千年間、欲動の中に沈んでいた記憶が、フェルターの脳裏で覚醒した。
記憶の奥で色彩が風化したらしい。木々の緑も、闇を照らす篝火も単色の濃淡しか分からない。。
山の麓にある集落で、彼は日々を送っていた。畑を耕し飢えを満たし、倒した樹木で家を建てる。生業が分担される以前の時代だ。力が必要な仕事を男が成し、屋内での軽作業を女がする。村は群れというより、一つの命だった。
魔獣や亜人はその時代から生息していたが、彼は見たことはなかった。農作物を荒らす獣は、手製の罠や石器を使った男衆の腕の見せ所だった。牧畜が始まる以前、魔術もないその時代において、山から現れる獣は、害だけでなく恵みをももたらした。
外からの客人が、現れたことはない。集落から遠く離れた地には、多くの人が住む国がある。村長から彼は聞いたことがあった。しかし、その村長でさえ、外界から訪れた者と出会ったことがない。それほどに内部で完結した世界だった。
「――」
声が聞こえたが、意味を理解できない。言語が違うためではない。
彼は声に振り返る。そこには、ひとりの娘が立っていた。
「明日だな」
「――」
その女の声だけが、フェルターには聞き取れないのだ。声だけではない。女の顔を認識できない。あくまでも記憶を辿るフェルターだけだ。過去の己である彼の方は、その女の美しさを知っていた。眩しさに目が眩むような、気持ちだけが流れ込んでくる。
どうやら、彼とその娘は翌日、番うことになっているらしい。
原始にほど近いこの集落では、恋や愛などという個人の感情は無視される。成人として認められれば、村の中で適した異性と番う。多くの樹木を倒し、より獣を狩るのに尽力し、作物を育て上げた男が、器量が良く健康な女と生殖を許可される。
血筋も名誉も関係ない。奪うことも譲ることもない。ただ掟に沿って、振り分けられる。
だが、彼は娘と番うと分かっていた。だから、日々を懸命に生きた。野生から一歩だけ踏み出しただけの掟は、彼らの怠惰を封じる仕組みとして機能している。
同じ年に彼と娘は生まれた。成長をしていく過程で、彼は女の強さと弱さを娘から知った。
娘が体を預けてくる。農作業で鍛え上がった腹筋に、娘の乳房が押し付けられた。村の娘の中で最も大きく、柔らかな乳房が体の間で形を変える。細い背中に彼は両手を回した。
自らが種付ける相手だ。やがて生まれて来る子供たちを育てる胎だ。だからこそ、守るべき価値がある。本能と掟がそう彼に命ずる。
成人すれば交合が許される。だからそれまでだった。互いの子を産み育てる分担ではなく、掟に定められた生活ではなく、彼と娘が自然と抱き合えるのは、今日までだった。
何故、歓喜が湧くのか。彼は知らない。娘の方も知らない。彼らは掟に従い生きてきた。故に互いの心情を語る言葉を持ち合わせてはいなかった。
鼻腔から娘の匂いが侵入してくる。それは胸の鼓動を高鳴らせた後、下腹部に至り、陰茎を硬くさせる。彼の背中に回った娘が、腕に力を込める。自慰も知らぬ彼は、それだけで果てた。
僅かな倦怠と激しい幸福が、彼の全身を駆け巡った。
娘が頬を朱に染めて、彼を見上げる。それ以上はお互い何も求めない。彼が感じたような悦楽を、娘も感じたのかを彼は知る由もない。
潤んだ瞳で彼を見上げる娘に、拒絶は一切ないと思うだけだ。
夜が明けて、番いの儀が始まる。
彼らの未開の集落にも、神を祀る概念はあった。
成人の儀を執り行う場所は、教会に似ている。奥には丸い玉が飾られていた。原始宗教より尚古く、しかし、自然そのものを崇めるのではなく、天蓋にある誰かを祀る。
教義はない。
天蓋に住まう神は、人の営みを眺望するだけだ。
