すみません。指がノリました。
トーナメントは中止になったが、今後の個人データ指標と関係するため1回戦だけは後日行うことになった。
「帰るんだな」
IS学園の正門前で王我は王留美の見送りに来ていた。
「ええ、あのような事件があり、本国から帰還命令を出されましたので仕方ありませんわ。本当はもっとあなたと居たかったですけど…」
王留美はそう言ってため息を吐いた。
例のVTシステム事件により、各国の政府要人や軍人など公的な立場の人間は安全のため帰還命令が下されている。
残っているのは研究者か企業のスカウトくらいだろう。
「またその内に会えるさ」
「…あなたは理解していないようですね。あなたに会えない女達がどれだけ寂しい思いをしているかということを。どれだけ自分を慰め満たされない思いをしているかということを」
王留美は王我にクレームをつける。
「分かっているさ。だからこそ…会えた時の喜びが増すのだろう」
王我は王留美の耳元に唇を近づけてそう囁いた。
「…っ…本当にあなたは悪い殿方ですね」
王留美はそう言って淑女の笑みを王我に向けた。
「では…またお会いする日を楽しみにしていますわ」
「ああ」
王留美は王我に別れの言葉と再会の約束をしてから車に乗って学園を去っていった。
◇◇◇
腹が減ったので食堂に行くと、ズーンと沈んでいる女子達が項垂れていた。
「…優勝…チャンス…消え…」
「交際…無効…」
「…うわああああんっ!」
どうやら優勝したら一夏やシャルロット(王我以外は女子だと知らない)と付き合えるという話がなくなって絶望しているようだ。
子供のように泣きじゃくって食堂を走り去っていく。
「茶番だな」
王我はそう吐き捨てた。
「あ…王我さん、こちらですわ」
テーブル席で待っていたセシリアに手招きされて王我は座る。
ここ最近、セシリアははやてに料理を教えられ、こうして定期的に王我に食べさせているのだ。
「どうぞ」
作ったお弁当を両手で持ち、上目遣いで見つめながら差し出すセシリア。
「いただこう」
王我はまずは卵焼きを箸で摘まんで食べた。
「あむっ…んっ…うん、悪くない。普通だ」
「っ!ありがとうございます!」
王我の感想にセシリアが花開いたような笑顔になる。
今までの殺人料理が家庭料理にレベルアップしたのだ。
今のセシリアは歓喜で踊りたいのを必死で我慢しているくらいテンションが上がっている。
尻尾があれば扇風機のように振っているだろう。
「(この短期間でここまで上達するとは…努力家なんだろうな。…シャマルは目を離すと殺人料理に変わるからな)」
医者が殺人とは何とも笑えないジョークだ。
しかも味見してアレなのだから始末に負えない。
そんな感想を心の中で呟きながら弁当を食べ進め完食した。
「ごちそうさま」
「全部食べてくださってありがとうございます」
「料理の勉強は続けているようだな」
「はい。はやてさんが丁寧に教えてくださって感謝しています。上達を感じると毎日料理するのが楽しくなってきます」
「(小さな成功体験の積み重ねが自信になっているんだろうな)」
セシリアの成長を王我は見守り続けることにした。
「そういえば箒、先月の約束だが…」
そこで近くのテーブル席から話し声が聞こえる。
聞く気はないが聞こえてしまう距離なので仕方ない。
会話しているのは一夏と箒のようだ。
「付き合ってもいいぞ」
「…‥…なに?」
「だから付き合ってもいいって…おわっ!?」
交際の承諾と受け取った箒が興奮のあまり、なぜか一夏を締め上げた。
なんという暴力的ヒロイン。
「ほ、ほ、本当か?本当に…本当に…本当なのだな!?」
「お、おう」
「な、なぜだ?り、理由を聞こうではないか」
パッと一夏を離して腕組みして咳払いする箒。
「そりゃ幼馴染みの頼みだからな。付き合うさ」
「そ、そうか!」
「買い物くらい」
ピキッと箒のこめかみの血管が浮き上がる。
一夏は男女の交際ではなく買い物の付き合いと勝手に解釈してしまったようだ。
「そんなことだろうと思ったわ!」
「ぐはっ!」
腰のひねりを加えた見事な正拳が一夏の顔に炸裂する。
「フンッ!」
一夏の鳩尾を踏みつけ去っていく箒。
「アホムラだな」
吐き捨てる王我。
「あ、織斑君、デュノア君、それに王我君もちょうどよかった」
そこへ真耶が駆けつけてきた。
どうやらシャルロットも近くの席にいるようだ。
