頭がぼーっとする。目が覚めているという自覚はあるものの、その実感が薄い。
睡眠中、自分は夢を見ているのだと自覚した時と似ている。眠りと覚醒の境界を意識は彷徨い、安定した思考が行えない。
今、把握できていることと言えば二つ。
立って、歩いている。それも誰かに手を引っ張られて……。誘導されている?
……ダメだ。これ以上先は脳が働いてくれない。
視界もノイズと眩暈に塗れ、その向こう側の光景を視認することは難しい。せめて声を掛けるぐらいできれば……。
「ここだ、水城。少々散らかっていてすまない」
……女の声、確かに耳にした。
何やらだどたどしい、緊張を孕んでいる印象の声を聞いた途端、胸が大きく高鳴った。
呆然とした意識の中、今この手を握っているのが女だと認識した途端、燻っていた熱いナニかが再燃する。
漂う体臭、若干硬さのある手の感触、期待のこもった声……。目の前に異性がいるという認識が、この身体を勝手に動かした。
「ッ、ま……待て水城!もう始める気か⁉︎せめて、シャワーを浴びさせ……ぁ❤️」
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「これにて、水上体育祭はお開きとする!」
川神鉄心の号令によって、熱戦極まる水上体育祭は終わりを迎えた。
持てる全てを出し尽くし、なにより美少女達の麗しい水着姿を目に焼き付けた川神学園の生徒は、やり遂げたという満足感に包まれながら、それぞれ帰路についていく。
そんな教え子達に向けて教師、小島梅子は労いの言葉をかけながら、生徒の体調や荷物チェックなどをして回っていた。
「忘れ物はないか?荷物は何度も確認しろ、紛失物がある者は紙に名前とクラスを書いて提出するように!」
寄り道などもっての外だ。
厳格な態度で、最後の最後まで見落としがないかを確認する。教師の鏡がそこにあった。
そうして一段落ついた頃、クラス陣営に設置されたテントも畳まれ始める。
空は茜色に染まり、反射する海も段々と色を変えていく。夕日は地平線に沈み始め、後一時間もすればすっかり暗くなるだろう。
教師陣も数を減らし、そろそろ自分もと帰り支度を始める梅子の目に、ある人影が留まった。
「他に残っている生徒は……む?」
顔を上げる。
あれだけ騒がしかった浜辺は、今ではすっかり波の音しか聞こえない。その波打ち際に、一人佇む男子生徒の姿を見た。
ふらふらとした足取りで歩く様は、どこか危うさを感じさせる。見た限りでは全校生徒が帰宅した今、一層その影は人目についた。
梅子はその生徒の下へ歩み寄る。
波打ち際まで歩けば、俯いていた男子生徒の顔をはっきりと確認できた。
他でもない、その生徒の名を梅子は知っている。
「水城、まだ残っていたのか?確か熱にやられたと聞いていたが……。大丈夫か?私がわかるか?」
水城ユウ———。体育祭にて、午前の部は百代と白熱した競技を見せてくれた男子生徒だ。熱中症で倒れたと報告を受けて以降、未だにその顔色が優れない。
そんなユウに梅子は声をかけるも、反応はない。ただただ茫然と虚空を見つめるのみだ。
「これは重症だな……。仕方ない、川神院へ送ってやるとするか」
呆れて一息つくと、だらりと伸びた片腕を掴んで自らの肩へと回す。
寄りかかる場所を見つけた途端、ユウはその方へとしなだれかかった。ズシッと見かけ以上の重みが梅子へとのしかかる。
一見細身だがその実、彼の身体は筋肉の塊だった。武神を打倒するべく、日夜育まれてきたものがこの身一つに満ち満ちているのだから。
教師として、同じ武人として……なにより異性として見事と言わざる負えない。
しかしそんな武の頂点に位置するユウも、やはり一人の人間でありまだ子供。
どれだけ完璧超人に見えても、熱にやられて体調を崩すこともある。普段なら、たるんどる!と一叱しているはずなのだが、この男子生徒相手にはどうしても甘さが出てしまう。
自分でも理解している。これは教育者の義務感を超えた、異性としての優遇だ。
教師としてあるまじき差別だ。これでは他の生徒や職員達に示しがつかないと、偶に自己嫌悪に陥いることもある。
