青空を自らの居城の天幕とし、英霊楽土の領主ヘルミーナは退屈をトモエの悲鳴で紛らわしながら、報告のために部下が訪れるのを待っていた。
天に浮かぶ円形の壇上と、階段、それに門。最低限の設備で戦力もヘルミーナ個人のものに限られるが、こここそが英霊楽土の領主城だ。
白亜の円の中央に跪いた部下から報告を受け、彼女は整った眉根を歪めた。
雅典戦国中部は安定している。英霊楽土が擁する神馬騎士団は広い領土を制定するに相応しい強靱さと機動性を備えるためだ。
だからこそ、ヘルミーナは退屈と不満を一層に感じる。
戦争女神アテナの眷族たるヘルミーナにとって、戦いが生き甲斐である。戦いは単独では行えない。部下も無論だが、敵が必要だ。対等な相手でなければ戦術も技量も活かせない。圧倒的な戦力差で行われれば虐殺でしかなく、戦争たり得ない。
故に彼女は単独で、この城で新たな敵を待つ。己の敗北など微塵も考えてはいない。彼女はやはり数多ある眷族と同種の不遜さを持っている。
下剋のために現れた敵を、ヘルミーナは尊ぶ。
直々に相手をし、打ち倒し――ヘルミーナは三つの道を選ばせる。否、戦いにおいて相手が選んだ道に、適した果てを与えるのだ。
死を望む者は肉奴隷に落とす。
ただヘルミーナに忠誠を誓うのなら神馬騎士団に召し上げる。
そして、死を越える気概を持つ者は眷族化の儀に推薦する。
ヘルミーナの推挙によって眷族となった者たちは、ヘルミーナに従属しない。ヘルミーナが求めるのは優れた敵だ。ギフトホルダーから新生し眷族と化した者たちは、雅典戦国内に領土を与えられる。中部は英霊楽土、南部は剣姫庭園が占有している。よって、雅典戦国では新たな眷族には二領土の地が割譲されて与えられることになる。
中部統一を最初に果たしたのは百年前。以後、幾度となく無数の眷族に領土が分割され、幾たびも統一を繰り返した。そのたびにヘルミーナ自身も神馬騎士団も名と力を高めてきた。
退屈なのは眷族に推挙するような逸材の減少だけが理由ではない。剣姫庭園の領主、ヴァレンティーナがヘルミーナの挑発に反応しないためだ。ギフトホルダーでも最上位の実力を持つ。生中な眷族など一太刀で葬るだろう南部の女帝は、レオナとアウレリアという双腕により、南部国境線の維持と英霊楽土への牽制を果たし、戦局が膠着している。
硬直は仕方がない。七柱の女神とその国には得手不得手がある。騎士型を多数擁する雅典戦国は魔術師型の多い降魔呪国に対しては優位だ。問題は降魔呪国の東にある国である。
原始楽国アニムス。
西から三番目に位置する原始楽国は、魔力探知範囲が狭い騎士型にとっては極めて厄介な地だ。生い茂る密林、彼岸が見えぬ大河、地中に魔獣潜みし荒野――地形と魔獣による天然の要塞が築かれている。
魔導森林を始めとした降魔呪国は雅典戦国にとって敵ではない。だが、領土の掌握が不可能に近い。魔術師型は戦場においては過剰火力程度の強味しか持たないが、ギフトホルダー一体だけで砦に匹敵する防衛能力を秘めた工房を設置できる。
魔導森林の領主を落としたとしても、属するギフトホルダーは残る。手に入れた領土では潜み隠れた魔術師型が跋扈し、工房を作り上げる。広がってしまった領土では治安を守ることさえ難しく、下手すれば剣姫庭園に工房の跳梁を許す羽目になりかねない。
こういった事情から、ヴィオレンティーナが専守防衛に努めるのも無理はない。否、慧眼であるとさえ言えた。元々剣姫庭園は代替わりを続けながら南部国境線を保持し続けているが、その支配体制が盤石になったのは当代剣姫、ヴィオレンティーナになってからだった。
「ヘルミーナ様……?」
彼女の苛立ちを感じとったのか、部下が不安げに見上げてくる。
「よい。他には?」
「罪人を三十名ほど連れてきております。いかがしましょうか?」
ヘルミーナの弾倉、ハーキュリーに変性させる奴隷傭兵は、こうした手はずで部下たちから献上させている。神馬騎士団の団長でさえ、ヘルミーナがハーキュリーを生み出せるとは知らない。彼女たちはただヘルミーナの暇つぶしのために罪人を運んでいると認識していた。
「褒めて使わす。無聊を慰めるには役に立つ」
言ってヘルミーナは酷薄に笑う。
トモエがこの領主城を訪れ、肉奴隷として奉仕を始めてから四日経つ。今もなお輪姦され続けているトモエが入った鳥籠を舞台に降ろし、奴隷傭兵たちとトモエを解き放った。他の鳥籠も全て壇上に降ろし、ひとつだけを解放する。選択に理由はない。ただ、他の鳥籠に入れられた者どもを躾けるためだった。
トモエの目からは涙も涸れ果て、熱心に陰茎をしゃぶっている。亀頭に溜まった恥垢を舌で舐めとり、迸る雄汁と一緒に呑み込む。犯されているというより、もはや熟練の娼婦を思わせる性技だった。
一方でトモエを犯し続ける奴隷傭兵たちにも、最初の頃の怒りや憎悪は薄れ、沙汰を待つ者として死を目前にした生殖本能を発散させているに過ぎない。もはやこれは責めではなく、人数比を無視すればただの男女の性交に過ぎなかった。
だが、幾度かその光景を目にした者たちは、鳥籠からの解放が意味するところを理解していた。
「ひぃっ……まさか、次が」
「ちくしょうっ! このクソ女がっ! 派手にイキよがってんじゃねえっ!」
