「まあそれなりのモノは持っているでありんすね」
「っ!」
勢い良く尊厳を踏みつけられ鋭い痛みが走る、嗜虐趣味を持っているのは分かっていたがどう逃げるか。
正直この女の趣味に付き合うのは御免だぞ。
「お褒め頂き有難く、しかしまだ何も結果は出しておりませんので成果を上げ次弟という形に」
そう告げると踏みつけた足に力がゆっくりと込められていき、靴底の形に合わせて潰れていく。
今まで感じてきたものとはまた別種の痛みに顔を歪めそうになるが何とか平静を保っていると足が離れた。
「顔色一つ変えないのはつまらないでありんすね」
「ご期待に添えず申し訳ありません、ですが私にも矜持がありますのでこういった行いは控えて頂けると」
「ふぅん、ま、わかりんした」
シャルティアはつまらなそうにそれだけ言ってソファーに座る、それを見届けてから立ち上がると吸血鬼の花嫁が近づき砕かれた肩の回復を行おうとし。
「勝手な真似を許した覚えはないわよ」
底冷えする様な声がすれば回復を行うとした吸血鬼の花嫁は大きく身体を震わせシャルティアに頭を下げた。
良く見れば彼女は俺が酒の手配を頼んだ個体と同じ個体だった。
「申し訳ありません気を使って頂いて」
「いえ、勝手な振る舞いでしたので」
謝罪すれば吸血鬼の花嫁はこちらを向いてそう告げるも恐怖を感じている、という訳ではない様に感じる。
彼女らはそういった扱いを望んでいるのか?被虐趣味を持つシモベに嗜虐趣味の上司か、幸せそうで何よりだ。
「それで、私とアインズ様とのことについてどんな案がありんすの?」
「そちらにつきましてはシャルティア様には先ず人間種の女性向け広報誌の担当をして頂こうかと」
「広報誌?」
俺は吸血鬼の花嫁に視線で合図を行いシャルティアに先程仕込んでいたサングリアを注がせた。
正直俺も飲みたいが両腕が動かせない今それは叶わない、そもそも服すら剥ぎ取られたままでそれをどうすることもできないのが歯がゆい。
自動回復スキルの取得を見送ったことをここまで後悔するとは思わなかった。
「ご存知の通り現在私はエ・ランテルで住民間の思想改善を行っております、そこで妻……人間の雌に女性向け商品を主にした商会の運営を任せております」
妻と言った瞬間シャルティアの表情が歪んだがそんな所にまで怒りを覚えないで欲しい。
「そこで顧客に向けて無料配布する情報誌の担当をシャルティア様に行って頂きたく」
「何で私がそんなことを?それに何の意味がありんす?」
「シャルティア様は守護者の中で最も美容に関心を持っていると聞き及びまして、その叡智の一端を人間種に授けて頂きたいのです。女性というのはそう言った情報に貪欲ですので、そこからシャルティア様の名声を高めていきます」
「ふぅん、まあ確かに、こと美に関しては私の右に出る者はおりんせんね」
「そして最終的にシャルティア様には魔導国における美の伝道師として永遠に名を轟かせて頂きます、これは陛下と同様にアンデッドであるシャルティア様にしか行えないことですね」
「美の伝道師……永遠……」
シャルティアは輝かしい自らの未来を想像しながらサングリアを飲む、その様子は先程とは違い希望に酔っている様にも見える。
「最終目標としてはそうなりますがその過程、まずは短期目標としてエ・ランテルで名が知られる様になれば陛下と視察を行っても不自然ではなくなるでしょう。内容としてはそうですね……上流層との交流会、などは如何でしょうか?」
提案したもののシャルティアはまだピンと来ていない様だった。
「確か貴族などの既得権益層は情報収集を目的とした茶会などの交流会を開くことがあるとか、そしてそれを取り仕切るのはその家の女主人というのが一般的らしいです」
女主人という言葉にシャルティアの目が鋭くなる。
「しかし魔導国においては貴族などというものは存在しません。ですが住民の上流層は我々支配層との繋がりを求めると考えられますから、シャルティア様がそういった催しを開けば集う者は多いでしょう、無論アルベド様がそういった催しを行うことも考えられますが……もし上流層の奥方にその名が知られていれば、どちらが優先されるかは明白でしょう」
ライバルを自分の得意分野で出し抜ける、その可能性に気がついたシャルティアの表情は輝き出した。
「という訳でシャルティア様には女性向け情報誌の原稿作成をお願いしたいのです、無論人間向けに原稿の編集は行いますがそれは我々にお任せください、完成品もシャルティア様にお渡ししますので、そちらを参考に次の原稿を書いて頂くことになっていくと思われますが如何しますか?」
判断を委ねれば彼女は一も二もなく勢い良く頷く。
「無論引き受けんすわ!嗚呼、美の伝道師……まるで私の為にある様な言葉でありんすね……」
「ただ初回テーマは重要になってきますからより人間に親しみやすいテーマを後ほどこちらで決めさせて頂きますのでそれを元にお願いします」
「ええ、了解したでありんす!」
「では陛下にご許可を頂きに参りましょうか、ただ今の姿」
「ええ!早速アインズ様の元へ行きんすよロータス!」
「え、いや、待」
シャルティアはそう言うと俺の手を掴み展開した転移門を抜けていく。
両肩が潰された全裸の人間種の状態の俺を引きずって。
スケベに繋がる展開が思いつきませんでした