なお王我を名前で呼んでいることに真耶は気づいていない。
「朗報です!なんとですね!ついについに今日から男子の大浴場使用が解禁です!」
「おお!そうなんですか!てっきりもう来月になるものとばかり」
真耶の報告に一夏のテンションが上がる。
王我はラボに大浴場があるので関係ない話だが。
「それがですね!今日は大浴場のボイラー点検があったので元々生徒達が使えない日なんです。でも点検自体はもう終わったのでそれなら男子の3人につかってもらおうって計らいなんです」
「俺はラボに風呂あるからいい。セシリア、行くぞ」
「ええ」
用事が済んだ王我は席を立ってセシリアと共に食堂を去る。
「なっ、お前ずるいぞ!なんでもっと前から言わないんだよ!」
一夏の叫びを王我は無視した。
王我が男を誘うなど天地がひっくり返ってもあり得ないのだ。
◇◇◇
ところが事態は急転した。
「…チッ、故障か」
王我がラボの大浴場に入浴しようとしたところ、湯気が立っていないことに気づいて指を入れると冷たい水だった。
ボイラー室に行って確認するとやはり故障していた。
寮の大浴場は学園管理だが、ラボの大浴場は王我のものなので点検は入らなかった。
「アイ、修理にどれくらいかかる」
ラボのリビングに戻った王我はアイに質問した。
《修理にかかる時間は12時間37分54秒です》
現在の時刻は19時30分、修理が完了するのは翌日の朝は朝8時頃、そこまで待つ気はない。
「仕方ない。あっちにするか」
王我は寮の大浴場を使うことにした。
◇◇◇
ガララッ。
「ふぇっ?」
大浴場の引き戸を開けるとそこには全裸のシャルロットが身体を洗っていて、現れた王我に驚いていた。
「え、どうして、え…」
「ラボのボイラーが壊れたからこっちに来た」
シャルロットの疑問を王我は簡潔に答えた。
「バカムラはいないようだな」
「その篠ノ之さんに受けたダメージが抜けなくて後から来るって…っていうか前!前、隠して!///」
シャルロットは顔を真っ赤にして目を逸らす。
今の王我は腰にタオルも巻いていない全裸を晒している。
王我の立派な肉体を見てしまったシャルロットは必死で見ないようにしている。
「なぜ隠す必要がある。ここは風呂だ」
「そ、そうだけど…うぅ…///」
シャルロットは自分の身体を抱き締めて隠そうとするがとても隠せるものではなかった。
大きく膨らんだ乳房は腕で隠すものの横乳が丸見えで、曲線のあるくびれとプリっとしたお尻は両手が塞がっているため隠せていない。
王我はシャルロットの肢体を眺めた後、座椅子に座って身体を洗い始める。
「………」
シャルロットは隣に座る王我の鍛え上げられた肉体をチラチラと視線を送っていた。
最初は恥ずかしく、今もまだ恥ずかしいがそれでも勇気を振り絞ってシャルロットは王我に声をかけた。
「あの…王我、体…洗ってあげようか?」
「ん?ああ、頼む」
シャルロットの提案を王我はあっさり承諾した。
シャルロットは王我の背後に移動してボディーソープをプッシュして手に馴染ませる。
すると、スポンジを使わずに素手で王我の背中を洗い始めた。
「どう?」
「ああ、いいぞ」
「良かった…」
王我に褒められてシャルロットは安心する。
背中、肩、腰と洗い終えて次は…
「次は…前…///」
シャルロットが手を伸ばそうとしたその時、ガララッと引き戸が開く音がした。
「え?」
「え?」
シャルロットと入ってきた人物…バスタオルを腰に巻いた一夏の目が合った。
一夏の視線は王我の背中とシャルロットの肢体に移る。
「何を見ている。エロムラ」
「え、あっ…すいませんでしたぁぁぁ!!!」
状況を理解した一夏は引き戸をピシャッと閉めて大浴場を越えて脱衣所から逃げていった。
「エロムラの奴、着替えも取らずに出ていったな」
余談だがこの後、バスタオル1枚の一夏が箒に見つかって「この痴れ者が!」「ちがっ、これには訳ぎゃあああ!」とボコボコに殴られるのだった。
「じゃあ…前、洗うね」
シャルロットは気を取り直して王我の胸に手を伸ばして抱きついた。
シャルロットの立派な胸が背中にムニュッ押しつけられて気持ちいい感触を王我に与える。
王我の胸を洗っているとあることに気づいた。
「男の人も乳首勃つんだ…」
両手で揉むように洗うシャルロット。
