ベクトル付与で異世界最強~ホロメンハーレムしながら学生性活 作:とも667
これが僕の本当に書きたかったものだと、ようやく気づきました。よろしくお願いします。
とある、なんでもない昼下がり。一人の男が、大きく伸びをして目を覚ます。男は明日が日曜日なのを良いことに、目の下に隈を作っている。
「ふわぁ~あ、もうお昼か……」
この男、上村ユウマは一般的な独身の社会人であった。とくに特別不幸なわけでもなく、有能なわけでもない……有象無象の一人だ。
「とりあえず下降りて、飯食おう……」
親が死亡した後も、実家暮らしを続けていたユウマはいつも通り、一階へ降りようと階段に足をかけた。と、その時。
──ズァッ。
「……えっ?」
ユウマは、階段を踏み外した。誰のせいでもない、ただの事故だ。しかし、それはユウマにとっては致命的なことだった。恐怖を感じる間もなく、そのまま前のめりに倒れ込む。
──ドゴゴゴゴゴォォン!!!
「ぐっ、ごぁっ……」
階段を転がり落ちて、ユウマが体中を強打する。そして更に不運なことに、ユウマは頭を何度も階段に打ちつけてしまっていた。それにより、ユウマは脳内で出血を起こしていた。意味がわからないまま、思考力すら奪われる。
「あがっ、あ……」
ユウマは、意識が消えていく感覚を強く感じた。そして、自分の命が潰えてゆく感覚も。しかしユウマは、全く訳がわからないまま死が迫ってくる感覚に対し、妙に冷静だった。恐怖や困惑が、一周回ってしまったのだ。
「やれ、やれ……随分と、早い終わりに、なったな……」
そう呟いたユウマは……倒れ込んだ姿勢のまま、若くしてその命を散らした。
ここは神の世界。死んだ後の魂を選別し、地獄行きや天国行きなどを決める場所である。そんな世界で、一人の神は……今とても焦っていた。
「やっべぇ、殺すのこいつじゃない……!! どうしよう、これでミス二回目だぞ!? くそ、次やったら減給って言われてたのに!!」
そう言いながら、何とか隠す方法は無いかと模索する神。そこで、ひとつの可能性を思いつく。
「そうだ!! この装置、使えねぇか!?」
神は一つの装置を起動し、そこにユウマの魂を掴んで入れる。神は減給されないために、必死にキーボードで文字を入力していた。
「項目は全部適当でいい、世界番号……ここに書いてあるのでいいや、能力も適当でいいだろ。よし、後は全部ランダムで……行け!!」
エンターキーが押されて、魂がどこか遠くの世界へと『転移』させられる。神はそれを見て、ほっと胸を撫で下ろした。
「はぁ~、助かった。すぐに戻ってこないでくれよ、頼むから」
そう言いながら、神はまた仕事に戻ったのであった。
一方ユウマは、違う世界の体にいきなり叩き込まれていた。冷たくなったはずの体に、熱が戻る。内蔵が正常に動き始めた……ユウマが目を覚ました。
「……ん? 生きてる? どうして……」
ユウマは目覚めてから、辺りを見回した。自分の部屋では無いが、病院でもない。おかしな状況に、ただ困惑する……のが普通なのだが。
「まぁ、いいか。何にせよ生きているんだ、ラッキーだったな」
ユウマはそう言って、自分の身に起きたおかしなことを軽く流してしまった。死ぬ時に冷静になってしまった影響で、ユウマは前世から見ても大分ダウナーな人間になってしまっていたのだ。
「とりあえず部屋から出て……なんだこれ」
そこには、空っぽになった薬の瓶があった。それには、『危険』と大きく書かれている。それが空っぽということは……
「……この体の持ち主も死んでるのか」
ユウマは否応なしに、状況を理解することとなった。何が要因かをユウマが知ることはできないが……ともかく、この体の持ち主は服毒自殺してしまい、自分がこの体に入ったことを理解した。
「とりあえず部屋から出て、色々確認してみよう」
ユウマがドアを開ける。するとそこには、ベランダとトイレと洗面所があった。洗面所でユウマは、顔を洗うがてら自分の顔を確認してみる。
「顔まで変わってるのか、ここまで来ると乗っ取りだな」
ユウマは心の中で、元の持ち主に謝罪した。ユウマはそれから下に降りて、冷蔵庫を確認したが……
「何にも入ってねぇな。朝飯も食えないのか……」
ユウマは近くに鞄があるのを見つけて、財布がないかと漁ってみた。その結果、ユウマは財布らしき物を見つけて開けてみる。そこには見た事のないお金が入っていた。この世界の金銭、『ジオ』だ。
