6月末。
いよいよ学年別トーナメント当日、準備や来賓の誘導に学園中が慌ただしく動いていた。
王我がアリーナの廊下を歩いていると前方から2人組が現れた。
直葉と千鶴だ。
「お前ら、ペア組んだのか」
「うん。ペア探してて千鶴も組んでないって聞いたから」
「…にのみく」
「え、何ですか?」
「気にするな」
王我が呟いた言葉に直葉が聞き返すが、王我は話を切って千鶴に視線を移した。
「春では不覚を取りましたが今日は負けません」
トーナメントの組み合わせは既に決まっていて、王我·ノクトペアと直葉·千鶴ペアは1回戦最終試合で闘うことになっている。
「私もついに専用機を手に入れましたから!」
自慢げに胸を張る千鶴。
「…ああ、そういえば先週うちの専用機の適性テストを受けに来た奴がいたな」
「べ、別にあなたの会社だから受けたわけじゃありません。あくまで性能!性能を重視した判断した結果です!」
千鶴は照れ隠しなのか顔を真っ赤にし、言い訳して誤魔化そうとする。
「そういうことにしておこう」
王我は大人の対応で引き下がる。
ちなみに王我もその適性テストにオンラインで立ち会っていた。
「そろそろ試合が始まるな」
王我が腕時計で1回戦第1試合の時間が迫ってきたことを確認した。
「じゃあ着替えてきます」
「首を洗って待ってなさい」
直葉と千鶴がそう言って更衣室に向かった。
「…俺も着替えてくるか」
王我が男子更衣室に入ると一夏とシャルロットが既に着替えを済ませていた。
「しかし、すごいなこりゃ…」
更衣室のモニターを見ている一夏が感想を漏らしている。
モニターに映っている観客席には各国政府関係者、研究所員、企業エージェントなどがいた。
「ん?」
着替えをしながらモニターを見ていた王我をある人物が映っていることに気づいた。
「…どこに行くの?」
着替えを済ませた王我が更衣室を出ようとしているのでシャルロットが訊く。
「ちょっとな」
手を振りながら王我は更衣室を出た。
◇◇◇
王我が観客席に来ると、白式や打鉄を開発している倉持技研の研究所員達と目があった。
王我を見た彼らは苦虫を噛み潰したような顔をする。
しかし、それも仕方あるまい。
王我さえいなければ彼らは日本一のIS開発組織となっていたはずなのだから。
自分達が開発する機体のさらに上の機体を王我は次々も開発してしまっている。
その為、一方的に嫌われている。
王我も大して興味はないのでスルーして目的の人物に近づいた。
相手も気づいたようで微笑みかけてくる。
「お久しぶりです。王我さん」
「久しぶりだな。王留美」
王我に挨拶した者の名は王留美。
中国の外交官で、いつも赤いチャイナドレスを着ていて抜群のプロポーションを持つ美女だ。
傍らには彼女のボディガードで兄の紅龍も控えている。
王我は堂々と王留美の隣にドカッと座って足を組む。
「よろしいのですか?目立っていますよ」
王留美はそう言ってクスッと笑ってくる。
日本と中国は外交関係はあるが同盟関係はない。
大企業のトップと外交官が一緒にいれば色々勘ぐる輩もいるというものだ。
今も「天道王我だ」「なんで中国の外交官と?」とひそひそと話している者が多い。
しかも、王留美は誰もが視線を奪われるほどの美女だ。
チャイナドレスのスリットの隙間から見える太ももや腕を組んで強調される大きな胸をチラチラと見ている男達もいる。
「何なら肩でも抱くか?」
王我が冗談を言うと、
「今は遠慮しておきますわ。どうせなら……ベッドで私を抱いて欲しいわ」
王留美は王我の耳元でそう囁いた。
「では楽しみは取っておくとしよう」
王我はフッと笑ってここは自重した。
「そういえば天子様がお会いになりたがっていましたよ」
「そうか。今度中国に行った時に会いに行こうか」
王我と王留美は話をそこで切って、ステージに視線を移した。
ステージでは一夏とシャルロット、ラウラとそのパートナーの箒が対面していた。
ラウラと箒はどうやら抽選で決まったペアのようだ。
試合開始のブザーが鳴り響く。
まず瞬時加速で前に出たのは一夏、それに対してラウラは右手をかざす。
一夏は蜘蛛の巣にかかったように空中で停止した。
「アクティブ·イナーシャル·キャンセラー、通称AIC。ドイツのシュヴァルツェア·レーゲンの第三世代型兵器、その能力は慣性停止能力」
王我の横で王留美が解説する。
「詳しいな」
「情報収集は外交官の仕事でもありますから」
そんな風に話している間に、ラウラが大型レール砲を構えるが、シャルロットが一夏の頭上を飛び越えて射撃してラウラの砲口をずらして一夏への直撃を防ぐ。
さらにシャルロットが追撃し、ラウラは急後退して間合いを取る。
