入試からおよそ1ヶ月半が過ぎた。
実技試験で織斑千冬と引き分けた王我は不合格かとも思ったが無事合格通知が届いた。
試験の結果で評価されたのか2人目の男性操縦者を手放しなくないのかそれは王我の知るところではない。
そして今日、IS学園入学の日である。
王我のクラスは1年2組、妹の愛莉とメイドのノクト(制服姿)も同じクラスである。
ちなみに王我と愛莉は同い年で王我が10月10日生まれ、愛莉が1月6日生まれである。
王我の席はど真ん中で、その前が愛莉で王我の左がノクトの席だ。
クラスの人数は30人、王我以外のクラスメイトは当然全員女子で興味津々に王我のことを観察している。
王我は特に緊張する様子を見せず頬杖をつきながら何かを考えている。
教室のドアが開くと、褐色肌で銀髪の美女が入ってきた。左手の薬指に指輪をしている。
ちなみにISを起動するのに腕輪や指輪などのアクセサリーにすることがある。
「席に座れ」
先生の一声で立っていた生徒が座り始める。
「さて…新入生の諸君、入学おめでとう。私はヴィレッタ·ヌゥ、1年2組の担任として君達を一人前のIS操縦者として指導する。よろしく」
よろしくお願いします、と生徒達から挨拶が返ってくる。
「ではまず皆には自己紹介をしてもらう」
ヴィレッタの指示で窓際最前列から順に自己紹介が始まる。
1人ずつ自己紹介が終わって愛莉の番が来た。
「天道愛莉です。皆さんが先程から気になっている私の兄、天道王我の妹です。もし兄さんにちょっかいをかけられたら私に言ってください。言いつけておきますので」
愛莉の言葉にクラス中から笑い声が聞こえる。
自己紹介?を終えた愛莉は席に座る。
そして、ついに王我の出番だ。
「先に紹介されてしまったが天道王我だ。軍事会社『シルバーキングス』の社長をしている。知っての通り2人目の男性操縦者で、好きな食べ物はカステラ、嫌いな食べ物はきのこ。細かい質問は後で受けてやる。ああそれと、妹の愛莉をこの世で一番愛している男だ!」
「ちょっ!何いきなり恥ずかしいこと言ってるんですか兄さん!」
「愛莉さん、今は王我君の番ですよ」
「くっ…」
王我の大胆な発言に愛莉がバッと立ち上がるがヴィレッタに止められて大人しく席に座り直す。
「あとついでに専用機を3機所有している」
王我は右手を見せる。
人差し指には赤の指輪、中指には緑の指輪、薬指には青の指輪がそれぞれはまっている。
「(それはついでじゃないと思う…)」
クラスメイト全員がそう思っただろう。
専用機は所有していても1機が普通、それを3機も所有していることはかなり異常である。
とはいえISの製造に関わっているあの『シルバーキングス』の社長であれば納得もできる。
「以上だ」
言いたいことを言って王我は席に座った。
その後、何人か自己紹介を終えてノクトの番が来る。
「ノクト·リーフレットです。旦那様…王我様のメイドをしています。私は専用機を2機所有しています…1機は調整中ですが」
ノクトは右手を見せる。
中指には緑の指輪、薬指には赤の指輪がはまっている。
もう1人の複数専用機所有者に教室がざわつく。
「静かに。続けてくれ」
「No、これで以上です」
「そ、そうか…では次」
ヴィレッタが一瞬戸惑うがすぐに切り替える。
ノクトが席に座って次の生徒の自己紹介が始まる。
クラスメイト達はノクトの専用機も気になっていたが、彼女の
次の生徒は金髪ツインテールで包容力のありそうな美少女だった。
「フェイト·テスタロッサです。専用機持ちで『シルバーキングス』でテストパイロットをしていました。皆さんと仲良く学校生活を過ごせたらいいと思っています」
そう言って聖母のような微笑みを浮かべる彼女の首元には黄色の三角形のペンダントがぶら下がっていた。
「八神はやてです。うちも専用機持ちでフェイトちゃんと同じく『シルバーキングス』でテストパイロットしてました。よろしくお願いします」
フェイトの後に自己紹介が続いて最後の1人は茶髪のショートカットで関西弁の美少女だった。
彼女の首元にも小さい本の形をしたペンダントがぶら下がっていた。
「うちのクラス、専用機持ちが4人もいるよ」
「1組と4組は2人ずつ、うちが圧倒的に多いわ」
「1組の担任があの千冬様だからこのクラスは外れって思ってたけど…」
「専用機持ち4人…しかも男は俺様系イケメン」
「うちも負けてない」
クラスメイト達がひそひそと呟き合う。
「静かに。それでは1時間目のISの基礎理論の授業を始める」
ヴィレッタの言葉で授業が始まった。
◇◇◇
1時間目の授業が終わり休み時間となる。
IS操縦者であり『シルバーキングス』の社長でもある王我にとってISの基礎理論など退屈なものであった。
席に座って頬杖をついている王我を他学年や他クラスから見に来た女子達が廊下に集まっていた。
