ラウラのキスとシャルは女子だった騒動の翌日、トーナメントで延期となっていた1回戦の試合の日がやってきた。
第2試合から始まり、最終試合の王我·ノクトペアVS直葉·千鶴ペアの試合は午後の予定となっている。
今は午前中でアリーナでは各々が試合を行っている。
王我は観戦せず、ラウラと中庭で雑談していた。
「セシリア達には許してもらえたようだな」
「うむ。ちゃんと頭を下げて許してもらえた」
昨日、ラウラはキスでダウンして復活した後、改めてセシリアと一夏に謝罪した。
セシリアは特に気にしていないと答え、一夏には日本式で土下座をしたら慌て始めた。
「あ~織斑君が女子に土下座させてる~」「最低~」と女社会の圧力に屈して(ラウラにそのような意図はなかったが)一夏は謝罪を受け取って必死で頭を上げさせた。
「クラスには慣れたか?」
お父さんのようなことを言う王我。
「うむ。みんな優しくしてくれる。これも王我のおかげだ」
自分のことのように胸を張るラウラ。
素直になったラウラに最初怖がっていた1組のクラスメイトもだんだんと温かく迎え入れ、中にはお菓子で餌付けする女子もいる。
「さて、昼飯食べて試合に行ってくるか」
王我は中庭のベンチから立ち上がって食堂に向かう。
「王我」
「ん?」
ラウラに呼び止められて振り返る。
「私はあまり口が上手くないので何と声をかけたらいいのか分からない。だからこれだけ言わせてくれ…頑張れ」
「…ああ」
ラウラの精一杯のエールを受け取った王我は背中をラウラに向けたまま手を振ってその場を去った。
◇◇◇
そして午後、ついに来た千鶴のリベンジマッチ。
王我の機体はストライクフリーダム、ノクトの機体はインフィニットジャスティス。
先にステージでまさに王者の風格を纏って待っている。
ピット搬入口には直葉と千鶴。
「千鶴、行こう」
「はい」
直葉と千鶴は同時に発進してステージに入場した。
直葉の機体はもちろんデスティニー、そして千鶴の機体は白いボディに青いアーマーを追加し、右手にビームライフル、左手に実体シールド、右肩にレールガン、左肩にミサイルポッドが装備されているガンダムシリーズ。
GAT-X102 デュエル アサルトシュラウド。
シルバーキングスが開発した新機体であり、千鶴は適性テストを受けて見事合格しこの機体をゲットした。
パワーや機動性などのバランスが取れたオールラウンドな機体で千鶴のような基本に忠実なパイロットには合っているだろう。
ステージで4機のガンダムが対面する。
貴重なデータが取れると観戦している研究者達も前のめりになっている。
「今度こそ…勝ちます!」
気合いの入った千鶴の言葉。
試合開始のブザーが鳴り響く。
先に攻撃したのは千鶴。
ビームライフルで射撃すると、王我とノクトは横に避けた。
デュエルはシルバーキングスが開発した機体。
もちろん王我とノクトもスペックは知っている。
あとは千鶴の腕次第だ。
「まずは分断するか。ノクト」
「Yes」
王我の意図をノクトは即座に理解し、直葉へ向かう。
直葉と千鶴の間にノクトが入り、千鶴が牽制しようとするが先に王我のビームライフルで下がらざるを得なくなり分断される。
「くっ…」
デュエルのスペックではどう足掻いても勝てない。
千鶴に出来ることは直葉と合流するまで耐えることだけだ。
「ノクトさん…」
「あなたの相手は私です」
『アロンダイト』を両手で構える直葉とビームサーベルを連結させるノクト。
お互いの刃がぶつかっては離れ火花を散らす。
「(どんどん離される…何とかしないと)」
千鶴との距離が離されていることに焦る直葉。
一方、王我と千鶴も互いにビームライフルを撃ち合って一定の距離を保ち続けていた。
「ならこれはどうだ?」
王我は『スーパードラグーン』を射出して千鶴を包囲する。
「このくらい!」
千鶴は『スーパードラグーン』のビームを躱し、ビームライフルで1基、肩のレールガンでもう1基、さらにビームサーベルでもう1基破壊した。
その動きに観客席から「おぉ!」と感嘆の声が聞こえる。
「ほう…ちゃんと応用まで出来ているようだな」
