国境線に、石積みで建てられた堅牢な城門がそびえ立っていた。異国を牽制するために数百年前に建てられたガロッゾ城塞である。隣接する領地――特に魔導森林グラヴィカの襲撃に備えるため、多くの戦力が割り振られている。
『閃銀』の異名を持つ彼女――アウレリア・シルヴェリスは天守にあたる最上層から異国を見据える。腰まである金色の髪をなびかせ、銀の鎧に身を包む。宝飾はないが、一目で名匠が鍛えたと分かる長剣を腰に備えている。
彼女は敵軍が迫る予兆がないことに安堵し、同時に焦っていた。
武功を立てたい――などという自分本位な焦りではない。
魔導森林との戦いは一山いくらの奴隷傭兵の差し向けあいだ。互いに実質的な損害はない。奴隷傭兵などいくらでも畑から生えてくる。
何故、そんな無意味な争いをしているのか。剣姫庭園と魔導森林は政治的にも軍事的にも七女神国全てが注目する要所だ。
七女神国。この大陸には七つしか国はない。国とは女神が治めるものだ。剣姫庭園や魔導森林は自治を認められた領土であり、形式上は国家を名乗るが、厳密には七女神国の領地に過ぎない。つまり、この辺りは各女神国においては辺境、しかし四大国の辺境が隣接する最前線でもある。
剣姫庭園と魔導森林は不倶戴天の敵であり、拝する女神こそ異なれど、刃を交わすだけにとどめられる程度の関係である。他の国――そう、眷属や亜人を用いる東部や北部国家に比べればまだ対話の余地がある。
これは戦争を継続していると見せかけた一種の同盟関係だ。急に二国で和平を結べば、その瞬間、隣接する国家全てが敵になる。着々と軍備を整える他国に対し、形だけの戦争を続けながら好機を待つ。それが『剣姫』の戦略だというのは、剣姫庭園でも三指に数えられるアウレリアだからこそよく分かる。
だが――形ばかりの戦争に自分がかまけていていいものなのか? アウレリアはそう思う。
やるべきことは山積みだ。
都市部や山村部で発見されたギフトホルダーの確保。戦力増強のためにも後顧の憂いを断つためにも、市井のギフトホルダーを捨て置くわけにはいかない。
どこからか侵入してきた形跡のある亜人の退治。ゴブリン(チビ)やリザードマン(トカゲ)はまだいい。問題はオーク(ブタ)だ。女性器であれば獣でも人でも襲う性欲に憑かれた異形の怪物。アウレリア麾下の閃銀騎士団でも、一体の討伐に数十名が必要で、犠牲が出るのは免れない。奴隷傭兵などでは死体の山を作るだけ――もっとも、時間稼ぎに使えれば十分だが。
国でも三指に入る騎士と、二千を数える精鋭揃いの閃銀騎士団が、魔導森林との牽制に使われてしまっている。
いかん。
と、彼女はかぶりを振って迷いを払うと、部下に城塞を任せ、城を抜けた。もちろん遠くにまで向かうわけではない。任された城塞の中にいると、嫌でも指揮官の視座で物事を考えてしまう。そんなときはただ、剣を振るうに限る。
城塞から少しだけ離れた、お気に入りの場所にたどり着く。林に囲まれた草原で、近くには喉を潤すための泉もあった。
彼女は剣を抜いた。しばし、無心で剣を振るう。
数百と剣を振るだけで、頭の中の霧が晴れていく。我ながら単純な構造だと自嘲するが、苦悩するよりはずっといい。
そのとき、彼女は林に誰かがいる気配があった。音はなかった。だが確かにアウレリアは視線を感じた。部下のものではない。
野蛮な――それでいて下賤な。
分をわきまえぬ奴隷傭兵よりも、むしろ――。
「っと、射殺しそうな目だな。アウレリア・シルヴェリスだな」
姿を見せたのは奴隷傭兵にしか見えなかった。黒髪に黒い瞳。量産品の安物の剣に鎧を身につけている。だが、違う。ただの奴隷傭兵ではない。アウレリアは相手の容姿ではなく、自らの感覚を信じた。
男は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。