「あれが2組の天道…」
「1組の織斑君は可愛い系だけどこっちは俺様系でカッコいい!」
「壁ドンとか顎クイとか上手そう」
「何それ憧れる!」
女子達がテンション爆上がりで騒いでいる。
「…動物園かここは」
王我は呆れていた。
「いいじゃないですか、ほら皆さんお猿さんの兄さんを見てますよ」
笑顔の愛莉が全力で毒舌を吐いていた。
「バカいえ。俺なら獅子だろ」
「Yes、ライオンは1匹の雄を雌で囲みますから」
王我のジョークにノクトが悪ノリする。
「それに愛莉は猫みたいですし」
「誰が猫ですか!」
「この前旦那様に頭を撫でられた時にうっとりした目を…」
「してません!」
愛莉とノクトがテンポのいい掛け合いをしていると、
「あ、あの…」
気弱そうなクラスメイトが声をかけてくる。
「何だ?」
「いやその…ノクトさんのそれ…気になってて…」
クラスメイトがノクトの左手の薬指の指輪を指差した。
「もしかして…」
「Yes、私と旦那様…王我様は婚約者です」
「こんやく…しゃって…えぇぇぇぇ!?」
えぇぇぇぇ!?と教室内だけにもとどまらず廊下からも驚きの声が上がる。
「高校生で…」
「すごい…」
「早くない?」
「主人とメイドの禁断の関係…」
「何それ興奮する!」
またもや周りが騒がしくなる。
「婚約だからまだ結婚してないけどな」
「Yes、旦那様が18歳になったら正式に結婚します」
王我の補足をノクトが肯定する。
「キスはした?」
「初夜は?」
「プロポーズはどんな感じだった?」
「婚約指輪って給料3ヶ月分だよね!」
「いくら?」
クラスメイト達が王我を囲んで次々と質問を投げかける。
「はいはい、そんな一気にしたら答えられへんよ!」
パンパンと手を叩いて皆をまとめたのははやてだった。
「後にした方がええよ」
えぇぇぇ!っと抗議の声が上がるが、
「もうすぐ休み時間も終わる。昼休みにはたくさん時間も取れるからそっちの方がええやろ?」
はやての提案に皆も渋々納得して席に戻っていく。
「さすがだな」
「王我君が言うたらええのに」
「そんなめんどくさいことするか」
言うまでもなく『シルバーキングス』でテストパイロットをしていたはやてとフェイトは王我の知り合いである。
2時間目のチャイムが鳴った。
「さっさとクラスに戻れ馬鹿者共!」
廊下では千冬の怒号が響いていた。
◇◇◇
2時間が終わり3時間目に入った時にヴィレッタが思い出したように口を開いた。
「ああ、そういえば再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めなければな」
クラス代表者とは対抗戦への出場、生徒会や委員会の会議への出席するいわばクラス委員長みたいなものであり1年間の変更はなしとなる。
クラス対抗戦とは入学時の各クラスの実力推移を測るものである。
「はい!王我君を推薦します!」
クラスメイトの1人が挙手する。
「私も!」
「私はリーフレットさんを!」
「テスタロッサさんで!」
「八神さんに1票!」
クラスメイト達が次々と手を上げる。
だがやはり多かったのは王我への推薦だった。
「いい加減にしてください!」
その時、バンッと机を叩く音が響いた。
立ち上がったのは三つ編みの茶髪で眼鏡をかけた委員長タイプの女子だった。
名前は榊千鶴。
「クラス代表は厳正に決めるものです。それを男の物珍しさで決めるものではありません!第一その男からはいい加減さを感じます!」
「たしかに」
「おい」
千鶴の厳しい言葉に愛莉が同調して王我がツッコむ。
「実力で選ぶべきです!」
「なるほど…というと」
「決闘です!」
「面白い!やろう」
王我は即決した。
「勝てると思ってるんですか?男が女より強いのは昔の話ですよ」
千鶴の言葉に同調したのかクラスメイト達からクスクスと笑い声が聞こえる。
「知らないのか?俺は常に頂点に立つ男だ」
「「(引き分けたくせに)」」
愛莉とノクトが心のなかでツッコミを入れた。
「専用機を3機持っているようですが宝の持ち腐れという言葉を知らないようですね?」
「ん?ああ、お前は専用機を持ってないんだろ?こいつは使わんよ」
王我は右手をフラフラと振る。
「なっ…舐めたことを…」
「そう睨むな。綺麗な顔が歪んでるぞ」
「きれっ!…ナンパですか!最低です!婚約者もいるのに!リーフレットさん!何とも思わないんですか!」
千鶴がノクトに訴えかける。
「Yes、強い雄に雌が惹かれるのは当然のことなので」
「メス!?どんな夫婦なんですか!あなた達は!」
「こういう関係だ」
「バカにして…」
拳を握り締める千鶴。
「それでいつやる?」
「ヤるって…そんなまさか私まで…」
何を想像したのか頬を赤らめる千鶴。
「決闘のことだ」
「あ、ああ…そっち…いつでも」
