※この作品はR-18です。

【ダイジェスト版】「助けてノノえもん!」シーズン1〜3   作:春画屋@二次創作R18

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約12000字。


2ー4:明日に繋がるこの一日

【前回のあらすじ】

 黒服は先生とイチャイチャ出来るし、連邦生徒会長がいるから安心だし、『大人のカード』を使わなくてもノノミからもらったお小遣いで生活できるし、『ご都合主義』って素晴らしいよねっていうお話でした。

 

 

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 ——AM 7:00 起床

 

 ……ふわあ。

 

 目を覚ますと、キッチンの方から音が聞こえてきた。何か煮える音、包丁の音……。いい匂いがする。そうか、ノノミが朝食を作ってくれているんだ。昨日はうちに泊まっていったから……——って、

 

「あああああっ!」

「ど、どうしました? 先生」

 

 案の定、ノノミが顔を出す。エプロンがよく似合うその姿は、新妻のようでとても魅力的だ。こんな少女に朝食を作ってもらえる俺は、果報者と言えよう。

 

 ——でも、そうじゃない! 今、期待してたのは、ノノミのおっぱい! もうちょっと早く起きていれば、隣ですやすや眠っている(おそらく裸の)ノノミに朝っぱらからあんなことやそんなことが出来たのに! もっと早く起きれば良かった!

 

「あの……先生?」

「あ、いや、何でもないよ? ご飯作ってくれてるんだよな? 食べよう、食べよう」

 

 悲しみを胸におさめながら、俺はノノミに優しく言った。

 

 

 ——AM 7:10 ノノミと朝食

 

「おいひい」

「もう、先生ったら。食べながら喋っちゃダメですよ☆」

 

 あれやこれやする時間もないので、その分ノノミに全力で甘えることにする。すぐ横に座って、あ~ん、して食べさせてもらい、口を拭いてもらう。甘えの定番フルコース。マンネリ気味なので、新しい甘えを現在模索中だ。ちなみにこの程度のこと、ノノミと一緒の時は周りに誰がいようとやっているのだが、まだ「うわあ……」みたいな目で見られることが多い。アビドス対策委員会のメンバーは流石に慣れたらしく、生あたたかい目で俺たちを見てくれるようになった。そういえば対策委員会といえば、

 

「最近、アビドスの方はどうだ?」

「そうですねえ。セリカちゃんとアヤネちゃんはいつも通り元気ですよ☆」

「そうかそうか、そりゃ良かった」

 

 セリカが元気がない時は、他の奴の何倍も心配になるからな。元気なら何より。

 

「ホシノ先輩は、先生のことをよく聞いてきますねえ」

「俺のこと?」

「……というか、私と先生のことなんですけど。最近どうなの? 上手くいってる? なんて……えへへ、ちょっと恥ずかしいんですけど」

 

 おじさん(ホシノ)がそういうこと聞いてくるってのは微妙な気分になるな……。彼女の推測によれば、俺とノノミってのは今いるこの世界を変えかねない存在で、しかもそれはおそらく正しい。なので、俺とノノミのお付き合いというか交際というか、その辺を採点されてる気になってしまう。まあ、もちろんそれだけじゃないだろうし、ノノミの無邪気な反応を見てれば不満もないだろう。

 

「シロコちゃんは最近何だか、すごく嬉しそうです」

「……そうか。そりゃ良かった」

 

 ノノミが何故か、どこか不自然な笑顔でこっちをじーっと見つめている。ヤバい。一切全く、何もバレてないと思ったが、シロコとヤっちゃったのバレたか? バレてないまでも、勘付かれてるか? 他の女の子とヤっちゃった時は、高確率でノノミにバレてるのだが……

 

「何ででしょうね?」

「何でだろうなあ?」

「何か、いいことでもあったんでしょうか?」

「いいこと? あーあー、あったのかもなー?」

 

 ……何も知らないわけないな、こんなこと言ってて。今からでも、「俺がヤッたんじゃない! 逆レイプされたんだ!」とか言い訳した方がいいんだろうか。全く言い訳にならない上に、二回目はノリノリで自分からヤッといて何言ってんだ、って話なんだが。

