ベクトル付与で異世界最強~ホロメンハーレムしながら学生性活 作:とも667
学園生活の始まりです。
先生が来て、教室内が静まり返る。さっきまで恨めしそうな目でユウマを見ていた高杉も、黙って前を向いていた。全員の自己紹介が終わったところで、教員が言った。
「それじゃ、すぐにアナウンスがあるからな。各自、バトルロワイヤルの詳細をもう一度確認しておけ」
教員が出ていき、ユウマ含む全員がパンフレットを開いた。
「それにしても、仮想空間でバトルなんて……随分とハイテクなんだな」
ユウマは小声でそう呟きながら、プリントを読み進める。戦法は完全に自由、隠れてもいいし戦ってもいい。無論、誰かと協力して優勝してもよい。自分の全てを使って勝てと、そう書いてある。つまり、ユウマのベクトル付与も違反ではないのだ。
「……勝つと就職優遇ね。物騒だから、仕事の需要が大きいのかな」
この世界は、魔王軍などの危険因子が常にいる世界だ。精鋭揃いのホロライブ学園で優勝したとなれば、そういった仕事からは引く手あまたである。ユウマがプリントを一通り読み終わった頃に、アナウンスが流れた。
『これより10分後に、バトルロワイヤルを開始します。皆様は準備を進めてください』
その瞬間、ユウマを除く全員が立ち上がった。準備運動をしたり、協力関係を結んだり……人によって様々だ。ユウマも立ち上がろうとした時、フブキが話しかけてきた。
「あの、ユウマくん!!」
「フブキ? なにかあった?」
「白上と協力してくれないかな? 足でまといにはならないから!!」
そう言われて、ユウマは提案を二つ返事で受け入れた。
「うん。いいよ」
「えっ、そんなにあっさり!?」
「だって可愛いし」
バッサリと言い切った。ユウマの突然の発言に、お願いしたフブキ自身も困惑している。
「か、可愛いだけで?」
「だけってなんだよ。可愛いに越したことないだろ? 俺はフブキの力になりたい、だから協力する。ダメか?」
「いや、いいんだけど……とにかく、ありがとう!! 頑張ろうね!!」
ユウマも負けるつもりはなかった。自身の能力のことは理解したし、使いこなせば優勝も可能だと考えている。ユウマは、そう思いながら頷いた。
「もちろん、目指すは優勝だ。俺が行くまでに脱落するなよ?」
「うん!! ユウマくんも、誰にも負けないでね!!」
「大丈夫さ。そのために能力もある程度理解したしな」
ユウマとフブキが話していると、そろそろ時間になる頃だった。
「そろそろか。じゃあ、頑張ろうな」
「うんっ!!」
「ケッ……図に乗りやがって。目にもの見せてやる」
高杉は離れたところから、仲睦まじい二人を見ながらそう吐き捨てる。気に入らない二人を叩き潰すために……
『時間です。バトルロワイヤルを開始します』
そして全員の目の前が、白くなる。その光が晴れると……ユウマはさっきとは全く違う場所にいた。
「もう仮想空間に入ってるのかな。さて、敵は……」
「喰らえぇぇぇ!!」
「おっと……いきなりか」
部屋の窓を突き破って、生徒達三人が入ってきた。全員が武器を振りかぶり、ユウマを仕留めようとしてきている……しかし、ユウマは冷静に盾を構え、斜め上へのベクトルを与えた。ユウマの盾と腕が動き、振るわれた斧を逸らす。
「なっ、なにぃ!?」
「オラッ!!」
「ぐはぁっ!?」
その隙にユウマは、取り出した短剣にベクトルを与えて、相手の胸に突き刺した。一人脱落、後は二人だ。一人目がハンマーを構えて、もう片方は銃を構えている……ハンマーを避けたところに銃弾を撃ち込むつもりなのだ。しかしユウマは避けず、ペットボトルを取り出した。
「このぉぉっ!!」
「甘いな……」
「えっ、水!?」
ユウマは水を目の前に撒いて、反発するベクトルを与えた。持っていたハンマーの衝撃は、水に吸収されて大きな隙を晒す。その間に、ユウマは水を一滴つまみ上げていた。そのまま、がら空きの胴体を狙って……放つ。
「喰らえ」
──ドギュオンッ!!
