ベクトル付与で異世界最強~ホロメンハーレムしながら学生性活 作:とも667
あくたん回です。
ユウマは約束通り、次の日からも毎日AZKiのお見舞いをしに行った。今は持ってきた果物を剥いてAZKiに食べさせているところだ。
「はいAZKi、あーん」
「あーん……おいしい!!」
「AZKiが美味しそうで何よりだよ」
特に体に問題はなかったため、AZKiはすぐ退院できた。退院したAZKiを、ユウマとフブキが迎える。
「退院おめでとう、AZKi」
「おめでとう、AZKiさん!!」
「あ、白上さん!! あなたも来てくれたんだ!!」
ユウマがAZKiの退院祝いに行くのについてきたフブキは、同じ恋人であるAZKiに会いに来たのだ。
「同じ人を好きになったんだから、挨拶しとかないとって思って!!」
「ご丁寧にどうも……AZKiでいいよ、もう仲間だし!!」
「じゃあ、これからよろしくね、AZKiちゃん!!」
二人が仲良しそうにしているのを見て、ユウマも笑う。
「二人の仲が良いようでよかったよ」
「同じ人を好きになったんだから当たり前だよ。ねー?」
「ねー!!」
二人はそれから、歩きながらユウマの惚気話を始めた。
「それでさー、その時ベルシリカになんて言ったと思う?」
「えー、なんて言ったの?」
「『どうする? 今降参するなら、見逃してやるけど』って……!!」
「わぁぁ、カッコいい……!!」
自分が褒められて悪い気はしない。そう思ってしばらくは静観していたユウマだったが、段々と恥ずかしくなってきた。
「それでさ、私に剣を落とすようにジェスチャーして……能力でそれを浮かせて、魔王軍を倒してくれたんだ!!」
「ユウマくん、頭いいなぁ……」
「でしょ? それに『山の神』も倒しちゃうし……ホントすごいよ!!」
そこでユウマが、話題を切り替えに入った。
「そういえば二人とも、お腹空かないか?」
「あ、そういえば……」
「私もちょっと……」
「それなら、奢るから食べに行こうぜ!!」
ユウマはそれを聞いて、ファミレスに二人を連れていく。
「うーん、美味しい!!」
「だろ? 遠慮せずにどんどん食べろよ」
「思い出すなぁ、あの時のこと。ベルシリカから助けてくれた時に、ユウマくんお腹空かせて倒れちゃって……」
ユウマはその時を思い出して、少し恥ずかしくなった。
「あぁ、奢ってもらったんだったなぁ……女の子に奢られるってどうなんだ?」
「助けてもらったんだし、あれくらいいいって!! ちょっとだけ変な人だなとは思ったけど、かっこよかったしね!!」
「あの時はありがとう、本当に感謝してる。だから今日は俺が奢るよ」
そう言いつつ、自分の失言について考えるユウマ。自分が異世界から来たこと……誰にも信じてもらえない、ユウマだけが知る事実。
「私までご馳走になっちゃっていいの?」
「いいよ。退院祝いだ、どんどん食べろよ」
「えへへ、それじゃお言葉に甘えて……」
ユウマは食べながら二人を見て、微笑む。この世界に来てから、ユウマは毎日眼福だった。その上、目の前の人達は自分の恋人。
「ごちそうさまでした!!」
「俺が払っとくからさ、先に外出てるといい」
「ありがとう、ユウマくん!!」
ユウマは支払いを済ませて、外に出る。それからもデートは続き、夕方。そろそろ家に帰る時間だ。
「さて、そろそろ帰らないとまずいよな……」
「そっか、もうこんな時間なんだ……」
「明日は学校だし、また学校で会えるよ!! そうだよね、ユウマくん?」
ユウマはフブキの言葉に頷いて、悲しむAZKiを慰める。
「明日も会えるし、な? 寂しかったら電話でもしてくれればいい」
「うん。じゃあ、またね!!」
「あぁ、またなー!!」