「なら今日の放課後だ。俺も暇じゃないんでな」
「いいでしょう!ヴィレッタ先生、アリーナは空いてますか?」
「第二アリーナが空いている」
「決まりですね」
「ああ、俺を楽しませてみろ」
「その軽口、すぐに叩けないようにしてやりますよ」
こうして王我と千鶴のクラス代表をかけた決闘が決まった。
◇◇◇
昼休み。
王我達は食堂で昼食をとっていた。
クラスメイト達からの質問も全て捌ききったのでゆっくりしている。
「ちょっとよろしくて?」
王我に話しかけてきたのは金髪縦ロールのいかにもお嬢様といった感じの女子だった。
「食事中に声をかけるのはマナー違反だが今の俺は気分がいい。何だ?」
初対面の相手にマイペースな王我を見て愛莉、フェイト、はやては呆れた目をしていた。ノクトは無表情だったが。
「な、何ですの…その失礼な態度!わたくしを誰だってと思ってますの!」
「ふむ…ヒステリックで抜けてそうなイギリス人」
「なっ…あなた…」
金髪縦ロールの額に青筋が浮かび上がる。
「フッ、冗談だ。セシリア·オルコット」
「あ、あなた馬鹿にしてますの!」
「オルコットさん、この愚兄の言うことをいちいち真に受けない方がいいですよ。そのうち血管がブチギレますから」
愛莉が仲裁に入る。
「そ、そうですの?いやあなたも兄に対してきつくなくて?」
「ええ、それが私の生きがいですから」
笑顔でそう言う愛莉を見て、あこいつやばい奴だ、と思った金髪縦ロールは王我に視線を移す。
「ごほん!改めてイギリス代表候補生のセシリア·オルコットですわ」
「天道王我だ」
「妹の愛莉です」
「フェイト·テスタロッサです」
「八神はやてやで!」
「王我様の婚約者のノクト·リーフレットです」
「なるほど婚約者の…婚約者!?」
最後のノクトの自己紹介に驚くセシリア。
「愛莉、こいつツッコミもいけるぞ」
「ちょっと黙っててください」
「愛莉のツッコミには及ばんがな」
「シャラップ」
英語で言い直した愛莉。
「…失礼。プライベートな話に口を挟むものではありませんね」
「それにしてもイギリスか…」
「なんですの?まさかあなたもわたくしの母国を侮辱する気ですの!」
「あなたも?」
王我が疑問を口にする。
「ええ…先程、あなたと同じ男子が…あの猿が!」
セシリアが怒りを再燃する。
「驚いたな。アウストラロピテクスが現代にいるのか」
王我がジョークを口にする。
「わたくしの母国の料理がマズイと侮辱したのですわ!」
カッとセシリアが目を見開いた。
「フィッシュアンドチップスは美味かったな。あとスイーツも」
「紅茶も美味しかったです」
王我とノクトがそう言い合うのを聞いてセシリアが喜びの表情を浮かべる。
「そうですとも!イギリスは世界一ですわ!」
セシリアがエッヘンと胸を張る。
「紅茶といえば毎月届くな」
「ダージリン、オレンジペコ、アッサム、ローズヒップ、あとルクリリもですね」
「あいつら自分の名前と同じ紅茶を送ってくるんだよな」
「ダージリン様は今イギリスに留学中でしたね」
「そういや最近会ってないな。元気かなあいつ」
「わたくしを無視しないでください!」
セシリアが大声を上げる。
「わたくしはイギリス代表候補生!エリートなのです!話しかけられるだけでも光栄に思いなさい!」
「代表…候補生だろ?」
王我が含みのある言い方をする。
「なんですの?その口の聞き方は」
「その程度で思い上がるとは笑い者だな」
王我が立ち上がる。
「なんですって?」
セシリアが睨み返す。
王我とセシリアが互いに向かい合う。
「いいでしょう。あの猿の決闘がありますが1週間後ですしその前にあなたを片付けますわ」
「フッ、生憎先約があってな」
「そうです。私との決闘を忘れないでください」
話に割り込んできたのは千鶴だった。
「とはいえ俺も暇じゃない。日を改めるのも面倒だ。こっちの決闘が終わったら相手してやる」
「もう勝ったつもりですか!」
千鶴が怒りを露にする。
「ああ。オルコット、放課後こいつを倒した後でやろう」
「あまり待たさないでくださる?」
「5分で終わる」
「なっ…この…」
王我の言葉に千鶴は今にも殴りかかりそうだった。
「承知しましたわ。それでは逃げないでくださいね」
「ああ」
セシリアは忠告した後、去っていった。
「ふんっ!」
千鶴に視線を向けるとプイッと顔を逸らして去っていった。
席に戻ると愛莉達がジト目を向けていた。
「さて…ランチを再開するか」
あくまでマイペースな王我だった。
ヴィレッタ·ヌゥ
原作:コードギアスシリーズ
年齢:34
既婚者
フェイト·テスタロッサ
原作:魔法少女リリカルなのはシリーズ
クラス:2組
八神はやて
原作:魔法少女リリカルなのはシリーズ
クラス:2組
榊千鶴
原作:マブラヴ オルタネイティヴ
クラス:2組