「ぐぎゃあぁぁぁ!?」
「く、くそっ!! 喰らえ!!」
放たれた銃弾は、水に阻まれて当たらなかった。そして、ユウマが壁になった水を掴んで……極限まで薄くして、刃として放つ。
「さよならだ」
──ジャシュッ!!
「がっ、あ……」
「こんなものか。あっけないな」
ユウマは手を払いながら、無傷での突破に安堵する。しかしそこに忍び寄る影がひとつ……それは後ろから、足音を消して近づいていた。剣を振り上げて、男が叫ぶ。
「死ね!! 上村ぁぁぁぁ!!! ……なに!?」
──ブァオンッ!!
「そう来るだろうと思ってたよ、高杉」
「ど、どうして俺が来ていることを!? 足音は完全に消していたはず!!」
高杉の剣は、完全に躱されていた。何故ならユウマは今……浮いているからだ。
「そう来るやつもいるかもしれないと思ってな。浮いて移動しようと思ったんだ、しかし、お前が真っ先に来るとはな……もっと疲弊したところを狙うかと思ってたよ」
「クソッ、なんで浮いていやがる!? いつの間に詠唱しやがった!? 魔法器具か!?」
「魔法みたいなもんだよ。手鏡がないと浮けないんだがな」
ユウマは一人だけ、無重力になったようにフワフワと浮いている。原理は単純、自分の体に『重力と拮抗する上へのベクトル』をかけたのだ。重力の影響がなければ、人は浮いてしまう。
「くそっ、ふざけやがって……死ね!! 『クラスターファイア』!!」
「おぉ、火の玉がたくさん出た」
「そんな状態じゃ避けられねぇだろう!! ハハハハ、燃え尽きやがれ!!」
高杉の手から放たれた大量の火の玉が、ユウマめがけて飛ぶ。盾を単純に構えただけでは、焼かれてしまうだろう。しかし……ユウマにとっては脅威ではない。ユウマはベクトルを解除して、下に降りる。大量の炎達は、見当違いの方向へ飛んで行った。ユウマはそこで銃を構えて、二発発砲する。
「喰らえ」
──ダダァァン!!
「そんなもんに、俺様が当たるとでも!?」
「もちろん、素直に当たるなんて思ってないよ」
銃弾を躱した高杉に、ユウマが顔色一つ変えずに言った。ユウマの撃った二発の弾は外れて、後ろの壁に一つの弾痕を作っている。
「……一つ? もう一つはどこに……ギャアァァァッ!?」
「答えはこれだ。油断したな」
「も、戻ってきやがった……!! 馬鹿な、魔法でも一度飛ばした弾は戻らんはず!?」
ユウマは撃った弾のうちの一発に、しばらく残留してからこちらに戻ってくるベクトルをかけていたのだ。躱したとしても、当たるように。ユウマは銃口を高杉に突きつける。
「戻ってくるんだよ、俺の弾はな。これで終わりだ」
「ば、化け物……!!」
「出直してこい」
そう言ってユウマは、そのまま発砲して高杉を倒した。これで四人目だ。
「下手に浮いていくよりも、軽くなって走る方がよさそうだな」
ユウマは少し考えて、自分に浮かない程度の重力への拮抗をかけた。ユウマの相対重量が軽くなり、足取りがとても軽くなる。
「こりゃあいい、重りを外したみたいに軽いや。行くか」
ユウマは一人だけ低重力下にいるかのように、悠々と走っていく。途中で敵に出くわしても、その勢いのまま接近する。
「な、なんだ!? あいつ異様に速いぞ!?」
「喰らえ!!」
「ぐぎゃっ!!」
短剣を敵に突き刺して、蹴り飛ばす。分析する間もなく、また一人脱落した。そんな時、下から戦いの音が聞こえてくる。
「行ってみるか」
「うりゃあぁぁ!!」
──ズゴォォォン!!!
