※この作品はR-18です。

ISの世界でMSを作る   作:kuroto xanadu

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お前はお前だ

 遺伝子強化試験体C-0037、ラウラ·ボーデヴィッヒ。

それが人工的に造られた彼女の名前だった。

15年前に兵士不足を補うために造られ、生まれ、育てられ、鍛えられた。

戦闘技術において彼女は優秀だった。

しかし、10年前にISが生まれたことで世界は一変した。

その適合性向上のために疑似ハイパーセンサーの移植手術を左目に施され金色に変色し、常に稼働状態のままカットできない制御不能に陥った。

それによってIS訓練で後れを取り、トップから転落し、部隊員から笑われ蔑まれ『出来損ない』の烙印を押された。

そんな時に出会ったのが織斑千冬だった。

千冬の教えに従って訓練するだけで彼女はIS部隊でトップに返り咲いた。

彼女は千冬に憧れた。

強さに、凛々しさに、堂々した様に、自らを信じる姿に。

織斑千冬になりたい。

いつからかそう思うようになった。

だから聞いた。

どうすれば千冬のように強くなれるのかと。

千冬には弟がいるそうだ。

弟の話をする時の千冬は教官の顔とは別物だった。

千冬をそんな風に変えた男が許せなかった。

負けたくない。

 

「(力が欲しい…)」

 

…願うか?汝、自らの変革を望むか?より強い力を欲するか?…

 

彼女の心の奥底で何かが囁いた。

それに抗う理由などなかった。

 

「(言うまでもない…力があるのなら…それを得られるのなら…私など…空っぽの私など何から何までくれてやる!だから…力を…比類なき最強を…唯一無二の絶対を…私によこせ!)」

 

《Damage Level…D。Mind Condition…Uplift。Certification…Clear。Valkyrie Trace System…boot》

 

シュヴァルツェア·レーゲンが何かのシステムを起動した。

 

「あああっ!」

 

ラウラの絶叫と共に機体から激しい電流が放たれシャルロットを吹っ飛ばした。

 

「ぐっ!いったい何が…!?」

 

「なっ!?」

 

一夏とシャルロットは目の前の現象に目を見開いた。

シュヴァルツェア·レーゲンの装甲が黒い泥のように溶けて全身を包み込んで形状を変えていく。

完全に変形してそこに立ったのはもはやシュヴァルツェア·レーゲンではなく黒い全身装甲のISに何かだった。

ボディラインはラウラと同じで最小限の装甲が腕と脚につけられて、頭部はフルフェイス、目は装甲のラインアイ·センサーが赤い光を放っている。

右手に握っているのはかつて千冬が使っていた刀『雪片』を模したものだった。

一夏が無意識に『雪片弐型』を握りしめると黒いISが一瞬で接近し中段構えで振った。

一夏の『雪片弐型』は弾かれ、続いて二撃目が来る。

一夏は後方へ下がって何とか回避した。

シールドエネルギーは完全に使い切ったのだろう。

白式が解除された。

 

 

◇◇◇

 

 

「何だあれ?」

 

ステージに立つ黒いISを観客席から見下ろしながら王我はそう言った。

 

「あれはValkyrie Traceシステム、略して『VTシステム』」

 

「知ってるのか?」

 

隣で答えた王留美に対して王我は訊く。

 

「ドイツが織斑千冬のデータを基に開発した謂わばコピーのブリュンヒルデ」

 

「ドイツで教官をしていたとは聞いてるが、その時のかもしくはモンド·グロッゾのデータをベースにしているかだな」

 

「でしょうね。黒幕は恐らくギレ…」

 

《緊急事態発生!緊急事態発生!生徒と来賓の方は会場から避難してください!避難してください!》

 

王留美が何かを言おうとしたところで、真耶のアナウンサーが会場に響き渡る。

 

「王我さん!」

 

「どうなってるの!」

 

王我の元へISスーツを着用した直葉と千鶴が駆け寄ってくる。

 

「千鶴、愛莉と一緒に避難の誘導をしろ。直葉はサポートだ」

 

「え、ちょっ…あなたは!?」

 

「俺はアレを片付けてくる」

 

王我はそう言ってステージを見下ろす。

ステージでは一夏が何やら箒に羽交い締めされて暴れているが王我はそれをスルーした。

 

「行くのね」

 

「ああ、子供の喧嘩は終わりだ。ここからは大人の時間だ」

 