 

「ふふっ」

「ははは」

 

 笑顔のノノミが怖い。

 

「シロコちゃんは……放っておくとちょっとあやうい子ですから、先生も気にかけてあげてくださいね」

「は? ああ、うん」

 

 ノノミが、シロコの姉か母親か、といった雰囲気の表情になる。そりゃまあ、ちょっと目を離しただけでも即ガチの銀行強盗犯になりそうな奴だから、一応見張ってるけど。しかしこりゃあ、シロコにしてもセリカにしても、もちろんアヤネにしても、ノノミから見たら完全に保護対象だな。悪いけど、同等の恋敵、なんて風には思われなさそうだ。

 

「それはそれとして、避妊って大事ですよね?」

「ん? うん、大事だな。でも、何で今その話したの?」

「いえ、何となくです☆」

 

 この流れで言ってて、何となくなわけがないんだが? バカじゃないんだから、そのぐらいわかるんだが? うん、シロコの話題と避妊には気をつけよう……。

 

 

 服を着せてもらって、ネクタイを締めてもらって……ノノミがいると非常に楽だ。身支度を手伝ってくれるノノミの方も、何だか嬉しそうだ。

 

「……先生は……面倒くさいとか、やりたくないとか言う割に……しょっ……自分がやらなければいけないと思うと、すぐ無理をなさってしまいますから……気をつけてくださいね……?」

「いや、仕事ってのは忙しい時とそうでない時があるから。しょうがない時も……」

「ダメです。ちゃんと休む時は休んでください。先生の良くないところですよ?」

「はあ」

 

 最近ノノミは、こういう小言が増えた。サボってる時なんかはもちろん何言われたっていいんだが、逆に仕事をやってて何か言われるのはちょっと傷付く。働きすぎが良くないのはもちろんわかっているが、前がブラックだったから、職場環境がいいとつい張り切ってしまうんで……

 

「はい。ネクタイ、出来ましたよ☆」

「ん、どうだ?」

「いつも通り、素敵ですよ☆」

「やっぱり?」

 

 と、バカップルらしいやり取りをしたら気持ちが落ち着いた。はあ、癒される。

 

 こうして、俺は職場へ、ノノミは学校へと向かうのだった。

 

 

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 ——AM 8:45 シャーレオフィス到着

 

 PCの電源を入れ、起動するまでの間にコーヒーを淹(い)れる。今日は午前中に当番でアコが来るから……あの辺の書類から片付けとくか。

 

 

 ——AM 9:15 ユウカと作業通話・書類整理

 

『うーん……。また無茶苦茶な予算申請してくるわね……』

「また『エンジニア部』か?」

『はい。最近は何を作ってるんだか、承認できないって何度も言ってるのに……』

「面白いもん作ってるんなら多少はいいじゃん。何作ってんのか知らないけど」

『「多少」で済むような桁数(けたすう)なら、私だって仏心(ほとけごころ)を出しますよ……』

「桁数ときたかぁ……」

 

 作業通話越しに、セミナーで作業をするユウカがうめいているのが聞こえる。『ミレニアム』は自由というか、好き勝手な部が多いので大変そうだ。まあ、好き勝手にやってる部活を無責任に煽ってるのは俺だったりすることが多いので、そこは極力何も言わないようにしている。

 

『そういえばゲーム開発部の子達が、先生に来て欲しいって言ってましたよ。何か、バージョンアップがどうとか』

「ああ、あれかな。ゲーム作ってもらってたから」

『そうなんですか?』

 

 どんなゲームかは言わない。脱衣麻雀のゲーム作らせてるなんて言ったら、堅物のユウカに何を言われるかわからん。実際、俺が心配になる程アリスの教育に悪いし。嬉々として「アリス、ヒロインを剥(む)きます!」とか言ってんのを聞くとちょっとな。あれ関係の予算も、今ユウカが処理してる申請書の中にあるかもしれないし。

 