男の身体に興味が尽きない彼女は指を下にスーッと滑らせて王我の股の間にそびえるタワーに目がいく。
「これが…オ、オ、オチンチン…///」
さっきは一瞬だけ見えて目を逸らしてしまったが、今度は目を逸らさずに手を伸ばす。
「触るね…///」
シャルロットは王我のペニスを優しく触れた。
「あっ…熱い…それに硬い…オチンチン…ってこんな風になってるんだ」
「それでよく男の真似ができたもんだな」
「しょ、しょうがないじゃん!初めてなんだから!///」
シャルロットは恥ずかしながらも王我のペニスをボディーソープのついた手で握る。
「オチンチンって…その男の人が興奮すると…勃起するんだよね?王我は興奮してるってこと?」
「もちろんだ」
「そうなんだ…フフッ…」
王我の答えにシャルロットは嬉しくなってペニスを手で握りながら上下に擦り始め、さらに胸を背中に押しつけながら身体全体を上下に動かして奉仕する。
その動きはもはやソープ嬢。
「これ…僕も乳首擦れて…気持ちよくなっちゃう…」
シャルロットは王我に奉仕しながら自分自身も快感を感じてしまい、自然と動きも早まる。
「はぁ…はぁ…ねぇ、なんだかオチンチン…もっと熱くなってきたよ…これって…もしかして…」
「ああ、男は気持ちよくなると射精するんだ」
「…いいよ。見たい…王我のオチンチンの射精が見たい…」
王我の耳元でそう囁くシャルロット。
「お願い…見せて…射精して!」
「射精る!」
ドピュッ!ビュルルル!ビュルルル!
王我のペニスから噴水のように精液が噴き出した。
「…これが…精液…」
生で射精を見たシャルロットは見とれて、自分の手についた精液の感触にボーッとしていた。
視線をペニスに戻すとまだ勃起していた。
「え、射精したのにまだ大きい…男の人って射精したら小さくなるんじゃないの?」
「さあな。それより…」
王我は立ち上がってシャルロットも立たせた。
「今度は俺が洗ってやろう…隅々までな」
そう囁いてシャルロットの股の間に手を伸ばす。
「ひゃうっ!」
膣の入り口を触られて身体をビクッと震わせるシャルロット。
「もう濡れてるぞ。準備万端だな」
「え、僕なんで…え…」
自分が濡れていることに気づいていなかったようだ。
王我がシャルロットの肢体を抱き締めるとボディーソープがくっつき合いヌチャヌチャといやらしい音を大浴場に響かせる。
「シャルロット」
「え、なに…んむっ!」
シャルロットが王我を見上げると唇を奪われた。
「ん…チュッ…あっ…チュパッ…王我ってば強引…」
「我慢できなくてな」
「もう…王我のエッチ///」
そう言いながらも王我とのキスをやめないシャルロット。
「ん…チュッ…ねえ、王我…もう我慢できないかも…挿れて」
シャルロットは王我にセックスのおねだりをした。
「じゃあ遠慮なく」
王我は立ったままシャルロットの腰に手を回し支えた状態で挿入した。
「んっ!ああっ!」
濡れていたとはいえ処女膜を破られ一瞬の痛みが走り、王我をさらに強く抱き締める。
王我は動かず態勢を維持してシャルロットが慣れるのを待った。
「はぁ…ふぅ…はぁ…ふぅ…」
息を整えてペニスを慣らすシャルロット。
「はぁ…ふぅ…もう大丈夫…動いていいよ」
「分かった。ならキスしながらシよう」
「うん…チュッ…」
王我はシャルロットとキスを交わしながら腰を動かす。
動く度にシャルロットの胸が王我の胸でムニュッと潰れる。
「チュッ…チュパッ…王我のオチンチン…膣奥にきて…気持ちいい…」
舌を絡ませるディープキスを交わしながら王我のペニスを味わうシャルロット。
「ねぇ…もっと激しくきて…」
潤んだ瞳で王我におねだりするシャルロット。
「いくぞ」
王我はピストン運動をさらに激しくした。
「あっ、ああっ!すごい!王我の…膣奥にドンドンきて…こんなの知っちゃったらみんな王我の虜になっちゃうよ!」
王我のペニスに突かれながら喘ぎ声を上げるシャルロット。
王我が腰を振る度にシャルロットの全身が跳ねて大きな胸が揺れる。
「王我…んっ…もうダメかも…」
ベロチュー対面立位セックスにシャルロットの限界が迫る。
「王我のオチンチン…膣内で大きくなってきた…王我も射精そうなの?」
王我の首に腕を回しながら可愛らしく訊ねる。
「ああ、イクぞ」
「うん…きて…王我の精液、僕の膣内に全部射精して…射精してぇ!」
「イクッ!」
ドピュッ!ビュルルル!ビュルルル!
