荒れ地に咆哮や肉の裂ける音が響きわたる。数十人の奴隷傭兵たちが剣戟を交わしている。演習ではない。実戦だ。ただし、戦術的価値のない、どちらが勝手も歴史に一切影響をもたらさない喧嘩未満の戦争である。
剣姫庭園と魔導森林の国境沿い。ガロッゾ城塞から北部の地で、その戦闘は起きていた。
領主どころかギフトホルダーの姿もない。亜人さえ見当たらない。命を奪い合うまでに発展した戦いの口実に剣姫庭園と魔導森林という名前を使っているだけで、これは奴隷傭兵たちによる私闘の延長戦だと言えた。
始まってしまえば、もはや歯止めは利かない。既に双方に死者が出ている。身内を殺された怒りはやがて風化はすれど、今一時戦いに没入するだけの後押しには十分すぎた。
入り乱れた乱戦で、刻一刻と死者が増え続ける。無意味な死を止めるため、彼女は戦場に姿を見せた。
修道女ルクレティア。
七女神ではない神を崇拝する、流転教の修道女だ。黒を基調とした修道服が細身を包んでいる。、両眼を閉じ、両手を祈りの形で組み合わせ、花びらが風に揺れるように、唇が何事かを紡いでいる。死者を悼んでいるようにも見えた。
甲高い音が戦場の各所から鳴り響く。向き合った奴隷傭兵の間に、不可視の結界が出現し、互いの剣戟を防いだのだ。
ルクレティアが――否、彼女が属していた流転教会が得意とする専守防衛の、『拒絶』の魔術だ。戦いを止め、自己を守ることに特化している。位置や座標に対して結界を敷いたのではなく、この戦場に集う全ての兵士の、間に暴力結界を発生させた。この魔術が発現した時点で、奴隷傭兵はこの戦場において戦闘行為そのものを禁じられている。
結界を挟んでにらみ合うのが関の山だ。
パン、とルクレティアが両手を叩く。奴隷傭兵たちの視線が彼女に集まる。視線にはねばつくような、雄が雌を値踏みする欲望があった。命の取り合いのその直後だ。無理はなかろう。ルクレティアは視姦にも近い男たちの眼差しを瞑目ひとつで一蹴する。
「疲れておいででしょう。パンと葡萄酒であればお出しできます。まずは英気を養い、それから輩を埋葬してあげませんか?」
ルクレティアが謳うように諳んじる。男たちはそれで、自分たちが殺し合いの最中にいたのだと思い出したのか、斬り合っていた相手をそれぞれが睨み出した。だが、一度、機を外された後の殺気など、真面目に出そうとすればするほどに滑稽で無様だ。
誰かが笑いを漏らすと、周囲に感染していってやがって、多数の死者が横たわる戦場に爆笑の渦が巻き起こる。
もはや、彼らの戦いの動機を憶えている者などひとりもなかった。
笑いが収まると、彼らは既にただひとつの一団のように、ルクレティアの前に立った。パンや葡萄酒は戦に疲れた体にはありがたろう。だが、それ以上に肉欲が彼らを動かしている。そんなことは神に純潔を誓ったルクレティアとて知っている。
一小節の祈りを唱えると、戦場が影で覆われた。ルクレティア以外の全員が空を見上げた。静寂の中に、絶句がそこら中で起きた。
機動教会。流転教会の宣教師が保有する、大型の魔道具である。
外観は都市ならどこにでもある教会そのものだ。それほどの大質量が空を飛んでいるというだけで、言葉を失うのは当たり前である。
保有者の、この場合はルクレティアの魔力を動力として浮遊し、生死を問わず奴隷傭兵たちを避けるように移動し、そして――着陸する。音は響かない。ルクレティアが日々の修練で得た繊細な魔力操作の賜物だ。
眼前の光景に動きを止めた奴隷傭兵たちの間を縫って、ルクレティアは機動教会の扉にまで歩を進める。生き残った奴隷傭兵の数は二十程度。このくらいなら全員をもてなすくらいの広さはある。
「繰り返される戦乱の中、主の威光が届くここでは暴力は厳禁。ただそれだけを守ってくだされば、粗酒粗餐とはなりますが、歓待いたします」
ルクレティアは祈るように手を組んで、奴隷傭兵たちを教会へと誘った。
機動教会は外観だけでなく、内装も一般的な教会と変わらない。正面入り口から入れば、主の御子が身罷った姿に寄せた偶像が出迎える。
複十字。横一文字に縦二本で作られた十字であり、流転教会のシンボルでもある。複十字に磔にされた御子を偶像にしたものだ。縦二本の上下それぞれの頂点に、御子は四肢を釘で打たれ磔にされている。
民衆が祈りの際に腰掛けるための長椅子が左右に多数並んでいる。中央の道を辿り、ルクレティアは偶像に一度祈りを捧げると、奴隷傭兵たちに振り向いた。偶像から見て左、入り口から見て右側にある扉を指し示す。
「そちらが食堂になっています。全員分の席はありますので、少々お待ちください」
ルクレティアはそれだけを告げると、自分は偶像の裏側にあるキッチンへと向かった。
用意を終えて食堂に入ったときには、奴隷傭兵たちは落ち着かない様子で、だが大人しく席に座っていた。祈り働く人々が訪れ、住まう教会という場所に、死と血の臭いを纏ったままでいるのがどうにも気になるらしかった。
ルクレティアは彼らの前に、パンと葡萄酒を並べていく。ひとり、ふたりと手伝いを申し出る者が現れ、彼女は快くそれを了承した。
空腹だったのだろう。奴隷傭兵たちは葡萄酒を飲み干すとパンを美味しそうに食べていく。パンを焼くのはルクレティアの日々の労働だ。彼らの飢えを満たすには十分過ぎるほどにある。
