鬱蒼と草木が茂る山の夜。猫の額ほどの開けた場所で焚き火が揺れている。
亡き夫から引き継いだ山賊団を指揮する女山賊は部下たちと離れひとり施策に耽っていた。
炎に照らされた茶色い髪と瞳。二十代を終えようとしている妙齢の美女である。獣皮をなめした革と金属で作られた鎧と岩石さえ破砕可能な頑強な手斧が彼女を山賊然とさせているが、仮にドレスなどの正装をすれば、貴人と見分けられる者は少なかろう。鎧の各所に配されたファーや、耳飾りが数少ない着飾りであるが、装具に見事に解け合っていて、違和感はなかった。
山賊カリスタ・モンタナ。
剣姫庭園の山岳地帯で名を馳せた山賊団――赤豹団の二代目首領である。
赤豹団の悪名はほぼ全てが初代の功績だ。未亡人のカリスタが赤豹団を引き継いでからは赤豹団にはいくつかの禁忌が厳命されたためである。
たとえば強姦や村への略奪行為、それに戦意を失った相手への虐殺などだ。結果として、山賊赤豹団は大幅に稼ぎが減った。長い付き合いをしていた奴隷商とも断絶したし、逆に赤豹団を恐れていた近隣の村民とは打ち解け始めた。
山賊団などに入る者の中には行く宛のない者ばかりだ。とはいえ、そういった人間だけではない。山賊などやがて冒険者や騎士のギフトホルダーに殺されるか、絞首台送りが末路と決まっている。ならば、まだ俗世に戻れる者は戻してやりたい。それがカリスタの考えだった。
同時に夫の遺志を継いで赤豹団を残すつもりもある。ただ夫時代のなんでもありはカリスタは認めなかった。元々カリスタは旅の冒険者で、奸智にも長けた先代――亡夫に嵌められて強姦され、その度量に屈服して妻になった経緯を持つ。
亡夫はカリスタを溺愛していたがために、彼女を部下に抱かせたりはしなかったが、村娘や冒険者を赤豹団が輪姦している姿は幾度も見た。カリスタが撃退した騎士のギフトホルダーが同じ目に遭っていることもあった。仮に自分があのような事態になったら耐えられないと思うし、事実輪姦された者たちは心が壊れていき、奴隷商に買い取られる頃には虚ろな眼差しになっていた。
そういった負の部分は先代で終わらせ、今後の赤豹団はもう少し真っ当な山賊稼業をしていこう。それが二代目であるカリスタの方針だった。
その結果、山賊団は割れた。先代の副首領だった男が、部下を半数以上も連れて出ていってしまったのだ。彼らは黒豹団を名乗り、近場で無法を働き、カリスタたちに敵対している。
彼らにはギフトホルダーはおらず、カリスタからすればものの数ではない。しかし、カリスタの部下が少数で動いていると襲撃をしてくる。こちらの手の内を知るが故、厄介な相手だと言えた。。
「まったく……。一団を率いるというのは難しいものね。あなた」
憂いを帯びたブラウンの瞳に亡き夫を映し、カリスタはひとりごちた。
カリスタは頭を切り替える。黒豹団への対策は至極単純な形に収まった。彼らはカリスタの戦力を恐れている。また、数が多少多いにしても、赤豹団と真っ向からぶつかり合えば、どちらにも損害が出るとあちらも理解している。孤立しなければ手を出しようがないのだ。
だから、カリスタは単身で黒豹団の縄張りに足を踏み入れていた。
「よお、カリスタ。気は変わったか?」
「まさか。解散をするつもりはないわ。皆があなたに着いていったなら話も違ったでしょうけど」
闇夜から声をかけてきたのは夫の右腕にして、赤豹団の元副首領――今は黒豹団の首領を務める男だった。気配探知が得意ではないカリスタは、声を聞いて初めて相手に目を向けた。