「おらっ! 泣け! 泣けよっ!」
今更になって攻めの手を苛烈にしても意味はない。否、彼らがたとえ一切手抜きをしなかったところで変わりはしなかった。
トモエほどの強力なギフトホルダーは、肉体的な耐久力と状況への即応性に優れ、陵辱ひとつをとっても奴隷傭兵の手に余る。最初、トモエを泣き叫ばせていたのは彼らがただのクズだからだ。路傍の石ころどころか獣の糞程度の存在に、全身をくまなく犯される。それが屈辱だったにすぎない。だが、そんな陵辱はすぐに慣れを生む。苦悶も絶望も手ぬるく、性感さえも甘かった。
無人の鳥籠はこれで計三基。階下に降ろせば部下がそこに新たな罪人――弾を込める。
解放された二十人の奴隷傭兵たちは自らの末路を知悉していた。我先にとトモエに覆い被さり、最期の情欲を解き放ち続けている。
ヘルミーナの真紅の瞳に似た、血色の光弾が放たれた。それらは舞台上を巡り、やがて奴隷傭兵たちにひとつひとつが向かっていく。
戦乙女に備わった、人間の雄を最強の亜人ハーキュリーに変化させる異能である。
英霊楽土を賜って以降、大陸史に戦乙女が現れた形跡はなく、彼女がこの異能を持つと知る者は絶無に近い。
ヘルミーナの口元が愉悦に撓んだ。眼差しの先には、怯え身を縮めようとして、力任せに体を開かれたトモエの姿がある。ほどなくしてトモエの悲鳴がヘルミーナの鼓膜を揺るがした。
その戯れが退屈を紛らわせたのも僅か一夜。
鳥籠は所定の位置に戻され、中にいる奴隷傭兵たちはトモエが房に入れられる度に情欲を発散させることしかできない。ただ、その陵辱は苛烈さを増している。トモエを貪る姿勢に甘えが見られれば、彼らはヘルミーナの手によってハーキュリーに変えられる。
それは彼らの死を意味している。ヘルミーナの奮起は十全に結果を伴っていた。
だが、それもつかの間。永き寿命を持つ銀髪の戦乙女は、すぐに倦怠を覚え始める。
「――ほお?」
階下に気配が現れたのを感じとったのは、そんな時だった。
空中に浮かぶ舞台へと繋がる城門が開くのは、ひとりでヘルミーナに挑む気概を持つ勇士だった場合に限られる。
門に迎え入れられたのは、黒い鎧を纏った面貌さえ定かでない者だった。漆黒の鎧は並のギフトホルダーでは装着さえもままなるまい。体躯も見事なものだ。ハーキュリーには劣るとはいえ、これほどの長身と肩幅を持つギフトホルダーは希少も希少である。
剣姫庭園や英霊楽土においても鋼壁レオナくらいしか思い当たらない。
黒甲冑はヘルミーナの玉座の前にまで歩を進める。拝跪などする気配は微塵もない。傲岸とも呼べる素振りで英霊楽土領主ヘルミーナを兜の奥で睨むつけるかのようだった。
「英霊楽土領主、戦乙女ヘルミーナだ。その挑戦的な態度だ。よもや礼儀知らずで従属を申し出るなどと言うつもりではあるまいな?」
期待したトモエの無様さに、ヘルミーナは不完全燃焼で乾いていた。そんな折に訪れたのがこの黒甲冑だ。己に挑み、死の先を望むだけの勇士であってもらいたかった。
眼下の黒甲冑が何事かを言った。すると、黒甲冑の背後が光ったような気がした。
現れたのは小柄な体を赤い鎧で包んだ、ヘルミーナもよく知る相手だった。
「ヴァレンティーナかっ!」
剣姫ヴァレンティーナ・ルビエラ。
魔剣グラムフェムトを携えた、剣姫庭園の領主であると同時に、ヘルミーナが知る中で剣士として二番手の力量を持つギフトホルダーだ。
眷族は素体の影響が色濃く残る。ならば、現有するギフトホルダーの中で頂点に近い技量を有するヴァレンティーナならば申し分ない。
「礼を失した入城、気を悪くするなよ。貴卿ご自慢の馬狂いどもがやかましく思えてきてな。下剋をし、併呑しに参った」
好戦的に笑うヴァレンティーナに対し、ヘルミーナは嬉しげに口端を裂いた。
「――しかし、ヘルミーナ殿よ。貴卿ともあろうものが些か臆病に過ぎぬか? 城への入城は単独行しか認めぬなどと」
「ふっ。余が求めるのはその恐懼を乗り越える勇士か――それを知りながら知恵で欺かんとする賢者のみよ」
語ったのは紛れもない本心だ。
確かに彼女の英雄変性は切り札である。この手札があると悟られていない相手には、ほぼ必勝と言える。上位ギフトホルダー級を簡単に揃えられる。単独で訪れた相手に対しては、多数の弾倉を備えるヘルミーナは悪夢にも等しかろう。
玉座から立つとヘルミーナは魔槍を握り、眼下の挑戦者ふたりに視線を向けた。警戒すべきは当然ヴァレンティーナ。黒甲冑の方は中身は謎だが、体格から十中八九レオナだろう。
部下からの報告ではレオナもヴァレンティーナ同様、赤を基調とした鎧を着用している筈だが、。ヴァレンティーナを隠すための偽装だと思われた。
階段を降り、二名の敵対者に向き合ってヘルミーナは構えをとった。
呼応するようにヴァレンティーナも剣を抜き放った。黒甲冑の方に動きはない。中身がレオナだとすれば、不自然な反応でもない。ヴァレンティーナを送り込み、必要とあれば援護に回る。そんなところだろうと当たりをつける。
ヴァレンティーナから気を抜かぬように留意して、ヘルミーナは黒甲冑の武装を確かめた。鎧だけでなく、武器も部下から得た情報とは異なっている。質は良さそうだが無骨な剣だ。圧倒的膂力に向いた武装ではない。黒甲冑への興味はそれで失せた。