『そういえば、連邦生徒会に出した弾薬と物資の要請、すぐ通して頂いて助かりました』

「ああ、あれ? 何か緊急っぽかったから、ねじ込んだ。あんなの、連邦生徒会がごちゃごちゃ言える立場じゃないし」

『私もそうは思いますが、あそこはなかなか……。でも流石ですね、先生』

「いや、嫌味言ったらすぐ通ったから」

『は? 嫌味……ですか?』

「指名手配犯の逮捕だの特別依頼だの、シャーレはともかく、うちの生徒たちはあんなにホイホイ頼まれて平気なほど暇じゃないんですけど〜? って」

 

 職場環境が良かろうが、勤めている内に不満と自分の性格の悪さは出てくるもんである。こっちが割を食っている分は、隙あらばやり返すことにしている。その他諸々の鬱憤(うっぷん)晴らしだったりもする。

 

『先生、またそんな……。それじゃミレニアムや各学園じゃなく、先生が目をつけられちゃいますよ?』

「もうつけられてるから手遅れだ。それに、生徒たちの待遇改善要求をして、ヘイトが俺の方に集まるなら一石二鳥じゃないか。幸いシャーレは連邦生徒会長直轄*1だから、大っぴらに何かしたりは出来ないし」

『だからってそんな、先生一人に押し付けるみたいな……。でも確かに、現実問題として生徒が不満を言わなければいい、という話ではないんですよね。あくまで我々は、先生の要請で自発的に行っている立場のはずですし……』

「俺が納得いかないところになんて、そうそう生徒なんて行かせらんないよ。それぞれ部活だってあるんだから」

 

 まあ、部活がどうとか、俺だからどうとかじゃなく、ヤンキーが他校にかちこむみたいなノリで嬉々として来る奴とか、堂々と新兵器の実戦テストが出来るってんで嬉々として来る奴とか、ミレニアムは問題のある奴ほど喜んで戦闘に参加してくるけどな。俺が巻き込まれるのは嫌だから、嬉々として来ないでくれ。

 

『自分の立場が危うくならないよう、程々にしなきゃダメですよ? もちろん、何かあれば全力で庇いますけど……。でも、言いにくいことを代わりに言ってくださるのはありがたいです。生徒を代表して、お礼を言います』

 

 そんな、わざわざお礼を言われるほど堅苦しい話でもないんだが、たまにユウカに素直に褒められるとやっぱり嬉しい。これでついでに、変にスイッチが入らない程度に、程よくセクハラさせてくれると嬉しいんだが。エッチなしで、俺の気が済むまで太ももを触らせてくれるとか。……ダメか。

 

 少しして、何か用事で席を外すと言ってユウカは通話を切った。さて、しばらくは一人で集中して仕事だ。

 

 

 ——AM 10:25 当番、天羽(あまう)アコ到着。

 

「整理したファイルはこちらでよろしいですか?」

「うん、そこ入れといて。後で並べ直すから」

「わかりました。そろそろ休憩にしますか? コーヒー淹れておきますが……」

「ああ、んじゃよろしく。それまでにこっち終わらせちゃうから」

 

 というわけで、アコの淹れてくれたコーヒーを飲みながら、しばし休憩。

 

「んで、『風紀委員会』の方はどうだ? 何か変わりあるか?」

「そうですね。最近は『万魔殿』(パンデモニウム・ソサエティー)からの嫌がらせもありませんし、『温泉開発部』もそんなに大した騒ぎは起こしてませんし」

 

 大した騒ぎじゃないけど、何かしらの騒ぎは起こしてるのか。温泉開発部は相変わらず元気だな。

 

「あとは『給食部』からたまに被害の訴えが来るぐらいでしょうか」

「また『美食研究会』か」

「はい。「唐揚げにレモンをかけるかどうか」問題は根深いようで」

 

 いつも通りか。ゲヘナは平和そうだ。せいぜい食堂が吹っ飛ばされて、フウカが泣いてるぐらいだろう。今度会ったら、愚痴を聞いてやって慰めてやるか。

 