掟に神への敬意は示されず、躾にも使われない。
彼らが今日、番うことを報告するだけだ。
村民が集まり、番う二人を祝福する。
彼は娘を見やる。長く補修を繰り返された、白い花嫁衣装を娘は纏っていた。集落が発生した頃から、連綿と受け継がれた、娘が母へと変わる儀のための服だ。
「彼らは今より、人と成る。子を産み、育て、やがて死ぬ。しかし、番った彼らは永劫、同じ時を生きるのだ」
聞き飽きた村長の言葉が、この時ばかりは違って聞こえる。思えば、彼が幼き日に参加した儀でも、当人たちだけは村長の言葉を厳粛に聞いていた。
「永劫?」
声は、天から降り注いだ。少なくと住民は全員がそう思った。人の声ではあり得なかった。虫の羽音が連鎖して偶々言葉になったような、甲高い音だった。
視線を集めた古ぼけた教会の天井が、轟音とともに吹き飛んだ。蒼天だったはずの空が、紫に淀んでいる。
「虫けらどもが、我らにも到れぬ永劫を謳うか」
同じ声が響き、そのまま耳障りな笑い声に変じていく。
「……災団」
村長が呻くのが聞こえた。娘が、彼の肩に縋る。
災団。神と同じく、ただ伝えられているもの。自然による災害より激しく、悍ましい。この大陸に生きる生命全てにとっての厄災。意志を持ち、文明と生命を冒涜し陵辱することだけを繰り返す存在だ。
無意識に彼が娘を庇い、一歩前に出たときだった。
吹き飛んだ天井を、影が覆った。その直後、ばさばさとした音を立て、何か多数が教会内に降り注いだ。窓から差しこむ紫の光が、現れた異形の姿を照らす。
赤黒い革張りの書物だった。本を知らなかった彼だけではなく、記憶を覗くフェルターから見ても、悍ましい代物だった。一冊、一冊の装丁には、本来書物に不要な器官がある。瞳であったり、鼻であったり、口であったり、指であったりした。
複数の本が彼と娘を取り囲む。黄色い眼球が彼らを舐め回すように眺め、並びの悪い歯並びが哄笑を鳴り響かせる。
住民が多様な声をあげた。悲鳴もあれば怒号もあった。だが、知性や尊厳が残された言葉はただのひとつもなかった。彼と娘の隣人や友人、そして家族だったものたちの中に、四肢が満足に残る者は一握りしか残っていない。父は自らの眼球をその手で取り外し、本の口に差し出していた。床に手首から先の手が転がっていた。母の手だった。他は全て、仔細な部位に解体されている。床に転がった心臓は脈を打っているため、死んではいないらしい。見知った衣服を来た幼い彼の妹は、首から上がなくなっていた。小さな両腕に自らの頭部を抱え、音律の狂った歌がはみ出た頸椎から漏れ出でる。
彼は凍った体を無理矢理に動かした。書物を蹴飛ばし、少女の手を取って走り出す。
教会の外に飛び出し、見えた光景に彼は足を止めた。
空は紫の単色ではなかった。遠い空は赤く燃えている。左側は夜の帳が落ちたように闇色に沈み、右側は白色に染め抜かれていた。彼の知る青い空は失われ、生まれてから今日まで見てきた世界が変容したことを知る。
「永劫を騙る者よ」
再び虫の音が言葉を放つ。音は頭上からした。
仰ぎ見て見えたのは、背の高い樹木だった。彼の住む山には存在しない、それこそ永きに渡り生きたであろう太さと高さの木だ。葉は二種が混合している。片方はイチジクの葉で、一方は羊皮紙に似ていた。先の書物が実の代わりに生えている。木肌や枝は硬質に輝く鉄器を思わせた。羽虫の音に似た声は、葉々が触れ合ってなっているようだった。
大地を揺らし、その樹木が彼らに迫る。樹木がどうやって動いているのか――それは見ればすぐに分かった。根の先端に車輪が無数絡みつき、地面に轍を産みながら動いている。
知恵女神イヴ。
フェルターの意識がその正体を看破する。