二人に手を振って、デートが終わる。それからユウマは、家に歩いていった。
「今日も楽しかったな……」
ユウマは、明日も彼女達に会えることがとても嬉しかった。そう思いながら、帰り道を歩いていると……
「メ、メイドいりませんかー……」
「えっ? あれって……」
「あの、誰か~……メイドいりませんかー?」
その人は道端に立って、道行く人にそう言っているが、誰にも相手にされていない。特徴的な髪色をしたその人に、ユウマは見覚えがあった。
「湊さん?」
「ひゃっ!? あ……?」
「こんにちは。こんなところで何を?」
ユウマはあくあにそう尋ねたが、あくあは人と話すのが苦手なので、上手く話せない。
「そ、その……えと……」
「ゆっくりでいいですよ、湊さん」
「あ、あてぃし……お、追い出されちゃって、今はご主人様を、探してます……」
ユウマはそれを聞いて、あくあの目的を察した。つまりは、ホームレス状態ということだ。
「なるほど。つまり、追い出されて今日の宿すらないというわけですね」
「ぎくっ……は、はい」
「じゃあ、僕の家に来ますか?」
あくあはそれを聞いて、驚いた。今まで誰一人相手にしてくれなかったのに。
「や、雇って……くれるの?」
「湊さんがそうして欲しいなら、よろこんで」
「あ……ありがとう!!」
あくあは心の底から安堵した、これで住む場所ができる。ユウマに連れられて、ユウマの家へと向かう。
「まぁ入ってください、お茶でも飲みながら話しましょう。荷物はその辺に置いといてください」
「お、お邪魔しまーす……」
「さて……とりあえずお茶を入れようか」
グラスを二人分取りだして、麦茶を注ぐ。適当なお茶菓子を出して、椅子に座る。
「て……手際、いいんですね」
「堅くならないでください、同級生ですし……それで、何があったんですか?」
「あてぃし……メイドさん、なんだけどね」
それはユウマも、フブキからの口伝で知っていた。
「そうでしたね、それはメイド服ですかね?」
「うん。でも、あてぃし……お仕事、得意じゃなくてさ。失敗ばっかりで……それでついに、追い出されちゃったの」
「それで行く場所がなくて、途方に暮れてたってわけですか……」
あくあが下を向きながら頷く。そしてユウマに目の前の可愛い子を放っておく選択肢などない。つまり、選択肢は一つだった。
「う、うん……だから、雇ってもらってもあてぃしは何もできな……」
「事情はわかりました。じゃあ、今日から湊さんを僕が雇います!!」
「えぇっ!?」
予想外の答えに、あくあが驚く。当然だろう、家を追い出され、『何もできない』と言った矢先に雇うと言い出したのだから。
「月々のお金っていくらくらいですか?」
「えっ、お金まで……いらないよ、住ませてもらうんだから……」
「雇うんですから当然ですよ、そうだなぁ……月給30万くらいでいいですか?」
「高っ……!? ど、どうして……?」
ユウマは、あくあが可愛いという理由だけで、メイドとして雇おうとしている。あくあの困惑は当然、しかしユウマからすれば、この上なく有意義な使い道なのだ。
「だって、湊さんは可愛いですもん」
「か、可愛っ……!?」
「可愛い子を助けるのが、僕の生き甲斐なので。助けさせてくださいよ」
そう言われてあくあは、更に困惑する。そんな理由だけで、メイドを雇う人は見たことがないからだ。確かに先輩には可愛い人が多かったが、それだけの理由で雇われた人はいなかった。
「その、あてぃし……全然家事できないけど……」
「大丈夫ですよ、少しでも手伝ってくれれば」
「……ありがとう、じゃあ……これからよろしくね、ごしゅじん」
ご主人。そう呼ばれて、ユウマが驚く。そんな呼び方をするのかと。