「ああっ!」
シャルロットの身体が今まで一番跳ねた。
後ろに倒れそうになり王我が支える。
「はぁ…はぁ…気持ちよかった…」
シャルロットが息を切らして体力の限界のようなので王我はペニスを膣内から抜いた。
コポッと膣内の精液が床に溢れる。
「とりあえず流すか」
王我は精液と愛液をシャワーで洗い流して浴槽に浸かることにした。
◇◇◇
大浴場の浴槽で王我とシャルロットは隣り合って入浴していた。
「やっぱり僕って愛人の娘なのかな…」
「唐突だな」
王我はシャルロットの話を大人しく聞いている。
「何か王我に抱かれてる時に幸せだなぁって感じるんだ。僕の身体を王我が求めてくれると…ああ、やっぱり僕は女にんだっていう幸せな気持ちで満たしてくれる」
シャルロットは王我の胸に寄り添って頭を乗せる。
「シャルロット…」
「シャルって呼んで。お母さんはそう呼んでくれたから」
「シャル」
「うん」
名前を呼ばれただけでシャルは幸せそうな顔をする。
「王我はどうしてそんなに強いの?」
シャルはまた話題を切り替えた。
「妹を守るためだ」
「愛莉ちゃんのこと?」
「ああ…あいつはお前と同じ愛人の娘なんだ」
「…え」
シャルは衝撃の真実に固まった。
「俺の母親には妹がいて、俺の父…あのクソ野郎はその妹と子供を作った」
父親のことを話す王我の顔は今までに見たことがないくらい険しかった。
殺気が漏れ出ているくらいに。
「つまり王我と愛莉ちゃんは兄妹で従兄弟なんだね」
「ああ」
「世間にバレたらまずいんじゃない?」
「フッ、騒ぎたい奴には騒がせておけばいい。何ならお前がネットに書くか?」
「そんなことしないよ!」
シャルは頬をプク~っと膨らませた。
王我は優しく微笑んでシャルの肩を抱いて引き寄せて話を続けた。
「俺の母親は事故で死んで、愛莉の母親は病死した。4年前のことだ。愛莉の体が弱いのも母親譲りだろう。それからだ…あのクソ野郎が変わっちまったのは」
「何があったの?」
「あのクソ野郎は愛莉に暴力を振るい始めた。苛立ちをぶつけるようにな」
◇◇◇
4年前。
王我の父親、天道力也は当時のシルバーキングスの社長だった。
しかし、商才がなく業績は悪化する一方だった。
妻が事故死してから、その苛立ちを自宅で愛人の娘である愛莉にぶつけるようになった。
「きゃっ!」
「私の視界に入るな。家に置いているだけありがたいと思え!」
力也は目の前にいた愛莉を平手打ちで殴り倒した。
「愛莉をいじめるな!」
そこへ殴りかかったのが王我だった。
しかし、当時の王我は力が弱い子供で大人の腕力に敵うはずもなかった。
「黙れ!」
力也は王我を殴りつけた。
「ぐっ…」
殴られた王我は床に倒れ込む。
「お前は私の命令に従っていればいいのだ!」
力也はそう言って立ち去った。
「兄さん…」
倒れる愛莉は今にも死にそうな目をしていた。
王我は愛莉の体を強く抱き締めた。
「大丈夫だ。俺が…俺がお前を守るから」
王我は誓った。
愛莉に、そして己自身に。
それから1年後、王我は13歳になり行動を起こした。
その日、力也は株主総会の日だった。
新たなビジネスプランをプレゼンする大事な日だった。
王我はその会場の陰に潜んでタイミングを伺っていた。
「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます!」
力也は両手を広げてアピールした。
かなり気合いが入っている。
それも当然だろう。
このプレゼンで会社の未来が決まるのだ。
《王我様、準備が出来ました》
王我のイヤホンからノクトの声が聞こえる。