お前も子供だろというツッコミは全員心の中に仕舞った。

 

「ダメよ!先生達に任せるべきよ!」

 

「問題ない。すぐに終わる」

 

「でも…」

 

「大丈夫よ」

 

なおも食い下がる千鶴を王留美の言葉が遮った。

 

「彼が負けることなんてあり得ないから」

 

王留美は確信を持ってそう言いきった。

 

「お嬢様、我々も…」

 

「ええ、そうね。お二人さん、エスコートをお願いできるかしら?」

 

「え、あっはい!」

 

王留美のお願いに直葉が思わず答えてしまった。

 

「本当に大丈夫なのね?」

 

千鶴が王我にそう訊く。

 

「ああ。…それと悪いな。お前の新機体のお披露目はまた今度になりそうだ」

 

「後日、模擬戦でもいいのでお願いしますね」

 

「ああ」

 

王我はそう言って観客席を離れて廊下を歩く。

歩きながら携帯を操作してどこかに繋ぐ。

 

「織斑先生、天道です」

 

《なぜモニタールームの回線を知っている?》

 

「その話は後で。用件は手短に。私がアレの対処をします」

 

《認められん。教師達で対処する》

 

「私か先生方、どちらが早急に事態を収められるのでしょうかね?」

 

《………分かった。5分やる。それ以上は教師が対処する》

 

「3分で終わります。先生方は避難の誘導を」

 

《ああ》

 

千冬が通信を切って通話は終了した。

 

「さあ、政治を始めるとしようか」

 

王我は右手中指の指輪を起動した。

 

 

◇◇◇

 

 

 アリーナのステージで黒いISは生身の一夏に襲いかかろうとしたその時、何かを感じたのかステージの入り口に体の向きを変えた。

 

「おい、無視すんな!」

 

自分が無視されたことに苛立つ一夏。

直後、ステージの入り口の暗闇の奥から緑色のビームが放たれた。

黒いISは距離を取って回避した。

 

「何だ!?」

 

一夏が驚きの声を上げた後、猛スピードでISが1機入場してきた。

青と白を基調とした機体だが、ストライクフリーダムとは違う未来的で両肩からは緑色の粒子『GN粒子』が散布されている。

 

「GN-0000+GNR-010 ダブルオーライザー、2つの太陽炉『ツインドライヴシステム』を搭載したガンダムシリーズの機体」

 

避難中で並んでいる王留美が独りでに呟く。

倉持技研の研究者達は、ある者は拳を握りしめてある者は涙を流しながらハンカチがちぎれるほど噛みちぎって悔しさを表していた。

 

「王我…」

 

シャルロットがその名を呼ぶ。

 

「お前達は下がれ。俺が対処する。織斑先生から許可も得ている」

 

王我は用件を簡潔に説明した。

 

「俺がやる!あれは…あれは千冬姉のデータだ…それは千冬姉のものだ…千冬姉だけのものなんだよ…それを…」

 

「くだらん」

 

「なんだと!」

 

「お前の私情など介入する余地はない」

 

一夏の訴えを王我は一蹴した。

 

「お前っ!」

 

一夏が殴りかかろうとするが、王我がスラスターを噴射して戦闘体勢に入った。

 

「天道王我、ダブルオーライザー、目標を制圧する」

 

その言葉と共に王我が前に出る。

黒いISもご丁寧に待っていたのか同時に前進した。

王我は実体剣とビームライフルの機能を複合した装備『GNソードⅢ』を両手に黒いISとの間合いを詰めていく。

王我は剣を、黒いISは刀を振り刃がぶつかり合い火花を散らす。

ぶつかっては離れ、ぶつかっては離れを繰り返してステージを飛び回っている。

 

「所詮は紛い物か。入試の方がまだ歯ごたえがあった」

 

王我はフルフェイスの下でつまらなさそうな顔をする。

黒いISの攻撃は単純、距離を一気に詰めて斬るだけ。

 

「さっさと終わらせるか」

 

王我の体の奥底で何かが弾ける音がした。

 

「トランザム!」

 

ダブルオーライザーの機体が赤く発光する。

以前にフェイトが行ったものより輝きが強い。

『SEED』+『トランザム』。

最強の能力の組み合わせとも言えるだろう。

黒いISが急接近して斬りかかった…がその攻撃は空を切った。

 

「消えた!?」

 

「…違う。速すぎて消えたように見えたんだ」

 