だが、
「うぅ……ん」
「しっかり歩かんか、全く」
半開きの目、弱々しい唸り声、重心の定まらない千鳥足……。まるで寝起きの幼子だ。
普段はあんなにも力強く凛々しいのに、時折見せるギャップが胸に刺さる。
教師と生徒という立場、年齢差がありながらも、気になってしまうのは気になってしまう。
寧ろこの背徳感が、一層視線を彼の方へと向けさせるのかもしれない。我ながらなんと度し難い……。自分に呆れながらも、梅子の頬は綻んでいた。
そうしているうちに、駐車場へ到着する。
そこに停められた一台の車。それに生徒を乗せて運転し、川神院へ送り届ける。これで今日の仕事は終わりだ。
……本当なら、そうなっていたのだろう。
……水城ユウが、正気であったのならば。
人一人を背負った状態でも、梅子は慣れた手つきでドアロックを解除する。
後部座席のドアを開けて、いざ彼を車に押し込もうとした……その時だった。
「ッ——————⁉︎」
梅子の身体を衝撃が襲った。
視界がブレる。
身体が揺れる。
足が地面から浮き上がる。
グイッ、と車の奥へと引きずり込まれた。
予想しようもない突然の出来事。驚愕と、なにより腕を掴み引っ張る力があまりにも強く、声を上げることさえもままならなかった。
パタン———ドアの閉まる音が聞こえた時には既に、女教師の唇は男子生徒に奪われていた。
柔らかな感触……。視界いっぱいに広がった、蕩けるような少年の瞳に胸が高鳴る。
数秒の触れ合い、そしてゆっくりと唇が離された。
脳が理解を拒み、放心する梅子の視界には未だに虚な目をした水城ユウの顔があった。
自分を引き摺り込んだのも、今キスをしているのも、彼であると理解するまでの数秒……。それをいいことに、再び熱く、深い口付けを強制される。
「んんッ⁉︎」
理解しても、この現実を受け入れることを脳が拒む。何故……お前がこんなことを……⁉︎
ついさっきまで、身体を壊した優等生だと思っていたのに、こんな俗物のような……。
キスと同時進行で、その手はスーツの隙間を縫い、肌を直接撫で回し始める。有無を言わさぬ強行に、梅子は危機感に身を震わせた。
抵抗しようにも、身体の自由は利かない。
足は股を割るように差し込まれており、膝が股間の辺りを擦る。今まで感じたことのない感覚に、思わず腰が跳ねた。
驚く程手慣れた動き……。まるで、そういったことを何度も経験してきたかのような。
いやらしく、緩慢なキスと手淫は小島梅子の中にある女の部分を刺激していく。
梅子は今、教師ではなく一人の女として昂りに苛まれていた。繋がった唇の隙間から、甘い吐息が溢れ出すようになり、本格的な危機感が背筋に走った。
「よ、よせ!やめッ……水城!」
引き離そうにも、力ではやはり敵わない。
彼女が到達できなかった壁を超えた領域に、彼は至っているのだから。大人と子供の力関係も意味をなさない。
ならば……!と、常に携帯している得物に手を伸ばす。腰に差しているそれは、愛用している鞭。
確かに、自分は彼に好意を抱いている。
優秀な生徒として気に入っているのも事実。
だが、それはそれ。
このような強硬に及んだのであれば、教師の責務としてその性根を叩き直さねばならない。
密着した至近距離でも的確に狙い撃てる、渾身の鞭打を容赦なく叩き込む。
「このッ……俗物がぁ!!!」
教育的指導ッ‼︎体罰が炸裂する。
空気と皮膚の弾ける、炸裂音が車内に響く。
制服の上からでも、その一撃は容赦なくユウの肌へと叩き込まれた。鞭打を受けた箇所は大きく波打ち、肌が赤黒く変色する。
何段にも重ねた革の塊で打ったのだ。直撃した際の激痛は想像に難くない。
大抵の生徒は引き裂かれる痛みに悲鳴を上げ、中には喜びながら悶える者もいる。
だが、目の前の彼は違った。
「んぶぅッ!……ぢゅ……や……めろぉ!」
痛みをものともしないで、淫行は止まらない。
怯みや驚きといった、些細なリアクションすらもなく、鬱陶しそうに梅子の手から鞭を取り上げて放り投げる。
分かってはいたが、これほどの差が……!