「なんだこれ、これがお金なのかよ……? それにしても少ないな、毒にほとんど使っちまったのか?」
とりあえず何か買いに行こうと、ユウマが立ち上がって外に出る。
幸い、靴は残っていた。
「まずは腹ごしらえだ、それから色々と決めようじゃないか」
そう呟いて、ユウマは近くに見えたコンビニへと向かった。
ユウマはコンビニで買ったサンドイッチと、野菜ジュースを買って食べている。生き返っても変わらない味に、ユウマは少し残念なような安心するような、複雑な気分だった。
「……それにしても、なんでこの人は自殺なんかしたんだ?」
食べながらユウマが考える。家の中を見渡してみたが、何故なのか全くわからない。
「まぁ、俺には関係の無いことか」
そう言ってユウマは、またしても考えることをやめて黙々と食べ進めた。
「ごちそうさまでした……ん?」
──ブロロロロロ。
バイクの音がして、それがすぐに離れてゆく。現代では、郵便物が来た時に聞こえる音だ。
「何が来たんだろう……」
ユウマは外に出て、ポストを確認する。その中には封筒が入っていた。家の中でシールを剥がし、中を確認してみる……
「……合格通知書? それと、学生証も……」
『ホロライブ学園』。そう書かれたその紙と、学校の説明。ここに行こうとしていたのだろうか……ユウマはそう考える。
「まぁ、合格していたならよかったな……待てよ。これ、俺が行くのか?」
そう。体の持ち主が自殺してしまっている以上は、その体を使っているユウマが行くのだ。
「学生か、懐かしいな……行ってみるか」
そう言ってユウマは、一旦乗り気になった。学校の説明をしばらく読んでいく……
「なるほど、私服登校なのか。校訓は『自由と変革』ね……なんだ、これ? 『バトルロワイヤル』?」
そう書かれたその部分に、目を通す。入学してすぐにある、試験の一種で……全員が優勝を目指して、仮想空間で戦うと書いてあった。
「……やっぱりやめようかな」
ユウマは早々に諦めた。それもそのはず、ユウマはこの世界に来たばかりである。その上、魔法も筋肉も存在しない普通の社会人なのだ。しかも試験である以上、成績が悪ければ内申などにも響くだろう。
「しかも学費高いな、もしかしてこれが払えなくなったのか?」
お金がなかったことから、ユウマは連想する。なにかの要因で学費が払えなくなり、必死で受験した学園に行けなくなった。それで絶望して、全てを諦めて服毒自殺……ユウマの予想は、的を得ていた。それが原因なのだ。
「とはいえ、入ったのが俺なのは不運だったな。俺じゃ行けないよ、ここには……」
諦観を込めてそう言うユウマが、ポケットに手を突っ込む。その時だった、ユウマはポケットに紙が入っていることに気づいたのだ。
「なんだ? まだなにか入れてたのか?」
ユウマはポケットから紙を出して、開いて見てみると、そこには『能力名:ベクトル付与』と書かれていた。能力の解説が、機械的な字で書かれている。
『視界内にあるあらゆる物を、質量に関係なくベクトルを付与して、動かすことが可能。自分を鏡で見れば、自分を飛ばすこともできる。他者が作り出したベクトルの変更は不可』
「……つまり、既に人が動かしてる物はどうにもできない。だけど、視界に入りさえすれば、自分の物や動いてない物を、超能力みたいに動かせるってわけか」
『なお、この力でベクトルを与えた物に更にベクトルを追加することも可能』
ユウマはネット小説に明るくない。なので、『転生特典』の概念を知らなかった。しかし、この能力が強力であることは理解できる。
「この体が元々持ってたのか、それとも誰かに与えられたのか? それはわからんが、ともかくこれがあれば……」
ここの学生として、生きていくことは出来る。そう気づいて、安堵した。最後に残った火急の問題は……金銭面であった。
「金が残ってない以上、バイトするしかないよな……」
バイトを探すためにスマホを起動し、パスワードを入力する。幸運なことに、パスワードが書かれた紙がスマホケースの内側に貼り付けられていた。
「ジオっていうのが幾らなのかはわからんが、多分交換レートは現代と同等だよな……240ジオでサンドイッチと野菜ジュース買えたし」
自分ができる条件が良さそうなバイトを見つけて、応募する。すぐに申請が通って、今日から行けることになった。
「とりあえず、今日からここで働いて金を稼ごう。しばらくは学生が本業になりそうだしな」