痩躯でぎょろついた目をしている。安物の革鎧を上半身にだけつけ、動き安さに焦点を置いている。年齢はカリスタより少し下だったはずである。カリスタが山賊の妻となった後に入団し、直ぐさま頭角を現して副首領にまで登り詰めた。
「あんたがいるからさ。カシラの女に逆らうわけにはいかねえ――って思ってんのさ。誰も彼も、カシラにゃあ恩義以上のものがある。無論、俺にもな」
「夫のことを思うなら、赤豹団に戻ってくればいいじゃない」
「団の方針はあんたに従って――か? バカいえ。お飾りで首領の座が欲しいわけじゃねえ。俺はカシラの後を継ぐんだ」
元副首領の言葉に嘘はない。実際、夫が生きていた頃は妻であるカリスタよりも、彼は夫のそばにいた。彼の率いる黒豹団こそが、今は亡き夫の山賊団に近いだろう。
夫たちの無法を許していたのは、夫を愛していたからだ。だが、夫の死後、ギフトホルダーや村娘を拐かして陵辱するのを看過するのも無理だった。そして、夫の遺した団を捨てて山を下りる決意も固められない。団を継いだのは消去法的な理由でしかなく、元副首領の言い分にこそ正当性はあるとカリスタ自身が思った。
「まあいい。どうせ、平行線だろうさ。で? カシラの隠し財宝について話す気にはなったか? 手伝うってんなら、半分はくれてやってもいい」
「――そうね。見るべきなのかもしれない。けど、信じられる? 『財宝はある場所に隠してある。そこにはお前ひとりで行け』――なんて」
「――は。そういうことか。ったく、カシラも人が悪い。カリスタ、俺はな。カシラから場所だけは聞いてたんだよ。だが、開け方が分からねえ。錠が下りてようと、鍵穴がありゃあ開けられらあ。けど、その鍵穴らしきもんが見つからねえときた。俺とあんたが反目したままじゃ手に入れられないってわけだ。カシラ、こうなるって読んでやがったな」
悪態をついてはいるが、元副首領の顔には笑みが浮かんでいる。つられ、カリスタも口端を持ち上げた。
「それで――場所は教えてもらえるの?」
「ああ」
元副首領は胸元から羊皮紙を取り出すと、カリスタに差し出した。受け取って、内容を確かめる。地図だ。赤豹団の縄張り内にあり、普段足を運ぶような場所ではなかったが、地図があれば問題なく見つけられると思われた。
「ひとりで行かないとならないみたいなんだけど――」
「わかっている。あんたが持ち逃げするとは思っちゃいないさ」
「財宝が見つかったら。一度くらいみんなで飲み明かせないかしら?」
「さてな。どいつもこいつもあんたにゃ骨の一本や二本折られている。物覚えの悪い連中ばかりだから気にする必要もないかもしれないが。話くらいは通しておくさ」
赤豹団も黒豹団もギフトホルダーに遭遇した場合、即座に四方に散るという戦術をとる。これはカリスタの夫が考案したものだ。ギフトホルダーの弱点は数が少ないことにある。十人でかかっても一瞬でなぎ倒されるだけだが、ギフトホルダーは散開した十人を同時に捕らえることはできない。しかし、逆に言えば、ひとりやふたりはギフトホルダーに捕まるのだ。
黒豹団による赤豹団員への襲撃時、カリスタは黒豹団員を捕捉すると制裁として、一撃を入れるのだ。
「……やりすぎだったかしら」
元副首領はカリスタのつぶやきに返事はせず、音もなく闇夜に溶けて消えた。
そうして、カリスタは財宝の隠し場所を訪れた。地図はわかりやすく要点を押さえていて、迷うことなくまっすぐにたどり着けた。