ピッと指先で弾くと、羊皮紙はアウレリアの前に滑り落ちた。
アウレリアの手配書だ。生け捕りのみで金貨二千枚。大陸全土にネットワークを有する奴隷商人が、ギフトホルダーを性的な玩具にするために作成したものだ。金貨二千枚もあれば、孫の代まで遊んで暮らせる。だが、奴隷商人には慈善家ではない。金貨二千枚がはした金に思えるくらいに、捕らえたギフトホルダーで稼ぐつもりだろう。
剣を抜く。アウレリアは自分の顔が描かれた手配書を両断した。
「ひでえなあ。それだってタダじゃねえんだ。……まあ、代金は俺の奴隷に体で支払わせたが」
「奴隷……? まあいい。それで? お前の命は金貨二千枚よりも安いのか?」
冷酷な眼差しでアウレリアは男を見た。
「フェルターだ。まあな。俺の命になんて価値はない」
男――フェルターは表情に翳りを浮かべると、剣を抜いた。アウレリアは不明を恥じた。剣の柄は明らかに安物であったが、刃の鋭さはなかなかのものだ。少なくともアウレリアの全力の一撃を幾度か耐える程度の業物ではある。無論、使い手が凡愚でなければ――だが。
先に動いたのは男だった。駆け出すと同時、男は無手の左手から何かを放った。砂か何かによる目くらまし――否、急制動をしてアウレリアは横に飛ぶ。
「臆病だな。ただの砂だぜ?」
「――毒の類いかもしれんしな。警戒して損はあるまい」
閃銀アウレリアの体を麻痺させるような毒を、彼女は知らない。だが、未知は世界にありふれている。臆病は謗りではなく、蛮勇こそ恥じるべきだ。
アウレリアが駆ける。神速の踏み込みに、フェルターの反応は間に合ってはいなかった。剣は確かに上等だ。だが――アウレリアの剣が薙いだのは彼の腕だ。剣を握ったまま男の腕が地面を転がった。
「良い腕だ。もう少し気品を磨けば、我が騎士団に加えてやってもいいのだがな」
世辞ではなかった。アウレリアの今の一撃を防げる者は、閃銀騎士団にもひとりもいまい。仮に防げたとしても――別たれた手は、必ずや剣を落とす。断たれても剣を手放さない心意気は十分に買える。
「は。イテえなぁ。けど、いい塩梅だぜ。苦労したらその分だけ楽しめるってもんだ」
冷や汗を垂らしながらも、フェルターは戦意を萎えさせない。
「楽しむ? 何をだ?」
「俺の股ぐらの逸物でひぃひぃ言わせるのが楽しみだってんだよ」
フェルターは残る片手を前に出し、アウレリアに挑みかかってきた。性根は腐っているが――意気は認めよう。アウレリアは突きを放ち、男の心臓を貫いた。間違いない。今まで殺した奴隷傭兵の数は千を越える。これは致命の一撃のはずで――。
だが、フェルターは倒れない。腕を落とされ心臓を貫かれても――まだ両足で地面を踏みしめ立っている。
それどころか。
腕の切断面から肉が盛り上がり、やがて再生した。オークを思わせるの再生能力である。しかし、ブタに知性はない。喋り潜み策を弄すブタなど、この世にあってはならない――。
「アウレリア様!」
聞き慣れた声がして、アウレリアは安堵した。
リヴィス・オーシアン。青い髪と鎧をまとう、剣姫庭園のギフトホルダーの一角だ。
「申し訳ございません。この男を追っていたのですが、まさか、ここに現れるとは」
「そうか。リヴィスの判断は正しい。この男は生かしてはおけぬ。人の知性にブタの再生能力。下手をすれば何か他に隠しているものがある、腕は私が抑える。その間に、ブタの首を刎ねよ」
望外な増援で、戦いの趨勢は変わった。力比べに徹していても負けたとは思わないが、こうなればフェルターはアウレリアの戒めを振りほどけねば死ぬだけだ。奴隷傭兵とは思えない剛力であるが――剣姫庭園で名を馳せし閃銀には及ばない。
狙いが自分であったことにアウレリアは心底からの安堵を抱いた。仮に、もっと弱いギフトホルダーを、この男が狙っていたのなら。