というより、思考を放棄した。彼女が求むる相手は眼前のヴィオレンティーナのみ。食事を必要としないヘルミーナにとって、垂涎の存在とは強者のみだった。
待ち構えるヘルミーナに対し、先手を取ったのはヴァレンティーナだった。
ヴァレンティーナが舞台を蹴る。僅かに角度をつけて、ヘルミーナが槍を構えた右半身から遠のくように、向かって左側へと。
強者だとは知っていた。その力量に見合う武装を帯びているとわかっていた。
間合いで勝るヘルミーナが未だ距離を測っている最中で、長剣を握るヴィオレンティーナが斬撃を繰り出した。
牽制か。あるいは――特異な歩法で距離を詰めるか。
脳裏を掠めるは過去の追想。ただ一度、武芸の頂に触れた時の記憶が、ヘルミーナの脳髄で警鐘を鳴り響かせる。
飛ぶ、斬撃。
不可視の斬閃が大気を切り裂き、ヘルミーナの前髪を数本切り落とし――そこで、止まった。
咄嗟にヘルミーナは魔槍の柄で、ヴァレンティーナが繰り出した一撃を受け止めていた。
生まれ落ちた時から戦乙女であるヘルミーナにとって、武装とは即ち自身の肉体の延長である。受けた瞬間、ヴィオレンティーナの一撃の特性を肌で感じ取った。専用の魔剣を介し、魔力を斬閃の形状に留めて放ったのだ。並大抵の武具ならば受けたとしても両断される。
ヘルミーナがその必殺の一撃を防いだ瞬間、ヴァレンティーナの瞳孔からわずかに驚愕が漏れた。
「――見事っ!」
賞賛の声を置き去りにし、ヘルミーナは距離を詰める。
穂先が届く間合いで、ヘルミーナは刺突を繰り返す。ヴァレンティーナの頬に緊張による汗が滴る。手首や足などの末端。時には心の臓や喉元に太ももなど致命の箇所。弄ぶように放つ刺突は全て、視線とは異なる箇所を穿つ。これが想像以上に相手の神経を削るとヘルミーナは知っている。
油断なくヘルミーナは黒甲冑にも気を配る。黒甲冑は剣を取ることもなく、ただ呆然とふたりの戦いを眺めている。
ヴァレンティーナが一瞬の隙を突いて反撃の斬撃を放つ。踊るような優雅さで一撃を避けつつ、その運動量を利用して黒甲冑に近付くと、刺突を見舞った。
穂先は黒甲冑の右大腿を貫いた。甲冑の硬度は見事なものだ。これほどの鎧を前に貫いた記憶も久しい。見事なのは鎧だけではなかった。皮を貫き、幾多の血管を裂きながら肉を抉る。穂先を濃密な魔力の混じった血が塗らす。
「くく――よい、よいなぁ」
たまらず歓喜の声を漏らしたヘルミーナは、抑えられない恍惚を顔に浮かべた。
魔槍の穂先には彼女の神経が最も集まっている。他に類するものを知らぬ悦楽が、優れた勇士の体に突き刺す際にはあった。
その感覚が、雄棒で破瓜を奪う感覚に近いとは、ヘルミーナ自身でさえ知らない。
黒甲冑が膝をつく。ヘルミーナは後方に飛び退き、ヴァレンティーナを見ながら穂先を滴る血を舐めた。敏感な器官に濡れた軟体が触れる。当人に自覚はなかったが、それは実質的には自慰にも似た動作だった。
膝を折ったはずの黒甲冑が立ち上がった。いくらギフトホルダーであっても、大腿への傷がこれほどまでに迅速に治るはずがない。ともに騎士型である以上、治療魔術の可能性も薄い。何らかの魔道具か――それとも。
「まったく。これほどとはな。申し訳ないがヘルミーナ殿よ。多勢の強味を活かすとしよう」
ヴァレンティーナの隣に黒甲冑が立つ。何らかの手段で傷を癒やした黒甲冑は剣を抜いている。
黒甲冑の正体がレオナではない可能性がある。魔道具で治癒能力を得ているのならいい。ヴァレンティーナは必殺の飛ぶ斬撃を晒したが、ヘルミーナは魔槍の真価を隠している。ヴァレンティーナを一撃で無力化してしまえば、治癒能力を持とうと嬲るだけだ。
問題は――異能として再生能力を持つ眷族がいることだ。ヴァレンティーナと眷族が結託し、下剋戦を挑んできた。にわかには考えがたいが、ヴァレンティーナが挑んできたこと自体がヘルミーナの予想外である。
一分――否、一厘未満しかない敗北の気配。
「多勢の強味――か。ならば、こちらも存分に己が本領を見せるとしようか」
ヘルミーナはヴァレンティーナへ意趣返しをし、敗北を予感した屈辱を飲み下した。
この両名を相手にしては魔槍を手放す余裕はない。鳥籠を選ぶのではなく、全てを舞台に呼び寄せるしかなかった。
奴隷傭兵で満たされた鳥籠が十基、壇上の周囲に轟音を響かせて接地した。
折良く弾倉は補充した。しかし、いくらヴァレンティーナたちが相手であっても、二基も開ければ十分だ。ヘルミーナはそう判断した。
「もうかよぉっ……」
「俺たちじゃねえよなあ違うよなあっ?」
「うるせえ! ヘルミーナ様の機嫌を損ねんじゃねえっ!」
「……なんだ? 一体何が――」
「おらおらっ、もっともっと膣締め付けろやっ! これで最期かもしんねえんだぞっ!」
選ばれないように祈る者。
助命を嘆願する者。
運び込まれたばかりで状況を理解していない者。
トモエを犯すことに注力する者。
それぞれの声が天空に響きわたり、静かだった壇上は喧噪で溢れかえった。
「これを見た者は二度と地上には戻れぬ。従属の道は途絶えた。死の先へ至るか、肉の人形となり死ぬまで穢されぬくか。ふたつにひとつだ」
