「今回のこと、感謝致しますわロータス様」
どこか粘着質な艶めかしい声で礼を言われソリュシャンを見れば美しい筈なのにどこか退廃的に感じる笑みを浮かべていた。
「ソリュシャン様におかれましては長期休暇の提案の際、期待させておきながらそれを叶えられませんでしたからね、多少強引でしたが何とかご許可頂けて安堵しました。やっと埋め合わせすることができたこと、私としても嬉しく思います」
「埋め合わせなど……確かにあの時は思わず食べてしまおうかと思いましたが、今回のことを考えればあの時以上の至福ですわ」
差し出されたグラスを合わせお互いに飲む、至上の味が更に素晴らしく感じられたのは悪戯が成功したことによるものだろう。
「しかし先程申し上げていた必要になる振る舞いというのは?」
ストローを使ってコリンズグラスに注がれた浅葱色のカクテルを飲むエントマにそう聞かれ想定している話しをすることにした。
「前回申し上げた通り現地民は知性と品性が低い者が多く機会があれば陛下に関係を迫る可能性があります。そして今後魔導国の支配地が発展すると長期視察などの必要があるでしょうから、その際常時陛下の御身を守る者が必要になってきます。プレアデスの皆様におかれましては皆様容姿に優れた異性であることからそういった業務に適していますので、何れ陛下の玉体を磨く機会が訪れると思います、それに慣れて頂く為ですね」
「慣れるもなにも我々シモベは陛下が望まれればどの様な行為も誰もが喜んで遂行するでしょう、一体何が問題なのですか?」
真意が分からず訝しむエントマの様子からソリュシャンもそのことに疑問を持った様だった。
「恐れながら陛下はあちらより付き従ってきた真なるナザリックのシモベたる皆様のことを家族だと考えております」
「家族?その様な畏れ多いこと」
「ですから陛下はシモベの女性達と僅かに距離を置いておられるのです、家族とはいえど成熟した肉体を持つ異性に自らの裸体を晒すことは倫理的問題がありますから。陛下の行動から何となく察せられるのでは?」
そう告げると二人はそれぞれ思い悩む様な様子を見せる、ことソリュシャンにおいては加えて自らが抱いていた念に後悔を抱いているといった感じだろうか。
「それを差し置いても資格なき劣等種が分不相応な劣情を陛下に抱く可能性は十二分にあります、そしてそれらから陛下を守ることができるのはやはり真なるナザリックのシモベたる皆様方だけなのです。陛下の多大なる慈愛の御心については理解しておりますが、御身を守る為そういった行為にも陛下自身に慣れて頂く必要性があります」
「そ、それであれば何もアインズ様が無理に外に出ていかれることがない様に」
戸惑うソリュシャンの言葉を遮る様に予想する彼の本心を告げる。
「それも陛下ご自身の望むところではありません、陛下は家族である皆様と共にこの未知が満ちた楽園を味わうことこそを他の何よりもお望みですから、それに皆様の働きの成果を直接見ることも陛下はお望みでしょう」
そう告げると二人はうつむきどうしたものかと考え込む。
「まあ所詮新参者たる私の考えですので相違あるでしょうが、陛下のこれまでの行動を考えるとそう間違っていない様にも個人的には思えます。それを踏まえた上で我々は陛下のお望みを叶えることこそが使命となりましょう」
「……そうですわね、我々はそうあれと創造された存在。であれば万難を廃しアインズ様にこの世を味わい尽くして頂くことこそが使命となるでしょう」
そう告げるソリュシャンの顔は晴れやかなもので自らの使命により熱を持った様であった。
エントマについても表情こそ分からなかったが同様の感情を抱いている様に思える。
「皆、アインズ・ウール・ゴウン魔導国がこの世全てを支配する為今一度誓いを立てませんか?」
俺がそう言ってグラスを掲げれば二人もグラスを掲げる。
「さあ折角ですからクラヴゥ様もご一緒に」
「私はしがないバーテンですので皆様と共にその様なことを行うのは」
「何を言っているのピッキー、貴方も私達同様あちらから付き従う真なるナザリックのシモベであれば参加すべきよ」
「そうよピッキー、遠慮なんかしないでぇ」
ソリュシャンとエントマに促されクラヴゥもおずおずと自らの酒を用意し掲げる。
「音頭はそうですね、これも折角ですからクラヴゥ様に行って頂きましょう」
「そんな!私などが畏れ多い」
「何を仰られるのですか、貴方はこのバーのマスター、言うなればここの領域守護者であらせられる。なればこそ、この場で誓いの言葉を告げるのは貴方こそ相応しい」
俺がそう告げればクラヴゥは涙ぐむ……どこに目があるのかは分からないがそうした様に感じた。
エントマもソリュシャンも俺の案に納得した様で異を唱えることはせず微笑みを浮かべていた。
「では僭越ながら失礼しまして……ンンッ!アインズ・ウール・ゴウン魔導国に栄光あれ!」
「「「アインズ・ウール・ゴウン魔導国に栄光あれ!」」」
俺達四人は誓いの言葉を叫びグラスに口をつける、茸生物はああやって飲料を飲むのかと驚きつつ、天上の美酒を皆で味わった。
多分転移してから一番幸せだと思うよピッキー