「君は、どこから来たのかね?」
悪魔の声には僅かながら困惑が込められていた、彼も恐らくはこちらの実力を把握しているのだろうか。
「故郷カラ、トダケ……気ガツクトコノ地ニオリマシタ。状況ヲ把握スル為飛行シテイマシタ所、コチラノ牧場ヲ発見致シマシタノデゴ挨拶ニ伺イマシタ」
「そうか、隠蔽魔法をかけていたのだがやはりそれだけでは不十分か……後で対策を練りましょうか」
悪魔がプルチネッラの方を見れば彼は一礼し牧場の中へと戻っていった。
「恐レナガラ発言ヲオ許シイタダキタク」
「よろしい、許可します」
「ハッ、上空カラ見タ際私ハコチラノ牧場ヲ後ロ暗イ者ノ隠レ里カト思イ伺イマシタ。建造物ノ多サニ比ベ畑ハナク、牧場ニ続ク道モ見当タラナカッタ為デス。ナノデ山ニ向カウ道ト偽装シタ坑道ヲツクラレテハ如何カト愚行致シマス」
「なるほど、良い考えだね」
「作業ニハ牧場ト関係ナキモノヲ用イルト更ニ良イカト」
その言葉に悪魔は興味深そうな素振りを見せた。
「ふむ、それは何故かね?」
「牧場ノ者ニ希望ヲ持タセル為デス、希望ヲ抱カセタ者ヲ貶メルノハ良キ肴ニナリマスユエ」
「ほう」
悪魔は満足そうに笑みを浮かべる。
まだどちらかは分からない、だがプレイヤーではない可能性が高いか?あれだけの悲鳴に満ちた場所を牧場と宣うのはあちらでもそう多くはなかった。
まだ焦っているのか?落ち着け、落ち着けば活路は見いだせる筈だ。
「正直感心しましたよ、趣味と実益を兼ねた良い提案です。だからこそ分からない、貴方は比較的頭も回るし実力もお有りだ。それが何故その様な行動を?」
「……コノ牧場ヲ拝見シ、貴方ヲ見タ瞬間ニ至高ナル御方ガ見エタノデス。カノ御方ヲ前ニスレバ私ハ塵芥、頭ヲ垂レ慈悲ヲ頂クコトコソ最モ正シキ判断ト愚行致シマシタ」
賭けではある、だが返答次第ではプレイヤーかNPCか判断がつく。
そう思い悪魔を見れば僅かな動揺、そして喜びに口元を綻ばせた。
「素晴らしい!まさしくその通り!貴方の行動は非常に、ええ非常に正しいものです」
悪魔は歓喜に打ち震えながら手を差し出した、俺はその手を取って立ち上がる。
「さて、牧場の見学をご希望でしたね。私自ら案内致しましょう、無論機密の問題もありますから全てを教えて差し上げることはできませんが、きっと楽しんで頂けると思いますよ」
「ゴ慈悲アル採択ニ感謝致シマス、先程プルチッネラ様ニ土産ヲオ渡シシマシタノデゴ活用頂ケレバ幸イデス」
「ええ、精神安定系のアイテムでしたね。是非有効に使わせて頂きますとも……おっと私としたことが」
そう言うと悪魔は身なりを整え一礼する。
「私はこの牧場の代表を任されているデミウルゴスと申します、以後お見知りおきを」
「ゴ丁寧ニ感謝致します。私ハサクパント申シマス、宜シクオ願イ致シマスデミウルゴス様」
「ええ、よろしくお願いします。個人的には貴方と良い関係を築けることを期待していますよ。さあ早速行きましょうか」
「ハッ」
俺はデミウルゴスの後に続き牧場の中へと向かう、魔将は彼が目配せすれば俺達から少し離れた位置から後に続いた。
何とか場を乗り切ったことで僅かに安堵するも再び気を引き締める。
恐らくだがデミウルゴスはNPCである可能性が高いだろう。あの喜び様は上位者に認められたか、その威光を称えた為か、いずれにしても彼がプレイヤーである可能性は低いと思う。
もしプレイヤーだったとしたらかなりの狂人であろう。
そして彼がNPCだということはここの支配者はやはり拠点ごとNPCを引き連れてきたプレイヤー、それも魔王ロールプレイをする様な者たち。
それに一瞬背筋が凍る様な考えが浮かびそうになったがすぐにそれを振り払った。
いくらなんでも荒唐無稽が過ぎたからだ。