上から見た限りでは崖になっているように見えるが、注意して見ると、崖下に一部張り出した部分があり、そこから洞窟に入れるようだ。何かがあると知っていなければ見つかりづらい、財宝の隠し場所としては理想的な位置だった。
洞窟の内部にはこれといって不自然なものはなかった。松明などのような人工的な装飾もない。また、獣の気配もなかった。ほんのわずかに肌が散りつく。魔術に疎いカリスタにはなんの術だかは判別できないが、何かしらの魔術が敷かれている。獣よけだろう、とカリスタは踏んだ。
洞窟は一本道で、さほど長くもなかった。行き止まりにたどり着いて、カリスタは手探りで壁に触れてみる。すると、壁が発光し始め、驚いたカリスタが硬直していると、蠕動とともに壁が左右に割れた。
呆気にとられたカリスタの視界に、亡き夫の隠し遺産が現れた。天然の宝物庫に隠されていたのは、金貨ばかりだった。宝石や貴金属、それらを用いた装飾品のようなものはない、高級品は売り払うと足がつきやすい。亡夫が伝手を利用して金貨に換えてくれていたのだろう。
ざっと見た限りでは一万枚前後はありそうに思われた。カリスタのようなギフトホルダーを奴隷商に売却した報奨金などを踏まえれば、順当な額であった。赤豹団、黒豹団の全員が多少羽目を外しても遊んで暮らせるだろう。
これを山分けにしたとして、皆は山賊を辞めるだろうか。
一般的な考えであれば、辞めるのが自然だ。何故なら、山賊とは生業である。生きるために山賊に身をやつしたわけであって、山賊になろうとしてなる者は絶無――とは言わないまでも稀少だろう。両山賊団の団員も同じだ。誰ひとり山賊になりたかったわけではない。
――が。
亡夫の顔が過る。十重二十重の罠を張り、ギフトホルダーさえ手込めにした、暴と謀を兼ね備えた男だ。眼前にある輝く多量の金貨。国家に寄らず、無頼の身でありながら、自らを慕う者たちで構成された山賊団。あまつさえ、ギフトホルダーを妻に娶った。
男の身でこの境地に至った者は、大陸史を紐解いても十指満たすかどうかというところだろう。
その姿は、きっと団員たちにとって鮮烈だったに違いない。
光り輝く存在に照らされて、焼き付いた影がきっと彼らを夢から覚まさせない。
部下たちの行く末を見届けるのが、彼の妻だった自分の責務だとカリスタは改めて考えた、
「……あれ」
決意を新たにしたカリスタは、床に落ちている一枚の羊皮紙に気付く。
拾い上げてみると、手紙のようだった。筆跡は夫のものだ。
「愛する妻へ。叶うならば、山を下りてほしい。お前に山賊は似合わない。――もし山賊を続けるのなら、イヤリングを副首領に着け直してもらえ。そうならないことを祈る」
――イヤリング?
カリスタは耳飾りに触れた。ずっと装着している愛用の品だ。
――いつから?
不意に湧き出た疑問に、全身の汗腺からねばついた汗が滲み出した気がした。答えは彼女の記憶の内にはなかった。賞金稼ぎ紛いの冒険者だった頃は着けていない。妻として山賊団の前に紹介されたときにはもう着けていた。
その合間。その後夫になる男に、強姦されて――気付けば妻になっていた。
今までそれを不思議に思ったことはなかった。胸に宿る思慕の情には動揺の色はない。
それがおかしい。
どうしてカリスタという女の精神が揺らいでいる最中、愛情だけが固定されたように動かないのか。
背筋に悪寒が走る。吹き出した汗が冷えたのだと、自分を言い聞かせカリスタは洞窟を出た。
だが、その脳内ではずっとひとつの問いが繰り返されている。
――どうして、私はあの人を愛したのだ?