「イオリもいつも通りですし、強いて言えば委員長がオーバーワーク気味なくらいで」

「他人のことは言えないが、ワーカホリックばっかりだな。ヒナには少し休むよう言っておけ。チナツだっているし」

「そうですね。彼女は私たちの目が届きにくいところでサポートしてくれますから……」

 

 などと、風紀委員会の近況を聞く。しかし、休憩の時間だってのにアコと二人だとどうしても会話がかたい話ばかりになるな。休んでいる感じがしない。

 

「そういえば、カヨコさんはお元気ですか? 最近会ってます?」

「ん? カヨコ? ああ、『便利屋』とはラーメン屋でよく会うけど」

「ラーメン屋……ですか。先生もよく行かれるんですか?」

「おう。常連だからな。安くて美味い。あいつらも最近四人でよく来るし」

 

 何だか雑談っぽくなってきたな。アコがラーメン屋の話題に食いつくのはちょっと意外……というか警戒した方が良さそうだが。便利屋の情報を聞き出したいだけじゃないだろうな。

 

「ちなみに、何ていうお店ですか? どの辺にあるお店……」

 

 何か怪しいな。

 

「それは教えない」

「そうですか、それは残念です。そういえば、便利屋の方たちは最近騒ぎを起こさないので助かってますが、見えないところで何かやっていたりするんでしょうか」

 

 やっぱり怪しいな。

 

「それも教えない」

「……そうですか。それにしても彼女たち、今は事務所はどこに構えてるんでしょうね。ゲヘナ自治区ではないようですけど」

「それも知ってるけど教えない」

「少しくらい教えてくれてもいいじゃないですか?」

「お前に情報を流すと、悪いことに使いそうだから教えない」

「…………」

「目をそらすな、目を」

 

 もはや、情報が欲しいだけなのを隠す気もないな。これだから教えないんだ。俺はあそこに関しては中立だって言ってるのに。カヨコなんか逆に、板挟みの俺に気をつかって、風紀委員会の話題を避けるぐらいなんだぞ。……それにしてもアコは、コーヒー淹れるの上手いな。将来はどこかで、いい秘書になれそうだ。

 

「そういえば先日、突然モモトークを頂きましたが……」

「ああ、そうだっけ?」

 

 アコに? 何か送ったっけ。

 

「『目隠しプレイに興味あるか?』ってどういうことだったんですか、あれは」

「ぶほっ!」

 

 思わずコーヒーを吹いてしまった。汚い。

 

「そ、そんなの送りましたっけ、アコさんに」

「何で敬語ですか。というか、また何か新たな性癖に目覚めたんですか? 何かするつもりですか? 私にそういうプレイでもさせるつもりで送ってきたんですか? 私ならどんなプレイでもすんなり受け入れそうとか、そういうイメージでもお持ちなんですか?」*2

「いや、別にお前に何かしようとかは……」

 

 そういえば、そんなメッセージ送ったんだった。シロコとそんなようなプレイをしてしまって*3、興味が湧いたので(あくまで興味が湧いただけ。目覚めてない。絶対)、そういうのは詳しそうだからアコにちょっと聞いてみるか、とノリで聞いてしまっただけ……なのだが、よく考えたらいくらアコでも、いきなりこんなメッセージ送りつけられても困るわな。いくら、この間そういうプレイをしてしまった仲とはいえ。

 

「いや、知識として知ってるかな、と思っただけで。SM用の道具とか詳しかったじゃん?」

「先生の中では、私はどんな扱いになってるんですか。そういうプレイに使う道具であれば、何でも詳しいとでも?」

 

 何でもっていうか、事実、自分が使う道具に関してはプロ並みに詳しいじゃねーか。そこは間違ってないだろ……。

 

「ちなみに、目隠しと言っても用途によっていろいろあるのですが、どういうののお話をされてます? 大雑把に分けてもこのぐらいはありまして、私は実用性の高いものには詳しくないのですが……」

「それ、プレイ用のやつとかは詳しいってことだよな?」

 

 やっぱ詳しいんじゃん。

 

 アコが見せてきたタブレット端末には、それ系の通販サイトと思しきところへのリンクが大量にブックマークされていた。しかもきちんとフォルダ分けされている。ドン引きだよ。誰と何をするつもりだよ。