やがて彼らが満腹になり、酒で赤ら顔になった頃、ルクレティアは上座に立って、彼らに言った。
「流転教会の教義はひたすらに複雑で解釈も難しい箇所もありますが、基本的な部分は極めて単純明快です。即ち――祈れ。働け」
元来は最後にある、「地に満ちよ」を省いて、彼女は言った。
祈れ。働け。それはつまり――食べたら働け、というルクレティアなりの、彼らへの労働の打診である。
「まずは皆様の輩の埋葬をお手伝いください。そして、南西にも戦場跡がありまして、こちらにも多数の遺体があります。食事と寝床はその労働への対価です。皆様のお働きに期待します」
騙していると言えば騙しているのだが、これまでルクレティアは奴隷傭兵たちに暴動を起こされた経験はない。暴力結界は有効で、仮に奴隷傭兵が決起したところでルクレティアを襲うことさえできはしないが。
そうして。
数日が経った。
強制的にやらせた朝晩の祈りだが、三日目には全員がそれなりに暗唱できるようになっていた。姿勢も様になっている。遺体埋葬の労働を終えた彼らとは今日でお別れだ。
「皆様。これまで本当にありがとうございました。皆様の善意を、主は必ずや見ています。そして――お別れの前に、ご希望者には疑似洗礼をさせていただければと存じます。時間も要しませんが、その代わり効果もたいしたことはありません。ほんの僅か――ひとつやふたつ、不運を退けられる程度です」
強制はしなかった。だが、奴隷傭兵たちは誰もが疑似洗礼を望んだ。手順は単純だ。名を尋ね、相手が答える。祈る相手の両手に、ルクレティアが一滴の油を垂らす。それだけだ。
前途を祈るだけの、挨拶のような儀式である。儀式を終えた者がひとり、またひとりと教会を後にしていく。
奴隷傭兵に疑似洗礼を受ける意味はない。だが、ルクレティア側には確かにあった。名を知り、洗礼を与えた相手の生死を、彼女は知ることができるのだ。
宣教師になって半年。疑似洗礼を与えたのはおよそ千人だ。今も存命の者は三百人ほどしかいない。戦闘を止めるまではいい。少なくともそこで死ななかった以上、生存率の上昇に寄与はしただろう。だが、それ以降はわからない。奴隷傭兵の生存率など誰も統計をとってもおらず、よってルクレティアは笑顔でこの教会から去った彼らに、この数日の労働がどの程度意味があったのか知る術はなかった。
最後のひとりになった。ルクレティアは意図的にこの男を最後に残した。気取られぬよう、彼女は祈りながら一小節唱えた。機動教会が音もなく浮遊を始める。この男に、逃げる場を与えないために。
「名を」
「フェルター。姓はない」
受け答える姿も、他の奴隷傭兵とさしたる違いはない。否――あるとすれば、他より祈りの仕草の取り繕いに長けている。他の奴隷傭兵たちはそれぞれが不器用で、祈りの仕方には間違いが見受けられた。ただ、代わりに祈りには切実なものが感じられ、だから多少の失敗は愛嬌にさえ感じられた。
だが、この男は違った。所作に誤りはない。同時に、祈りが限りなく空疎だ。主を信じていないるいないの話ではなかった。祈るに足る故が不足している。
ぐつぐつと、火山のように彼の中には煮えるものがあった。怒りだ。そして憎悪だ。人型に形作られた呪詛の結晶。こんな人間が、人の世にあってはならない。
ルクレティアはフェルターへ疑似洗礼を終える。外に出ようとすれば、機動教会が浮いていることを伝え、地面に降ろそう。そうでなく、ふたりきりで彼女に襲いかかろうとするのであれば、ここで仕留める。
流転教会の教義は難解だ。基本的には罪人でも救済すべきだという教えがありながら、同時に悔悛を迫る拷問吏を擁している。主にならともかくとして、人には救えぬ不世出の魂は、教義において外法だろうと裁く必要がある。
その在り方に、かつてルクレティアは納得できなかった。機動教会を用いて旅をして、彼女は納得した。主が与える試練としても容認できない悪行が、この大陸には蔓延っている。
聖職とはいわば、善行を重ねて死後の救済を願う者だ。その中で、死後の救済を捨ててまで悪心を殺す者。審問官と呼ばれる彼らこそ、滅私の聖者だと今のルクレティアは知っていた。
「……は。いいな。俺を殺す気じゃないか。それほどまでに俺が、この世の汚穢を煮詰めたような生き物に見えているか?」
フェルターが自嘲気味に嗤う。
「ええ。あなただけはこの三日では何も変わらなかった。――今、機動教会は高空に浮いています。あなたを殺す覚悟は固めました。ですが――願わくばあなたが懺悔し、その爛れた魂が少しでも良くなるよう、全霊をもって努めたいと思います」
――主よ、見守りたまえ。
ルクレティアは祈りをして、それからフェルターに向き直った。殺すと言っても、審問官に憧れてはいても、彼女自身は宣教を許されただけの修道女である。彼女にできるのは説諭を除けば我慢比べだけだ。
今、機動教会は高空にあり、同時に暴力結界が敷かれている。よって、教会内部からは出られず、戦うことはできない。奴隷傭兵たちに振る舞い、日々の糧は失われた。
強いる刑罰を自らにも与えるルクレティアなりの免罪の儀式だ。