千年前まで大陸を跳梁していた災団の一角である。
千年に渡る七女神の領土争い。それは、かつて災団と呼ばれた異形どもが、人間の振りをして始めたただの遊戯に過ぎない。
走り続けるしかなかった。彼は娘の手を引いて、村の外へ向かい走り続けた。
目の前の斜面が瞬時に泥濘に変化した。腐肉の臭気が鼻孔に届く。泥濘から肉が沸き出でる。腐っているものもあれば、生前のままのものもある。変容した大地から無数の腕が生まれる。腕から幾多の無眸の蛇が産まれては腐肉を喰らう。痛覚を感じる神経が残っているらしく、その度に痙攣しながら腕を伸ばす。伸ばしきった手が引きちぎれると、切断面から新たな腕が生まれる。
蛇と腕が折り重なり空へと増殖し続ける。やがて、肉ではなく骨が生えた。骨も似たように高く生え続け、茨のように何かを包み込んだ。
パキパキ、と軽い音が鳴り響き、何かに絡みついた骨が崩壊していく。内側から現れたのは、黄金色に輝く棺だ。
冥府女神イシス。
「知恵の――余り物があったからといって独占するつもりか?」
くぐもった声がする。音の出所は下からだ。声に合わせて肉の泥濘が震えている。
「ひきっ。まさかまさか。肥え育った群れを滅ぼしたばかり。この程度のおまけで腹を満たすほどに飢えておらぬ」
怪物たちは彼と娘になど意識を向けていない。だから彼は別方向へと走り出した。
次に向かったのは山だった。もはや人間が生み出したものは何の守りにもならない。
樹木が彼らの身を隠してくれる。そう信じて森に入ろうとしたとき、木々が一斉に燃え始めた。火は凄まじい速さで燃え上がり、すぐに樹木が燃え尽きていく。だが、可燃物を失っても業火は失せず大地を燃やした。雲ひとつないのに豪雨が降り注ぎ、鎮火する。土砂崩れが始まるが、不思議と彼らの周囲だけは崩れない。見るとそこには透明な粘膜が張られており、それが彼らが滑り落ちるのを留めているらしかった。
やがて山が消え落ちた後、空から土塊が落ちてきた。木々を失い、燃え、濡らされ、崩れた山から、以前とはまるで植生の違う植物が生え始め、彼らを産み育てた山は瞬時に別の存在に変じた。
彼らを包んでいた粘膜が形を変える。水の塊となった。その内側には卵であったり、獣や人の胎児が浮かんでいる。
精霊女神ブリギット。
「貴様らが遊んでおるから逃げられるところであったぞ?」
水塊がぶよぶよと形を変え、音を発した。
「冥府のがいるから死しても構わぬ――が。一度死した者はやはりつまらぬか」
「ねえ。戦争のと廻天のが随分と愉しんでいるみたい。冥府の、手伝うの止めなさいよ」
第四の声に空を見上げる。
石材でできた噴水があった。その中央には闇色のローブが座っている。内側に人が入っている気配はない。顔に当たる部分にはいくつかの文字が重なった紋章があった。明滅を繰り返しながら法則性のない文字が、顔から空へと吐き出している。
見上げる彼は、ローブが変化を続けているのに気がついた。小さいときには解れひとつなく、大きくなりながら徐々に汚れや裂けが生じ、再び大きさが減り出すとローブが風化し始める。だが、消えるわけではない。風化によって大半が消えると、今度は動きが遡行する。新品同様にまで戻ると、再び劣化を始めるのだ。
魔導女神ヘラ。
ヘラから漏れた文字のひとつが、彼の体に飛び込む。その直後、視界が切り替わった。
遠く、二本の腕が石版にも似た台座を抱えているのが見える。そのひとつに焦点が合わさった。
そこでは闘争が行われていた。鉄器で武装した兵士たちが、凄惨な殺し合いを続けている。女もいる。子供もいる。老人もいる。誰しもがひたすらに殺し合っている。勝利や敗北という概念はそこにはない。相手を殺し、女を犯し、骸が蘇り、敵に殺され、妻や娘を奪われ、再び蘇る。