この頃はただの主従関係なので、王我様、と呼んでいた。
「やれ」
《Yes》
「さて、それでは発表させてもらいます。次なるわが社の新プランは…」
力也がプレゼンを始めようとしたその時、モニターの画面が切り替わった。
それは力也のこれまでの不正や賄賂などの証拠の写真やデータだった。
「なんだ…これは…」
「どういうことだ!」
「説明しろ!」
株主達の怒りの声が沸き上がる。
「いや、これは何かの間違いで…」
「全部事実だ」
力也が言い訳をしようとすると、王我が現れて壇上に上がってきた。
「貴様…これはどういうことだ!答えろ!」
「てめぇの時代は終わったんだよ。クソ野郎」
「何だと!」
力也は壇上で吠える。
「てめぇはもう社長でも何でもねぇ。ただの負け犬だ」
王我はそう言うと1枚の書類を出して見せた。
「てめぇの懲戒解雇が懲戒処分委員会で決まった」
「何を…」
それは懲戒解雇の通知書だった。
「これは社員の総意でもある。パワハラもしてたってな。そして、先程役員会議で俺が新しい社長になることが決まった」
「貴様…」
よりによって株主の前で恥をかかされた屈辱で力也の顔は怒りで真っ赤だった。
「よくも…よくもぉぉぉ!」
力也は王我の顔を殴った。
会場から悲鳴が上がる。
王我は殴られたが踏みとどまると拳を握り締めてアッパーカットを振り上げた。
「うぐっ!」
力也はよろめいて気絶した。
「愛莉の分だ……連れていけ」
王我は近くに控えていた社員に指示をする。
王我は株主達に向き直った。
「皆さん、お騒がせしました。私が…いや俺がシルバーキングスの新社長、天道王我だ。聞きたいことはたくさんあるでしょうがまず先程の件は全て事実です。その上で俺はこの会社を一新することに決めました。若すぎる、会社を信用できないなんて方もいるでしょう。それはこれを見てから判断してください」
王我は株主の言いたいことを先回りして指をパチンッと慣らすとモニターの画面が切り替わった。
そこに映し出されていたのはISの新たなシリーズのプランだった。
「プラン名は…『ガンダム』。今まで我が社のISは他社と似たようなコピーといえるようなものばかりでした。しかし、これからは違います」
次々と切り替わる画面のプレゼン内容に株主達は目の色を輝かせ、そして1つの拍手、続いて拍手が、やがて大喝采の拍手が溢れた。
こうして王我の社長としての道が開いたのだった。
王我は株主総会、記者会見、インタビューなどを終えて自宅に急いで戻った。
「愛莉!」
愛莉の部屋を開けて中に入る。
「兄さんむっ!」
愛莉はいきなり入ってきた王我にキスをされた。
「んむっ…ぷはっ…兄さん…」
「愛莉、俺がこれから一生守る。どんなことをしてでも…たとえ世界中を敵に回してもお前は俺が守る」
「兄さん…」
その言葉を聞いた愛莉の目に光が戻る。
「兄さん…兄さん…兄さん!」
愛莉は王我に抱きついて涙を流した。
王我は愛莉を抱き締めて温もりを感じる。
これが王我と愛莉の愛の物語である。
◇◇◇
現在。
「世界中を敵にしても守る…か」
王我の話を聞き終えたシャルがそう溢した。
「俺が業界で何と呼ばれてるか知ってるか?」
「…『死の商人』」
「そうだ。兵器を作って他国に売り付ける。その兵器が人を殺す。まさに『死の商人』」
「でもそれは…愛莉ちゃんを守るため」
シャルは王我の考えに気づいた。
「そうだ。俺にとって何より大切なのは愛莉でその次がノクトだ。人が両手で守り切れるものなんてたかが知れている。だから兵器を作り、有能な人材を見つけ育て、守りを万全にする」
「…ちょっと羨ましいな。それだけ愛されてる愛莉ちゃん」