始まりが強姦だったにしろ、恋に落ちることはあり得るだろう。余人には言えないが、カリスタには被虐的な気質がある。夫婦の営みでも毎夜激しく犯されるような行為を続けていたくらいだ。ただ、過程をまったく憶えていないなどあり得るだろうか。
混乱しつつも、彼女の足は帰巣本能によって、赤豹団が根城にしている山小屋へと向かっていた。
カリスタは不意に足を止めた。思考から現実に意識が強制的に引き戻される。気配を探るのが苦手なカリスタでも即座に分かるほどの存在感が目の前に現れたのだ。
「赤豹団首領、カリスタ・モンタナだな?」
一見すると奴隷傭兵にしか見えない、安物の革鎧と剣で武装している男だ。しかし、カリスタは男が奴隷傭兵ではないと考えた。論理的な理由はない。ただの勘だ。男は笑みを浮かべている。奴隷傭兵の笑みは、下卑ているか野卑な笑みだ。男のそれはただただ不遜だった。常に天に対し唾を吐き続けているような、そんな傲岸さが感じ取れた。
「お前は?」
「唾王、フェルターだ」
言うと男――フェルターは剣を抜き放った。この時点でカリスタの推測は的を射ていたと断言できる。武装している女はギフトホルダーだと考えて間違いない。そんな相手に対し、一対一で挑もうと言う時点で並の相手とは考えづらい。
応じるように、カリスタも愛用の手斧を構えた。片刃になっていて、打撃武器としても扱えるお気に入りの逸品だ。躊躇なく刃を相手に向ける。加減できるような相手ではない。
カリスタはフェルターと向き合って硬直した。かつて夫に敗北した経験のある彼女は、相手が男だろうと油断しない。だからこそ、カリスタは理解した。眼前の男が、自分に匹敵するほどの使い手だということに。
「赤豹団と黒豹団――だったか? どちらの拠点にも俺の奴隷を送り込んでいる。どっちもギフトホルダーだ。早く助けに行かないと壊滅するぞ?」
硬直を嫌ったか、フェルターが話術で焦りを誘う。事実か、それとも欺瞞か。カリスタは真実だと即断した。赤豹団と黒豹団の分裂が山の外にまで知られているとは考えがたい。ギフトホルダーを男の身で隷属させる点についても、カリスタは不可能ではないと知っていた。
賞金首だった夫は、賞金稼ぎに殺された。その際にも、カリスタの存在は露見していなかった。にも関わらず、目の前の男はカリスタの存在を把握している。
個人では不可能なレベルの諜報活動の賜物だろう。単独の襲撃ではないのは確かだ。
カリスタは機先を制し、踏み出した一歩から跳ね飛んで、奇襲の一撃を仕掛けた。ギフトホルダーの腕力でもなお重い、グラメタル合金の特性を活かした一撃だった。
フェルターが剣でその一撃を易々と受け流したのに、カリスタは驚愕せざるを得なかった。
「――グラメタルか。重力を蓄積するんだったかな。使い手に合わせて重さを変質できる良い素材だ。もっとも扱える鍛冶は滅多にいないと聞くが」
腕は立つ上に知識もあるようだ。
「とにかく、良い腕だ。赤豹殿とも会いたかったな。こんな良い奴隷を飼ってるんだ。互いの奴隷を競わせるのも面白かっただろうに」
「……な……んだと?」
煽るようでもなくフェルターが口にした言葉に、カリスタは思わずそう返した。
奴隷。
夫が生きていた頃の赤豹団は捕らえたギフトホルダーや拐かした村娘を輪姦し愉しんでいた。凄惨な陵辱が繰り返され、目から光が消え、大人しく男の逸物をしゃぶるようになると、ギフトホルダーは抵抗の意思を失うようだった。そうなったギフトホルダーは山賊団員の肉奴隷でしかなく、飽きるまで犯されやがて奴隷商に売却されていった。
――私が……奴隷?
カリスタは妻だ。そう扱われ、そう生きてきた。そこに寸毫も疑いはない。
だが、それでも。
自分が夫をいつ愛し始めたのか、その始まりが思い出せない。
自然、指先がイヤリングに触れる。これを、元副首領に着けてもらうと、何が起きるのか。怖くなってピアスを外そうとした。指先は彼女の意思に従わず、まるで弾かれたように耳から離れた。
――自分で、外せない?