そう呟いてユウマは、バイトの時間までテレビを見始めた。
「俺はこの世界のことを何も知らない。とりあえず、色々知っておこう」
『大人気お菓子、ドラゴンのしっぽ!! 是非お買い求めください!!』
『それでは次のニュースです。またしても『魔王軍』を名乗るテロリスト達が、テロの声明を出しました』
テロ声明。それを聞いて、ユウマは少し興味を抱いた。
「さっきから思ってたけど、この世界は物騒だな……」
『声明内容は『自分達の支配を受け入れろ。さもなくば、また我らの裁きは下ることだろう』であり、これに対し人間界と魔界は『極めて悪質なテロ行為であり、断じて容認できない』としています。それでは次のニュース……』
「人間界? 国じゃなくてか……? もう色々と違いすぎてわからなくなってきたよ」
ポリポリと頭を掻きながら、すぐに悩むことをやめるユウマ。ユウマはこの世界でも、平凡に生きられさえすればいいと思っていた。無論、称えられたりするのは嫌いではないが……そのために死に物狂いで努力するつもりはなかった。
「よし、そろそろ時間だな。行くか」
ナビアプリをオンにして、ユウマは目的地に歩いていく。しかし、バイトする店の前で事件は起きた。いや、既に起きていた。白い狐の獣人……白上フブキが、病的な程細い死装束を着た黒髪の女と、ゾンビのような怪物達に追い詰められていた。周りはその戦いのせいで、ボロボロになっている。
「うぐあっ……!!」
「他愛もない相手ですね。欠伸が出ます」
「……おいおい、何の騒ぎだ?」
ユウマは、そう呟きながら不用意に近づいていく。女二人が、それに反応する。
「ん? なんですか、あなたは」
「ダメ、逃げて……!!」
「うおっ、白い子すげぇ可愛い……あー、店壊れてるよ。どうしようかな」
ユウマはその惨状を見ても、なお冷静だった。唯一、可愛い子には反応を示しているが……
「私は今機嫌がいい。今すぐ消えるなら、見逃してあげましょう」
「逃げて、殺され、ちゃう……」
「これから殺されるというのに、他人の心配ですか。お人好しもここまで来ると、愚かですね」
ユウマは言われた通りに逃げようかと思っていたが、最後の言葉が聞き捨てならなかった。この女は、目の前の子を殺そうとしているのだと。そう気づいたから……ユウマは、逃げないことにした。
「わかったよ。それじゃ、戦うしかないな」
「えっ!?」
「……話を聞いていなかったのですか、それとも理解できないのですか? 見逃してやると言っているのですよ」
ユウマは白上フブキの前に立ちはだかって、言った。
「お前が誰なのかは知らない。全然知らないが……この子を殺すなら見逃してはやれないな」
「さっきから何を言っているのですか? まさか、自分の方が格上とでも思っているのですか?」
「さぁ? やってみなきゃわからん。だけどさ、こんなに可愛い子が死ぬのは世界の損失だと思うんだよ」
そう言ってユウマは、女に向かって一歩踏み出した。その様子に、女が吹き出す。
「あ、あっはっはっはっはっは!!! 何を言い出すかと思えば、なんとしょうもない……!! そんな理由で私に挑んで、死ぬというのですか!? なんと愚かな、はっはっは……!!」
「俺は上村ユウマ。お前は何者だ?」
「なんと、私のことも知らないのですか? まぁいいでしょう、冥土の土産に教えておいてあげますよ。私は魔王軍六魔将が一角、
魔王軍。さっき聞いた名前だと、ユウマはすぐに気づいた。
「そうか、有名なテロリストの……」
「テロリスト? 違いますよ、我らは崇高な理念を持った支配者たる存在です」
「いや、偉そうに言ってるけどさ。お前の言ってること、全部テロリストがよく言うことだぞ? 自覚がないのも+テロリストポイントだ」
ユウマがそう言うと、ベルシリカの顔に青筋が浮かぶ。
「……今すぐ訂正するなら、手加減をしてあげても構いませんが」
「嫌だ」
「し、刺激しちゃダメ……そいつは……強い!!」
後ろから白上フブキが、必死に警告をする。しかしユウマは、もう負ける気がしていなかった。ベルシリカはその間に、背中に背負った双曲剣を抜く。
「大丈夫さ。勝算はあるから」
「いいでしょう。その戯言を抜かす喉を潰してやる!! 死ね!!!」
「……喰らえ」
ユウマがそう言った瞬間、落ちていた瓦礫達がベルシリカに殺到する。双曲剣で切り付けようと走ってきていたベルシリカと、亡霊達は突然の瓦礫達の挙動に、全く対応できなかった。