首に、何かが巻き付いた。革製の首輪だ。鎖につなげられているわけでもない。これが、彼女の拘束になるはずもない。
だが、急速に力が萎えた。拮抗どころか凌駕していたはずのフェルターの腕力にアウレリアは容易く組み伏せられてしまう。
「リヴィス――そなた?」
「申し訳ございません。アウレリア様――!」
悔恨と罪悪感に染まった顔で、リヴィスが謝罪した。一般的な女性と変わらない腕力になった彼女はフェルターにたやすく組み伏せられてしまった。
「魔女の首輪。これを嵌められたギフトホルダーは力が出せなくなる。安心しろ。頑丈さや体力に影響はない。……まあ、それはすぐに実感できるか」
フェルターは言うと、アウレリアの下履きを力任せに破った。そのまま両足が力任せに開かれ、陽光に彼女の秘部が照らされる。屋外で性器を晒すのは当然だが初めてだ。それでも彼女は気丈にフェルターを見返す。
「リヴィス。どのような弱みを握られた?」
「弱みなんか握っちゃいねえよ。ただの契約だ」
言うとフェルターは顔を彼女の陰部に近づけた。咄嗟にアウレリアは両腕で頭を押し返そうとするが、今は力ではとても叶わない。ゆっくりと、だが確実にフェルターは抵抗さえ楽しむように、彼女の性器へと顔を近づけてくる。吐息が触れたのを感じ、アウレリアの背筋に怖気が走った。
「汗をかいた分、メスの匂いが濃いな。さて……味はどうかな?」
何を言っている? いや、まさかそんな――と彼女思ったとき、ヌメリとした感触のものが秘部を這った。信じられないし、信じたくもなかったが、それが舌だという事実を認めないわけにはいかなかった。
「味もいい。……が、信じられないな。リヴィスもそうだったが処女とはな。二十五にもなってまだ男も知らないのか」
分かるものなのか、とアウレリアは愕然とした。確かに彼女には経験がなかった。
それよりも、意識が向いたのは、リヴィスの名が出たことだ。今も秘部を這いずるフェルターの舌さえ忘れ、彼女は友人であり後輩の顔を見る。リヴィスは泣いていた。本意で加担しているわけではないのだろう。
何より、リヴィスがどのような目にあったのか、想像するだけで胸が痛んだ。戦う前「奴隷に体で払わせた」とフェルターは言った。リヴィスを指しているのだとすれば、酷すぎると彼女は怒りを抱いた。もっとも、リヴィスに加えられた陵辱は彼女の想像など絶していたが。
「辛気くさい顔をするな。お前はそこで俺とアウレリアを見てオナニーしてろ」
「ふざけるな!」
とリヴィスは叫んだ。その意気だ。アウレリアは彼女に期待した。リヴィスには魔女の首輪はない。つまり、彼女にはアウレリアを助ける力がある。が、知らず目でリヴィスを追った彼女は、リヴィスが言葉とは裏腹に下履きを脱ぎ、自分の性器を弄り出す姿を見て、混乱した。
「だから言ったろ。こいつは俺の奴隷だってな。どうしてこんな風になったのかは、いずれ分かる。似たような体験をさせてやるからな」
フェルターがそう言ってからズボンを脱ぎ、剛直を晒した。アウレリアは無意識に息を呑んだ。知識として知っている男性器より圧倒的に大きかった。
不意に、彼女はフェルターが腕を再生させたのを思い出す。
「――貴様、ブタか!?」
オークのペニスは異常な大きさで、犯された女はほぼ確実に絶命すると聞く。この男が一部オークの性質を持つ人間だとすれば納得できる。
「さてな。まあ、たいした秘密じゃない。やりながら色々教えてやるよ」
フェルターの体重がかかり、アウレリアは完全に動きを制された。何かが改めて秘部に触れる。それは先ほどの舌と同じく濡れながら、硬度は段違いだった。
エロまで遠いうえに前戯しかなくてごめんなさい。
また、毎日更新は私には無理です。
画像が意外と手間取りやがる、、、。