「なんだ? 戦いの最中に気が抜けるよう、ご主人様の命令が残ってんのか?」
近くで声がして、カリスタが状況を思い出したときには、彼女の斧の柄をフェルターが握っていた。力任せに奪い返そうとしたが遅かった。フェルターは斧を投げ捨て、彼女を地面に押し倒した。
仰向けに倒れたカリスタの上に、フェルターが跨がる。
「い……いやっ」
少女のような叫びが喉から漏れた。
否。
男に押し倒され獣欲を向けられて、十年以上も前の記憶と今のカリスタは接続されていた。なんてことはない山賊退治だと思っていた。男なんて相手にならないと信じ込んでいた。
幾多の罠によって武器を失い、体を拘束された。ひげ面の巨漢が床に押し倒された彼女に覆い被さって――。
「いやあああああっ!」
今のようにそう、叫んだ。やがて夫になった男とのファーストコンタクトはそんなものだった。
「はっ、生娘みてえな反応するじゃねえかっ」
フェルターが彼女の鎧を、そして服を剥いでいく。乳房と股間に森の湿った風が触れる。記憶の底から現実に引き戻された。こちらも同じく陵辱が始まろうとしていた。
処女を夫に散らされたときとは違う。まだ体力は残っている。カリスタは四肢を暴れさせた。鮮度の良さに喜ぶ漁師のように、フェルターが笑う。カリスタの腕を掴むと彼女の腹に跨がったまま、足で腕を押さえ込む。上半身が完全に拘束されてしまえば、足にできることなどほとんどなかった。
「形の良い乳だな」
フェルターが彼女の乳房を弄ぶ。
「ん……あぁ」
旦那が死んでから持て余していた熟れた体は、敏感に反応してしまう。そんなカリスタの口端から漏れた唾液を、フェルターが舐めとる。顔を振って抵抗の意を示したが、それがうわべだけのものだとカリスタ当人が誰より理解していた。
フェルターが彼女の胸に顔を埋めた。舌先で乳首が転がされる。触れられた感覚ですぐに分かった。乳首が固くなっている。
カリスタは自分の被虐趣味に自覚があった。だが、夫以外に犯されるとこれほどに体が火照るなどとは予想もしていなかった。力及ばず無理矢理に穢されている事実。没した夫への操を守れない背徳。心が感じるべき負債全てを、カリスタの体は性感だと誤認して反応していた。
「とんだ変態奥様――未亡人だったか」
耳元で囁かれ、彼女はフェルターがいつの間にか彼女の太ももの間に体を移動させていることに気付いた。そして、それ以上に自分の両足は節操なく押っ広げられて、あまつさえ腰を浮かしてフェルターの腰に擦りつける始末だ。そんなザマでフェルターをにらみ据えても滑稽でしかないが、カリスタには表情くらいしか自由にできる箇所がなかった。
「あっ」
脈絡も合図もなく、不意に密壺に陰茎が突き立てられた。まるで抵抗の様子がない。泥濘に鰻が沈み込むような自然さで、彼女の熟れた膣は男の逸物に分泌液を塗りたくりながら迎え入れ、膣壁が余すことなく久方ぶりに闖入者を貪ろうと締まる。
「ダメぇっ、抜いて。ごめん……なさい……あな……たぁ。あ……やだ。動かさない……でぇ」
洪水のように溢れる愛液が、理性を融解させようと淫水の音色を奏で続ける。まるで自分の体が心に一刻も早く肉便器になろうと説得をしているかのようだった。
淫蕩な熱を帯びた哀願は、言葉とは裏腹にペニスをねだっているようにしか見えない。フェルターが取り繕ったうわべではなく、真意に応え、腰を前後に動かし始めた。
「随分ご無沙汰だったみてえだな。膣襞が久々の来客に涎垂らして出迎えてやがる」
「くっ……そんな……嘘よぉ」
呆けた顔でカリスタは言ったが、それが事実を示しているとカリスタ自身が承知していた。淫らな自分の体に対する羞恥でさえ、カリスタの体は快楽に変換していく。
肌が熱を帯び、抽送に合わせて腰がくねる。子宮が精液に飢えていた。搾り取るために膣壁が収縮する。それに伴いカリスタの背筋を絶頂の予感が走って行き、やがて彼女は弓なりに体を反らした。嬌声こそ我慢できたが、誰がどう見ても立派にイキよがっていた。