「告解ね。……別に昔語りをするには吝かじゃあないんだが。肝心なところを憶えちゃいないんでね。意味が通るかどうか」
「構いません。半生を見つめ返す機会にはなるはずです」
思いもよらず、話に乗ってきたのを見てルクレティアは驚きつつも答えた。
「そうだな……」
彼は思案するように視線を天井にくゆらせる。それから、しばし待つと、小気味よい調子で語り始めた。
むかしむかし。オークの王と呼ばれる一匹のブタがいました。
彼にはほとんど記憶がありません。
それどころか、人が持つ意識――自我のようなものもありません。
生殖衝動に支配され、雌を犯すだけの獣でした。
ただぼんやりと、言葉にすれば「終わりにしたい」というような願望だけを持っていました。
長い長い暗闇でした。
どこまでいっても何も変わりませんでした。
無抵抗の、なにひとつ悪いことをしていない娘を、腐肉になるまで犯しました。
ブタの王には感情なんてありません。
悲しくもないし、悔しくもないし、寂しくもないし、喜びもまたありません。
犯し抜いて腐った娘からペニスを引き上げる瞬間だけ、ブタの王は空に吠えます。
なんで吠えたのか、当人だってわかりません。
網膜に映る、自分をブタの王に変えた七名の女の哄笑だけが聞こえてきます。
なんで自分がブタの王になったのか、彼は知りません。知らないということさえ知りません。
そんな風にただ彷徨し、やがて千年の月日が経ちました。
ブタの王は、ある女に出会います。
女は自分が八番目の女神だと名乗ると、ブタの王の衝動を鎮め、正気を与えました。
彼はこうして千年の記憶と、自分の名前だけはなんとか取り戻すことができました。
けれど、千年の記憶を自己という漏斗に通しても、出てくるのは憎悪だけでした。だから。
「俺は七人の女神と世界への復讐を誓って、唾王となり、ギフトホルダーを犯し辱め奴隷にしている。全ては七女神を倒すために」
告解を終え、フェルターは薄く嗤うと、ルクレティアに感想を求めるように手を差し出した。
壮大――というか、醜悪なお伽噺を聞かされたような気分にしかならない。
ただ、分かっているのはただひとつ。この男が奴隷傭兵に混ざっていたのは偶然ではなく、彼女の存在をどこかで知って張っていたのだと確信する。
「あなたの告解、承りました。あなたが世界を憎む理由は理解できました。ただ、この世界に生きる者としてあなたを肯定はできません」
祈るように手を絡め、ルクレティアは眼前の男を真っ正面から見据えた。
「機動教会で相手を閉じ込め、暴力結界で互いへの手出しは無効――まあ、如何なる手をもってでも相手を仕留めるってなら悪くない手法だな」
状況を克明に理解しつつも、フェルターの表情に恐懼の色は欠片もなかった。それどころか余裕さえ窺える。何故、とルクレティアは自問する。決死のこの機動教会一基をとルクレティアの命を犠牲にする策は、領主クラスのギフトホルダーでさえ必ずや討ち取れる。
「まず第一に、俺は並大抵の手段では死ねん。流転教会秘蔵の機動教会だが、動力である魔導炉の出力はそれほどのものじゃない。吹っ飛ばせるとしても村ひとつがせいぜい。滑落の衝撃が加わるとしても俺を殺せるほどの威力にはならないな」
「バカな。騎士型のギフトホルダーであろうと――」
そこで、ルクレティアは思い出す。フェルターの告解を。
オークの王。
亜人種が一、オーク。比類なき自己再生能力を持つ、雌を犯すことに特化した魔性の生物。首を切り落としたとしても、首が癒着すれば復活するほどの生命力を持っている。千年生きたという述懐が事実であれば、その再生能力は並大抵のオークとは比較にならないだろう。
愕然とするルクレティアの前で、フェルターは余裕の笑みを浮かべ、唐突に腰ばきを降ろした。ルクレティアの腕ほどにある陰茎が、天を貫かんばかりの勢いでそそり立っている。
「なにを……っ」
初めて見る男性器に、ルクレティアは戦慄した。先走り汁先端を塗らしており、彼女を犯す準備が整っている。
「いや、なに。流転教会の教義については調べたんでな。気になっていることがあってシスターにご教示願いたくてね。姦淫と自殺。どちらかしか選べないなら、どちらを選ぶのが正しいんだ?」
フェルターがにじり寄ってくる。彼の顔ではなく、ルクレティアは屹立した陰茎を凝視してしまう。意識的に視線を切って、フェルターの顔に向き直った。そんな些細な心の動きを見透かしたように、フェルターは鷹揚にうなずく。
「暴力結界があるのをお忘れですか? それに――確かに自殺は禁じられている。けれど、今の私は異端を誅するために異端に落ちる覚悟を持ち合わせています。あなたに犯されるくらいなら――あなたが死なないかどうか、試してもいいんですよ」
異端をもって異端を殺す。それこそが、ルクレティアの知る異端審問官の在り方である。
自分に言い聞かせるように、ルクレティアはフェルターに警句を促した。そうだ。これは自殺ではないし、だから姦通を――それも強姦をされる心配はない。
「は。語るに落ちたな。前者がありゃあ、後者をわざわざ口にする必要はねえ。暴力結界――これば対人暴力結界だな。物体の破壊は可能。食事ができた以上、破壊はそもそも範疇に入っちゃいない。パンと壁を別つものは生命か否かくらいの区分でしかない。だからお前は機動教会を滑落させて破壊が可能なわけだ」