 

「よしっ! じゃあ仕事を再開するか!」

「何ですか、その反応⁉︎ 人に聞いておいて、少しぐらい見てもいいんじゃないですか⁉︎」

 

 言い分はもっともなんだけどさ。聞いたのは確かに俺だけどさ。パッと見た感じからして、ショッキングピンクと黒の背景とか、まず職場で見たいサイトじゃないだろ。十分後悔したので、今後は下手なことは聞かないことにする。ええい、アコの奴しつこいな。見ないというのに。

 

 

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 ——PM 0:15 シャーレオフィスにて、アコと昼食

 

「『エンジェル24』でしたっけ? シャーレ内のコンビニはお弁当の品揃えに少し不満があるのですが……」

「ソラが可愛らしいから俺は許してるぞ。ほれ、少しおかずをやろう」

「ソラ? あああの、中学生くらいの店員……。そりゃ、先生はそうでしょうけど。あ、ありがとうございます」

 

 ノノミの作ってくれた弁当のおかずを、アコの食べているコンビニ弁当に少し乗せてやる。

 

「先生の奥様の作るお弁当、今日も美味しそうですね」

「美味しいよ。奥様ではないけど」

「先生、まだご結婚なさっていませんでしたっけ?」

「なさっていませんよ。まあ、もう既婚者だと思われてそうだな、とは最近思ってるけど」

 

 あんまりアビドスにばかり入り浸れなくなった(シャーレの仕事に対する最大の不満である)結果、しょっちゅうノノミを家に泊めてる時点で、実際既婚者一歩手前みたいなもんではある。通い妻だよな。

 

「最近、思うのですよね……」

「何が?」

「私、上司との不倫と仕事に疲れた、婚期を逃しかけのOLみたいだな、と」

「うわあ……」

 

 俺がいつも思ってるけど、本人の前では言わないことを自分で言っちゃった……。まあでも、実際の年齢は全然違うし気にしなくても……。あとどうでもいいけど、不倫相手の上司って俺をイメージして言ってるよな? やめてくれ。

 

「そしてそんなことを考えながら、そんな人生はそんな人生で悪くないかも……と。ふふっ」

「いや、何でそんな考えにいった」

 

 どうして今の話の流れで、そんな悲しい人生を悪くないと思うんだ……。「ふふっ」じゃねえよ。

 

「だって、嫌じゃないですか。配偶者が、自分と調教したりされたりの間柄の人間なのって」

「お前は何かしら、そういうプレイをする相手と結婚するのが前提なのか」

 

 何かもう、アコの人生観とか将来設計とかはもう手遅れなんだろうか。俺のせいか? いや、元々調教してたのは『前の先生』だし……

 

「あ、ご心配なく。先生と結婚とか、そういう恐ろしいことを具体的に考えているわけではありませんから」

「具体的じゃなくてもやめてくんないかな、そういうシュミレーション」

「まあ、実際のところ、委員長の補佐をしながら独身というのも悪くないかと思っている程度です」

「ああ、それはしっくりくる」

 

 しっくりくるというか、言われてみれば間違いなくそういう人生を歩みそうだ。逆に、花嫁姿とかが想像つかない。そもそもヒナの近くにいればアコは満足だろうし。じゃあ、そういう人生設計でお願いしよう。

 

 さて、午後の予定の話をしておかないと。

 

「今日は午後から連邦生徒会の方に行ってくるから、持ってく書類とかの準備ができたら、当番は上がりでいいぞ。こっちには戻ってこないから」

「あら、そのまま直帰ですか? でしたら、今日の仕事は早めに終わりですね」

「いや、連邦生徒会に行ったら軽いノリで「これもやっといて」とか言われそうだからな。それ見越して予定空けてあんの。その場合は戻ってくる可能性もあるけど」

「ああ……あそこはしそうですね」

「まあ、他にも緊急でやる用事が入るかもしれないし。仕事は片っ端から片付けていくのがいい」

「そうですね」

 

 などと会話している内に、昼休み終了。

 