一夏の言葉をシャルロットが否定する。

その証拠に王我は一瞬で黒いISの背後に回っていた。

黒いISが振り返って刀を振り回すより王我が刀ごと腕の装甲を切断する方が速かった。

さらに右足で蹴り飛ばして床に叩き落とす。

 

「終わりだ。トランザムバースト!」

 

ダブルオーライザーから七色の輝きを放つGN粒子がステージ全域に放出された。

その粒子を浴びた黒いISはまるで麻痺したように動きが止まった。

 

 

◇◇◇

 

 

 そこは暗闇だった。

ラウラは膝を抱えて座り込んでいた。

 

…織斑一夏を倒せ…

 

声が聞こえる。

 

…織斑一夏を倒せ…

 

囁くように。

 

…そうすればお前は織斑千冬になれる…

 

「…そうだ…私は…教官に…織斑千冬に…」

 

「くだらんな」

 

ラウラの言葉を遮る声が聞こえた。

先程までのとは別の声。

顔を上げるとそこには王我が立っていた。

 

「お前…」

 

「全くこれだから子供は世話がかかる」

 

「なぜここに…」

 

「この程度、俺には造作もないことだ」

 

「…放っておいてくれ。私は…私は強くならなければならない!織斑千冬のように…織斑千冬にならなければならないんだ!」

 

「くだらんな」

 

王我は同じ言葉をもう一度口にした。

 

「なんだと?」

 

「憧れるのはいい。だが他人になることなど誰にもできはしない」

 

「お前に何が分かる!」

 

ラウラは立ち上がって王我に向かって殴りかかる。

王我はその拳を片手で受け止めた。

 

「お前に分からない!私の苦しみが!教官は織斑一夏のせいで弱くなった…私が…私が正さねばならんのだ!」

 

ラウラの本音が吐き出される。

暗闇だった空間にラウラの記憶を映し出すかのように光の鏡のようなものが何個も浮き上がる。

ラウラが兵士として造られたことやIS適性の手術、千冬との思い出など。

 

「自分の弱さを他人のせいにするな」

 

「違う!私は…」

 

「お前の強さも弱さもその想いも全てお前のものだ。たとえお前が人造人間だろうがクローンだろうがサイボーグだろうがお前という人間はこの世にただ1人しかいない。姿や記憶を他人と同じにしようがそれは変わらない。お前がどれだけ否定しようが俺が肯定する。…お前はお前だ」

 

その言葉を聞いたラウラは涙を流した。

同時に冷たい暗闇だった空間は温かく真っ白な空間に晴れていった。

 

「問おう。お前は誰だ?」

 

王我が目の前のラウラに問いかけた。

ラウラは涙を流しながら初めて笑ってこう言った。

 

「私は…ラウラ·ボーデヴィッヒだ」

 

 

◇◇◇

 

 

 目を覚ますと白い天井が見えた。

 

「気がついたか」

 

声が聞こえて視線だけ動かすとそこには憧れの織斑千冬が椅子に座っていた。

 

「私…は…」

 

「全身に無理な負荷がかかったことで筋肉疲労と打撲がある。しばらくは動けないだろう。無理をするな」

 

「何が…起きたのですか?」

 

ラウラが無理をして上半身を起こすと全身に痛みが走るが、瞳だけは千冬を見つめていた。

治療のため眼帯を外されている左目は、右目の赤色とは全く違う王我の瞳に似た金色で、オッドアイを千冬に向けている。

 

「ふう…一応、重要案件である上に機密事項なのだがな…VTシステムは知っているな?」

 

「はい。正式名称はValkyrie Traceシステム…過去のモンド·グロッゾの部門受賞者の動きをトレースするシステムでたしかあれは…」

 

「そう。IS条約で現在どの国家·組織·企業においても研究·開発·使用全てが禁止されている。それがお前のISに搭載されていた。巧妙に隠されていたがな。操縦者の精神状態、機体の蓄積ダメージ、操縦者の意志…いや願望か…それらが揃うと発動するようになっていたらしい。ドイツへは既に天道…兄の計らいで調査が入った」

 

「あの男が…」

 

ラウラは王我のことを聞いて目を見開いた。

 

「先程、調査も終わった。どうやら軍の研究者の中に過激派が潜入していたようだ。犯人も確保してドイツで尋問中だ」

 

「なぜそんなに早く?」

 

明らかに対応が早いことにラウラは理解が追い付かなかった。

 