フェルターが悠然と一歩近づいてきた。ルクレティアは二歩下がった。
「で、どうして犯される心配をしたのか? 暴力結界はあくまで暴力を禁ずるもの。お前に戦闘能力はないし、俺はお前に暴力を使う必要なく、犯せる。逆にお前は抵抗できない。お前が俺に抗うには暴力を使うしかないからな」
フェルターの発言は正鵠を射ていた。実証をしたわけではない。だが、性交と強姦の差異など互いの心持ち次第に過ぎない。姦通を禁ずるのが不可能なわけではないが、暴力結界と併用はできないし、新魔術の構築には長い時間を要する。
「参りました。これではどうしようもありません。愚かな女とお笑いください。あなたという悪心を罰することもできず、ただ、主に見捨てられる自殺をするしかない私を」
最後に残った理性を総動員して、彼女はせめて汚される前に機動教会を滑落させて自爆しようとした。――だが。
「俺の話を聞いてなかったのか? 機動教会を落として俺に危害を加えられる。――つまりだ。俺が何かを破壊した結果、お前が動けなくなったとしてもそれは暴力の範疇に含まれない。そうだな。俺は主の御子とやらのあの石像が気に食わんから今から壊す。それが、お前に当たっても仕方がないよな?」
あ、とルクレティアはフェルターの言葉の意味を理解して、膝から崩れ落ちた。自分の作った策の陥穽を突かれた。暴力結界と逃れられない高空度からの自爆。それは完全に封じられた。
今、ルクレティアには死の自由さえ失われた。
「観念しろよ。俺だって悪戯にお前が大事に崇めているものを壊したくはないんだ」
フェルターが近づいてくる。距離が縮むごとに肌が粟立つ。だが、そんな肉体の反応くらいしか、ルクレティアにできることはなかった。
「落ち着いて機動教会を降ろせ。空中でおっぱじめるってのもおつなもんだが……町中に落下して死傷者を出すのは本意じゃねえだろう?」
木偶のようにうなずいて、唯々諾々とルクレティアは機動教会を安全な箇所に向かわせた。その位置はフェルターに指示される。剣姫庭園の果て。村さえない人が立ち入らない地帯だ。
やがて機動教会が設置する。此度は小規模の地震にも似た揺れが起きた。今から犯されるという事実が、繊細な魔力操作を阻害していた。
「……たとえ穢されても、私の信仰は変わりません」
「そりゃ結構。もし主とやらに破門扱いされそうになったら、俺も一緒に直訴に行ってやるぜ」
ルクレティアの決意に、フェルターは揶揄するような物言いで応じた。
――主よ、私に耐える力をください。
ルクレティアは両手を絡めて祈る。そんな彼女の修道服をフェルターは掴むと、一気に引き裂いた。住み慣れた教会だが、礼拝堂の空気にルクレティアの肌が触れるのは初めてだった。
全霊を込めて太ももを閉じる。それを軽々と、しかし彼女の抵抗を楽しむように両腕でフェルターが開いていく。オークの王という称号は伊達ではなかった。仮にもギフトホルダーであるルクレティアの足の力は、フェルターの腕力に惨敗していた。
ぴったりと閉じたルクレティアの秘部にフェルターの指が触れる。視界に映る光景が信じられずに、彼女は天井を見て現実から逃れようとする。秘部が広げられ蜜肉が晒された。涙腺が痛む。彼女は唇を閉じて羞恥に耐えた。
「ひゃっ……」
と、声が漏れた。秘部の内側に、湿った柔らかい何がが触れたのだ。自分で目を逸らした現実に、彼女は相対する覚悟を決める。落とした視界に見えたのは、フェルターが舌を伸ばして彼女の蜜肉を舐め回しているという常軌を逸した光景だった。
「匂いも味も正真正銘の処女だな」
ルクレティアの股に顔を埋めたフェルターは、視線を上げて狼狽するルクレティアの顔を満足そうに見てから、口吻でもするかの如く秘所に口づけた。
「流転教会は姦淫を禁じてるんだもんなあ。しょうがねえ」
言うとフェルターが立ち上がった。いきり立つ肉棒が彼女の鼻先に突きつけられる。生臭さと青臭さの混じった、初めて感じる臭気にルクレティアの顔は怯えを見せた。
「おまんこの代わりを口でやるなら、考えてやらんこともないぜ?」
目をぱちくりと見開いて、ルクレティアは押し黙った。フェルターの言っている内容を、全く理解できなかったのだ。
「……おまんこにこれを突っ込んでほしいのか? それが嫌ならこれを祈りくらいにしか役に立ってねえ口でしゃぶれって言ってんだよ」
フェルターが肉竿の先端をルクレティアの顔に押し付ける。暴力結界を解除して噛みついてやろうかと思ったが、結界を解いてしまえばフェルターの側にも暴力が許可される。現時点で腕力勝負では勝てないとルクレティアは体でわからされてしまっていた。
仕方なく、ルクレティアは口を開ける。覚悟を決める余地も、心を落ち着かせる時間も与えてくれず、即座に口内に陰茎が突っ込まれた。大きすぎる剛直が気道を塞いだかのように思われた。驚愕に染まった顔で彼女はフェルターを見上げる。彼は満足げに笑い、彼女を見下ろしていた。
「そら。おまんこの代わりだっつってんだろ。唇はぴったり閉じた膣口。舌を使って必死に膣襞を再現してみろよ。できなきゃ、大事に守ってきた処女がここで散ることになるだけだ」