余韻に身を浸す時間はなかった。フェルターはイッたばかりの彼女の膣をより一層激しく責め立てた。かすんだ視界の中、自分を犯す男を仰向けで見上げながら、彼女は次の絶頂を予期して身を固くする。そのとき、乳房に何かが垂れた。それは自分が恥ずかしげもなく溢れさせた唾液だった。
――ああ。イッて。早く膣内に出してっ。
表情に出すのは必死にこらえたが、彼女の内側にはそんな欲求が激しく渦巻いた。次の一突きで声を抑えることもできない、恥知らずなアクメを決められる――そう思ったとき、無情にもフェルターが陰茎を引き抜いた。
「……あ……やめちゃうの……やだぁ」
自分の密で淫靡に濡れる肉棒に焦点を合わせ、カリスタはそんなことを口走った。散り散りになった理性をかき集め総動員して、彼女は肉棒から顔を背ける。だが、彼女の膣口は餌をねだる魚のように秘唇をひくつかせていた。
「ご主人様にてっきり調教されたみたいだな」
フェルターがカリスタを嘲笑う。
――違う。これは生まれつきで――。
思いかけ、そこで思考が音を止めた。本当にそうだろうか。夫になった山賊に犯されたときはずっと泣き叫んでいた。肉欲や快楽に狂うこともできず、肉竿に貫かれる嫌悪感と精液の生臭さに怯えていた。
記憶が、飛んでいる。
どういう経緯で夫を愛し始めたのか。見当もつかなかった。ただ、胸の奥に宿る、亡夫への思慕の情に嘘はないはずだ。
愛している。犯されて快楽を貪っても、亡夫への罪悪感が全身を駆け巡る。
その気持ちは、本物なのだろうか。
妻という立場を得ただけで、自分はずっと夫の奴隷だったのではないだろうか。
イヤリング。不自然な愛情の変遷と、夫の遺言が結びつく。
そんな思考を経たカリスタの唇に、フェルターが陰茎を押し当てた。
「おまんこかき混ぜてほしかったら、どうしたらいいかわかるよなあ?」
もちろんだった。あらゆる性技は夫にたたき込まれている。尿道口を舐め、小さく口に含んでからカリ裏に溜まった恥垢を舌でこそぎ落とす。鼻につくキツい匂いは、条件反射で愛液の分泌を促した。
一度ペニスを口から出して、二度、三度と口づける。よく仕込まれた肉奴隷らしい舌技を見せつける。
口からペニスが引き抜かれ、フェルターは自分で肉竿を扱く。咄嗟に顔を背けたが、それだけで避けられるはずはない。夥しい量の精液が噴出し、カリスタの顔や髪を白く染め上げた。
青臭い雄汁の臭いで、カリスタは僅かに理性を取り戻した。男の欲望によって穢されながらも、彼女はフェルターを軽蔑するような眼差しで睨んだ。
抵抗する術を失った女の気丈な眼差しは、男の逸物を硬くするだけだ。射精したばかりのペニスが天を貫かんばかりに屹立する。
「ほらよっ」
フェルターがかけ声を上げながら、カリスタの片足を持ち上げた。
「くっ……」
歯を食いしばって、カリスタはいやらしい笑みを浮かべるフェルターを見た。そんな反応さえ愉しむようにフェルターはカリスタの密壺にペニスを突き入れた。
「仕込まれた口技に対するご褒美だぜ? もっと喜べよ」
「ぐぅ……違っ。私の体は……夫のためのもので……っ……いやっ……あっ」
夫と口にすると、犯されているという実感がさらに湧いた。夫のための体を、無理矢理に穢されている。そして、体は――特に密壺は相手に頓着をしない。硬さと長さがあれば十二分に快楽を貪れるようだ。その事実が、カリスタの貞淑な妻としての矜持を脅かす。
「はっ、そりゃあいい。夫のためにこんなにいやらしい体を保ったってわけだ。死んだ男のためによくやってるよ。ほら、ご褒美をくれてやる」
男の腰振りが速度を加速させた。喉の奥でせき止めていた喘ぎが徐々に森の空気に触れ出した。
「……あ……はああっ!」