「あの時の私とは違います!」
千鶴が『スーパードラグーン』3基落としたことで、王我に残っているのは5基となる。
しかし、王我はまだまだ余裕の態度。
「いきます!」
千鶴がビームサーベルを片手に突撃して上から振り下ろすと、王我は2本のビームサーベルを交差して受け止めると腹部の『MGX-2235 カリドゥス複相ビーム砲』を発射、直前で気づいた千鶴は左手の実体シールドで受けた。
その隙に王我は『スーパードラグーン』を射出して千鶴に攻撃。
千鶴は機体をずらして急所を回避…したが左手のアームを撃ち抜かれ爆発。
後方へ退避しつつ左肩のミサイルポッドからミサイルを発射、王我はそれをビームシールドで防御した。
デュエルは左腕を破損、千鶴は右腕と両肩の武装のみで戦闘を続行しなければならなくなった。
王我への注意はそのままに直葉の方へ視線をずらすと彼女も少し押されていた。
お互いにビームライフルで撃ち合っていたが埒が明かないので、直葉がビームブーメランを投擲すると、ノクトはそれを脚のビームブレイドで弾く。
直葉が『アロンダイト』を中段構えで握ると背部のウイングの光の翼が蝶のように広がる。
ノクトも連結させたビームサーベルを構える。
互いに前に出て同時に刃を振るが、弾き合い交差する。
直葉が振り返ると目の前に射出されたインフィニットジャスティスの『ファトゥム-01』が迫っており避けることができず体当たりされる。
「ぐっ!」
押し込まれる直葉に『ファトゥム-01』の装備されているビーム砲の緑色の光が発射されそうなのが見えたので蹴り飛ばして『ファトゥム-01』をどける。
『ファトゥム-01』はノクトの元へ戻りドッキングする。
ノクトがビームライフルを撃つと、直葉は上に飛んで回避しビーム砲を構えて発射、ノクトは回避を選び、その隙に直葉は千鶴と合流する。
「ごめん。遅くなった」
「いえ、こちらこそすみません。やはり1人では無理がありました」
謝る直葉に千鶴も力不足を反省する。
王我とノクトも並んで滞空している。
観客もあまりの激闘に言葉を失っていたが、やがて歓声を上げ始める。
「作戦通り私が前に出ます。千鶴は援護を」
「分かりました!」
直葉が前に出て、千鶴が後方で援護に回る。
王我が『スーパードラグーン』を射出して包囲攻撃を仕掛けると、直葉は光の翼を展開してビームを恐るべき反応速度で全て躱したが、王我は躱した先でレール砲で追撃、直葉はビームシールドで受けるが後方へ吹っ飛ばされる。
砲撃直後の王我を千鶴がビームライフルとレールガンとミサイルのフルバーストで狙うがノクトが割り込んでビームライフルと肩のビーム砲で迎撃。
そのノクトを直葉がビーム砲で砲撃、しかし王我も腹部のビームで砲撃、2つのビームが激突して爆発、4機は爆風が逃れるために距離を取る。
爆風が晴れると直葉と千鶴の視線の先では王我がビームライフル2丁と両腰のレール砲と腹部のビーム砲と『スーパードラグーン』5基でフルバーストした。
回避が間に合わず直撃を受けた2人はシールドエネルギーを全損し敗北が決まった。
《試合終了。勝者 天道王我&ノクト·リーフレットペア》
千鶴と直葉にとって残酷な宣告が鳴り響いた。
地上に降り立つ4機。
直葉と千鶴の顔は浮かない。
そんな2人…いや激闘を繰り広げた4人に対して観客から盛大な拍手が鳴り響いた。
「よく頑張った!」「惜しかったぞ!」「これからも頑張れ!」と敗者の2人に対するエールも聞こえる。
敗北としたものの彼女達の実力は前線でも充分戦えるレベルになっていた。
「千鶴…」
直葉が声をかける。
「直葉…今は何も…言わないで…」
千鶴はフルフェイスの下で涙を流していた。
その涙は誰にも見られることはなく。
◇◇◇
これで延期となっていたトーナメントの1回戦が全て終了し、同時に学年別トーナメントも幕を閉じた。
来賓も全員帰り、学園も元の生活に戻ろうとしていた。
しかし王我の場合、そうはならなかった。
まだ問題が残っているからだ。
ラウラの王我に対する呼び方ですがシンプルにしました。
千鶴は負けましたが大きな成長を遂げたと思っています。