そんな口約束が信用できるはずがないとルクレティアとて理解している。それでも、懸命に純潔は守らなくてはならない。与えたとしても、奪われたとしても、純潔は失う。同じ失うのであれば、経緯こそが大切だった。
じゅぽ、と音を立てて、彼女は顔を前後に動かした。亀の動きにも似た、遅々とした動きだった。舌も彼女は必死に動かしたが、相手の性感部位さえよくわかっていない状況で、意味もなく舌をばたつかせるくらいしかできない。
ルクレティアの後頭部ががしりとフェルターに掴まれた。
「まったく。下手くそだな。いいか、こうやるんだよ」
フェルターがルクレティアの頭を固定し、腰を引いた。唇にカリが触れたあたりで、今度は頭が引き寄せられて喉奥にペニスが突き立てられる。
「ひ、ひいあ」
息が、と言いたかったが、まるで言葉にならず、更にフェルターが腰を前後させる。幾度も幾度も喉を刺激されて、眦から涙がこぼれた。朦朧とする視界に、フェルターの嗜虐的な笑みが浮かぶ。ルクレティアは睨み上げて、まだ自分が折れていないと示した。
「いいツラだ。じゃあ、そろそろイくぞ?」
再びストロークが開始される。舌は既に動かしていない。喉奥だけの刺激でフェルターはペニスをさらに堅くしていく。
ぐん、と大きく頭が腰に引き寄せられる。フェルターの陰毛が彼女の鼻の穴を犯す。口の中を埋め尽くすフェルターの陰茎が脈打つのを、舌が感じ取る。
何が起きるのか、困惑したルクレティアに、すぐに答えが示される。口内で陰茎から精液が放出された。
「こぼすなよ? こぼしたら、次はおまんこに相手してもらうからな?」
青臭い雄汁が口内を満たす。こぼしてはいけないとして、じゃあどうしろというのか。独特の匂いが口内から鼻先に抜ける。その感覚が酷く不快で、悍ましい。ルクレティアは嫌悪を顔に出した。
「ん? なんだ、俺の精液がそんなに惜しいか?」
意味がわからず、ルクレティアはフェルターを見返すことしかできない。
「口に含み続けたいってんなら止めんがな。とっとと飲めよ。まだ終わりじゃあないんだ」
精液を含んだままのルクレティアの口元に、フェルターが残り汁を漏らす亀頭を押し付ける。
――飲む? これを?
恐怖で身を硬直させたルクレティアを見て、フェルターが腰を下ろした。そうして、秘部にペニスを近づけていく。
眦から涙が一条ついに零れ落ちて、同時に喉から食道へと大量の精液が落ちていく。嚥下は一度では終わらず、ごく、ごく、ごくと三度でようやく、大半の精液が飲み込めた。粘り気の強い一部が歯や内頬にこびり付いているが、それを舐めとって呑み込むなどできようはずもなかった。
「よおし良い子だ。じゃあ、次はひとりでやってみな」
言うが早いか、フェルターは再び立ち上がって彼女の口にペニスを含ませた。喉を犯され、ルクレティアの雌の本能が刺激された。されたことを丁寧に彼女は再現する。口を窄め、陰茎の形状を唇でつぶさに感じ取りながら、喉の奥までペニスを受け入れる。すると、自然と舌が陰茎に絡みつくようになった。意識してのことではなかった。太すぎるフェルターの陰茎を咥えると。当然ながら舌が激しく押し付けられて息苦しさを感じる。それを避けようと舌を動かすと、必然的に空いた箇所にペニスが移動するため、ペニスの動きに合わせて舌で各部を愛撫する形になるのだった。
大きすぎるフェルターの剛直を、先端から喉奥まで刺激を均等に与えるには、首の可動域だけでは足りなかった。上体を前後に揺らし、丹念にペニスを刺激していく。やがて、フェルターが口内に埒を空け、二度目は何も言われなくとも精液を飲みきり、果てには尿道口にある残り汁を吸い出した。
二度目の口淫を終わらせたルクレティアの頭を、フェルターが手で撫でた。手つきに荒々しさはなく、むしろ優しいくらいだったが、それがルクレティアに忌避感を抱かせた。奉仕を褒められるということは、ルクレティアをフェルターが自らの所有物だと思っている証左だった。それが不愉快だった。
ルクレティアは黙り込んで続きを待つ。これで終わりのはずがない。彼女はそう確信していた。確信はすぐに正しかったと証明される。フェルターが力任せにルクレティアの体を反転させた。地面に腹ばいになるのを避けて、ルクレティアは膝と両腕で体を支えた。咄嗟にとったその姿勢は、四つん這いという犬畜生のような獣の姿勢だった。
「ひっ」
何かが尻に触れたのに驚いて、彼女は声をあげた。首をひねると、フェルターが彼女の尻に顔を埋めていた。尻穴に触れている堅い突起は彼の鼻で、秘所をまた舌が舐め回している。
「はっ、ペニスしゃぶって良い具合に爛れてきたな」
フェルターが尻から顔を離して、それから指先で蜜肉を撫で回した。彼の唾液だけとは考えられない量の液体が、膣を塗らしている。それはルクレティアの体が身を守るために分泌した愛液だった。
愛液で塗らした指先で、フェルターがルクレティアの尻穴を弄り始めた。丁寧にほぐし、人差し指が尻穴に突き刺さる。彼女の肛門は呑み込んだ指先をずっぽりと咥え込んで、関節ひとつ分ほどを自動的に奥に誘った。指先が尻の中を弄る。
「あっ」
淫靡な声がルクレティアから漏れる。肛門から指先を引き抜かれた際、人生で初めての快楽をが彼女を襲ったのだ。