「あの後、天道兄の方から提案されてな。あの事件はドイツの信用を著しく下げる国際問題になるだろう。そのダメージを少しでも減らすために動いてくれたようだ」

 

「他国のためにそこまで…」

 

「打算も含まれているだろうがな。私は政治に関しては素人同然だから助かったとも言える」

 

千冬は戦闘技術や心構えを教えることは出来るが、こういった政治の問題には疎いようだ。

意外な一面にラウラは心の中でクスッと笑う。

 

「それとお前の処分について軍から報告がある」

 

「はい…」

 

ラウラの気分が落ちる。

彼女のやったことは客観的に見れば、ドイツの信用を下げた行為とも見える。

それが自発的ではないとはいえ。

 

「怪我人には堪えるだろうが…心の準備はいいか?」

 

「はい」

 

ラウラは覚悟を決めた。

その表情を見て頷いた千冬が端末を操作すると目の前に空間ウインドウが展開された。

 

《目を覚ましたようだなボーデヴィッヒ少佐!》

 

「ドズル中将!?はっ、失礼しました!このような格好で…うっ!」

 

画面に現れたのは強面で身長210cmの巨漢でドイツ軍の陸軍中将、ドズル·ザビだった。

ラウラは敬礼しようとするが全身に痛みが走ってうずくまってしまう。

 

「よい!楽にしろ!」

 

「はっ」

 

ラウラを気遣ったドズルはそう命令した。

ラウラは命令に従って手をシーツの上に下ろした。

 

《ラウラ·ボーデヴィッヒ少佐!お前の処分が決まった!》

 

「中将殿、ここは保健室で防音設備もありません。どうか声量は控えめに」

 

千冬が情報漏洩を防ぐために横から口を出す。

 

《むっ…そうだな。それでは改めて処分内容を報告させてもらう。欠席裁判による軍法会議ですまないが急を要するので仕方なかったのだ》

 

「はい」

 

ラウラは一切文句は言わなかった。

 

《では報告する。ラウラ·ボーデヴィッヒ少佐は1ヶ月の軍事行動の禁止及び専用機の使用禁止、6ヶ月の減給処分とする。なおこの決定はいかなる理由でも撤回されないものとする》

 

「…‥…え?」

 

ラウラの顔がポカンとした。

当然だろう。

経緯はどうあれ、あんな事件を起こしたのだ、いくら主犯が別にいると言っても投獄か除名処分くらいは覚悟していたのにそれが実質1ヶ月の謹慎と6ヶ月の減給だけで済んだのだ。

 

「あ、あの…いくらなんでもこれは何かの間違いでは…」

 

《言ったはずだ。この決定はいかなる理由でも撤回されないものだ。報告は以上だ。失礼する》

 

ドズルはそう言って通信を切った。

 

「何がどうなって…」

 

「恐らくだが天道兄の仕業だろう」

 

戸惑うラウラに千冬が口を挟んだ。

 

「今回の事件を解決してあいつはドイツに恩を売った形になる。その条件にお前の処分を軽くするように交渉したんだろう」

 

「ではあの男はここまで読んで…」

 

「恐らくな」

 

「…ハハッ、敵わないな…」

 

ラウラは自分がとんでもない男を相手にしていたことに今さら気づいた。

千冬は話の区切りがついたところでコホンッとわざとらしい咳払いをした。

 

「ラウラ·ボーデヴィッヒ!」

 

「はい」

 

「お前は誰だ?」

 

「私は…ラウラ·ボーデヴィッヒです!」

 

ラウラは自信を持ってそう答えた。

 

「そうか。分かっているならそれでいい」

 

千冬はそれだけ言うと保健室を退室した。

 

「天道…王我…」

 

その名を口にすると心が温かくなる。

そこでラウラはあることに気づいた。

 

「あれ?さっき私はあの男と…」

 

実はラウラがVTシステムに囚われていた際のあの世界、例えるなら精神世界でラウラと王我は裸だったのだ。

それを思い出したラウラの顔が赤く熱くなった。

 

「わ、私は…」

 

目の前で見てしまった王我の裸が頭から離れない。

 

「う、うう…」

 

ラウラは布団の中に入ってしばらく動けないでいたのだった。




ドズル·ザビ
原作:機動戦士ガンダム
年齢:28歳
国籍:ドイツ
階級:陸軍中将
補足:実娘ミネバ·ラオ·ザビ(生後数ヶ月)を溺愛している親バカ
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