※この作品はR-18です。

【ダイジェスト版】「助けてノノえもん!」シーズン1〜3   作:春画屋@二次創作R18

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エピローグ約4000字。

これにて【ダイジェスト版】シーズン2完結です。
シーズン3以降も追加する予定ですが、いつになるかは未定です。



2ー9:エピローグ

 

 ——こうして俺は、予定通り記憶を消してもらうことになり、次に目が覚める時には元通りの、平和なキヴォトスでの日常が戻ってくるはずだ。全て忘れた俺は、やたらと頭が痛いけどさっきまで何してたんだっけ、なんて言いながら目を覚まし、まだ食べていない夕飯のことでも考えるだろう。あまり、身体に感じた違和感が残っていなければいいんだが。

 

 まあ、日常が戻ってくるなんて言い方をしたが、そこまで大げさな話でもない。俺がいろんな話を聞いて、悩んだりしんどい思いをしたのは確かだが、「世界観」が崩れかけても、『ブルーアーカイブ世界』まで影響が出たわけじゃない。何せ、何(・)も(・)起(・)き(・)な(・)い(・)のがこの世界のいいところなんだから。

 

 仮に何か起きたって、俺が「世界観」を維持している限り、またバカみたいなご都合主義が解決してくれるだろう。『メインストーリー』にあるような苦難や悲劇とともに、それを乗り越えた後の感動のエンドまでなくなってしまうのは、少し申し訳ないけれど。物語の本質は等価値であっても、実際にそれを判断するのは俺たちじゃない。傲慢(ごうまん)になってはいけない。

 

 うっかりしていたのは、今日の記憶を消すということは、今意識を持ち、こうして何かを考えているこの自分も一緒に消えてしまうのだということだ。別に死ぬわけじゃないが、記憶を消される瞬間は気分のいいもんじゃないだろう。そこを、何となく「記憶が消えた後の自分」の感覚で考えてしまっていた。

 

 そんなわけで、実はアロナに少し心配された。でもそれだって、どうとらえ、どう感じるかは俺次第だ。「先の自分」にとっては「うっかり忘れた記憶」でしかないし、また思い出すこともあるだろうから、大した問題じゃない。だから、心配ないと言っておいた。それと、さっき生まれたばかりなのに何もかも世話になってありがとう、と。アロナは、「私だって、この世界と一体化してあなたとずっと一緒にいたんですよ! いえ、きっとその前から……それだって、あなたのとらえ方次第です!」そう言って笑った。

 

 多分、そうなんだろう。こいつは「ブルアカのアロナちゃん」でもあり、世界に偏在(へんざい)する「シッテムの箱の中の何ちゃら(いまだによく分からないのだが、分からなくていいと言われた)」の一部でもあり、さっきノノミが生み出したばかりの『手乗りアロナちゃん』でもある。厳密に区別するほどのことじゃない。仮に会えなくなっても、姿を変えてどこかにいるような存在なんだろう。

 

 それから、ノノミには言えない内緒のことも、こいつには話しておくことにした。

 

「俺、『正義実現委員会』や『トリニティ』のいろんな奴ら……『救護騎士団』とか『シスターフッド』ともいい出会い方をして仲良くなりたいんだよな。出来るかな?」

「大丈夫ですよ! あなたが平和を望むなら、きっと『ティーパーティー』や『アリウススクワッド』とだって……」

「いや、そこ二つだけでいいんだけどさ。何しろ、ミネは胸大きそうだし、サクラコのかっちりした雰囲気とか、マシロの太ももなんかも……

「えっ? ふ、ふと……——」

 

 …………。

 

「——……なんだけど、聞いてる?」

「……き、聞いてますよ。あはは……」

「一応、冗談だからな?」

 

 うまく取り計らってもらえないか希望を言っただけなんだが、途中から明らかに聞き流されていたので、そこでやめた。周りに知られたら、「だから、そういう余計なことを言わなければ……」とか何とかあきれられそうだし。

 

 

 それにしても、今の『俺』と、この半日ばかりの記憶を失っただけの、明日の『俺』とはどんな関係なのだろう? 別人か? 同一人物か? 別人だとしたら、あまり自信がないという意味では、何だか頼りない奴にバトンを渡してしまうような気分になる。何も知(・)ら(・)な(・)い(・)まま、うまくやってくれるだろうか?

 

 ——その辺をどう思う? 俺は、記憶を消す直前になってこうして俺の中に入り込み、全身を満たした存在に聞いてみた。やっと話が出来たな、『前の先生』。『お前』は明日の『俺』を信用できるか? 今の『俺』に任せちゃって大丈夫だって確信してたか? 答えはすぐに返ってきた。

 

 【『私』は信じているよ、明日の『あなた』を】

 【『私』は信じていたよ、今の『あなた』を】

 【きっと大丈夫】

 

 ゲームのブルアカで選択肢で出るような、三つの『先生』のセリフが心に浮かび、その三つの言葉の意味は一つに溶(と)け合い、同時に俺に伝わってきた。単なるテレパシーとも違う、不思議なコミュニケーションだった。器用なことをするもんだ。『シッテムの箱』を持っていれば、俺にも出来ることなんだろうか。それとも、『前の先生』だけなのか。

 

 こんな風に一人で同時並列に——おそらく、空間も超越して——行動できるから、全ての生徒に分け隔(へだ)てなく接することができるのだろう。そして、自分の存在全てを犠牲にしかねないほどの献身的な愛情をノノミに注ぎながら、同時にそれと同じだけの大きな愛情を全ての生徒に注ぐ、なんて「ずる」——『前の先生』にとっての「ご都合主義」が可能だったんだろう。でもそれは、『ブルーアーカイブ』の世界で『シャーレの先生』だからこそ許される素晴らしい「ご都合主義」だと思う。