圧倒的な戦力による蹂躙の予感に、ヘルミーナの口端は持ち上がる。彼女の手が赤く輝き始め、やがて光弾が産まれる。光弾はヘルミーナに近いふたつの鳥籠へと向かっていく。偶然にもトモエがおらず、どちらもが古参だったからだ。
そして、鳥籠が解放された。
皮が膨らむ音がしたかと思うと、重低音の絶叫じみた咆吼が天空に谺する。光弾を受けた奴隷傭兵たちの体は隆起し、徐々に尋常ならざる巨躯へと変じていく。
「これが、多勢というものよ。のう、ヴァレンティーナ? 最強の亜人たるハーキュリーが二十体。見ていればわかったろう。我が弾倉はまだ八基も残っておる。百のハーキュリーに戦乙女たる余。これを退けられるか?」
嘲りながら彼女は告げ、指先で二十体のハーキュリーに敵を示す。
ヴァレンティーナが薄く微笑んだのが見えた。絶望に笑うしかなかったという様子ではない。気付くと、黒甲冑の足下が光り輝いている。
「来い。アルガナ」
ハーキュリーどもの荒い呼吸の中で、その声ははっきりと聞こえた。驚くことにそれは男の声だった。光は魔法陣を描いている。ヴァレンティーナ出現時に光ったのも気のせいではなかったらしい。黒甲冑に隠れていたのではなく、魔術による転送だった。
転送魔術は魔術師型にしか扱えない。
ヘルミーナの肌が粟立つ。この戦況で余裕を残すヴァレンティーナ。魔術師型との結託。それは不穏な符合だった。降魔呪国には戦乙女ヘルミーナにとって、唯一の天敵がいる。
「……莫迦な……っ」
召喚された褐色の肌をした美女を見て、ヘルミーナは思わず呻いた。
あらゆる雄を虜にする魔性を帯びた眷族である。
「くくっ。ハーキュリーを出させたか。流石は我が主様じゃ」
歪んだ表情のままで周囲を見渡したヘルミーナは、己に殺到するハーキュリーどもに視界を埋め尽くされた。一体一体であればものの数ではない。瞬時に冷静さを取り戻し、数体を石突きの側で胴を打ち、押し退けた。
だが、彼らは止まらない。自分たちの命を弄んだ怒りを発露して、残るハーキュリーがさらにヘルミーナに迫る。仕方なく飛び退きながら、起死回生を狙う。ヴァレンティーナの対処をしつつ、この数のハーキュリーを始末するのはヘルミーナにも不可能だ。
ハーキュリーたちから飛び退き、同時に優勢で油断した淫魔に刺突を放つ。その槍は黒甲冑の男の胸板に突き刺さる。確実に心の臓を貫いた。これで増援は呼べまい。黒甲冑は身を挺して淫魔――アルガナを庇ったようだった。
槍に乗せた初速は鎧と男の厚い胸筋によって静止した。主と呼んだ男が自らを庇うと予期していたのか、アルガナはなおも余裕を崩さない。
槍を手放し、全員から距離を取る。幸い、空に浮かぶこの舞台には十分な広さがある。
「いいぞぉっ! ヘルミーナをやっちまえっ! そのクソ女をいたぶるんなら手伝うぜえ!」
周囲の鳥籠から野次が飛ぶ。怒りの形相でヘルミーナは彼らを睨み付けると彼らは押し黙ったが、他の鳥籠には影響はなかった。
それさえも今はどうでもいい。あろうことか戦乙女たるヘルミーナに不埒な妄想を抱いたツケはいずれ払わせるが、重要なのは相手の油断を突くことだ。
彼女の視線は奴隷傭兵に向けられたが、残る全感覚は彼女の肉体の延長たる魔槍に集中している。ハーキュリーはまるで知性があるかの如く、ヘルミーナの周囲を覆い始める。アルガナが命じているのだろう。完全に周囲を囲まれている。浮遊できるヘルミーナにとって頭上は逃げ場だが、無手ではヴァレンティーナの飛ぶ斬撃は防げない。大した速度は出せないため、回避も不可能だ。
だが、これでいい。
隠しきった最後の手札を開陳する。
「死ね……っ」
囁くような声量で告げる。
魔槍が魔力を用い直進を再開する。狙いは今なお黒甲冑の背後に隠れたままのアルガナだ。
――だが。
全身を虚脱感が襲い、彼女はその場で膝から崩れ落ちた。
推進力を得たはずの魔槍は、淫魔を貫くこともなかった。心臓を突き穿ったはずの黒甲冑が動き出し、恐るべき膂力で魔槍を掴んだためだった。
虚脱感も同じ理由だ。神経が強く通っている槍の柄を自分に伍する魔力出力で激しく握られ、彼女はまるで全身を拘束されたかのような感覚に陥っていた。
抵抗力を失い倒れ込んだヘルミーナの四肢を、ハーキュリーたちが掴んだ。大の字に四肢を伸ばされて、磔刑の如く身動きひとつ取れなかった。ハーキュリーどもの股間の逸物は、一様に天に向かって屹立し、夥しい量の先走り汁を溢れさせている。
「犯したいのはやまやまじゃろうがなあ。まずは順番じゃ。戦乙女の純潔は我が主様のものじゃよ」
鞍替えをしたハーキュリーたちが囲いを解く。そして黒甲冑がアルガナとヴァレンティーナを伴い、拘束されたヘルミーナの前へとやってくる。
黒甲冑が部位ごとに分割され、自動的に脱げ落ちた。中から現れたのは野卑な笑みを浮かべる、ひとりの男だった。心臓を貫いたはずが、その傷は既に癒えている。ハーキュリーのそれに匹敵する逸物が、まるで彼女を照準するようにいきり立っていた。
「よう。英霊楽土の領主様。俺は唾王フェルター。全ての女神を犯し組み伏せるために戦う八番目の王だ」
