※この作品はR-18です。

孤独の蟲王   作:cas_mi

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無邪気な天使

「はぁー」

湯船に浸かるとその心地良さに思わず声が出てしまう。

 次から次へと本当に疲れた、しかし結局の所全ての問題において元を辿ると自分自身に行き着いてしまうのでやるせなさは一入だ。

「何処で間違えた」

 浴場の遠い天井を見つめながらぼんやりとつぶやくも、全ては僅かな余裕を感じた瞬間に仕返しを企んで行動した自分に落ち度がある。

 だからと言って結局全ては痴話喧嘩に巻き込まれたことが始まりであり、どうしても淀んだ思いの行き場がなくなってしまいもやもやとした感情になってしまう。

 あちらでは経験できない程に豪華で巨大な浴場を楽しみ、何とか自分を慰めるもどうしても流されて振り回された現状に不満を抱いてしまうのは止められない。

 そしてそれは切り替えようと考えれば考える程深みにはまっていき、たどり着いた答えは結局思考の放棄だった。

 どの道悪い話しではないのだ、ナザリック内で好意的に見られ、なおかつその中でも近縁種族の可憐だと感じる異性に見初められた、何の問題もない。

 だが納得ができないというだけでそれを払拭することは今の自分には贅沢なものだと切り替えることにした。

 

 あの後ソリュシャンがバーに戻ってきて会話の姦しさは更に増していき、俺は何とか軌道修正を試みるも失敗。

 クラヴゥの無言の気遣いが一層身に染みた。

 方向性としては俺が最初にアインズに報告し状況説明、その後あの三人がアインズを説得するという形で着陸した。

 しかしそれをいつ行うかという話しになり、こういうものは迅速に動くべきというシャルティアの言葉から行動はアインズが私室から出てきたらすぐにということになった。

 この話しはいつの間にかアルベドにも伝わっており、彼女も協力的な様子であった。

 結局の所男というものはどの世界に行っても力を持つ女には振り回されるということだ。

 今はそんな虚しさも湯船から香ってくる柑橘系の香りが癒やしてくれる。

 壁を隔てた向こうからは変わらず姦しい声が聞こえてきたがその内容を聞く気にはとてもなれない。

 今はただこの疲労感の払拭を優先したかった。

 

……

 

 手持ちのシーツをトーガ風に巻いて休憩スペースで果実水を飲む、爽やかな甘みが口内に広がっていき幸福に抱かれる面持ちだ。

 三人はまだ入浴を楽しんでおり、俺は一足先に上がるもまだこの階層の詳細は知り得ず、無断でうろつく訳にはいかなかったのでただ待つことしかできない。

 だが今はこうして何も考えずにぼんやりと過ごすことが何よりも救いになった。

「あれ?ロータスじゃんどうしたの?」

 その言葉に身体を起こし振り向くと驚いた様子のアウラが立っていた。

「シャルティア様の件で色々ありまして、その対応が完了しましたのでこちらのスパリゾートを利用させて頂く名誉に預かりました」

「あーシャルティアの……大丈夫だった?」

「食卓を木くずに戻され頭部を破壊されましたが何とか、まあ、無事です……想像以上に疲れましたが」

 投げやりにそう告げるとアウラはため息をついて隣に座った。

「ごめんね新人のアンタに任せちゃって、本当なら私達がどうにかできたら良かったんだけど理由が理由だったし、どんどん塞ぎ込んでいくアイツを見てたらもうどうしたら良いかわからなくなっちゃって」

 

 そう告げるアウラを見ると安堵と申し訳無さが混じった表情を浮かべていた。

 俺はその優しさに溢れた気遣いに込み上げてきた想いを何とか押し込めて取り繕う。

「いえ、そもそも原因は私にありますので、命惜しさに陛下とアルベド様の距離を詰めて、問題解消の為に勉強会を提案したのも私ですから。言うなれば今回のことは私の浅慮が故引き起こされた問題ですので」

「勉強会もアンタの提案だったんだ!アレ凄い助かってるよ、領地運営の観点から見ると担当している警備網の問題点も見えてきて、既存のものも自信があったんだけどお陰で更に良くすることができたんだよね!」

 純粋に楽しそうに語るアウラを見るとやるせなかった思いがどんどん解きほぐされていった。

「お役に立てたのなら提案者としても恐悦至極です、今後も魔導国の為にもがんばりましょう」

「そうだね!……でも今回の件は本当に有難う、私じゃどうにもできなかったから助かったよ」

 そう言ってアウラから手を差し出され、それを優しく握り返せば子供らしい爽やかな笑みを浮かべた。

「お言葉有難く、今後も皆様がより良く過ごせていけるよう努力致します」

「うん!よろしくね!」

 

 先程まで共に居た女性陣からは一様に情欲の混じった視線を向けられていたので、その純粋な笑顔はあまりにも眩しく荒んだ心が癒やされていくのを感じた。

「やはり子どもは欲しいな」

「子ども?」

 思わず本音が溢れてしまい焦る。

「あ、いや、アウラ様の純粋な笑顔を見ているといつか我が子を抱く日が待ち遠しくなり……」

「ああ、エ・ランテルで夫婦生活してるんだっけ?そっちは順調?」

「そうですね、住民たちにも受け入れられはじめ-」

「そっちじゃなくて夫婦仲のことよ、仕事とはいえ夫婦として過ごしてるんでしょ?そんなこと零すくらいだからちょっと心配になっただけよ」

「夫婦仲については自分で言うのも憚られますが非常に良好ですよ、いつか彼女との子を授かれれば良いのですが」

「それならいつかきっと抱き上げる日も来るよ、ロータスががんばっているのはアインズ様もお認めになっているんだもの、てことはその願いは叶えられるってことよ」

 そう言うとアウラは立ち上がってこちらを向き直って顔を近づける。

「いつかロータスの子どもができたらアタシにも抱っこさせてよね、きっと貴方と同じ優しい子の筈なんだから」

 その言葉に涙が溢れそうになる、蝗人の複眼に涙腺がなかったことを感謝することになる日がくるとは思えなかったが、それほどまでに今の俺には彼女の気遣いが骨身に染みた。

 

「有難うございます、アウラ様……もし我が子が生まれましたら陛下の次にはアウラ様にご報告させていただきます、その際はマーレ様とご一緒に我が子を抱いて頂きたく」

「うん、楽しみにしてるよ!それじゃあアタシは仕事前に少し汗流したいからまたね!」

「ええ、また」

 小走りで浴場に向かうアウラを見送ってから俺は再びソファーに身体を預け両手で顔を覆い肩を震わせた。

 




アウラは周りがよく見えて動けるけどまだこどもなので上手く立ち回れません、でも彼女が成長して立ち回る能力を身に着けた時、ナザリックで一番苦労するのは彼女なのでは的な妄想
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