「尻がいいのか? 安心しろ。ねだらなくても、ちゃあんと広げたらぶちこんでやるよ」
続いて、肛門に侵入したのは二本の指だった。一本とは異なり、二本の指は肛門に突き立てられた状態から動くことができた。力尽くで二本の指が広げられて、無理矢理にアヌスが拡張させられる。何をしようとしているのか、問わずともわかる。そして、それを止める権利はルクレティアにはなかった。四足の獣を思わせる格好で、尻穴を弄ばれて時折感じる醜悪な悦楽に、甘い吐息を漏らすだけだ。獣には、手を合わせて祈りを捧げる権利もない。
「待たせたな。待たせた分、たっぷりとくれてやる」
フェルターがまた湿り気を増した秘所に触れ、得た水気を陰茎に塗りたくる。肛門に濡れた亀頭が押し当てられる。
異端にもほどがある。ギフトホルダーであるルクレティアにとってはただの知識でしかないが、肛門は元来不要なものを排泄するための不浄な器官だ。そんな器官に生殖用の器官を突き入れるなど、常軌どころか狂気と呼ぶのもおこがましい。
いやだ、と叫びたい。だが、そうすればフェルターは嬉々としてとしてルクレティアの処女を散らすだろう。わかっている。どうせ、耐えようが抵抗しようが、ルクレティアの純潔が奪われるのは確定している。それでも、最後まで心だけは純潔のままだと言えるか否かには、信仰に生きるルクレティアにとって、確固とした断絶があった。
悲鳴を押し殺して、彼女は衝撃に備える。耐えるにしても、尻に力を入れるべきなのか、抜くべきなのかさえ判断がつかない。
「あがっ!」
ルクレティアは目を剥いて弓なりに体をしならせた。迷っている間に、ペニスが尻穴に突き立てられたのだ。
「流石に……キツいな……!」
括約筋を力尽くで拡張させ、肉棒が直腸を広げようとした。内肛門括約筋はルクレティアではなく、彼女の尻を犯すフェルターに加担し、ペニスを直腸の奥へと送り込む。
肉棒の動きが変わる。一度に最後まで押し広げるのではなく、小刻みに引いて、押してを繰り返し、直腸に剛直の形を教え込んでいった。
これまで日の目を浴びることのなかった、ルクレティアの直腸から分泌される粘液は、陰茎に絡みつく愛液と先走り汁とともに、尻穴の拡張に尽力する。
ルクレティアの尻肉とフェルターの腰がぶつかり、ペニスの根元まで咥え込んだことをルクレティアは自覚した。
――あんなものが、お尻に全部入るなんて……。
そんな驚きを感じられたのもつかの間、フェルターが腰を動かし始め、彼女は直腸からこみ上げる悦楽に恐れを成す。
直腸を突かれる度にルクレティアの口から息が漏れる。まるで直腸から押し出された空気が口からあふれているかのようだった。そうではないことを、誰よりルクレティアが自覚している。
「なに……これ……っ。こんなの……おか……しいっ」
仮にも修道女が礼拝堂で尻穴を無理矢理に犯されて、感じているともなれば異端どころの騒ぎではない。歯がみして吐息を抑えようとするが、鼻から漏れる息でさえ淫蕩の気配が漂っていた。
「別に恥ずかしいことじゃねえさ。ケツ穴でイく女なんていくらでもいる」
そんな彼女に、揶揄うのではなくむしろ優しい声音でフェルターが語りかけてくる。体の奥から溢れてくる衝動に流されれば、その「イく」とやらができるのだろうか。それは実に甘美な誘惑だった。
だが、彼女は聖職だ。聖職の在り方とはまず、原罪たる甘言を退けられるかが試されている。
肉体は弱い。飢え。乾き。痛み。それらの信号を止めることはできない。肉の弱さを知り、故に霊的強度――精神力を高めるのだ。
「どうだ? いいか?」
「……はい、確かに……性楽を感じています。ですが……それだけでは……私の信仰は穢せない……」
肩ごしに振り返り、ルクレティアは気丈にフェルターをにらみ返した。彼はその返答に気を良くしたように、腰の動きを速めていく。腸壁が脈動を感知する。遅れて、口内に出された分といささかも減じない多量の精液が、ルクレティアの体内に吐き出された。
ルクレティアはそこで両手を倒して床にくずおれた。
当然、まだ終わりではない。今一度体を反転させられる。もはや力も入らないルクレティアの白い太ももが広げられ、秘所がフェルターと陰茎の前に晒された。
「悪いな。まだ全然収まらねえわ。というわけで、処女をいただくとするぜ」
最初からそのつもりだったことを表情が雄弁に物語っている。ルクレティアはそれを指摘しない。無駄なことだ。代わりに睨んでやった。
体を犯しても、心は犯せない。それは言葉ではなく、眼差しや純潔を散らされた後のルクレティアの意思でしか証明できない。
フェルターがルクレティアに覆い被さってきた。そして、彼女の頬を舌で舐める。ルクレティアは女性にしては長身の部類だが、それでもフェルターと比べると男女の肉体の差が如実に出ていた。
ペニスが膣穴に押し当てられる。蜜肉は餓えた野犬のように下品に涎を垂らし、肉棒を待ちわびている。それも肉体の反応だ。ルクレティアの精神が淫蕩なわけではない。彼女は襲い来るはずの、破瓜の痛みに備え体を強張らせる。
