休憩所の壁を破壊しながら吹き飛ぶも体勢を立て直し構える。
スキルによるものと思われる予感に従い回避行動を取れば、漆黒の全身鎧が斧を叩きつけてきた。
避けた先は既に高位階の魔法が展開されており、韋駄天の足輪を発動させ広げた羽を焼かれながらも何とか回避する。
危機察知のスキルが今までにない勢いで発動し、導かれる様に攻撃を回避しつつも敵対者を確認する。
形態変化したデミウルゴスに三体の魔将と全身鎧、他に高レベルモンスターも多いがそれだけなら逃げ切るという一点のみであれば問題ない。
だが離れた箇所で立っているアレが参加すれば間違いなく逃走が困難になる、用意した経路をさっさと使用するのが得策だろうがアインズ・ウール・ゴウン相手となると。
「ちょこまかと!」
全身鎧から殺意と憎しみが込められた女の声が発せられると同時に俺は武器を捨てて叫ぶ。
「敵対ノ意思ハナイ!私ハ対話ヲ望ム!アインズ・ウール・ゴウンノ代表者ニ会イタイ!」
「貴様の様な存在をアインズ様にお会いさせるわけないだろうがぁっ!!!」
全身鎧は絶叫しながら攻撃を繰り出すが精彩を欠いており回避に問題はなかった、しかし他の者と比べ発せられる憎しみと殺意の濃さがあまりにも異常だ。
「逃走手段ガナイトデモ思ッテイルノカ?ドチラガアインズ様ノ為ニナルカ考エロ!」
その言葉にようやく攻撃が止み、俺は畳み掛ける様に叫ぶ。
「転移阻害ノ対策ヲシテイナイトデモ?単純ニ速度ダケデ逃走スルコトモ可能ダ!私ハ対話ヲ望ム!」
「貴様ァッ!!!」
「落ち着いてくださいアルベド!」
斧を振り上げた全身鎧の狂信者をデミウルゴスが止める。
「無論対価ハ捧ゲル、アインズ様ト直接対話デキルノナラ私ガ所有スルワールドアイテムヲ譲渡スル」
その言葉に全員一様に動揺を示す、一人だけ過剰に反応する者がいたが後回しだ。
「さくぱん殿、君はギルドとしてのアインズ・ウール・ゴウンを知っているね」
「エエ、少々縁ガアリマシテネ。マサカコノ地ニ来テ初メテ接触スルノガアインズ・ウール・ゴウンノ者ダトハ思イマセンデシタヨ……本当、神ニ弄バレテイル気分デス」
そう話しながら俺は装備を外していく、少なくとも完全に武装解除しなければ信用は得られないだろう。
「縁か、差し支えなければ教えてもらっても?」
「単純ナモノデスヨ、数十倍ノ戦力ヲモッテ挑ンデ鏖殺サレ、心ヲ折ラレタダケデス」
そうして無限の背負袋に登録していた全ての武装を解除し、その場に広げたところで腕を広げる。
「サテ、コレデ私ノ持ツ武装ハ全テ解除致シマシタ。コレデモゴ不満ナラ腕ヲ切リ落トシテ頂イテモ」
言い終わる前に全身鎧の狂信者が止める間もなく二対の腕を切り飛ばした。
「ッ!」
感じたことのない痛みに叫びそうになるが堪える、人間であれば致命傷であろう欠損もこの身体であればまだ問題ないと感じる。
「アルベド!」
デミウルゴスが咎める様にアルベドに向かって叫ぶも兜から見える眼光は未だ憎悪を感じさせ、それに何処か違和感を覚えた。
「分かっているわデミウルゴス、でもね、得体の知れない輩をアインズ様の御前に連れていくのよ。たとえ僅かでも可能性は徹底的に排除すべきよ」
「それは、勿論その通りですが」
アルベドの行為にデミウルゴスは僅かに不満を抱いた様であった。
「構イマセンデミルゴス様、至高ナル支配者ニオ会イスルコトヲ考エレバ当然ノ処置デスカラ。モシゴ慈悲ヲ頂ケルノデアレバ傷口ヲ焼キ塞イデ私ノ装備品ヲ管理シテ頂キタク」
「……そうだね、丁重に管理させてもらおう」
笑顔を浮かべたデミウルゴスは人間態に戻ると魔将に指示を出し、応急処置を行い装備品についた体液を拭き取ってからどこかへと運んでいった。
「ソレデハ、イツ頃アインズ様ニオ会イ出来ルノデショウカ」
「間もなくいらっしゃるわ」
アルベドがそう言えば眼の前で転移門が展開されそれぞれが膝をつく。
さて、一体誰が出てくるか……面識か情報を持っているプレイヤーであればありがたいが。
転移門からゆっくりと出てくるのは濃厚な死の気配を携えた死の支配者。
ギルドマスター直々の登場に俺は内心笑みを浮かべた。