「くっ……このっ!!」
そこでは刀を持ったフブキと、銀髪の羽を生やした女の子が戦闘していた。それを見たユウマは、階段の上から跳躍し……水を取り出して、水の弾丸を撃ち込む。
「……そこだ」
──ドヒュオン!!
「ッ!? なにか飛んできた……!?」
「ユウマくん!! 来てくれたんだ!!」
水の弾丸を躱した銀髪の女の子……天音かなたは、躱した弾丸の威力に戦慄する。突き刺さった部分に、穴が空いていたのだ。喰らえば無事では済まないだろう。
「遅くなってすまないな。戦闘中だったようだが、この人は? すごく可愛い人だけど」
「天音かなた、上級生だよ。天使族なんだけど、魔法より拳が得意なんだ」
「ご丁寧にどうも。僕は上村ユウマです、見ての通り人間ですよ」
ユウマはフブキに質問をしていたのだが、本人が答えてくれたので少し驚いた。何はともあれ、合流できたことをフブキは喜んでいる。
「来てくれて助かったよ、一人だとやられてたかも」
「二人になっても、負けてあげないよ?」
「お手柔らかにお願いします」
そう言いながらも、ユウマの顔には余裕の笑みが浮かんでいる。かなたも表面上は笑っているが、内心ではユウマの能力について思考していた。そんなかなたが取った行動は……
「……喰らえっ!!」
「おっと、それ飛んでくるのか」
「ボクの輪っかを弾いた!?」
頭の上の天使の輪が飛んできたことに驚きつつも、ユウマは冷静にベクトルを付与し、天使の輪を横に弾いた。避けられることは予測していたが、弾かれるとは思っていなかったかなたが驚愕する。
「下手に避けて追撃をもらうより、こうした方が効率的ですから」
「……賢いね。やるじゃん」
「今度はこっちの番!! 『狐火・不知火の舞』!!」
フブキが手を狐の形にして、狐火を出現させる。それらが変則的な軌道で、かなたの方へ向かっていく。しかしかなたも上級生、それに当たるほど甘くはない。
「当たらないよ……ッ!?」
「その攻撃だけなら、ね」
「銃か……!!」
一瞬を引き伸ばして、かなたが回避ルートを思考する。銃口の向きから回避できるルートを考えて、狐火の間を通り抜けていく。そこでユウマが、銃を二回発砲した。
「そうしてくることはわかっていた」
「……えっ!? どうして!?」
「落ちろ」
かなたは更に驚愕した。銃口の向きや、ユウマの位置から計算して避けられるルートのはずなのに。何故か銃弾が、
「がぁっ、ぐぁぁぁっ!! っ……くそぉぉぉ!!」
「いけない、あれは弾けない!! 避けて!!」
「……はっ!!」
ユウマは拳が当たる前に、自分の足を見ながら足に力を込めて跳躍した。ユウマは更に、足に跳躍方向へのベクトルをかけて大きく跳ぶ。それにより、かなたの拳が空振りして壁にぶつかる。
「なっ……跳んだ!?」
「これで終わりです、天音先輩」
「あの体勢は……!!」
空中で右足を突き出し、左足を折りたたみ……かなたに向かって、強力な落下ベクトルをかけた。現代社会では俗に『ライダーキック』と呼ばれる攻撃だ。
