※この作品はR-18です。

黄金と黒墨   作:Abeeeta

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某くんが可愛くて可愛くてしょうがないしアルさんはアルさんで顔が良すぎてんだコレどうしよう……ってなった結果cpにしちゃえばいいじゃん、と思いついた阿呆の作品です。#コンパス内での絡みとか殆どない組み合わせのカップリングですが許せる人は暖かい目でご覧下さい。


盗賊と貴族

「へぇ、なかなかいい趣味の屋敷だな。てっきり成金趣味でゴテゴテした雰囲気かと思ったが……これはお宝の質も期待できそうってな」

 

立ち込めた静寂を破り、男が独り呟く。大理石を基調にした宮殿とも言える建物には、焦茶色をした艶のある木製の家具やふんわりと沈み込むような赤地の絨毯などといった、質はもちろんのこと品性も感じさせる最高級の丁度品が揃っている。

 

一方の男は、金の装飾があちこちに散りばめられた紫の装束に身を包み───身を包むと言うには些か上半身の露出が多い気がするが───そして、抜き身のカトラスを左手に握っていた。

 

明らかな異物感。それは男の衣服の仕立てが宮殿の雰囲気と異なるからか、刃物を手に辺りを物色しているからか、それとも。

 

「こういう屋敷にゃあ大抵隠し部屋ってもんがある。で、その鍵は大抵、モノの多い書斎やらに隠されてるってな」

 

強い日差しに長い間焼かれたことが窺える褐色の肌。装束の裏から細い金具を取り出し、末端ながら同じ色をした指先で摘む。そのままそれを、手近な扉の鍵穴に挿し込んだ。かちゃり、かちゃりと金属のぶつかり合う音を立てながら金具を弄くり回すこと十数秒。施錠されていた書斎の扉が男の手で開かれる。所謂ピッキングだ。

 

「さーてさて、鍵と仕掛けを探していくかってな。この手の鍵は大体、価値の低い物に紛れてたりするんだが……」

 

書類や小物が乱雑に積まれて山をなす机の上や、無秩序に本がしまい込まれた書架等をくまなく探るが怪しげな物は見当たらない。

 

「あー、この部屋はハズレみてぇだな。他に怪しい所といえば寝室なんかの来客は立ち入れねぇ場所の何処かってもんだろうが……」

 

周辺の街でそれとなく行った事前の調査では屋敷の主は侍従を1人も召し抱えておらず、家族も居ないという。その主人が留守の間にこうしてやってきているのだから、遠慮なく独り言をこぼせるという訳である。噂程度だが10人以上がそう言っているならば信憑性はそれなりに高い。

 

しかし、仕掛け探しの方は難航した。定石通りの場所を調べてみたものの何の成果も得られず、全ての部屋に侵入しては部屋の隅から隅まで舐め回すように確認し、屋敷中を引っ掻き回しに引っ掻き回してようやく仕掛けが見つかった、という次第である。

 

仕掛けは大きな衣装箪笥の奥の面に施されていた。丁度男の目線から頭ひとつほど高い位置に施された隠し扉で、鍵穴以外の部分は真っ平ら、といった風になるべく自然になるよう隠されていた。

 

熟練した盗賊である男でさえも、意識からつい外れてしまう箇所に仕掛けを作る事で欺いてみせた館の主に心底感心してしまう。何はともあれ乗り上げてしまった暗礁からようやく脱した男は、先程同様に金具での解錠作業に取り掛かる。

 

「いやぁ、邸内への侵入を何も対策してねぇから侮ってたが……まさか隠し扉をここに取り付ける筈がないだろうって所に仕込むとはな。偶然見上げた時に鍵穴に気付けて助かったぜ。流石、大盗賊の俺の勘ってな」

 

椅子を引っ張って来ると座面に登り、目の前にまで近づいた鍵穴に金具をスッと挿し込む。鍵穴の中のピンを先程と同様金具で揃えて押し上げていくが解錠には至らない。暫く鍵穴を弄り回した辺りで男は鍵を破る手を止めた。

 

「……そろそろ時間切れか。恐らくあと一歩なんだろうが、いくらなんでもここの主に顔を見られちゃ敵わんからな。」

 

自分のいた痕跡を消しながら男は自分に言い聞かせる。

 

「今回も偵察だった、と考えりゃ悪くねぇ。実地での偵察だ。どうやら鍵はどこにもねぇみたいだが……家主が肌身離さず持ち歩いてるだけの事だろう、夜に忍び入ってくすねるだけでどうにでもなる。入手までの道はちっとばかし長いが……その分お宝の質も期待出来るってもんよ」

 

撤収の準備を着々と熟していく男だったが、部屋を出るためドアノブに手をかけようと伸ばした手が空振りする。

 

「ただいまー。きょうも ようふく よごしちゃったから きがえなきゃ……いっつもより まっくろだけど これ あらったら また きれい なるかなぁ?」

 

そんな拙い言葉と共に開かれた扉。この屋敷の主ととれる挨拶に、居ないはずの者と邂逅した男は偽情報を掴んだか、とつかの間瞑目する。ただ、男の掴んだ情報には嘘はなかった。少しばかり仔細の不足があったのみ。

 

確かに屋敷の主人は毎日同じ時刻に必ず出かけるが──"帰る時間はまちまちである"。

 

噂と品のいい屋敷を結び付けすぎた結果、屋敷の主の行動を間違った方向に予想──几帳面だと想定──してしまった。

 

こんなことなら実物に接触してから盗みに入るべきだったか、と後悔しながら隠れ場所を探すも一瞬で姿を隠せそうな場所などどこにも無く──

 

「あれ、おまえ にんげん?にんげん だあれ? おきゃくさん?」

 

紫の布地を金糸で飾り立てた美しい服に真っ黒いシミを作りながらも纏い、同じ趣向の仮面を被った館の主人──

 

1羽の黒い鳥がいた。




R-18が出てくるのはもう少しばかり先になります。(言ってよかったのか……?)

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