先に尻を犯され、お預けを食らっていたルクレティアの蜜壺は、摩擦もなく肉棒を受け入れた。唯一、処女膜だけが肉体の純潔を証明するために、わずかな抵抗を示したが、それはルクレティアに鈍い痛みを与えるだけで、彼女を犯すフェルターに対しては一切の意味をなさなかった。
「こりゃすげえな。ヌルヌルなくせにキツキツに締め上げてきやがる。一度食らいついたら搾り取るまで離さねえって感じだ」
腰を振りながら、フェルターがルクレティアの膣襞について感想を述べる。流石に正面から見返すことができず、ルクレティアは首を曲げた。
「そう……ですかっ……。とっとと……精……液を……吐き出したら……どう……ですか?」
極力平坦に言おうとしたが、どうしても熱を帯びた荒い吐息が挟まってしまう。
「ああ、お言葉に甘えさせてもらうと……するかっ!」
フェルターが大きくペニスを突き入れる。それまではほんの僅か、子宮の手前で止めていたのを最後のストロークが未踏の領域を抉った。その衝撃にルクレティアの腰が浮く。その瞬間、フェルターが大量の精液を子宮に向かって放出した。
懐胎の恐怖が一条の涙となってこぼれたが、それでもルクレティアは折れなかった。火照った頬で、しかし冷厳な眼差しで彼女はフェルターを見る。フェルターの方も彼女を見てはいなかった。ペニスを膣から引き抜こうとして、そのとき、彼が一瞬だけルクレティアの顔を見た。
そして。
「ひがっ……あが!」
フェルターが再び彼女の膣にペニスを突き入れた。悲鳴の理由はそれに驚いたわけではない。覚悟をしていないときに不意に全身に走ったのだ。
痛みが。破瓜の痛みが。
「はっ。ギフトホルダーは怪我の治りが早いが……まさか処女膜を治す奴がいるとはなっ」
嬉しそうにフェルターが抽送を再開する。
不意の痛みで精神の均衡を乱され、そこにピストンによる悦楽が重なる。娼婦にも似た淫蕩な喘ぎを奏で、ルクレティアの体がびくん、びくんと時折痙攣した。
通常、ギフトホルダーは処女膜を再生しない。処女の喪失は傷ではなく、変化――というより成長として無意識領域が判断するためだ。どうやらルクレティアは信仰により純潔を守るという誓いを立て、それを強く体に教え込んだために、処女膜が破られることを傷だと無意識が理解してしまったらしい。
「突いてるときに違和感があったからまさかと思ったがな。こりゃあいい。いい気付けになるなあ?」
喘ぐ彼女にはそんな声すら届かない。だからルクレティアは気付かなかった。フェルターに腰を抱えられ、上体が起こされたことを。そしてまたも亀頭が膣口まで引き抜かれたことを。
「あが……あ……!」
三度の破瓜の痛みにルクレティアはフェルターの前言通り気付けをさせられた。僅かに理性を取り戻したルクレティアは、自分が寝そべるフェルターに跨がった姿勢を取らされていることを知る。
女性上位の体位だが、実情は違う。ルクレティアに一切の自由はなく、フェルターは腰を動かすだけで違いの性感を刺激できる。犯される快楽。妊娠への恐怖。そして、フェルターの気まぐれで引き起こされる破瓜の痛み。それらが、ルクレティアの体を苛み、精神へと降伏勧告を繰り返す。
無意識にルクレティアは手を組んだ。祈りの仕草だ。舌からフェルターに突き上げられながら、彼女は主への祈りを捧げる。
微かに平静が戻る。瞼を開けると野卑に嗤って彼女を突き上げるフェルターと目が合った。毅然と彼女はフェルターをにらみ返す。
「わかるか?」
尋ねながら、一際強くフェルターが腰を突き上げ、胎内に埒を空けた。どくどくと射精されている感覚を全身で感じながら、眼差しでルクレティアは続きを促した。
「処女膜が再生するってことは、お前は犯されても心の純潔は奪われていない、そう思っているってことだ」
「……それが?」
ルクレティアにとっては外面の、丁寧語で語る修道女の仮面が剥ぎ取られていく。内に潜むのは若くして機動教会を任されるに至った、負けん気の強い気丈な娘としての顔だった。
「つまり、処女膜が治らなくなったときには、お前はもう、自分でも純潔を失ったと刻まれたってことだ。そのときには、俺の奴隷になれ」
奴隷。フェルターは言っていた。ギフトホルダーを犯し辱め奴隷にする――と。なるほど、このようにして彼は手駒を増やしているのだろう。
「いいわ。もし仮にそんなことになったなら、喜んで奴隷になって、信仰も捨てて好きにさせてあげる。……ふん。奴隷にしないと、女と向き合うこともできないのね?」
告解を聞き、赦しを与える。それは教会を持つ聖職者の職務のひとつだ。それを得意とするということはつまり、赦しではなく、傷口を暴くことにも長けていることを意味していた。
フェルターの半生――千年の彷徨が事実だとすれば、今の言葉は痛烈に響いたはずだった。傷口を見抜く嗅覚は流転教会に入る以前から、ルクレティア生得の特技である。
怒り狂って暴力に訴えてくるかとルクレティアは思ったが、意外にもフェルターは笑った。これまで見た彼の表情全てが嘘で、今浮かべた笑みだけがたったひとつの真実なのではないかと思わせる笑みだった。その内実まではルクレティアには読み解けない。