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 ——PM 15:30 D.U.シラトリ区 第三業務地区、カフェ

 

「暇になってしまった」

 

 誰にともなくつぶやく。コーヒーのおかわりでもしようかと思ったが、今日何杯目だよ、コーヒー。

 

 連邦生徒会に提出した書類は全て問題なし。モモカに何か押しつけられるかと思っていたら、むしろ向こうも暇を持て余していた。そこで談笑するほど仲も良くないので部屋を出て、その辺をうろうろ。いっそ、アユムが書類を抱えていっぱいいっぱいになっているところでも見つけて手伝ってやろうかと思っていたが、見つからず。

 

 どうでもいいが、アユムのあの書類の持ちかたはおっぱいが大きいのを強調してるんだろうか。ちょっと連邦生徒会の風紀を乱してるんじゃないですか? と言いたくなる。あれでは、下心があって仕事を手伝おうとするような不埒(ふらち)な輩がいてもしょうがないと思うぞ。うんうん、書類持ってあげるから後でおっぱいと太もも触らせてくんない? ぐらいは言われてもしょうがない。いやいや、俺はそんなことは言わないが、あくまで一般論で。まあ、見つからない以上、そんなセクハラも出来ないからどうでもいいけど。

 

 というわけで暇だ。別にもう帰ってもいいのだが。

 

 しかしこんな時間に帰ってもゲームくらいしかすることもないし、せっかく外にいるんだから、このままどこかに行くか何かしたい。かと言って、流石に今からシャーレに戻って書類を片付けるのも何だし。わざわざ今やるほどたまってないし。

 

 せっかく時間もあることだし、どこか行くか……? ゲヘナに行けば『風紀委員会』、『美食研究会』、『給食部』あたりは居るか。ミレニアムなら、『セミナー』、『ゲーム開発部』、『エンジニア部』、『ヴェリタス』、あと何かあったっけ。アビドスも最近行ってない……あとは『百鬼夜行』に『レッドウィンター』……。

 

 生徒に会いに行こうとか考えたらキリがないな。そして思考回路が完全に仕事モードだ。いや、確かに仕事の一つではあるけど、ちゃんとした訪問でもないのに、そんな義務的に生徒に会いに行くのもな。行きたい時に行くのがお互いにとってベストだろうし。手元のタブレット端末から見られる雑多な書類がいくつかあるから、表計算のファイルでもチェックするか。

 

 

 ——ちゃんと休む時は休んでください。先生の良くないところですよ。

 

 

 ……何となく、朝に言われたノノミの小言が頭をよぎった。まあ、そうだな。休める時に休もうって発想が全くないのもな。ていうか、最近どれだけ休んでたっけ。ノノミも俺のことを思って言ってくれているんだろうし、最近の仕事状況の確認ぐらいはするか。

 

 スケジュールアプリを開いて、ドン引きした。嘘だろ。俺、ここんとこ、ほとんど休んでねえ。

 

 いや、普通に休んではいるのだが、最低限しか休んでいない。今みたいに、特に何もやることがない時間は全て何か詰め込んである。そんな生活をしていた自覚は一応あるが、そんなの二、三日かと思っていたら、一週間ちかくそんなスケジュールで動いている。どうりで仕事がほとんど残ってないわけだよ。脳とメンタルに負担がかかってても、身体にくるまで気付かないいつもの悪い癖だ。

 

「ノノミが小言を言うほどってことは、見るからに疲れた顔でもしてたのかな、俺……」

 

 ノノミが最近小言が多いっていうより、小言を言われるような生活をしているのかもしれない。しれないっていうか、多分そうだ。よし、何か息抜きでもして休もう。

 

 

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 ——PM 16:00 D.U.シラトリ区 シラトリ近隣公園

 

 休もうったって、することがないのである。

 

 というわけで、まだ外にいる。休むのと時間をつぶすのが苦手な人間はこれだから、と自虐する。しかし、本当にすることがない。いっそネットカフェでも行って寝ようかと思ったが、流石に進んで行きたくはない。

 

 ノノミに会いたい。会いたい会いたい会いたーい。

 

 することがないっていうより、ノノミに会えれば全て解決なのである。朝まで一緒にいたんだが、会いたいものは会いたい。

 

「しかし、用事があるって言ってたしな」

 

 とりあえず今日は会えないらしい。まあ、明日は休みだから一緒にいられるし、夜も泊まっていくかもしれないし。今日、無理して会う必要もないんだが……今日、明日のスケジュールってどうだったっけ。もう一度チェックしてみよう。……ん?