これが一般的な武人と、壁を超えた武人との理不尽な差。明確な実力の乖離は、渾身の一撃でさえ、児戯に等しい。
それどころか今の抵抗に火がついたのか、キスと愛撫の動きが緩慢から激しいものへと変わる。車内という閉鎖的な空間で、男女が蠢く淫靡な空気が立ち込め始めた。
抵抗虚しく、それどころか更に自分の首を絞める結果に終わる。武器も奪われ、術をなくした女への本格的な蹂躙が始まった。
「や、やめッ……んぶぅ⁉︎はぁ……ちゅる……じゅぷ……れろぉ……」
より強く身体を密着させ、梅子の唇へと吸い付き、舌をねじ込んだ。互いの唾液が混ざり合い、卑猥な水音を立てていく。
その勢いはまるで獣が獲物を貪るような、そんな荒々しさを感じさせる。
レイプ———この状況に相応しいワードが頭に過ぎり嫌悪感を抱くも、同時に女としての悦びが湧き上がっていくのを感じる。
キスだけではない。ユウのその手はやがて、愛撫から服を脱がせようと……。
「あむ……ん……じゅるるっ!……はぁッ、待て……待ってくれ水城!」
密着した股間に生じる熱が、ナニをやろうとしているのか……。嫌でもそれが理解できてしまう。それ程までに、彼の下の主張は凄まじかった。
梅子はなんとか制しようとするも、我が身を襲う男はその程度で止まるような人間ではない。
なんの力も持たない女の言葉を、聞き入れてやるための耳はない。だが次の言葉によって、その行動に変化が生まれた。
「頼む……こんなところで……せめてスルなら、家で……頼む……」
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小島梅子にとって、水城ユウという生徒はとても優秀な生徒という印象だった。十代という若さで、武道の最上位の次元である壁超えに足を踏み入れた才能と鍛錬。その力に自惚れず、勉学も励み成績も上位をキープしている。
生活態度や人間関係もこれといった問題はない、川神百代絡みで騒動を起こすことはあったが、殆どが彼は巻き込まれるか、それを止めようとする側だ。教師として、同じく武道を嗜む者として、文武両道を行う水城ユウという生徒への評価は好印象なものだった。
だが、その評価は今この瞬間に覆された。
女教師を車内に引きずり込み、強引に身体を弄るなど、人として度し難い。
これが彼の本性なのか、それとも熱で異常をきたしたことによる奇行なのか。
考えを張り巡らせるも、答えが出ぬまま車は小島梅子の家へと到着するのだった。
男を家にあげるなど、これが初めてだ。しかも、相手はよりにもよって生徒とは……。
こんなこと、数分前の過去の自分すらも思いもよらなかっただろう。
「ここだ、水城。少々散らかっていてすまない」
ぎこちない所作で男を家に招き入れる。
ムードも何もあったもんじゃない。我ながら男性経験の無さには、ほとほと頭を悩ませる。
歳ももう三十路近い。
そろそろ女として焦りを感じる時期だ。親もそれを気にし、持ちかけられた見合いをしてみたはいいが、どれもが苦い結果に終わった。
女としての魅力の無さを痛感し、そんなこんなでズルズルと時が過ぎていき、若干諦めを感じ初めていた。
そんな時に水城、お前に求められるとは……。こんな自分が、生徒というまだ子供の域にいる男子生徒を部屋に連れ込んでいるなど……誰が想像できようか。
教師として女としてと大人として、ここは抗うべきなのだろうが……。不甲斐ないことに、私ではお前の力には敵わない。
ならばもう仕方がない、と。嬉しんでいる本心に、見苦しい言い訳という蓋を掛ける。
私の初めての相手が、お前とは……。熱い吐息が、上擦った声が、握る手に込める力が、彼との行為に期待しているのだという本音。
こんなこと、絶対に学園の関係者に見られてはならない。自宅周辺を確認し、鍵をかける……。それが、始まりの合図だった。
「ッ、ま……待て水城!もう始める気か⁉︎せめて、シャワーを浴びさせ……ぁ❤️」
さっきまでの、ゆらゆらと引っ張れるだけだった男子生徒の手に力が込められる。
家に入った。誰の目もない、邪魔も入らないのであれば、もう我慢する必要がないとでもいうのか。
