「先ずはシャルティア様おめでとうございます、今宵を祝福する為にもご相伴に預かりたいのですがよろしいでしょうか?」
「勿論!今回貴方には多大に働いてもらいんしたから共に祝いんしょう、さぁエントマも一緒に♪」
「ありがとうございますぅシャルティア様、おめでとぉございます~」
上機嫌なシャルティアに迎え入れられ俺達三人はクラヴゥから赤黒いカクテルを提供される、その際彼からどこか感謝している様子を感じ取ったのでそれとなく身振りで返しておいた。
「それでは輝かしい私達の未来への一歩を踏み出した今宵に感謝を」
シャルティアの音頭に合わせ掲げられたグラスを合わせてカクテルを口に含む、混然としている見た目なのに謎の技術によって均整が取れているカクテルはやはり最上の味であった。
それにどこか苦みを感じたのはアインズのフォローをどうしたものかという考えからきているのだろう。
「あぁ、勝利の美酒がこれほどまでに美味とは……先程の一時もまさに至上なる時間であったでありんすし、思えばアインズ様の素晴らく美しいあの-」
「シャルティア様、詳細については胸に秘めておいて頂きたく、そちらはお二人だけの貴重なものですので」
その言葉にシャルティアは現実に引き戻されるも程なくその顔はだらしなく緩んでいく、そしてそれを見たエントマが何かを漏らした。
「どうかしんしたかエントマ?」
「いえ~此度のこと祝福したい気持ちの反面、どうしてもシャルティア様が羨ましく思えてしまいましてぇ」
「それはもう……ってエントマもアインズ様のご寵愛をお受けしたいんでありんす?」
エントマの言葉に驚き興味を抱くシャルティア、その様子から俺は悪い予感を拭いきれなかった。
「いえ、私はロータス様と番いになりたくてぇ」
先程の言葉よりも明確に告げられたことに固まり、そんな俺の様子に何かを企む様なシャルティアの視線が注がれる。
「エントマ様、私としては大変に光栄なことなのですが陛下のご許可は勿論、現在の私の状況からしましても難しく……」
「あら良いご身分じゃありんせんかロータス、エントマを袖にするなんて少し増長しすぎじゃありんせん?」
刺す様な視線がシャルティアから注がれる、彼女の立場からすれば仲間の想いが実らないというのは看過することなどできないだろう。
「先程ご説明した通り番いになるとしても先ずは陛下に報告と説得が必要です、そして仮に認められたとしても私は現在人間の雌と夫婦として業務を行っています。その状況ではエントマ様と表向きに番として振る舞うことができないのですよ?正直言って私はその様な状況を認められるとは思いません」
「私としては全然構いませんよぉ」
エントマの言葉に虚を突かれ俺だけじゃなく二人も驚いた様子を見せる、正直現地民を見下しきっているナザリックにおいて彼女がその様な考えを持っているとは思いもよらなかった。
「ロータス様の行動からあの雌にご寵愛をお与えになっていることは理解していますしぃ、私としても全ての人間が一様に愚かだとは考えてませんからぁ」
「えぇ?そんなことあり得るでありんすか?」
「まあ確かに外の者共は至高なる御方々に創造していただけなかった哀れな者たちという思いは当然ありますよぉ?でも私はそんな者たちの中の一人から手痛い目に合っておりますのでぇ」
自らも手痛い目に合ったことがあるシャルティアはたじろぐ。
エントマもそういったことがあったとは聞いていなかったがそれによって心境の変化があったのか、他のシモベよりも柔軟な考えを持っていたエントマの言葉に驚きつつ彼女の話しを黙って聞く。
「それにぃアインズ様が見出したシズの友達を見ていて思ったんですぅ、外の者共も導き方次弟では私達でもできない様な成果を上げることができるってぇ、相応しい者がどれほどいるかはわかりませんけど、私の様な不才なる身が慢心して侮ってしまうとまたしっぺ返しされてしまうやもしれませんからぁ」
その意見に考え込むシャルティア、ナザリックのシモベとしては異質な考えだが、これをアインズに報告すれば喜んでくれるかもしれない。
アインズを立ち直らせる手段を一つ見つけた俺が少し安堵していると、エントマが俺の隣に移動してきた。
少女然とした振る舞いに庇護欲が掻き立てられるも、身を寄せてくる彼女に思わず身体を逸らしてしまう。
「どうされましたエントマ様?」
「やだわロータス様ぁ、私はメイドですのでそこまで畏まらなくても良いのですよぉ?」
より積極的な振る舞いを見せるエントマにどうしたものかと考えを巡らせるも、隣に過激思想のシャルティアがいることからそれを踏まえた上手い振る舞いが思いつかなかった。
「エントマのそんな姿を見ることになるなんて正直思いもしんせんしたわ」
「だってぇさっきソリュシャンまでロータス様に手を出そうとしてたんですよぉ?しかも私がお慕いしているって言った後なのにぃ」
腕を絡ませながら可愛らしく怒りの言葉を上げるエントマを未だどう扱うべきかと思案しつつカクテルを飲む、それとなくクラヴゥに救いを求めるも目を逸らされてしまった。
「おやおや、そんなことになっていたでありんすか。働きについては認めんすけど隅におけなくなってきたでありんすねぇ」
粘つく視線を感じ取ったエントマが更に身を寄せ、服越しに感じる胸殻の感触に戸惑い蟲人に性的欲求を感じている自分に動揺する。
種族変化によって性的嗜好も変化しているのだということについても考えたかったが変動していく状況にただ流されることしかできない。
「え~シャルティア様もロータス様にお手つきしたいんですかぁ?」
「単純にこいつの働きに対する褒美というだけでありんすよ、幸い今の見た目についてはギリギリ合格点でありんすから多少の慈悲は与えても問題ありんせんでしょう?」
舌なめずりするシャルティアに内心辟易する。
「シャルティア様ご冗談でも止めて頂きたく、そんな事になればいよいよもって陛下の覚えが悪くなりますので」
「あら?私は一言も私が直接手を出すなんて言ってないでありんすよ?相手は当然私のシモベに決まっていんしょう、まあ褒美なのだからしっかり満足できる様に私の眼の前で楽しんでもらいんすが」
からかうシャルティアにやり返したい気持ちこそ浮かぶが、面倒になる未来しか見えずため息を零すことしかできない。
既に帰りたい気持ちでいっぱいだが、少なくとも転移門を使用できるシャルティアを満足させるまでは無理だろう。
「それじゃぁシャルティア様からもアインズ様にお話しをお願いしますぅ、今回の褒美はそれということで!」
「それは勿論協力しんすわ、ロータスもそれで構いんせんね?」
「……ええ、過分なる幸福にこの身も震えております」
外堀を手早く埋められていき、俺は疲労感から考えることを放棄して流れに身を任せた。
二人は俺を挟んで少女の様に姦しい会話を繰り広げ、気を使ってクラヴゥが出してくれた果実の甘味だけが俺を癒やしてくれた。
エントマスケベへの道筋は整った