視点が離れていく。台座を抱える手は無数にあり、よって戦を繰り返す場も無数にある。
廻天女神アスラ。
大地でも似たような戦争が行われていた。こちらは先の闘争に比べ、統制された戦だった。二つの軍に別れ、勝敗を競っている。
金属製の鎧を纏い、下半身が馬の魔形が先陣を切る。人の兵士たちは為す術もなく惨殺されていく。異相の騎士たちは、人とは速度も膂力も異なっていた。
死にゆく兵士が強制的に蘇らされるのは、廻天女神の修羅道を変わらないが、怪我をした兵士を治療し、再びに戦いに送り込む石像のような異形もいる。
だが、こちらにも所詮、未来はない。右手に槍を、左手に盾を。そして全身を黄金色の鎧に包み、その巨躯は天に届く高さで雷霆を傅かせているように見えた。
戦争女神アテナ。
「して。知恵の――それは、我への貢ぎ物か?」
新たな声がして、呼吸を忘れていたことに彼は気付く。音の出所には、太陽しかなかった。天に在り、農作物に恵みを与える存在に、彼と集落の民は神と似た信仰を持っていた。
陽が降りてくる。大きさに変化はない。だが、放つ光が弱まった。光球には数え切れないほどの翼が生えている。どの翼も左か右へと蠢き続けている。光球の中央にい亀裂が走ったかと思うと、瞳が見開かれた。
独裁女神ミカエル。
「否。虫けらが永劫を騙ったのでな。どうするか考えている」
「くっく。ならば――永劫を与えてやれば良い」
沙汰を下したのはミカエルだった。
手段を語り合っているらしいが、語りかけるつもりがないようで、彼と娘には言葉の意味が理解できない。
戦争に飽いたアスラとアテナも彼と娘を取り囲み、七つの厄災に囲まれた二人は、体を動かすこともできなかった。娘の前に一歩進み、彼女を守ろうとする意志を表明する。それだけが彼にできることだった。
やがて、七つの厄災は、それぞれの声帯で笑声をあげた。
既に家族や育った村人たちを襲った惨状は知っている。それは、彼らにとって当然の行為であり、いかに冒涜的だったとしても、特筆すべき点はない。
娘が彼に体を押し付ける。彼の鼓動は恐怖で激しさを増していたが、娘はより一層怯えていた。
肉塊が泥濘から溢れ出た。イシスの手によるものだ。夥しい臭気に苦しんだのは一瞬だった。腐肉は彼らの鼻や口腔から忍び込み、嗅覚が働く余地を奪う。
続けて、ブリギットが体内から二体の胎児を吐き出し、それが肉塊とともに彼らの内側に入る。
肉体を好き勝手に弄ばれているが、彼は苦痛を感じなかった。娘が同じ目に遭っている怒りだけが生じた。唐突に口腔から腐肉が溢れ出る。嘔吐きながら地面を転がり、彼は娘の無事を確かめた。同じく嘔吐いてはいたが、娘に外傷はなく、腐肉で体が濡れていること以外に変化はなさそうだった。
安堵した瞬間、輝く文字が無数、彼の体に入り込む。同じように娘の体にも飛び込んでいく。
「確かに我らも永劫には到れぬ」
「否、既に虚空に神はなく」
「なれば我らこそが全であろうよ」
「次なる千年、我らは覇を競う」
「永劫を供に過ごすのであろう?」
「我が種より生まれしブタの王とイヌの姫」
「不死のブタと巡るイヌ。いつか出会えることを祈るわ」
いない、神にね。
七つの異なる発声器官が大笑を谺させる。
その瞬間、彼の内側にフェルターがよく知る衝動が生まれた。苛烈な性衝動。満たされることのない永劫の飢えだ。
そして、目の前には妻となるはずだった娘がいた。
もはや彼の意志は、欲動に掻き消されている。血走った眼。筋肉で肥大化した肉体。はち切れんばかりの逸物が天を仰ぐ。
苦しげに倒れている娘から発される雌の匂いが、彼を誘う。
止めろ!