シャルロットは即座に銃身を前に突き出して突撃体勢を取り左手にアサルトライフルを1秒もかからずに呼び出す。
シャルロットの得意技『高速切替』、戦闘と平行して行うリアルタイムの武装呼び出しで器用さと瞬時の判断力が求められる。
シャルロットの追撃を阻むように打鉄を装着した箒がシールドで銃弾を弾きながら斬りかかる。
そこへ拘束を解かれた一夏がシャルロットの背中に向けて瞬時加速、ぶつかる寸前でシャルロットが宙返りして交代し一夏と箒の刀がぶつかり合う。
スペックは白式の方が上、箒はだんだんと押され始める。
焦れた箒が刀を頭上に振りかぶると、一夏が『雪片弐型』を横に構えて受け止め、シャルロットが至近距離でショットガン2丁を構えて撃った。
直撃するかと思ったが、ラウラが箒の脚にワイヤーを絡ませて投げ飛ばして床に叩きつれられる。
まともな連携とは程遠いことは箒が怒鳴っていることから容易に分かる。
「あれで一部隊の隊長とは笑えるな」
ラウラの行動を見た王我はつまらなそうにそう言った。
試合はまだ続き、ラウラは箒を無視して一夏達にプラズマ刃で連続攻撃を仕掛けて一夏達を追い詰める。
一夏と接近戦しながらシャルロットをワイヤーブレードで牽制している。
そこでシャルロットがラウラから箒に狙いを変えて間合いを詰める。
箒の刀とシャルロットの近接ブレードがぶつかり合う。
シャルロットは右手で近接ブレードを持ったまま左手で射撃した。
箒とシャルロットが戦闘している間、一夏が何とかラウラを抑えている。
決めにきたのかラウラはプラズマ刃を解除して両手を前にかざしてAICを発動して一夏の動きを拘束してワイヤーブレードで切り刻んでいく。
シールドエネルギーも半分は切っているだろう。
ラウラはさらに一夏の右手をワイヤーブレードで拘束して床に叩きつけた。
倒れる一夏にラウラは大型レールカノンを発射、対して一夏は砲弾を斬ろうとするが右手にまだワイヤーが残っており動きが止まってしまう。
絶体絶命のピンチの一夏を助けたのはシャルロットだった。
砲弾を実体シールドで防ぎ、一夏の右手を拘束しているワイヤーを切断して共に離脱。
少し離れた場所でシールドエネルギーが0になった箒が膝をついていた。
やはり専用機と量産型のスペックの差は埋められなかったようだ。
シャルロットは両手のアサルトライフルを捨てて、ショットガンとマシンガンを呼び出す。
一夏は『零落白夜』を発動して突進する。
ラウラがAICで拘束しようとするが、一夏が動き回って躱すのでワイヤーブレードで追加攻撃、だがシャルロットが射撃でラウラを牽制、その間に一夏はワイヤーブレードの包囲網を潜り抜けて接近する。
ラウラは眼前に迫った一夏をAICで拘束。
だがゼロ距離に迫っていたシャルロットのショットガン六連射で大型レールカノンを破壊される。
千載一遇のチャンスに一夏は『零落白夜』を発動して斬りかかろうとしたが、ついにエネルギー切れを迎えエネルギーの刃は小さくしぼみ消えていく。
今の一夏は一撃でも食らえば負けになる。
ラウラがプラズマ刃を両手に構えて懐に飛び込んでくる。
一夏はラウラの攻撃を刀だけで弾き続ける。
シャルロットが援護に入ろうとするが、ラウラがワイヤーブレードで牽制、シャルロットが被弾して一夏が気を取られた隙にラウラの攻撃を受けてしまい床に倒れダウンしてしまう。
勝利を確信したラウラの隙を突くようにシャルロットが『瞬時加速』で突撃してきた。
一瞬、虚を突かれたラウラだったがすぐに切り替えてAIC を発動しようとする。
だが別方向から射撃を受けてAICの中断を強いられる。
視線を向けるとそこには、シャルロットが投げ捨てたアサルトライフルを構えた一夏がいた。
ラウラは一夏を無視して再びシャルロットに手をかざす。
シャルロットは射程圏に入ることができ、ラウラは第二世代型の攻撃力では決定打にならないと高をくくっていた。
しかし、シャルロットは実体シールドの中に隠してあったリボルバーと杭が融合した装備、69口径パイルアンカー『灰色の鱗殻』…通称『盾殺し』を取り出して突き出す。
ラウラの腹部に叩き込まれISの絶対防御が発動してシールドエネルギーを大幅に削る。
さらにこの武器は連射が可能で、続けて3発ラウラへ叩き込まれた。
ラウラの意識はそこで遠のいていった。
王留美
原作:機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン
国籍:中国
職業:外交官
年齢:22歳
紅龍
原作:機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン
国籍:中国
職業:王留美のボディガード