男はそう名乗った。八番目の王。ヘルミーナに匹敵する魔力を帯びているのは、先ほど魔槍を掴まれた際に実感した。そして、ヴァレンティーナと眷族のアルガナを連れている。雅典戦国と降魔呪国のギフトホルダーと眷族を引き連れている事実は、八番目の王という名に信憑性を与えている。
「ふん。ヴァレンティーナめ。よもや貴様ほどの者が誰かにへつらうとはな」
「随分とそなたを買っておるのお。ブタどもに犯されてひいひい泣いておいったと知ったら何と思うかの?」
「お前もブタで調教されたと聞いたぞ。我らが給仕長様直々にな」
アルガナとヴァレンティーナが舌鋒を交わし合う。
軽口のような物言いだったが、筆舌に尽くしがたい恐怖をヘルミーナに抱かせた。
フェルターが身動きできない彼女に近寄ってくる。それだけで、びくりとヘルミーナは体を震わせてしまう。
魔槍と感覚は遮断されていない。アルガナが魔槍を撫でている。どうやらアルガナの魔術によって、操作は阻害されているようだ。
もはや抵抗の余地はなく、人外の逸物を持ったフェルターが、ヘルミーナに手を伸ばす。
「ぐっ……」
呻いて、彼女はただフェルターを睨み付ける。その眼差しを舐めとるように、フェルターが舌先で自分の唇をなぞった。無骨な手が彼女の鎧に触れる。力任せに引き剥がされる。
戦乙女にとって鎧は身を覆う外装ではなかった。戦乙女は鎧姿で新生する。鎧は生まれ持った殻である。排泄などの機能を持たない戦乙女は、汚れを知らずよって身を清める必要もない。
殻が剥がされる。しみひとつない雲にも似た白い肌が始めて外気に触れる。男を知らぬ薄桃色の乳首はこれから始まる行為を予見し既に固くなっていた。
下半身まで剥かれ、彼女は生まれて初めて裸身となった。それも無数の男たちの視線が集まる中でだ。羞恥に頬が赤く染まる。
フェルターの手が彼女の形の良い乳房を包むと。
「ひぁっ……」
艶美な声が口から溢れ出た。触れられるだけで電気が流れた。剥き身になったばかりの白肌はそれほどに敏感だった。さらにもう一方の乳房にも手が触れる。両の手が乳房の柔らかさを堪能するように、撫で回し揉みしだいて形を変える。
「はん……ぁ……k……んっ」
乳房の中に圧力で反応する電気仕掛けがあるかのように、ヘルミーナの体はびくびくと揺れる。
歯がみして抗いがたい感覚をヘルミーナは耐える。より固さを増した乳首に、何か硬いものが触れ――。
「あへぇぇっ!」
と舌を口からはみ出させ、全身を一度大きく痙攣させた。唇の端からは涎が垂れ始めている。
「乳首を噛んだだけでイくとはな。戦乙女ってのは随分と淫乱なようだ」
「淫乱……などでは……ないっ……」
余韻をこらえ、必死に言葉を訂正するが、その姿を男は嘲笑う。それから、男の両手が彼女の臀部に触れた。こちらも当然、始めて他者の体温を味わう部位である。乳房よりは刺激で劣るが、触れられ揉まれると、艶やかな息が漏れるのを止められない。
男は臀部に力を込めた。それに応じるように、両足を掴んでいたハーキュリーが彼女の足を高く掲げる。空中で大股を広げ、膣を陽光に翳した正常位の姿勢にさせられる。
「おう。こっちも綺麗な桃色だ。ぴったり閉じてる割にゃあもうびちゃびちゃじゃねえか。さあて。戦乙女の初物はどんな味がすんのかな」
舌を伸ばしてフェルターが頭を下げていく。目を瞠って彼女はそれを凝視した。やがて、フェルター後頭部が自分の陰部を覆い隠す。いつ来るかわからない刺激に怯え、彼女は身を堅くするくらいしか抵抗の術はなかった。
「ああああっ! ああっ!」
軟体が彼女の膣口に重なる。ただそれだけで戦乙女の口蓋は嬌声を喚き立てた。
「ああ……ああああぁ……あはぁん……ひぃっ、あああああ!」
舐め回され、膣口の入り口をちょろちょろと出入りされ、最後には陰核を歯で刺激された。女陰を操られ、抑揚と吐息で嬌声を奏でる。そんな有様だった。
「匂いも味も甘ったるいな。聞こえるだろ、滝みたいに溢れてやがる」
喘ぎをこらえ、荒い自分の呼吸に混じってびちゃびちゃと止めどなく液体が床に垂れる音がする。自らの秘部から溢れた淫水の音である事実を認識すると、心なしか音が激しくなったような気がした。
「さあてお待ちかねの本番だ。締まりのねえメス穴に栓してやるから喜べよ」
固くなった雄棒が大股を広げさせられたヘルミーナの腰に乗せられる。自分の下腹部との対比でただでさえ巨大な肉竿がより大きく感じられた。
膣口に亀頭があてがわれる。フェルターの指先が彼女の秘部をこじ開け、蜜肉を露見させる。
歯を堅く食いしばる。その直後、熱された鉄杭が彼女の体を深く貫いた。
「ぐぅぅっ! んんん……ぅ! うう……」
膣襞を裂きながら男性器が彼女の膣内を侵食する。濃厚で甘い感覚に酩酊しそうになるが、途中で鈍い痛みが奔って無情にも彼女の意識をはっきりと覚醒させる。衝撃で目を見開くが、まだほとんど陰茎は彼女の蜜壺に収まってはいなかった。
恐怖で口を開いて、小さく横に頭を振る。しかし、それは周囲のハーキュリーを喜ばせるだけに過ぎない。フェルターは彼女の乳房に顔を寄せて舌先で刺激し始めた。体内で分泌される愛液が増えたような気がする。幾多の雄の眼差しと、ヴァレンティーナやアルガナの視線が、彼女の羞恥に火を点ける。だが、それさえも快楽の糧となる。