車内で襲われた時と同じ、抗いようのない力で強引に床へ押し倒される。逞しい男の剛腕が四肢を封じ、首筋に顔を埋められてしまう。
ドアを閉めれば、あとはもう欲望の獣が牙を剥くだけだ。まるで犬のように、ユウは梅子の身体を貪り始めた。
スーツから覗く白い首筋に舌を這わせ、生暖かな舌が塩味のする肌を舐る。
衣服のボタンを外し、その素肌を曝け出されては強く吸われる。首筋へのマーキングが、彼の独占欲の強さを物語っていた。
体育祭で浴びた海水と流した汗は、未だにこびりついだままだ。汗と海の混ざった異臭漂うこの身を、夢中で舐めまわされるなんて……。
「あ、あぁ……!そ、そんなことろまて!」
これでは本当に犬だ。
反射的に身悶えるも、無理矢理床に抑えこまれる。全身を余す所なく、隅々まで弄ばれる屈辱が、逆に多幸感を生じさせていく。
こんな、まだ年端もいかない子供に……。教師としてあるまじき背徳感と、生徒に組み伏せられた女としての被虐心がせめぎ合い、心拍数を上げていく。
「頼む水城……!ここでは……せめてベッドへ行かせてはくれんか……ッ⁉︎」
スルとしても、こんな場所では……。心の底からの懇願に返ってきた返事は、無言による裂帛音だった。
邪魔な遮蔽物を振り払うかのように、スーツの布地をいとも簡単に引き裂かれる。
着慣れた服装……。教師としての私を脱ぎ捨てられ、そこに残るのは“女”としての私だけ。
肌を晒した卑しい女体を、空な双眸が見下ろす。この立ち位置に教師と生徒、大人と子供という枠組みは無いに等しい。
空虚な瞳から降り注ぐ、男からの圧。無言の命令に、梅子は女として意図を受け取った。
ヤルなら、ベッドで———。
男は、女へ慈悲を与えた。
これは、男女間における双方の力関係が決定的に決まった瞬間でもあった。
教師と生徒ではなく、男と女として……。あらゆる方針の決定権を持つのは彼であり、その内容を決めるのも男側の自由。まさに、完全なる上下関係がここに成立していた。
セックスはベッドの上でという願いは聞き入れたが、主導権を握っているのはユウだ。
そうと決まった途端、押し倒した梅子の身体を抱き起こして、我が物顔で家の奥へと進んで行く。その間、淫な身体を弄ぶ手に一切の手心はない。移動中でもあっても、愛撫は継続された。
上着とシャツを剥ぎ取られて、ブラジャーのみとなった屈辱的な格好。雄々しさに満ちた男のゴツゴツとした手が、下着に隠された双丘を鷲掴む。乱暴に揉みしだかれ、恥部へと指を突っ込まれてはグチュグチュと掻き回される。
痛みすら感じる、女側への配慮のない手つき。男だけが感触を楽しむ、そんな嫌悪すべき恥辱に、梅子は抵抗できなかった。
「違う……右だ、右の廊下側……。その奥に、んぅ❤️ァッ……し、寝室がある❤️」
何度もアクメが寸前に迫り、腰が砕けながらも寝室へ誘導する。
脇目も振らずに彼女の指示に従うユウは従順なペットのようだが、主導権は向こうにある。躾られた犬などではない、あくまで主人と従僕という関係性なのだ。
この先に待つのは、自分の最も無防備な場所……。そんな所に男を引き入れようとしている。
教育者としての不甲斐なさと、同時に背徳感が梅子の高揚感を昂ぶらせた。
寝室のドアを開き、中へと連れ込まれる。
到着した途端、按摩していた手は残っていたブラジャーと下着に手をかけた。最後の衣類も、乱暴に剥ぎ取られてしまった。
「あ……」と、梅子の口から切なげな声が漏れたのも束の間、彼女はいとも容易くベッドへと放り投げられた。
「くっ!お前というやつは!」
女の扱いにしては、最悪と言わざるおえない。
ユウの手から解放されても、砕けた腰は立つこともままならずベッドの上へと倒れ込む。
背後からは、衣服の擦れる脱衣の音。これからの行為を想像させる音に、下唇を噛んだ。
梅子も女の端くれ。ここまでくれば、この先の流れくらいは想定できる。その予想は当たっていた。
だが、これだけは弁えるべきだと生徒に、そして自分自身にも言い聞かせる。
「言っておくが、行為はこれっきりだ。今回のことは黙認してやる、だからこれを最初で最後にして全てを忘れるんだ」
お互い、今の時点で本来の関係の範疇を超えてしまっている。だが、せめてものケジメだと念には念を押す。