 

 スマホでスケジュールを見ようとして、ふとノノミからもらったアプリが目に入った。名前は……

 

 『✴︎運命の♡出会い✴︎ Navigation』

 

 ……また何つーか、ノノミが今まで持ってきたものの中でも、トップクラスにうさんくさい名前だな……。ネーミングセンスというより、名前の付け方の方向性というか。アイコンには実写で、ケバい女の子(ヘイローも浮かんでるし、どっかの生徒なんだろう)の写真に筆記体で何かロゴが書いてある。出会い系詐欺アプリにしか見えない。……見えないだけ、だよな? 大丈夫だよな?

 

 とりあえずヘルプを見て確認してみる。

 

『このアプリを使うと、今一番会いたい相手に「偶然」会うことができます』

 

 うん、そうそう。そういうアプリだった。これを使えば、「偶然」この辺でノノミと会えるはずだ。……本当に大丈夫だよな? ん、説明に続きがあるな。

 

『あくまで「偶然」です。待ち伏せとかではありません』

 

 アプリが言い訳すんなよ。ていうか待ち伏せするアプリなのか、これ? いや、会えれば何でもいいけどさ……。

 

『使用上の注意:このアプリはど(・)ん(・)な(・)相手とも会うことが出来ます。なので——』

 

 何かくどくど注意書きが書いてあるけど、どうでもいいな……。よし、使うか。起動して……——よし、マップが出た。まず北に……

 

 

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 ——PM 16:05 D.U.シラトリ区 トライスクエア内広場

 

「ノノミー」

「先生! 偶然ですー☆」

 

 五分もたたずに本当に会えた。すげえ。あ、でも会えたのはいいけど、ノノミって用事があったんじゃなかったっけ。そこまで考えずにアプリを使ってしまった。

 

「用事がすぐ終わってしまったので、暇を持て余してしまって、どうしようかと思っていたんです☆ でも、ここからでは先生のおうちもシャーレも少し距離がありますし、お仕事の邪魔になってしまうかも、と思いまして……ですから、偶然会えて嬉しいです!」

 

 偶然会うだけじゃなく、偶然用事も既に終わってて暇なのか。すげえな、このアプリ。都合よく偶然出会えるように、時間を遡(さかのぼ)って世界の改変でもしてんのかな……

 

「——なんて思ったり。まさか、そこまでヤバいアプリじゃないだろうけど」

「ああ、いえ、そうかもです。私もあんまり早く終わったので、ちょっと不思議だったんです。どうりで……」

「マジか」

 

 それは「ちょっと不思議」で済む範囲の話なんだろうか。ノノミの持ってくるもののチートさ加減を言うのも今更だが。

 

「まあ、半信半疑だったけど会えて良かった」

「でも、これはあんまり気軽に使うものではないのですが……。注意書きがありませんでしたか?」

「ああ、何かくどくど書いてあったけど……。何かまずいの?」

「いえ、「会いたい」と言っても、意図した相手ではなく、深層心理下にある本当の願望というか……自分でも気付かないような、潜在的に会いたいと思う相手と会ってしまう可能性があるんです」

「ああ、なるほど。まあ、怖いって言えば怖いかも……いや、別に問題ないだろ」

 

 今カノと会おうとしたら、無自覚に未練を残していた元カノを呼び出しちゃった、みたいな話だろ? 俺にはそんなのないし、今はノノミに会いたくて使ったんで、他に会いたい奴なんていないし。

 