「だぁぁぁぁぁ!!!」
「グハッ……ガッ!!!」
「や、やった!!」
足裏がかなたの腹に炸裂し、かなたの骨ごと後ろの壁を砕く。そこでユウマがベクトルを解除して、後ろに跳んだ。壁に叩きつけられたかなたが、苦笑する。
「は、はは、いいね、君……生徒会に、来ない?」
「遠慮しておきます、忙しそうなので」
「だろう、ね……頑張って、バトロワはまだ、終わってないよ」
そう言ってかなたは、青い粒子になって消滅した。それを見ていたフブキが、ユウマを見て言う。
「前よりずっと強くなってる……能力を理解したって、こういうことだったんだね」
「あぁ、まだまだ理解できてないかもしれないが……俺の今の全力はこれだ」
「これなら優勝できるよ!! 行こう、ユウマくん!!」
フブキに連れられて、ユウマも走り出す。途中で他の学生を薙ぎ倒しながら、どんどん進んでいく。
「いい感じだね、ユウマくん!!」
「油断するな、まだ何があるかわからない」
「……あれ? これ、なんだろう」
フブキが足元にあった、妙な物に気がついた。それはピンのような形をしている。嫌な予感がしたユウマが、フブキに叫んだ。
「避けろ、フブキ!!」
「うわぁっ!? な、なに!?」
「仕留めきれないかぁ、あなた達やるね」
フブキがさっきまでいた場所に、柄の部分に楽譜が象られた剣が突き刺さった。それを抜き、ユウマ達の前に現れた女の子……AZKiが、若干不満そうにそう言う。
「また可愛い人が出てきたな、このピンはトラップか……フブキ、誰だかわかるか?」
「AZKi先輩、有名な人だよ。色んなところで歌姫って言われてる」
「ピンを刺しておいて、踏まれたらワープして剣で仕留めるんだけど……君たちには避けられちゃったね」
つまりは予測不可能な不意打ち。危険に敏感なフブキと、どこでも冷静でいられるユウマでなければ、躱すことはできなかっただろう。
「逃げないということは、それだけじゃないんですよね?」
「もちろん。行くよ!!」
「こっちだって!!」
──ガキィィィン!!
フブキが刀を抜いて、AZKiに斬りかかった。AZKiは回収した剣で、それに応戦している。金属と金属がぶつかり合い、硬質な音が響く。しかしユウマは、気になる点があって攻撃せずにいた。
「……剣が光っているような気がするが」
「狐火憑依ッ!! 妖炎斬!!」
──ブォギャアァァンッ!!!
「くっ……!!」
AZKiはその勢いに弾き飛ばされたが、ユウマには追い詰められている様子に見えなかった。それどころか、剣の輝きが増していることに気がついて、フブキに警告しながら前に出る。
「フブキ!! 打ち合うな、まずいぞ!!」
「えっ、どうして!?」
「前に出てきてくれたなら、好都合ッ!!」
AZKiが、剣の楽譜部分を平手で叩く。すると、剣が虹色に輝き始めた。ユウマはそれを警戒して、盾を構えた。しかしAZKiは関係ないとばかりに、そのまま斬りかかってくる。
「はぁぁぁぁ―っ!!!」
──ガガガガガギャアァ!!!