ユウが梅子の言葉の真意を汲み取ったのかは定かではないが、無言で服を脱ぎ終わる。
心までは屈しない。そう眼光を向けて振り向いた……。
「…………ぇ?」
間の抜けた声が上がる。
振り返り、最初に目にしたのはありのままとなった水城ユウの裸体……。ではなかった。
「な……なんだ、それは……」
視点が、上へ上へと上がっていく。見上げた先にあるのは、怒張し蠢く肉の塊。円柱の形を成して、ドクッ……ドクッ……と。まるで心臓のように脈打ち、天井に向けて聳え勃つ。
いわゆる男性器というものだと理解したのは、それが生まれたままの姿となった彼の股間から生えているのだと、視認した時だった。
下半身を丸出しにした水城ユウの股には、男の象徴たるイチモツが雄々しくそそり勃つ。
男性器、イチモツ、肉棒、ペニス、ちんぽ……。呼び方は様々だが、用途は一つ。
個々人によってサイズや性能は異なるが、これはその中でも巨根と呼ばれる部類……。いや、そんなカテゴリーすらちゃちに思えてしまう度し難い代物がそこにあった。
我が目を疑い。この現実を脳が処理する時間が必要だった。
こんな魔剣を装備していたというのか、水城は⁉︎
装備した上で、どうやって日常を送っていた⁉︎
生物学的にあり得るのか⁉︎
鍛錬の末の到達点と言える、鍛え抜かれた全身。鋼の肉体の付属物。それを数分かけて認識したことで、漸く理解した。……してしまった。これを今から、私の中に挿入れるということを。
目の前を大きな影が覆う。さながら猛獣に捕食される恐怖に梅子は後退った。
「ま、待て!ちょっと待ってくれ!」
堪らず、上ずった声で迫る水城に静止をかけた。
一歩下がる毎に距離は詰められ、とうとう寝室の隅っこで壁に背中をぶつけてしまう。
もう、逃げ場はない。四肢を折り曲げて出来うる限り身を縮こませる。
絶体絶命に直面した生娘のように、全身が震えて迫る危機からの無力な備えは、いつもの小島梅子を忘れさせた。
何度振り払おうとも逃げられなかった男の手が肩を掴む。ガシッ……。痛みはないが、有無を言わせぬ力強さに自由を奪われる。
「待て……待つんだ水城、少し話を……」
声が震える。
先ほどと変わらない言葉だが、その声色は困惑に染まりきっている。常識を覆すモノを前にしたことにより、焦燥が手汗という形で滲み出ていた。
虚勢を張る女教師に、応えることなく生徒の顔が迫る。狼狽している女と違って、覆い被さる男には全くの変化はない。
過呼吸の梅子と、静穏なユウ。
瞼を開眼している梅子と、虚なユウ。
待て……。繰り返す梅子と、無言のユウ。
まるで人形か機械。異常なほどの人間味のなさを感じさせながらも、そのイチモツは生き生きと放熱していた。
まだ触れてすらいないにも関わらず、度し難い熱量と存在感は梅子の恐怖心を駆り立てる。
これが今から私の中に、だと?馬鹿げている!
言葉通り、馬鹿げたサイズのイチモツに恐れ慄くも、掴む手とのしかかる体重がそれを阻む。
力で勝てるはずもない。人形遊びのように、四肢の可動を強いられる。両の足首を掴まれてゆっくりと、太ももを左右に広げられていく。
ああ……。こんなことになるのだったら、ちゃんと手入れをしておけばよかった……!
羞恥に耐えられず顔を背ける。広げられる股座、その奥に陰毛が生い茂る。
むわっ……。と蒸れた女の匂いを放つ秘部、それを無抵抗で男に見られている……最悪だ。これ以上の屈辱がどこにある。
「俗物め……俗物め……」
震える声で小さな罵倒を繰り返す。
今まさに組み敷いている男に対してであり、同時に己自身に対する失望の言葉でもあった。
こんな、身を裂くような恥辱を受けているというのに……。期待してしまっている。
高鳴る胸の鼓動は、不安や恐怖からだけではない。
曲がりなりにも、小島梅子は水城ユウという生徒に恋慕を向けていた。常識的に考えて諦めてはいたが、そんな彼にこうして身を曝け出している。
この状況に嬉しんで、期待している。
俗物なのは……私も、同じだ……。認めてはならない……。しかし認めざるおえない負の面を、生徒指導を宗とする女教師は自覚するのだった。
現在ユウ、ケダモノ状態継続中