「えっ、ホントにそんな呼び方するの?」
「あ……こ、こう呼べって教えられて……」
「そうなんだ……好きに呼んでくれていいですよ。まぁ、ご主人って呼ばれるのも悪くないけど……」
ユウマは現代でそういう『メイド喫茶』があることは知っていたが、実際行ったことはなかったので……本当にそう呼ばれるのは、新感覚だった。
「じゃあ、何やればいいかな……?」
「とりあえず洗濯物かな……洗濯機を回してもらえますか?」
「は、はい!!」
あくあが洗濯機に走って言ったのを見て、ユウマが微笑む。そして、洗濯物を取ってきた。しかし……
「よし、とりあえず洗剤を……」
「ご、ごしゅじん……」
「どうしました?」
そこであくあは、申し訳なさそうに言った。
「教えてもらったやつと違うから、全然使い方がわかりません……」
「あらっ……そ、そうですか。じゃあ、教えます」
「お、お願いします……」
ユウマは、新人の子に仕事を教える先輩の気分だった。もっとも、ユウマは新人のまま死んだのだが。
「ここはこうして……あ」
「洗剤入りすぎちゃった……ごめんなさい、ごしゅじん……」
「いいですよ。そのままやっちゃいましょう」
そこからボタンの場所を教えて、洗濯機を動かす。あくあは洗濯機が動いたことに安堵している様子だ。
「よかった、この洗濯機はこうするんだね……」
「次はそうだな……掃除しててください、晩ご飯を用意するので。掃除機はそこに入っていますが、分からないことがあったら呼んでくださいね」
「わ、わかりました!! 頑張ります!!」
あくあは張り切って掃除機のあるタンスを開けて、掃除機を引っ張り出そうとした。しかし……
「さてと、とりあえず米炊いて……」
「わわっ!? やばっ……きゃあぁ!?」
──ドンガラガッシャーン!!
「えっ!? 湊さん!? 大丈夫ですか!?」
掃除機が他の荷物に引っかかり、タンスの中の荷物が全てあくあに襲いかかる。あくあは為す術なく、それの下敷きになってしまった。ユウマは能力も使って、すぐに荷物をどかす。
「うぅ、ごめんなさい……またやっちゃった……」
「いいですよ、このくらい。掃除は僕がやっておきますから……湊さんは、炊飯器をお願いします。あっちにあるので……炊飯器の使い方はわかりますか?」
「うん……一応」
その言葉が少し気になったユウマだったが、気にせずにあくあを行かせる。そしてユウマが掃除を始めた。そして……掃除が終わった頃。
「あ、炊けました」
「それじゃ食べましょうか、惣菜買ってきてるので」
「うん、お茶碗に……ってあれ?」
──べちょお……
そんな擬音がしそうな程、ベチョベチョのご飯。明らかに、水を入れすぎたご飯だ。あくあは申し訳なさそうにユウマを見ている。
「……」
「あ、あの……ごめんなさい」
『湊さん、何も出来ないって言ってたけど……想像以上だな……』
ユウマは心の中でそう思いながら、あくあを見る。あくあはそれを見て、とても申し訳なさそうだ。
「その、ホントに……お給料はいらないから、泊めてさえくれれば……」
「……うん、美味しい」
「えっ!? ちょっ、ごしゅじん!? 何して……」
ユウマはお茶碗に盛ったシャバシャバのご飯をかきこみ始めた。無論、あくあは困惑しているが……ユウマは言う。
「だって、食べなきゃもったいないし……美味しいですよ!!」
「そ、そんなわけ……あれっ、あてぃしのは?」
「あぁーしまった、間違えて湊さんの分も食べてしまった!!」
ユウマはいつの間にか、あくあの分も食べてしまっていた。ユウマは冷蔵庫からレンジでチンするタイプのご飯を取り出す。
「待っててくださいね、すぐ温めるので」
「なんで……そこまでしてくれるの?」