「なにぃ!? ギャアァァァァァァ!?!?」
「えっ、何を……!?」
「なるほど、こうやって使うんだな……」
猛スピードでぶつかった瓦礫は、ボロボロと崩れ落ちてしまった。しかし、敵へのダメージは甚大だ。飛び散った瓦礫が体を貫通して、ベルシリカの胴体に穴が空いている。亡霊達は今の突撃でほとんどが消えてしまった。
「お、おのれ貴様!! 何をした……!?」
「よく知らん。でも、できるからやった」
「答えになっていない!!! くそぉ、コケにしやがってぇぇ……!!」
元々激情家のベルシリカは、バカにされたことでさらに怒りを強めている。亡霊達を大量に召喚して、歯軋りをしながら双曲剣を強く握りしめている。
「さて、次に使う物は……いいもの見っけ、こっちだぜ!!」
「待ちやがれぇぇぇっ!!!」
「あ、どこに……!?」
白上フブキの呼びかけをよそに、ユウマは逃げている……フリをしていた。ユウマは噴水の前で立ち止まって……噴水の水にベクトルを与える。掌を下に向けて、水をつまみ上げるようにして浮き上がらせ……握り拳を作った。
「よし……準備完了」
「囲い込んだぞ……!! 殺せぇぇっ!!!」
「行け!」
──パチン。
ユウマは握りしめた拳から、親指と人差し指を出して……弾いた。その瞬間、一匹の亡霊の体に風穴が空いて消える。ユウマが指を弾く度に、亡霊が消えてなくなってゆく。
「なっ……何をしたんだァ!?」
「お前も喰らえ」
「ぐぎゃあぁぁぁぁっ!?」
──ドヒュアッ!!
高速で飛んできた何かにより、ベルシリカの体に風穴が開いた。ベルシリカは何が起こったのかわからず、ただ困惑する他ない。
「いけるんじゃないかと思ったが、やれるもんだな」
「手が濡れている……まさか『水』か!?」
「わかるのか? やるな、お前」
ユウマは素直に感心した。見えないくらい早いのに、正体がわかることを。しかし、ベルシリカはそれを煽りと捉えて更に怒る。
「くっそぉぉっ!! さっきから私をバカにしやがってぇぇ……!!!」
「してないんだけどな……というか、全然倒れないな。お前」
「ダメ、そいつは亡霊なの……!! 普通に戦っても……」
白上フブキは、なんとか立ち上がってユウマにそれを伝えに来た。しかし、憤怒が最高に達していたベルシリカは、白上フブキの横槍に怒り狂い、剣を向ける。白上フブキの両肩を狙って、ベルシリカが腕を広げて向かっていく。
「うるさぁぁぁいッ!!! ……は!?」
「やらせるか」
「えっ!?」
ベルシリカの振るった曲剣は、残念ながら白上フブキに届くことはなかった。ベンチや観葉植物、テーブルに瓦礫など……それらが収束して、白上フブキを守る盾となったのだ。そしてユウマは、更に白上フブキ自身にベクトルを与えた。白上フブキは浮き上がって、ユウマの方へ飛んでいき……ユウマにキャッチされた。
「んにゃあぁぁぁぁ!?」
「乱暴でごめんなさい。それで、話の続きは?」
「あ、そうでした……あいつは普通の攻撃じゃ倒れません、除霊できる物を使わないと!! 白上はもう、戦えないから……これを!!」
そう言って白上フブキは、ユウマに抱えられたまま清めの塩を渡した。白上フブキを地面に下ろして、ユウマは感謝を述べる。
「わかりました、後は任せてください」
「ふざけるな、有り得ない……!!! 私は魔王軍六魔将だぞ!? それがこんな一般人に負けるなど、有り得るはずが……!!!」
「どうする? 今降参するなら、見逃してやるけど」
ユウマがそう言うと、ついにベルシリカの理性のタガが完全に外れる。怒声を張り上げ、武器をボロボロの大剣に持ち替えて走っていく。その間にユウマは、噴水に塩を溶かしていた。それを持ち上げて、ベルシリカに向ける。
「ふざけんじゃねぇぇぇぇっ!!!」
「……これで、終わりだ」
──ジャシュッ!!
「死ね……ぐはぁぁぁっ!?」
水圧の薄刃が、ベルシリカを真っ二つに切り裂いた。そこから更に薄刃が放たれ、ベルシリカは十字に切り裂かれた。
「こんな、はずが……私は……魔王軍、の……がはっ……」
「あいつに勝つなんて……あなたは、一体?」
「あ、上村ユウマです。以後よろしく」
そう言ってユウマは、戦闘の後とは思えない程明るい挨拶をした。
初戦、初勝利です。
面白かったら、是非感想や評価をお願いします。作者のモチベーションが上がります。