フェルターは叫ぶ。だが、これは既に過ぎ去った記憶だ。起きたことは変えられない。
咆哮が鼓膜を震わした。緑の巨大な手が娘の片足を掴み、もう一方の手が下履きを剥ぎ取った。ぴったりと閉じた蜜壺から、馥郁たる香りが放たれている。衝動に押し潰されていた彼の意識はそれで完全に消えた。
両足を力任せに広げ、剛直の先端が膣口にあてがう。それだけでブタの陰茎は多量の精液を吐き出した。
剛直は硬度を保ったままで、膣口を無理くりに押し広げる。濡れてもいない蜜壺は、壊れながら肉竿を呑み込んでいく。
激しい欲動に突き動かされ、彼はひたすらに腰を打ち付ける。娘の顔も見えず、声も聞こえない。抽送ではなかった。男根は女性器を破砕せんと勢いをつけ前後する。
膣内に濁流を吐き出す。破瓜の血と雄汁が潤滑を良くする。暴力的な情交だが、蜜肉は燃えるような熱を帯び、愛液を分泌しながら絡みつく。
彼の耳には、己の顎があげる咆哮しか聞こえない。
ただの人間に耐えられる陵辱ではなかった。並のギフトホルダーなら半刻も持たず絶命している。そうフェルターに確信できる暴行だった。
突き込む度に豊かな乳房が淫蕩に揺れる。結合部から淫水が混じった液が、泡を生んでは溢れ出る。度重なる射精が娘の胎を肥大化させていく。
いくら腰を突き出し、汁を出しても、彼の内側の衝動は強まるばかりだ。
娘の胎が妊婦のように膨らんでいく。
「――」
獣の絶叫が轟く中で、声が聞こえた。記憶の中で、ただの一度も認識できなかった娘の声だ。
彼には些かも届かない。その姿を視界に入れておきながら、知ることはなかった。
娘が、手を伸ばしている。
ブタの王の膂力で押し倒され、下腹部を破壊され続けている。普通の人間なら疾うに絶命しているはずだ。ギフトホルダー以上の死ににくさが、彼女に与えられたのだ。だが、腕力はない。抵抗するだけの力だけが持たされていない。
その中で娘は、両手を伸ばしている。
「フェルター」
娘が、彼の名を呼ぶ。
眦から涙を溢れさせている。苦痛や恨みが表情に浮かぶことはなかった。ただ、自らを犯す彼を悲しげに見上げている。
「独りに……させて……ごめん……ね」
自分の死が近付いているのを、娘は本能的に悟っている。彼女はそれでも、自らの死や苦悶ではなく、正気を失った彼のことを憂いていた。
「いつか……また会うの。……そのときは、本当に……一緒になろう」
千年間、届くことのなかった約束だ。
娘は全身を襲う激痛に耐えながら、咲くような笑顔で彼を見上げる。
その顔が、ようやくフェルターは認識できた。知っている顔だった。
やがて、娘の胎が破裂した。だが、彼は腰を止めることはない。
娘が遺骸になっても、臭気を漂わせる腐肉となっても、彼は骸を犯し続けた。
肉が大地に帰り、大量の精液と白い骨だけになったとき、ようやく彼は彼女を犯すのを止めた。
遠くから雌の匂いを感じとり、彼は歩き出す。正気を失った彼は咆哮を上げた。
それから千年。彼は彷徨い続けるのだ。
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地底唾王城へとフェルターは帰還した。帯同させたギフトホルダーたちと別れ、自室に戻る途中、彼の前にリラが姿を見せた。