「えっ? 湊さんが可愛いからですけど……」
ユウマがそう言うと、あくあの顔が赤くなる。
「か、可愛いなんてそんな……そんな理由で?」
「それだけで十分ですから。はい、どうぞ」
「……いただきます」
あくあはお腹が空いていたので、目の前のご飯を食べ始めた。ユウマは、食べ終わるまでずっとそれを見ていた。
「ごちそうさまでした……ありがとう」
「こちらこそ。美味しそうに食べてくれて嬉しいです」
「その……結局なにも出来なくて、ごめんなさい。洗い物だけでもさせてくれる……?」
「わかりました、それじゃお願いします」
あくあはそう言われて、お皿を持って行って洗い始めた。ユウマはその様子をじっと見ている。
「……よし、できた!!」
「お疲れ様です。ありがとうございました」
「こっちこそ、失敗ばっかりでごめんなさい……」
申し訳なさそうなあくあに、ユウマは労いの言葉をかけた。
「湊さんなりに頑張ってくれたんですから、僕はいいですよ。明日からもよろしくお願いします」
「はい、精一杯頑張ります……!!」
「そうだな、寝る場所は……あー、やっぱりベッドは一つしかないか」
布団でも敷けないかとタンスを漁ったが、この家にはなかった。あくあはそれを見て、声をかける。
「あの、あてぃしはこのソファーでいいからさ……ごしゅじんはベッドで……」
「そんなわけにはいきませんよ。女の子を床で寝させることはできませんから」
「あてぃしだってメイドだし、ごしゅじんを床で寝させるなんて……」
ベッドの譲り合いが始まってしまい、いつまでも埒が明かない。そんな時、あくあが言った。
「そうだ、それなら……ごしゅじんと一緒のベッドに入ってもいい?」
「えっ!? 一緒に寝るんですか!?」
「う、うん。嫌ならあてぃしが床で……」
そう言われては拒否もできない。ユウマは仕方なく、それを受け入れた。
「わかりました。とりあえず、今日のところはそれでいきましょうか」
「よし、決まり!!」
「とりあえずお湯を入れるので、今日はお風呂に入ったら寝ましょうか。明日も学校ですし」
ユウマはそう言って、お湯の蛇口を捻ってお湯を入れる。そして、すぐに湯船にお湯が溜まる。ユウマはサッとお風呂に入って、出てきた。
「湊さんもどうぞ。着替えは……」
「持ってきてるから大丈夫!!」
「そうですか。それではごゆっくり」
ユウマはそう言って、先にベッドに入る。それからしばらくして、あくあが青いパジャマを着てお風呂から出てきた。
「お待たせしました~……」
「……どうぞ」
「失礼しまーす……」
そう言って、布団の中に潜り込んでくるあくあ。もちろん一人用のベッドなので、二人は密着することになった。つまり……
──むにゅっ♡
「ちょっ……!?」
「ん? ごしゅじん、どうかしたの?」
「い、いや……なんでもないです。おやすみなさい」
「うん。それじゃ、おやすみなさい……」
そう言ってあくあは、すぐに眠ってしまった。ユウマと密着したまま、安らかな寝息を立てている。つまりそれは、あくあの豊満な胸が押し付けられるということだ。
「……寝れん」
ユウマはこの感覚を二度味わっているが、いつまでも慣れない。ユウマはその日、眠るのにかなり時間がかかった。そして、次の日の朝。寝るのが遅くなったユウマが、あくあに体を揺すられている。
「ごしゅじん、朝だよ。起きて」
「ん、ふわぁぁ……おはようございます、湊さん」
「ご飯できてるから、食べて?」
ユウマがテーブルに行ってみると、美味しそうなベーコンエッグトーストが置かれていた。
「美味しそう……!! これ、湊さんが!?」
「うん、一応これでもメイドだから……」
「すごいや……いただきます」