ルクレティアは誓った。どうせ、この男と一緒に死ぬことまで最初は考えたのだ。聖職者として、主が自分に与えた試練はここだ。この男だ。憎悪をまき散らし世界を壊そうとするこの男をどうにかする。殺すか、止めるか。手段は定かではないが、ルクレティアという自己を賭ける程度の価値はある。
「……それで? 芸もなく汚い汁を吐き出すだけで、私を穢せると思う?」
半眼にして、嘲弄するようにルクレティアは言って、髪をかき上げた。
「悪かったな。もう少し真面目にやらせてもらうとするか」
言って、フェルターは偽りの表情を再び浮かべ、挨拶とばかりにルクレティアの尻肉を強く揉みしだいた。
フェルターがルクレティアの蜜壺を貫いたままで立ち上がると、つながったままでルクレティアの体を反転させた。両手で両足をホールドし、同時にルクレティアの両腕も拘束する。フルネルソンと呼ばれる体位である。
「……ぁ」
尋常ならざる体位だが、ルクレティアが声を漏らしたのはそのせいではない。
ずっと、意識するのを避けていた。
ここは礼拝堂だ。だから、ここにはそれがあるのは当然で――違う。意識的にフェルターが彼女の視線にそれが入らないように体位を変えていたのだとルクレティアは確信した。
「辞めて……それは……違う」
「違わねえよ。安心しろ。じゅくじゅくと近づくだけで愛液漏らしてるじゃねえか」
首を振っていやいやするルクレティアの耳に、さも愛でも囁くかのようにフェルターが告げる。
向かう先は礼拝堂の奥。主の御子が磔にされた偶像の前だった。
「ほら、気を入れろよっ」
フェルターの両腕によって彼女の腰は持ち上がり、彼女自身の体重によってペニスが膣口から奥まで突き刺さる。またも処女膜が破れ、結合部から血がしたたり落ちる。
「主も御子も、お前が犯されてる様見てセンズリこいてんだよ。おら、ずっと守ってきた純潔だ。さっきも必死に祈ってたろ? 私の艶姿をお見守りくださいってな」
「ちが……私が祈ったのは――あぁぁぁんっ!」
狼狽に快楽を合わせられ、堪えきれずに彼女は嬌声を上げた。偶像の前だからこそ、ルクレティアは絶頂を迎えてしまった。
イッたばかりの敏感な秘所に、フェルターの剛直が幾度となく刺激を与えてくる。これまでの陵辱は全てがお遊びだったと言わんばかりの、暴力的とも言える上下運動に、全身の一切が抵抗できない状態でルクレティアは絶頂を繰り返した。
――主よ、見ないでください――!
犯されるだけの雌肉に、手を組み祈る権利はない。
礼拝堂に幾度となく悲鳴じみた嬌声が響きわたる。ルクレティアの体をフェルターが案じる義理はない。夥しい量の射精は幾度となく繰り返され、イキすぎて意識を失う度に、破瓜の痛みで正気に戻される。
神聖で荘厳であるべき礼拝堂に、ただひたすらに一匹の雌の嬌声と、つがいの獣の分泌する体液による水音、そして肉の打ち合う乾いた音が響き続ける。
ルクレティアは焦点が合わなくなって久しい。どれほどの時間が経ったのかを確かめる術もない。それでも。
「ほら、まだ、処女膜……再生してるぅ」
蕩けた眼差しと声で、まるで娼婦が男を誘うように、背後から自分を犯し続けるフェルターにルクレティアは囁いた。
「ち、仕方ねえな。奴隷じゃない女と向き合うのも楽しくてな? 俺の居城に招待してやる」
朦朧としたルクレティアには、フェルターの皮肉の真意を推し量る術はない。
AIくん、フラットチェストを入れるとロリにしようとするのを止めるんだ
パラメータで分かる! 現在の状況
遠征中
アウレリア→ガロッゾ城塞
カサンドラ→廃霊城(魔導森林領主)
地底唾王城総戦力
フェルター 戦術65→71 諜報30
※フェルターの戦術レベルは奴隷の半分が加算される
※ただし、地底唾王城以外では相手の戦術レベルに合わせてレベル制限される
特殊オプション:
毒合成レベル6
魔術工房レベル74(65)
※魔術工房レベルは戦術レベルと同等まで上げられる
※現在戦術レベル不足で工房レベル上限中
調教道具:
オーク2匹
奴隷傭兵50人
娼館(セラニアが娼館主。領地誓約発動可能)
保護中:
村娘9人、イヌ1人
調教中:
淫魔アルガナ
設備:
地下牢
作戦会議室
魔術工房×3(セラニア、ロザリンド、ヴェレディア分)
鉱山
農地
領海→マリーナ。漁師20。新鮮な魚をお届け。売れる。ご飯レベルアップ。
山林
現在指揮者(鉱夫、農夫、木樵不在で資源活用不可)
保有奴隷
傭兵リヴィス 戦術10
騎士アウレリア 戦術20
剣士レビア 戦術10 諜報2
魔術師ロザリンド 戦術9 諜報5 工房20
暗殺者リドベダ 戦術8 諜報8 特技:特殊毒
槍騎士ヴァスカ 戦術11
誓約士セラニア 戦術11 工房20 特技:領地誓約
街盗賊ジリ 戦術7 諜報15 特技:ピッキング
魔導妃カサンドラ 戦術20 工房20
魔導姫ヴェレディア 戦術18 工房20
→淫魔アルガナ(調教中) 戦術40 工房20 特技:亜人魅了
→漁師マリーナ 戦術6 漁師20
→修道女ルクレティア(調教中) 戦術15 特技:機動教会、暴力結界
※戦術レベルは単純な戦闘力ではなく、完全な指揮でベストの戦果を発揮したらそうなるという塩梅
大目標
完・魔導森林領主 戦術40 諜報30→条件クリア
完・魔導森林真の領主サキュバス 戦術45 諜報30+カサンドラ奴隷化
剣姫庭園領主 戦術50 諜報40