 

 そんな『あいつ』がデザインする世界だから、俺の望んだ世界は同時に全生徒に配慮されていた。世界の因果が「縁(えん)」を調整し、アビドスやゲヘナ、ミレニアムのように俺が直接関与したところだけでなく、キヴォトス全てに、同じ「世界観」を拡張することが出来た。俺の知らないところでも、俺が望む世界観に合わせて「ご都合主義」は発生しているんだろう。多分、トリニティの内部のフォローも始まっている。そんなことを可能にする能力もさることながら、その発想、人柄に、ノノミもアロナも信頼を置いているのは納得だった。

 

 でも、だからこそ『前の先生』には出来なかったことがある。趣味の悪いことに、今日も俺たちのことをずっとどこかから見ていたのに、苦しむノノミを救えなかった。なぜなら、「一度全部を聞いてやって、その後忘れちゃうから問題ないだろう!」なんて「ご都合主義」は、「生徒たち全員」ではなく、「ノノミだ(・)け(・)」のために願うことが出来る、『俺』だからこそ許されたんだから。カヨコの推測通りだった。「全ヒロイン」を選ぶ——というより、選ぶこ(・)と(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)いるみたいだが——『前の先生』とは違い、ただ一人の「ノノミ」を選ぶことが出来る「先生」、それが『俺』の本質だった。

 

 そして、本人とこうして一体化したような体験を通じて、『前(・)の(・)先(・)生(・)』が何(・)者(・)な(・)の(・)か(・)を正確に理解した今なら、もう劣等感も、嫉妬もない。目指すものは、『俺』も『あいつ』もほとんど一緒だ。そして、残っていた疑問も全て解けた。……しかし、『俺』が「こっち」に呼ばれた理由がそ(・)れ(・)だったとはねえ……。『お前』らしいというか、確かに変わっているというか、キヴォトスとは全く関係ない理由で「プレイヤー」を連れてきちゃう「先生」なんて、こ(・)の(・)『ブルーアーカイブ世界』にしかいないんじゃないか? そりゃ、来て真っ先に会ったのがノノミ——こ(・)の(・)子だったわけだよ。その上、全生徒のために都合のいい世界を作るためでもあるからって、俺から『シッテムの箱』やブルーアーカイブの記憶まで取り上げて。いかにも『お前』のしそうなことというか。いや、いいけどさ。

 

 何にしても、『俺』がこの世界に来た理由、これから真剣に考えなければいけないこと、なぜノノミだったのかの理由、今知ったばかりのそれらの答えを忘れてしまっても、明日の『俺』はきっと今の『俺』と同じ選択をするだろう。心配はいらない。何せ、ここは全てが「ハッピーエンド」で終わる『ブルーアーカイブ』の世界なんだから。

 

 それから、余計だったかもしれないが、前々からどうしても『前の先生』に聞いておきたいことがあった。「ユウカが初対面から好感度120%だったり、ホシノに変態疑惑を(どこまで本気か知らないが)かけられてたり、アコが調教済みみたいに(なったのは本人が望んでいた気がするが)なっていたりするんだが、お前なんかしただろ」と。【…………】【ごめんね】【あとは任せるね】三つの言葉が同時に伝わってきたが、意味は全部一緒だった。お前、ふざけんなよ。他人に任せて、自分だけとんずらしようとすんな。

 

 評判を聞いたら「あれがなければ」というオチがつきそう、という意味では『こいつ』も俺とどっこいだよ。何となく、俺とノノミみたいに……そうだな、アビドスでおじさんあたりに怒られて追っかけ回されてるところを想像してしまった。似合うな。

 

 まあ、いろんなことを『明日の俺』にぶん投げてしまう『俺』も、『前の先生』とセットで、ふざけんなよとか言われそうだけど。——悪い、苦労かけちゃって。でも、きっと平気だよな? 『お前』も『俺』だから。それぐらいはしてやりたかったが、引き継ぎしてやろうにも時間がないのだ。本当にすまん。

 

 最後に一つ。出来れば、これだけは忘れたくないなあ、と思ったことがあった。と言っても、いつか思い出すこともあるかもしれないし、ノノミはずっと覚えていてくれるだろうけど。

 

「私、先生のことが……あ(・)な(・)た(・)のことが大好きです!」

 

 なんて、初めて『先生』以外の呼び方で好きって言われて、好きな女の子に告白されたみたいな、少し照れくさい気持ちになって嬉しかったこと——

 

 いや、恥ずかしいからこれは忘れちゃっていいな。

 

 

 そうして、少しの記憶をなくしても俺のブルアカ世界での生活はまだまだ続く。

 

 

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 ——あなたはあの時、もう気付いていましたか? あの言葉を、『私』はずっと前から……本当に、ず(・)っ(・)と(・)前(・)から言いたかったことを。言ってしまったら、もう離れ離れになるなんて耐えられなくなってしまう、そんな風に思っていたから、『あなた』に言わずにおこう、そう思っていたんですよ?

 

 ——人生にエンディングはない。ハッピーエンドだと感じても、その先にはいつもと変わらない日常が待っていて、どんなことが起きるのか分からなくて、安心なんて出来ない。それを知った今でも言えます。私にとっては、あれは間違いなく「ハッピーエンド」で、一生忘れられない思い出だって☆

 

 ——あなたは忘れてしまったまま、思い出すことがなかったとしても……ずっと知(・)ら(・)な(・)い(・)ままだったとしても、私は覚えていますよ。ふふっ——

 

 

 

——シーズン2完——

 

 【ダイジェスト版】シーズン3ー1:「ちゃんと私を認知してください!」へ続く(予定)

 

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