肌を叩いた音がして、同時に子宮口に衝撃を受けた。その頃には犬のようにだらしなく舌を出して、蕩けた表情をヘルミーナは浮かべていた。
フェルターが腰を引く。淫水で摩擦こそ薄れているが、極太は彼女の膣襞に絡み合い、激しい悦楽を感じさせる。引き抜かれるだけでもこれほどの快楽を味わう羽目になるとヘルミーナは始めて理解した。
「流石に百年ものの処女は始めてだ。良い熟れ方じゃねえか。子種が欲しくてたまらねえって感じだな」
彼女に伝えるというより、周囲に喧伝するかのようにフェルターは言うと、口外にまろびでた彼女の舌に自分の舌を絡め始める。そのまま舌を無理矢理に彼女の口に押し戻してくる。
自分の口内という領域で、フェルターの舌が彼女の舌を組み伏せ、ひたすらに嬲ってくる。その間にも陰茎は彼女の膣内を前後し、色を帯びた彼女の吐息は全てフェルターに吸われていく。
膣内を埋める肉が震え出す。
「ん……ぬぱっ……めっ。膣内はだめなの……ぉっ」
必死の哀訴を振り絞るが、言葉とは裏腹に音律はまるで子種を注がれるのを心待ちにしているかのようだった。
彼女の膣内で亀頭が爆ぜた。彼女の背が反り返る。誰が見ても絶頂に至ったと見て分かるほどの派手なイキっぷりだった。
「イッたか?」
「イッてぇなんて……なぁいっ」
呆けた視線にわずかな理性を纏わせて、彼女はフェルターをにらみ返した。少なくとも彼女はそういうつもりだった。
アルガナに従うハーキュリーたちが、彼女の体勢を変える。空中で縦方向に一回転させられ、その間に股から溢れた破瓜の血と淫水と精液のカクテルが顔を汚す。
四肢が左右に引っ張られたままなのは変わらず、ただ前後を反転させられた。秘部からは今もなお、三種の汁が混じった液が溢れている。
女たちが成される陵辱は幾度となく眺めてきた。だから次の行為が予測できてしまい、彼女は必死に頭を振った。
「尻穴は……だめっ。そこは……違うっ」
「なんだ尻穴に欲しいのか? 仕方ねえ。もう少し子種を濯いでやろうと思ったが、そんな風に懇願されちゃあな」
「いや……いや……」
力なく首を振るのが拘束されたヘルミーナに許された唯一の抵抗だった。
尻肉を両手で掴まれる。力任せに尻を割られ、肛門が露出する。
「こっちも随分と締まりが良さそうだ。食い千切られんようにしないとな」
フェルターが指先で彼女の秘部を弄る。淫水で濡れた指先が肛門に侵入してくる。何も通ったことのない未踏の直腸を、男の指先が汚していく。
「あふっ!」
その時、別の刺激が彼女の体を襲って、彼女は声を張り上げた。それは、彼女の魔槍に与えられた刺激だった。
「ほれ、主様の血じゃ。こんな風に乾かしてはもったいなかろう?」
アルガナが彼女の顔の前にやってきて、魔槍の穂先を舌先で妖艶に舐め拭っている。その動きに連動し、ヘルミーナの体が痙攣する。
「やめろ……槍を……離せ……ひぎっ!」
意識を前に向けた瞬間、今度は肛門に肉棒が突き立てられた。ゆっくりと掘削するように、フェルターの肉槍が彼女の直腸に向かい進んでいく。
ヘルミーナの反応が面白いのか、アルガナだけでなくヴァレンティーナの目にも昏い愉悦の色を帯び始める。アルガナが乳房の谷間に魔槍を挟み込み、舌先で穂先をちろちろと刺激する。人間には従来ない快感が、アナルを犯されている快感に重なり、思考が飛びそうになった。
「なるほど。戦乙女の魔槍にこびり付いた主の血か、それは美味そうだ」
ヴァレンティーナが鎧を外し、下着だけになって反対側から彼女の魔槍を谷間に挟んだ。長い槍の柄をふたりの双丘が挟み、二枚の舌が穂先と柄を舐めた。
槍の主導権はアルガナに奪われているが、感覚はヘルミーナとつながったままだ。
肛門を激しくフェルターの肉槍が前後し、一方で魔槍は豊かな四つの乳房に擦られている。
「は……やぁ……壊れる……余が……おかしくなってしまうぅ……」
呻きながら自分の現状を周囲に伝え、彼女は体内を湧き上がる二種の快楽に呑まれていく。肛門を犯されたことによる絶頂と、槍を刺激された射精にも似た性楽。まるで彼女自身よりも彼女のよがり方を知悉しているかの如く、三者は合同で彼女を絶頂の先へと導いた。
「おっおっおっ! イぐっ! 飛ぶっ! ほおおおおっ!」
もはや理性の欠片も残っていないような雌の泣き声を天空に響かせて、彼女はより高い場所へと打ち上げられた。
肛門に射精された雄汁が直腸に染みこんでいく。今度は彼女は床に座らせられた。両足を曲げられているのは正面から精液が溢れる秘部を晒すためだろう。
曖昧な焦点が突き出された亀頭によって合う。それが彼女の口を犯そうと唇に触れる。
わずかな理性を振り絞って、彼女は頭を両手で抱えるフェルターを見上げる。
「噛みちぎられる度胸があるか……?」
「いいぜえ。治るしな。俺にはむしろあんな醜態晒してまだ理性がある振りする度胸がねえよ」
先ほどの派手なよがりっぷりを指摘され、彼女は赤面した。だが、正気が残っている内は自分から陰茎を受け入れるような真似はできなかった。
が。
「ああっ!」
彼女の体は他の女性と異なり性感帯がひとつ多い。その魔槍は、ヴァレンティーナとアルガナのよっつの乳房に埋められ、ふたりは舌で石突きの方を舐め、咥え込んでいる。