ユウマがそう言って、一口齧る。溢れ出す肉と卵の旨み。昨日のご飯が嘘のような美味しさに、ユウマは感動の涙を流す。
「え!? 美味しくなかった!?」
「いえ、すごく美味しいです……湊さん、ありがとうございます」
「そ、そうかな? うへへ、ありがとう……」
嬉しそうにするあくあを見て、ユウマは温かい気分になる。身支度を整えて、学園に行くと……ユウマはAZKiとフブキに会った。
「おはよう、ユウマくん!!」
「おはようございます……ってあれ? 湊さんも?」
「ひゃっ……あ、あの……その、あてぃし……」
フブキに見つめられて、あくあが萎縮する。そこでAZKiが、ユウマに尋ねた。
「もしかして、また誰か落としたの?」
「いや、そうじゃなくて……実は失敗ばかりで追い出されたらしくて、俺が雇ったんだ。家のメイドさんだよ」
「あぁ……そういうことですか、納得!! ユウマくんが可愛い子を見捨てるはずないですもんね!!」
フブキがそう言うと、あくあがユウマの後ろから挨拶をする。
「よ、よろしく……」
「こちらこそ、湊さん」
「とりあえず行きましょう、遅刻しちゃいます!!」
「やっべ、急ごう!!」
ユウマ達はフブキに言われて、急いで学園に向かい……時間は経ち、放課後。ユウマは先にあくあ達に帰ってもらい、二台目のベッドを買っていた。
「よし、これでいいだろう……」
あんなことを続けていたら、いつか理性が持たない。そう悟ったユウマは、二台目を購入することにしたのだ。能力のおかげで片手で持つことができるので、運搬に関しては心配ない。
「湊さん、ただいま……湊さん?」
呼んでも返事がないので、二階を見に行ってみる。すると……あくあがベランダの前で座り込んでいた。横には、洗濯物が詰まったカゴが置かれている。
「あ、ごしゅじん……おかえり」
「どうしたんですか? そこで座り込んで……」
「その、これが重くて……もう疲れちゃって、全然動けなくて……ごめんなさい」
ユウマはそれを聞いて、安堵する。体に問題があるのかと思っていたから。
「いえ。運んでくれるだけでも助かりましたよ、あとはやっておくので……休んでいてください」
「は、はい!!」
「さて。さっさと干しちゃうか」
ユウマはそう呟きながら、洗濯物をテキパキと干していく。あくあはそれをじっと見つめていた。
「よし、終了っと……」
「ごしゅじん、次は何すればいいかな?」
「そうだな……見せたいものがあるので、着いてきてください」
ユウマはそう言って、買ってきたベッドをあくあに見せる。
「こ、これ……ベッド?」
「はい。二人じゃやはり窮屈だったので、湊さん用のベッドです」
「ありがとう、何から何まで……」
ユウマも、今回ばかりはお礼を言われることはしていないと自負していた。完全に、自分のためだからだ。しかし、それを言っても拗れるだけ。
「……気にしないでください。湊さんのためですから、設置するのでちょっとどいててくださいね」
「うん、わかった」
「ここをこうして……よし完成」
ベッドがあっという間に組み上がる。あくあは嬉しそうにベッドを見つめる。
「ありがとうごしゅじん、色々買ってくれて……」
「可愛い子のためですから、当然ですよ」
「えへへ……あ、もうこんな時間。お米炊かないとだけど……」
昨日の失敗を思い出して、あくあが凹む。しかしユウマは、あくあに微笑んで言った。
「僕と一緒にやりましょう、そうすればいつかは覚えられるかと」
「う、うん!! よろしくお願いします!!」
「決まりですね、それじゃ、まずは……」
そこからユウマは、米の研ぎ方や水の丁度いい入れ加減まで、全てを教える。そして……炊飯器を開けると。
「あ、炊けてる!! やったぁぁ!!」