ボルチオを突かれ、そこからさらに子種がカリスタの子宮を叩く。それには耐えきれず、カリスタもイッて嬌声を上げた。
一度始まった陵辱がこの程度で終わるはずもない。じわりと愛液が分泌される。それは犯されるという事実に対し、膣が傷つかないようにする女体の反応だったが、それは当人には自己の淫蕩さの証左にしか感じ取れなかった。
腰部を掴まれてカリスタは宙に浮いた。そのままフェルターは寝そべり、カリスタは彼の上に跨がる姿勢を取らされる。正確に逸物は彼女の膣口を貫き、自重によって奥までペニスを咥え込まされた。
――しかし。
男は腰を動かさない。下から突いてくれない。膣内を極太の剛直が敷き詰めているにもかかわらず、膣壁がそれを巧妙に絡みついているにもかかわらず――ただそれだけで刺激が止まっている。
恨みがましい目でカリスタはフェルターを見下ろした。だが、彼はそんな彼女の顔には目をくれず、結合部に視線を向けている。
フェルターの気が変わるのを待って、貫かれたままで彼女は静止していた。
「ああっ」
そんなカリスタだったが、電流が走ったように弓なりに体を仰け反らせた。陰核を指先でつままれたのだ。不随意な体の反応で、膣と陰茎が擦れ合わさり快楽が起きた。だが、それだけだ。結局両者のどちらかが腰を動かさない限りこれ以上の性感は得られない。
――生殺しよ……。
カリスタは内心で呻いた。自分から腰を振らせようとフェルターが考えていることは分かる。だからカリスタには耐えるしかない。が――。
ビクッとカリスタの体が揺れた。陰毛が一本引き抜かれ、またも体が無意識の内に小刻みに動いた。結果、わずかに腰が浮いて、その後、自重で落ちる。ペニスが密壺の中でかすかに上下に動いた。
どうやらフェルターはカリスタが自分の意思で動くまで、こうして弄ぶつもりのようだ。
――バカにしないで……っ。
夫以外に体を許したことは、フェルターに犯されるまではなかった。未亡人とはいえ、妻とは処女ではあらずとも、貞操を守るものである。犯されるのと自ら求めるのでは天地ほどの違いがある。それが、女側の勝手な都合で男にはなんの関係もなかろうと、それを固辞できるかどうかは自尊心を保てるかどうかの重要な端境だった。
「ぐ……あ……」
今度はフェルターの手が尻肉を揉みしだき始めた。女の性感を知り尽くした手だった。カリスタの密壺ははしたなくも激しく雌汁を結合部から溢れさせ、フェルターの腹筋を汚した。フェルターはそんな彼女に対し、無言のままだ。罵られた方がまだ我慢という抵抗はしやすかった。ただひとりで盛るカリスタの雌の本能を森の静寂は唱和するかのようだ。
パン! と乾いた音が静寂を乱した。まるで馬に鞭を入れるかのように、今度は尻肉をフェルターがひっぱたき始めた。陰毛を抜かれた際もそうだが、どうしても痛覚を刺激されると体が不随意に硬直してしまう。ペニスを突き込まれた騎乗位の姿勢では、それが剛直と膣襞に擦過を生じさせる。
反応が少しでも小さくなるよう、よりペニスが奥に届くのを知りつつ、カリスタはフェルターの腰に深く体重を預けた。その尻穴に、何かが侵入した。
「あんっ……!」
流石に声が漏れた。太さから考えて尻穴に入れられたのは親指だ。ぐりぐりと肛門周辺を弄りまわされる。深く腰を落としたのが仇になった。彼女はそれに対して腰を僅かに浮かせるしかなく、一度浮いた腰はやがて下がるしかない。
淫水に濡れた互いの性器には摩擦を発生させる余地はなく、ただ湿った音を一度立てるのみだ。それが溜まらなく彼女の欲望に火をつける。
陰毛を抜かれ、尻をはたかれ、ときに指先がケツ穴をほじり、同時に陰核が弄ばれる。幾度となく繰り返され、やがてカリスタが保っていた正気は森の静寂に消えていった。
どれが契機になったのかをカリスタは思い出せない。気付けば彼女はただひたすらに腰を振っていた。口から漏れた唾液は、顔や胸に零れ落ちて、精液と混じる。