「ちゅぱ……ほおれ、剣姫よ。我が主様で鍛えた口淫が活きるときが来たではないか」
「ちろ……れろ……まったく……戦乙女とあろうものが……ちろ……槍をこうされたくらいで……」
ふたりと槍は彼女の死角にいる。だが、槍の穂先に向けられた侮蔑の目が彼女に震えるほどの羞恥を与えた。そして、同時に、言葉にしようのない快楽も――だ。
穂先を舐めて絶頂に達した直後、今度は石突きの側に丹念な口淫を受けている。イッたばかりで敏感でありながら、石突きの側は未だ触れられた経験もなかったのだ。
ほとんど白目を剥いて、彼女は舌を口から放る。
「はっ。どうした? ちゃんと噛めるか?」
そんな声が聞こえたかと思うと、喉奥まで一気に陰茎を突っ込まれた。頭を力強く両手で押さえられ、なんの抵抗もできない。剛直が彼女の口内を敷きつめ、舌には逃げ場がなく様々なものの混じったエグ味が彼女の味蕾を刺激した。
「お前に味わわせてやるために今朝から大量にヤッてきたからな。当然、あのふたりの汁も混じってるぜ。うちの肉奴隷全員分の雌汁が染みついた俺様の肉棒だ。入念に味わえよ」
そんな声が彼女の耳に届くことはもはやなかった。イッてもイッても止めてくれない魔槍への刺激が、喉奥を犯される感覚に混じり合う。どこでイッているのかさえもヘルミーナはわからなくなり、全身が性感帯になったかのような感覚を受けた。
「おお、そうだ。忘れてたぜ。なんでお前が――戦乙女がハーキュリーを呼べるかを知ってたっていうとだな。剣姫庭園の歴史は百年を超える。お前は知らなかったかもしれんが、剣姫庭園には過去の戦乙女の記録は残ってたんだよ。お前がハーキュリーを作れること、そして、こっちには淫魔のアルガナがいる。ハーキュリーを呼ばせなきゃあ、俺とヴァレンティーナで十分にお前に勝てるからな。最初からお前は詰んでたってわけだ……って。こりゃもう聞こえちゃいねえか」
満足そうに言うと、フェルターは口内に膨大な量の精液をぶちまけた。意識は残っていても、理性が失われたヘルミーナは、青臭い精液を飲み干した。
無論、陵辱は終わりどころか、これからが始まりだった。
彼女自身がわざわざ生み出した二十のハーキュリーがアルガナの命を受け彼女を犯し始める。
荒々しい暴力的な怪物が、淫魔の統制を受け、絶え間なく彼女を一昼夜犯し続けた。
一瞬の隙もなく、巨大な陰茎が彼女の前後の穴を埋め立て、口を犯し、果てる。愛液は常に白濁した汁に呑み込まれ、いつからかあふれ出した涙も、顔にぶっかけられた精液に混じっている。
口が自由になる度に焦点の外れた目のままで、彼女は知っている言葉がそれだけかのように「許して……」と繰り返す。
何をすれば解放してもらえるのか。ヘルミーナには全くもってわからなかった。だから、彼女にできるのは謝罪だけで、その謝罪は彼女が亜人化させたハーキュリーたちには全く届かない。何故なら、彼女がそう彼らを作り替えたからだった。
「うおっ! すっげぇ! 今までヤッてきた女と全然違うわ。流石はヘルミーナ様っ!」
やがて理性がじんわりと回復したとき、彼女は鳥籠の中で奴隷傭兵に跨がって下から激しく突き上げられていた。
「あ……いや……」
奴隷傭兵たちによる陵辱は陰茎の太さや持続力の関係で、どうしてもハーキュリーたちよりも手緩くなる。今のヘルミーナにとってはだからこそ、彼らに輪姦されることが恐ろしかった。絶え間ない絶頂で意識が飛んでいれば、まだ耐えられる。
「お、こいつ。やってた意識が戻りやがったな。……っひゅう、意識ねえとあんまなあ……」
「嘘こけ。もう何周したと思ってんだ」
覚醒したヘルミーナを取り囲み、男たちが彼女を嘲笑う。
膣内に何十回目かわからない迸りを受けると、体が浮かされた。もはや奴隷傭兵に為すがままにされるくらいの力しかなかった。
奴隷傭兵が彼女の肛門にペニスを挿入する。
「おっ、こっちも締まりが良くなってやがんぜ。やっぱ起きてると違うわ」
肌と肌が当たる乾いた音を響かせて、奴隷傭兵のひとりが彼女を背後から激しく突き立てる。
「じゃあ俺はヘルミーナ様のお口を楽しませてもらうとしようかね」
男は彼女の後頭部を掴んだままで、仰向けに寝そべると、陰茎を口に咥え込ませてきた。噛みきるような体力も度胸も今のヘルミーナには残されてはいなかった。
「良いお姿だぜぇ、ヘルミーナ様よぉ」
横から乳房を揉みしだかれながら、自分の体勢を顧みさせられる。尻を抱え上げられ、背後から犯されながら、寝そべった男の陰茎を咥え込む。恥という概念のある生物には耐えられない屈辱的な姿勢で、彼女は犯されている。
直腸と口内にそれぞれが射精を終える。何の反抗もせず、彼女は大人しく精液を嚥下した。
「許して……許してください……」
ぶわり、と涙腺から涙が溢れ出る。これ以上は耐えられない。路傍の獣糞未満の価値しかない連中に体を欲しいままにされて、あまつさえ許しを乞うている。
かつて己が徹底的に貶めたギフトホルダーたちの末路と同じ立場に陥って、彼女はギフトホルダーたちと同じような態度しか浮かべられなかった。
