しているのが伝わってきます」
「ありがとうございます、現在はまだ皆幼いので学業などは行っておりませんが体を動かす遊びを優先して行い、栄養ある食事を提供して丈夫な身体をつくってもらっています」
「それはそれは、とても良いですね。あまりに幼い頃から学業を優先させても学びきれませんからね、今はそういったことが何よりも子ども達の為になるでしょう」
談笑しながら孤児院を見て回り、見た目の問題から優先して子ども達と交流することはせず応接間へと移動した。
「いやはやとても素晴らしい施設でした、これほどまでに笑顔が溢れる孤児院は全世界においてこの施設以外ないでしょう」
「そんな、それも陛下の深い御慈悲ゆえですから……わん」
「ええ、勿論。魔導王陛下の多大なる御慈悲にはあの子たちもきっと感謝していることでしょう」
紅茶を飲み、素朴な味のクッキーを口に運ぶと仄かな甘味が口内を満たしてくれた。
「それでは私たちが行う寄付についてですが運営費や食事、甘味といったものは恐らく支給
されていますよね?」
「ええ、施設の運営に関する必要な物資、資金に関しては魔導国より支給されております、わん」
「なので私達が寄付致しますのは娯楽と専門的な教養となります」
内容がまだ理解できていなかったペストーニャは首をかしげる。
「となりますと?」
「簡単な遊具と楽器、そしてそれを指導する教員の手配ですね」
俺はヒルマに目線を送れば彼女は持っていた数枚の設計図を広げた。
「こちら敷地内に設置を考えている遊具の設計図です、主に身体を使う、運動機能を鍛えられる様なものを考えました」
設計図に記されたのは滑り台、登り棒、鉄棒などの一般的な遊具。
それらを使用方法、メリットとデメリットを提示しながら説明を進めていく。
「これは子どもたちにも喜んで貰えそうですね」
「ええ、それと設置場所を敷地内にすることで子ども達が仕事というものを見学しやすい環境をつくり、憧れや知見を深めることを目的にもしていますね、実際にそういった作業を見学するのも楽しんでもらえると思いますし」
「そうですね、子どもたちにも貴重な経験になるかと思います、あ、わん」
ペストーニャは熱心に設計図を確認しながら尻尾を揺らしており、それを目で追いそうになるのをヒルマに無言で咎められた。
後で可愛がってやるか。
「それと楽器と教員の手配ですね、こちら孤児院への慰問を目的としていますので教員への報酬は不要です。無論その者にも本業がありますので頻繁に指導できる訳ではありませんが」
「有難いのですが、でしたら雇いあげこちらに常駐していただく方がよろしいのでは?わん」
「将来的に必要となる教養ならばその必要もありますが、今回は娯楽目的の教養ですので。また住民間でも互いに助け合うという精神を培ってもらいたいとも考えておりまして、この者を皮切りに隣人に手を伸ばす素晴らしさを広めたいのです」
「それはそれは、とても素晴らしいお考えですね」
俺はアイテムボックスからいくつか楽器を取り出す。
「こちらが提供予定の楽器ですね、子どもが扱っても壊れにくく、演奏が容易なものを揃えてみました」
「変わったものが多いですね、どの様に使うかお聞きしても?」
「ええ、勿論」
俺はそう言ってそれぞれ楽器を鳴らし始める、ドラム、ハンドベル、マラカス。
幼児でも扱いやすく、練習すれば演奏ができるものを職人に頼んで作らせた。
扱い易い打楽器などは既にそれなりの数を発注している。
「この様に慣れていなくても扱いやすく親しみやすいであろうものを選びました、それなりに数は用意していますが子どもというのは新しいものが好きですから管理には注意してください」
「ええ勿論、どの楽器もとても素晴らしいものです、きっと子どもたちも喜んでくれます……あ、わん」
「詳しい計画については妻からまた説明させますので、他の職員の方々にも参加していただきましょう」
「そうですね、遊具の設置場所などは一度会議を行って詳細を詰めた方が良さそうですから、わん」
それから職員を集めた会議が行われ、孤児院に遊具の設置と楽器の寄付が行われた。
派遣した教員の様子から孤児院についての話題が多くなるのにそう時間はかからなかった。
ペストーニャとスケベしたいけど自然な展開が思いつかない