「あ……はっ……くっ……あんっ! イグっ! やだっ! 私……ばっかり……!」
こうして腰を振っている最中もフェルターは無言を貫いた。まるで男の体を使って自慰に耽っているだけのようですらある。それは、貞操を大事にしていたカリスタにとっては、耐えられない状況だった。
「……やだっ、これ以上、これが続くのいやっ。……ちゃんと……犯してっ。激しく……私を狂わして……!」
ねだった時点でそれは狂気も強姦も成立しえない。それでもカリスタにはそうこいねがう以外に選択肢はなかった。
フェルターがカリスタの望みに応じる。激しく下から突き上げられた。
「あはっ……いいっ! すごいのっ! あなたっ! 私の淫乱な様を見て……っ!」
もはや彼女の中に、彼女を咎める感情はない。夫への愛情さえもが、今、辱めを受けているという事実を促進させ、それさえもが彼女の快楽の糧だった。
何度目かの絶頂の果てに、彼女は倒れ込んで、フェルターの胸に体を預けた。
「お願い……。私のイヤリングを、外してからつけてみて……。夫への気持ちが、このイヤリングのせいかどうか、確かめたいの……」
イヤリングに洗脳紛いの効果があったとするならば、夫は未亡人となる妻を部下にあてがったことになる。違う。そんなのは些細なことだ。
重要なのはこの十年、赤豹団を内外で支え続けたその燃料たる、自らの愛情が道具にもたらされたものかどうか、確かめなくてはならない。
――もし、そうだったら?
と内心で疑問を抱き、彼女は自嘲気味に笑う。
だったら――妻という奴隷から、ただの肉奴隷に変わるだけ。ご主人様が代わるだけで――自分はずっと、ただの肉便器だった。
フェルターはカリスタの哀願に応じ、イヤリングを外し、そして付け直した。
瞬間、出所不明の熱情がカリスタの胸に湧いた。
夫をいつから愛し始めたのか、憶えていないのも無理はない。理由も経緯もなかった。イヤリングは魔道具で、着けられると着けた相手を愛してしまう。
自分の愛液で濡れた陰茎を、カリスタは頬張った。汗による塩味も恥垢のエグ味も、あふれ出る熱情が美味に変換させる。蕩けた眼差しで上目遣いにし、フェルターの視線と絡むだけで愛液がさらに分泌される。ペニス特有の臭いを鼻腔から吸い上げながら、熱を帯びて彼の陰毛を揺らした。
フェルターの手が彼女の後頭部に添えられる。溢れる期待に、フェルターは即時に応えた。亀頭が喉ちんこを穿つ。息苦しさも嘔吐手前の吐き気さえ、愛は性感にすり替える。
口内で肉竿が脈打ち始める。待ちきれなくて唇を窄め、彼女は精液を吸い上げる。破裂し吐き出された精液を嚥下する。
「ああ……何これぇ……。あなたを愛してるのに……。夫のことも愛している……。あなたのおちんぽ欲しくて仕方がないのにぃ……。夫に申し訳なくて……それが、気が狂いそうになるくらい気持ちがいいのお」
とろんとした眼差しで、カリスタは言うと舌を出し、フェルターに尻を突き出した。
そのアヌスにペニスが突き込まれ、形の良い彼女の乳房を男の手が淫靡に歪める。
「そうか、いいか? なら今日から俺の奴隷になれ。夫のことを愛したままのお前を受け入れてやる」
「なるぅ……なりまふぅ……。だからもっとぉ、おちんぽください……っ!」
「もっと欲しいんだな……? それじゃあこんなふしだらになったお前を、部下や敵対していた連中に見てもらいに行くとしようか」
「だめぇ……それはだめぇ。私、夫の肉奴隷だけど……山賊のみんなにはこんな姿見せてないのお……」
と、言いながらも彼女の真意は股ぐらから溢れた愛液が示していた。
獣のような体位で幾度か混じり合った後、未亡人の山賊はフェルターに連れられて、森のいずこかへと消えていった。
山賊編は他キャラ入れてもう少し続きます
章タイトル、職業・名前にしてるのSDガンダムの円卓の騎士の影響が強い可能性がある。