「溜まんねえ。あのお偉そうな態度で、俺たちの命を弄んでたあのヘルミーナ様がこのザマだ。あの連中には感謝してもしたりねえわ。……おら。許すわけねえだろ。無駄な念仏唱えてねえで、咥えろや。テメェの口はそのためについてんだよ」
奴隷傭兵はそうヘルミーナを罵倒すると、恥垢のついた陰茎を差し出す。舌先で恥垢を舐めとって、口内に迎え入れると、自分から頭を動かして射精へと導く。
そんな戦乙女の艶姿に興奮したのか、ひとりが背後からのし掛かり獣のように膣を犯し始める。
前後から串刺しにされて、激しく揺らされながら、彼女の眦から涙が溢れた。一滴が男の陰茎に落ち、塩辛い涙の味をただ受け入れるしかなかった。
どれほどの期間、奴隷傭兵たちに犯されていたのか、判断する能力はヘルミーナから失われていた。
百年間彼女を支え続けた玉座は新たな王たるフェルターに簒奪され、彼の尻を乗せている。その上で、ヘルミーナは背面座位の姿勢で、激しく腰を振っていた。
「あはっ。余はご主人様のっ、肉奴隷っ! 何でも従いますし、何でもお話いたしますっ!」
完全に快楽の虜となったヘルミーナは腰のリズムに合わせて幾たび繰り返した奴隷宣言を歌い上げる。歌えば歌うほどに自分が奴隷になっていくようで、彼女は落ちていく自分に被虐的な快楽を感じるようになっていた。
フェルターの目的は雅典戦国の北部への侵攻だ。
英霊楽土と剣姫庭園を落とした以上、中部以南はフェルターの手の内にある。
しかし――とヘルミーナは快楽に溺れながら考える。
七国全て、北部は人外魔境だ。そこには女神と王、それに上位の眷族に常識外れの魔獣しか棲息していない。
戦争女神アテナとその配下について、話せるだけの情報は吐いた。
雅典戦国の上位三傑だ。その力について、知っているのは大陸全土でもヘルミーナくらいのものだろう。
今は遠く感じられる、かつての自分に尋ねる。
ヴァレンティーナの挑戦を待ちわびながら、何故、自分は北部へ挑まなかったのか。
朧気にさえ感じる、高貴さと純潔さ、そして強さを兼ね備えたかつての彼女はこう答えた。
――あの三人に、勝てるはずがないからだ。
敗れ、犯され汚され、快楽に落ちた今の彼女は笑う。
玉座の上で、自らの新たな主人のために腰を振る今の彼女は、視座が一段高くなっている。
天空から見渡す玉座からの風景は、男に跨がって見ると普段とは違って見えた。
ネクストターゲット
【挿絵表示】
パラメータで分かる! 現在の状況
【遠征中】
アウレリア→ガロッゾ城塞
カサンドラ→廃霊城(魔導森林領主)
フリーダ→鍛冶場(冒険者組合所属)
ヴァレンティーナ→剣姫城(剣姫庭園領主)
レオナ→北防城
カスミ→忍者の里
【地底唾王城総戦力】
フェルター 戦術157→196(トモエ+ヘルミーナ)
E唾王槌
E唾王鎧
※フェルターの戦術レベルは奴隷の半分が加算される
※ただし、地底唾王城以外では相手の戦術レベルに合わせてレベル制限される
特殊オプション:
毒合成レベル6
魔術工房レベル120
※魔術工房レベルは戦術レベルと同等まで上げられる
調教道具:
オーク5匹
奴隷傭兵50人
娼館(セラニアが娼館主。領地誓約発動可能)
自動張型(フリーダが供給)
インキュバスの館(各地に点在。拘束宙吊りが可能)
保護中:
村娘9人→給仕隊
村娘ティナ→給仕隊
未亡人ヨダ→給仕隊
治療中(カスミ編でインキュバスが買った分)
調教中:
修道女ルクレティア
設備:
地下牢
作戦会議室
→図書室(多分最初からあった)
→調理場(多分最初からあった)
魔術工房×4(セラニア、ロザリンド、ヴェレディア、アルガナ分)
機動教会(ルクレティア)
鉱山→カーラ。鉱婦20。必要な金属・宝石類の獲得
農地
領海→マリーナ。漁師20。新鮮な魚をお届け。売れる。ご飯レベルアップ。
山林
現在指揮者(農夫、木樵不在で資源活用不可)
【保有奴隷】
傭兵リヴィス 戦術10
騎士アウレリア 戦術20
剣士レビア 戦術10 諜報2
魔術師ロザリンド 戦術9 諜報5 工房20
暗殺者リドベダ 戦術8 諜報8 特技:特殊毒
槍騎士ヴァスカ 戦術11
誓約士セラニア 戦術11 工房20 特技:領地誓約
街盗賊ジリ 戦術7 諜報15 特技:ピッキング
魔導妃カサンドラ 戦術20 工房20
魔導姫ヴェレディア 戦術18 工房20
淫魔アルガナ 戦術40 工房20 特技:亜人魅了
漁師マリーナ 戦術6 漁師20
修道女ルクレティア(調教中) 戦術15 特技:機動教会、暴力結界
山賊カリスタ 戦術10
鉱婦カーラ 戦術5 鉱婦20
鍛冶師フリーダ 戦術18 鍛冶40 特技:武具鋳造、武具修理、張型開発
軽騎士ステラ 戦術16
新米騎士シルビア 戦術6
重騎士レオナ 戦術20 芦竜号 鋼壁鎧
剣姫ヴァレンティーナ戦術50 魔剣グラムフェムト
下忍カスミ 戦術8 諜報20 忍法嫁水
亡領将トモエ 戦術18
戦乙女ヘルミーナ 戦術60 魔槍 英雄変性
※戦術レベルは単純な戦闘力ではなく、完全な指揮でベストの戦果を発揮したらそうなるという塩梅
【領土】
魔導森林グラヴィカ
剣姫庭園ゴロッザ
英霊楽土ヴァリアーザ
【目的】
雅典戦国アテナイ→三傑討伐→アテナ討伐
降魔呪国ナウプリア→ヘラ討伐
他国→橋頭堡確保目標
忍者の里→下忍カスミを奴隷化