「無事、アテナを倒せたようですね。ご主人様」
リラは嗜虐的な笑みを浮かべて言った。
自分と同じく千年の呪いを受けた娘の顔がリラに重なる。
「まあ」
頬を朱に染めて、リラが彼の下腹部に視線を向けた。
「女神を犯し抜いてまだ物足りないのですね?」
楽しげに笑みを浮かべ、彼女は給仕服の胸元をたくし上げた。豊かな乳房がまろびでて、薄桃色の乳頭は既に硬くなっている。
跪き、リラがフェルターの腰ばきを下げようとする。先んじて彼女の腰を掴み立ったままにさせると、彼は彼女を抱きしめた。
リラから抵抗の気配は感じ取れない。顔を見ると記憶が蘇る。面と向かえば口を開けなくなりそうだ。己の臆病さに彼は自嘲するしかなかった。
「ご主人様?」
不思議そうに尋ねるリラに、フェルターは少しだけ黙考した。呪いのことをリラに伝えられるはずがない。以前、寝台の上でリラが語っていた言葉を思い返す。ヨダのように、「誰かと愛し合えた人生があって欲しい」と彼女は言った。
リラにかけられた呪いは奴隷型とは一線を画する。少なくともティナやヨダは動物を欲情させるほどではない。それほど雄を誘引するのであれば、村で生活することが不可能だったはずである。
ならばリラの千年は、彼女の半生を繰り返すだけのものだったに違いない。
「この城の妃になってくれ」
思いがけず飛び出した台詞は、罪悪感からか回りくどい表現だった。
リラがフェルターの胸を押した。力を緩めて、彼女の意に従う。見えたリラの顔は、であった頃と同じような棘のある表情だった。
「ご主人様は私のおちんぽ奴隷ですよ? 求婚されても困ります。七女神を全て滅ぼしたら、私は旅に出るんですから。引き留めないでくださいね」
そう言うと彼女は咲いたような笑顔に戻る。そのまま膝をつき、フェルターの腰ばきを下ろし始めた。果てることのない彼の獣欲は、この期に及んで天に向かっていきり立っている。
胸元をたくし上げ、豊かな乳房が陰茎を挟み込む。自ら胸を掴み、左右から怒張を扱きあげる。
「ふふっ。女神を犯したご主人様のおちんぽ、いただきますね」
上目遣いにしてリラはそう宣言し、亀頭を咥え込んだ。舌先がカリ裏を舐めとる。アテナの愛液も混ざった恥垢が剥がれた。口を亀頭から離すと、リラが小さな鼻を亀頭に寄せる。弱々しい鼻息が亀頭を刺激した。リラの唾液とフェルターのカウパーに、女神の愛液が混じった臭いを、リラは堪能しているようだ。
舌が伸び、亀頭に載せられた。舌の上に掠め取った恥垢が見える。舌裏で尿道口を刺激してから、リラが再び肉竿を口に頬張る。静かな廊下に、恥垢を嚥下する音が響く。
口と乳房による激しい愛撫で、すぐにフェルターは果てた。一度の射精だけでリラがフェルターを解放することはなかった。
飲み干し、顔にぶちまける。白濁に染まったリラが両手で陰茎を扱きながら、ペニス越しに彼を見上げていた。
「全然、物足りない。ご主人様。もっと、付き合ってもらいますからね」
彼女の白い手が陰嚢を掴んだ。
「どくどくとくっさい汁が沢山作られてますね。全部出すまで、許さないんだから」
どちらかの部屋に向かう時間も与えずに、リラは給仕服を脱ぎ始めた。