「愛莉への愛に勝るものはない」
王我は断言した。
「それでシたの?愛莉ちゃんと…」
「当たり前だ」
王我はあっさり認めた。
「王我のエッチ…」
そう言うシャルはどこか納得していた。
「王我」
「ん?」
「僕、決めたよ。僕は王我のモノ、王我のために動いて王我のために戦う」
「そうか。お前が決めた道ならそれでいい」
「うん…ありがとう……ちょっとのぼせてきちゃった」
「そろそろ上がるか」
「うん」
王我とシャルは大浴場から上がって着替えて部屋に戻った。
王我も今日はラボに戻らず部屋で寝ることにした。
シャルは王我の腕の中で眠った。
◇◇◇
翌日の朝のホームルーム。
2組のドアが開くと中に入ってきたのはラウラだった。
「あんた、何の用?」
喧嘩腰の鈴音。
それも仕方あるまい。
彼女は被害者なのだから。
ちなみにトーナメント当日は日常生活に支障がない程度に鈴音とセシリアは回復していたので保健室ではなく自室で試合を観戦していた。
そのため、保健室でラウラと鉢合わせることがなかったのだ。
ラウラは鈴音の前に立つと深々と頭を下げた。
「え?」
「数々の侮辱的発言と暴行、すまなかった」
ラウラは鈴音に誠意ある謝罪をした。
「え、あっ…」
鈴音は突然のことにあたふたする。
「…もういいわよ。許すわ」
「感謝する」
プイッと照れ隠しで顔を逸らした鈴音にラウラはお礼を言うと今度は王我の前に立った。
「色々面倒をかけてしまったようだな…その…感謝する。だから…これはお礼だ」
そう言ってラウラは席に座っている王我の唇を奪った。
「きゃあああああ!!!!!」と2組の女子達の黄色い悲鳴が上がった。
千鶴なんて「破廉恥です!」と指を差している。
「んっ…ぷはっ…」
ラウラが唇を離す。
王我は立ち上がると、
「フッ、子供のキスだな」
「なにを…んむっ!」
ラウラが子供扱いされて言い返そうとしたその時、今度は王我に腰を抱き寄せられて唇を奪われた。
しかも、王我のキスはラウラと違って濃厚なまさに大人のキスだった。
2組の女子達なんて声を上げるどころか顔を赤らめて絶句している。
「(これは…なんだ?頭がボーッとしてきて…目が回る…もうダメだ…)」
最初は抵抗していたラウラだったが、抱き寄せられ体格差で足が宙に浮いている上にキスで力が抜けていった。
「…これが大人の…ん?」
王我が唇を離してラウラを見下ろすと、ラウラは顔を真っ赤にして目を回していた。
「あっ…」
「はぁ…やり過ぎです…兄さん」
愛莉は呆れて頭を抱えていた。
「返してくるか」
王我がドアの方へ歩いていくとちょうどドアが開いた。
「すみません。こちらにボーデヴィッヒが来て…」
廊下から現れたのは1組担任の千冬だった。
「ちょうどよかった。返しますよ」
王我はまだ目が回っているラウラを千冬に引き渡した。
「ああ…ありがとう…」
千冬は何も聞かずに教室へ戻っていった。
その時、
「ねえ、今1組の声が聞こえたんだけどデュノア君って本当は女子だったんだって」
廊下側の女子がひそひそと話す。
どうやらシャルは女子であることを明かしたようだ。
「え?デュノア君って女?」
「おかしいって思った!美少年じゃなくて美少女だったわけね!」
「ちょっと待て!昨日たしか男子が大浴場使ったわよね!」
それを聞いた鈴音が猛スピードで1組に突撃していった。
「一夏ぁっ!」
「ちょっと待て!俺はむじぎゃあああ!」
一夏の断末魔が2組まで響いた朝だった。
「それで?兄さんは彼女と入ったんですか?…お風呂」
愛莉が王我にジト目を向ける。
「どうだかな」
王我がすっとぼけると、
「…スケベ」
愛莉が毒を吐いたのだった。