「……うぉっ!?」
「えぇっ!?」
斬りかかった側と、斬られた側が同時に驚愕の声を上げた。攻撃を弾いたユウマは、弾いたのにまだ続く衝撃に驚いたが、AZKiもまさかこれを弾かれるとは思っていなかった。
「今のは一体……ユウマくん、大丈夫!?」
「あぁ、平気だ。
「あれの衝撃が、ほとんど弾かれた……どうして? 12発は『再生』したのに……」
その言葉でユウマが、衝撃の正体を察した。
「わかったぞ。その剣は戦闘中に出た『音』を吸収して、それを解放することで……それを衝撃として、そっくりそのまま相手に体感させる剣なんだ」
「それじゃあ、白上が斬り合ったのは……彼女の思うつぼ!?」
「そこまでバレちゃうなんてね。衝撃を『貼り付け』られたら、衝撃からは逃げられないはずなんだけど……何をしたの?」
AZKiがそう尋ねると、ユウマは首を横に振って答えた。
「すみません。僕にもよく分からないんですが、できるのでやっています」
「そうなんだ……でも、今ので防がれちゃいけないのはわかったよ。次は生身に当てる!!」
「ど、どうしよう……斬り合うのがダメなら、迂闊に動けない!!」
フブキはAZKiの剣の特性に焦っているが、ユウマは全く焦っていない。それどころか、勝ちを確信している。
「いや、勝てる。フブキは剣の準備をしておけ」
「えっ!? わ、わかった!!」
「自信満々だね。だけど、そう上手くいくかな!?」
ユウマが短剣を構えて、AZKiに走る。AZKiも剣を構えて、応戦する体勢だ。ユウマはぶつかる瞬間に、短剣を捨てて盾に持ち替えた。
「えっ!? まだ録音してないのに、どうして……」
「こういうことさ!! 喰らえっ!!」
「……うわっ!?」
ユウマは盾を使って、AZKiの剣に強い斜め上へのベクトルを叩きつけた。すると、AZKiの手から剣がすっぽ抜けて後ろに飛んでいった。そしてAZKiは、剣以外の武器を所持していない。言われた通り準備をしていたフブキは、刀から白い炎を立ち上らせている。
「今だ、フブキ!!」
「喰らえ、妖狐白炎斬ッ!!!」
「しまっ……ぐあぁぁぁっ!!!」
──グォジャアァァァァッ!!!
白い炎と共に、AZKiが一刀の元に袈裟斬りにされた。その威力は、まさに一撃必殺。
「こ、こんな……ことって……」
「ありがとうございました、AZKi先輩。またお会いしましょう」
「ふふふ、ご丁寧に……ありがと……」
AZKiはそう言って、笑顔で消滅した。ユウマは少し疲れた様子で、短剣を拾って額の汗を拭く。
「ふぅ。中々強い相手だった……フブキ、ナイス追撃だったぜ」
「そ、そう? えへへ、ありがとう!!」
「さて……大分音も少なくなったな、そろそろみんなの勝負がつく頃か」
ユウマとフブキは辺りを見回して、敵がいないかを確認しながら歩いていく。すると、下の階層で不思議な髪の色の女の子が、敵を薙ぎ倒していた。
「おっ、可愛い。フブキ、あの子は?」
「湊あくあさん。私たちの同級生だよ、メイドさんやってるって噂の人」
「……よし、挑もう。フブキ、俺に掴まれ」
ユウマの体に、フブキがしがみつく。そして手鏡を使用し、自分にベクトルを付与した。ユウマの体が浮き上がって、ゆっくり下に落ちていく。その間にユウマは、銃を構えて……最後の一発を、先制攻撃で撃った。曲がるベクトルを付与して、撃ちこむ……しかし、湊あくあはそれに反応してみせた。
「はぁっ!!」
「水の壁で防いだ!? あのレベルの魔法を、すぐに発動するなんて……!!」
「全方位に壁を貼って、銃弾を防いだか。やりますね、湊さん」
ユウマとフブキが、地面に降りる。あくあがユウマとフブキを見て、口を開いた。
「いい攻撃だったけど、あてぃしには効かないよ」
「銃弾が粉々に……水圧カッターの分厚い壁か」
「ご名答。だから、あなた達の攻撃は通らないよ」
湊あくあの能力を察したユウマは、それならばと水のペットボトルを取り出す。
「あなたを倒して、優勝させてもらいます!!」
「こっちも優勝がかかってるのは同じ。倒させてもらうよ!!」
「俺もあなたと同じ事ができる!! 喰らえ!!」
──ジャバァァッ!!