「ノノミ以外でそこまでして会いたい相手なんて、しいて言えば亡くなった親ぐらいのもんだ」

「いえ、強力すぎて、亡くなった方でも会えてしまうんです。本当に望めば」

「そうなの……って、いやいや、降霊術か⁉︎」

「……亡くなった、先生のお母様ですか? 会いたかったですか?」

「いや、そっちじゃないし。別にそこまでして会いたくないっつーか、現に会ってないし」

 

 ノノミがものすごく申し訳なさそうな顔をしている。相手が相手だからってそんな深刻な話だと思われても、こっちが申し訳ない。確かに、母親じゃなく父親の方には会えたら会いたいなあ、ぐらいは思ってたけど、それだってなあ。「遺言状、書くなら書くで、ちゃんと法的に有効なのを書いてくんない?」とか、「相続めっちゃ揉めたんだけど、あんたの兄弟ろくなのいないな」とか、苦情を山ほど言いたいってだけだからなあ。あの世に行った親を呼び出してまでそんなこと言うとか、どんなろくでなしの所業だよ。本気で望まないって。

 

 ……まあしかし、ノノミが一緒にいたら「あんたの息子、こんな世界に来てこんないい相手見つけたぞ。結婚するかどうかは分からないけど」って報告ぐらいは出来たか。それは喜ぶかもしれない、うん。とりあえずノノミは子供を産みたがってるし、孫の顔ぐらいは見せられるかもしれないし。

 

「でも、ということは先生、本当に会いたい相手を私だって思ってくれたんですね。……えへへ、ちょっと嬉しいです」

「そんなの、喜ぶほどのことじゃないって。ノノミに会いたいって思ってアプリ使ったんだから、ノノミに会えるのが当たり前っていうか」

「それでも嬉しいんです☆」

 

 などとイチャついた後で、二人でゆったりデートをしたのである。

 

 

------------------------

 

 

 ——PM 20:00 D.U.シラトリ区 ラミニタウン出口

 

「よし、満足、満足」

 

 食堂街で食事もして、こんな時間だしもう帰らないと。楽しかったし、ゆっくり休めた。あのアプリさまさまだ。あんまり遅くなってもいけない。ノノミを最寄り駅まで送り届けないと。

 

 そういやブルアカの生徒の家とか親ってどうなってんだ? 俺の立場上、もうノノミのご両親には(会いたくないけど)会わなきゃいけない気がするが。会うのが遅れて、結局妊娠したノノミを連れてご挨拶、なんて最悪のケースにならないようにしないと。少しノノミに聞いてみるか……。…………。いや、やめとくか。ノノミの実家の話なんて、いつでも聞けるだろうし。

 

「んじゃ、行くか」

「え? えっと、先生、今晩は……?」

「今晩?」

「あ、いえ、その……」

「? んー、じゃあ、今からでもうち来るか? この時間からだと、あんまり長い間は居られないと思うけど……」

 

 泊まるんならともかく、送るにしたってある程度以上は遅くまでいられない……うん? 泊まる?

 

「……はい、そうですよね☆ じゃあ、もう帰らないと!」

 

 ノノミのその残念そうな声と、寂しそうな表情は、無理な笑顔で隠そうとしても、とてもわかりやすかった。そして、俺はもうノノミの性格もよく知っている。何だ、そういうことか。

 

「うちに泊まっていきたいか?」

「あ、いえ! そんな! 先生にご迷惑ですし……」

「別に、俺に迷惑だから帰らせようとしてたわけじゃないから。それに、言いたいことは言っていいんだぞ? ノノミが甘えてくれたら、俺だって嬉しいんだから」

「……それでは、お言葉に甘えて! はい、今晩泊まっていきたいです! い〜っぱい、エッチなことしましょうね♡」

 

 もちろん、この後めちゃくちゃセックスしたのは言うまでもないし、次の日も……まあ、次の日はいろいろ大変なこともあったのだが、それは少し先の話。

 

 

 続く——

 

*1:
この世界では何故か連邦生徒会長が居(・)る(・)こ(・)と(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。

*2:
連載版の第11・12回にて、既にアレなプレイは積極的に受け入れている。

*3:
連載版の第17・18回にて、シロコに拘束逆レイプされてからの、目隠しプレイまで経験済み。

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