「湊さん、できましたね!!」
「うん!! あとはおかずだけど……また惣菜買ってきてる?」
ユウマは首を横に振り、食材を出す。そして、あくあに言った。
「今日は一から作ろうと思って。湊さんも一緒にやりましょう」
「わかった、それじゃお願いします」
「では、始めましょうか」
ユウマはまた、料理の作り方をあくあに指導していく。しばらくすると……美味しそうな唐揚げが出来上がった。
「で、できた!! これもできたよ!!」
「ありがとうございました、とても助かりましたよ」
「え? 一方的に教えてもらってたような……」
「とにかく僕の役には立ったので、自信を持ってください」
ユウマは半ばゴリ押しで、あくあに自信を持たせた。それが案外効いたのか、あくあは嬉しそうだ。
「そっか……役に立てて嬉しい!!」
「じゃあ、冷めないうちに食べちゃいましょうか」
「うん!!」
二人で晩ご飯を食べた後に、ユウマがふと尋ねる。
「そういえば湊さん、ご趣味は?」
「えっ? その……ゲーム、かな」
「ゲームか……わかりました」
「あ、あの。買ってこなくていいからね?」
ユウマはそう言われて、表面上は頷いた……しかし、本当はゲームを買ってくる予定だ。次の日、ユウマは学園が終わったあとに、ゲームを買いに来た。
「さてと……二人でできるゲームがいいよな」
しかし、ユウマはこの世界のゲーム機のことがわからず、現代のゲームにもほぼ触れていない男だ。気分はまるで、孫におもちゃをあげるおじいちゃん。
「……これでいいかな、いやこれか?」
そう言って、しばらく悩んで購入したゲーム機。ユウマはそれを、ゲームソフト何本かと共に家に持って帰ってきた。
「おかえり、ごしゅじん……って、え!? ゲーム機ホントに買ってきたの!?」
「二人で遊びたくて……ダメですか?」
「いや、いいけど……嬉しいけどね?」
ユウマは早速、ゲーム機をテレビに繋いだ。すぐにコントローラーを持って、二人はゲームで遊び始めた。生粋のゲーマーのあくあと、ど素人のユウマ。どちらが強いかは、火を見るより明らかだった。
「あー、勝てないや。強いなぁ、湊さんは」
「ごしゅじんも中々いい動きだったよ?」
「そうか? それなら嬉しいな……」
それからもしばらくゲームで遊び、いつも通り家事を教えて……それぞれの寝床に入る。それが、一ヶ月程続いただろうか。ある日の帰り道、あくあが一人で歩いている。
「……ごしゅじんって、優しいな」
ユウマはあくあが可愛いから、優しくしているだけなのだが……あくあにとっては、落ちこぼれの自分を見捨てないでいてくれるユウマが、とても善人に見えていた。
「あてぃしにゲームもくれたし、家事も教えてくれるし……あてぃしがどんなに失敗しても、怒らないでくれるし」
可愛い子にはとことん甘い。それが上村ユウマだ。いつの間にか、あくあはユウマのことを好きになっていた。
「今日……勇気出して、言ってみようかな」
そう呟いて、あくあが歩いていると……突然あくあは、後ろから後頭部を殴られた。
「がっ……!?」
「湊あくあ、だったか。しばらく寝ていろ」
「だ、れ……?」
あくあは抵抗する間もなく、意識を失ってしまう。それをやったのは……魔王軍だ。そして、その真ん中にいた男が、あたかもスライムのようにぐにゃぐにゃと姿を変える。
「……ふぅ。コピー完了」
「エインセル様。この者は?」
「とりあえず基地に隠しておけ。今日中に忌々しい奴を消してくる」
魔王軍六魔将、『無貌の怪(ノーフェイス)』エインセルはそう言って、ユウマの家に歩いていく。他でもない……『湊あくあ』の姿で。
「覚悟しろ。我らに刃向かった罪は重いぞ」
次回、ユウマVSエインセル。