ユウマが水圧カッターを飛ばす。すると湊あくあも、水圧カッターを使用して応戦した。水同士がぶつかり合って、相殺される。
「だけどあなたの水は有限、こっちはほぼ無限!! あなたの方が先に息切れするはず!!」
「そうですね、でもやめるわけにもいかないんですよ!! フブキ!! 今のうちに攻撃しろ!!」
「うん!! 行くぞぉぉぉ!!」
フブキは刀を構えて、湊あくあに切りかかる。しかし、湊あくあは片手で水圧の壁を張って防いでいた。
「くっ、このっ!!」
「大分戦ってるはずだが、魔力はまだまだ残っていそうだな……水の量を少なくして、節約してるのか」
「そういうこと。まだまだあてぃしは出せるけど、そっちの方は大分減ってきたみたいだね」
ユウマのペットボトルの水は、残り少なくなっていた。それを見たユウマは、最後の水を全て集めて巨大な弾丸にし、回転ベクトルを与えて撃ち出した。
「これならどうだ!?」
「それなら、あてぃしだって!!!」
「うわっ!?」
フブキに水圧カッターを投げつけて、フブキを振り払ったあくあが大きな水の弾を作り、同じように回転させて撃ち出した。二つの弾丸がぶつかり合って、弾ける。それは雨となって、辺りに降り注いだ。
「喰らえっ!!」
「そうして来ると思ってたよ」
「……やはりダメか」
ユウマは降り注ぐ雨にベクトルを付与して、雨であくあを貫こうとしたが、あくあは水圧の壁で傘を作って防ぎきった。
「よく頑張ったけど、これで君が切れるカードはゼロだね」
「いや、まだやれる」
「その短剣か……でも、終わりだよ」
そう言ってあくあがユウマに手を向けて、トドメを刺そうとする。それをさせまいと、フブキが斬りかかっていく。
「させないっ!!」
「無駄だよ、あてぃしには通用しない」
「……」
ユウマは何も言わない。あくあは手に水の力を集中させて、ユウマにトドメを刺そうとしている。
「それじゃ、お疲れ様」
「いや、俺達の勝ちだ」
「ッ……腕が動かない!? これは!?」
湊あくあの腕と片足が、透明な触手に絡め取られていた。それは、湊あくあとユウマの間にある水たまりから伸びてきている。
「もしかして、水!?」
「その通り。水同士をぶつけ合ってたのはそのためさ」
「雨を弾丸にしたのも、上に意識を集中させるため……!!」
ユウマは最初からこれを狙っていたのだ。あくあは悔しそうに身じろぎしているが、圧力が強くて振りほどけない。
「……だけど、片手は動くよ!!」
「わかってるさ。フブキ、攻撃の手を緩めるなよ!!」
「了解!!」
そう言って、フブキは水の壁に必死で攻撃を続ける。ユウマはあくあの後ろに回って、短剣を構えた。
「これで終わりだ!!」
「終わってたまるかっ!!」
「わっ!? また……!!」
水の弾丸でフブキを追い払い、ユウマに攻撃を撃ち込む。しかし、ユウマには通用しない。盾で衝撃を受け流しながら、近づいていく。最接近したユウマが、短剣であくあの首を狙った。
「喰らえっ!!」
「まだだ!! まだあてぃしは……!!」
「いや、ここで終わりだ」
そう言ってユウマが、小盾を前に投げた。丸いそれは、フリスビーのように飛んでいき……与えられたベクトルの通りに、あくあの後頭部めがけて、飛んでくる。
──ズガンッ!!
「ぐっ、あ……!?」
「うぉりゃあぁっ!!!」
「がっ……」
あくあの首に短剣が突き刺さる。あくあは断末魔すらなく、倒れて消滅した。ユウマは、短剣を回収して……あくあに一礼する。
「……やった?」
「ああ、俺たちの勝ちだ」
『終了です。今回の優勝は、協力関係の上村さんと白上さんです』
そうアナウンスが流れて。終わったことを実感したフブキが、飛び上がって喜ぶ。
「やったぁぁぁぁっ!!!」
「ナイスファイト、フブキ」
「ユウマくんこそ、本当にありがとう!!!」
二人で握手し合い……二人の一度目のバトルロワイヤルは、最高の結果で終わりを告げた。
バトルロワイヤル、初優勝。
面白かったら、是非感想や評価をお願いします。作者のモチベーションが上がります。