翌朝、土曜日。
朝9時に王我は起床してシャワーを浴びて着替えてからアグネスの部屋を出た。
アグネスとルナマリアはベッドの上で幸せそうに抱き合いながら眠っていた。
寮を出た王我がまず向かったのは『シルバーキングス』の本社ビルだった。
「社長、おかえりなさい!」
「おはようございます社長!」
出勤していた社員達が王我に挨拶をする。
「ああ、おはよう」
王我は挨拶を返しながら社長室に向かった。
社長室に入ったその瞬間、
「死ねぇ!」
強烈なストレートが襲いかかってきた。
王我は左手で軽く受け止めた。
「チッ」
パンチを繰り出したのはビジネススーツを着た『シルバーキングス』副社長のミオリネだった。
舌打ちして拳を引いた。
今の一撃は以前の無茶振りの件の仕返しだろう。
左手薬指にはスレッタと同じ指輪がはめられている。
そう、彼女はスレッタと結婚している。
日本では同性結婚は認められていないので2人とも同性結婚が認められているアメリカで国籍を取得して結婚した。
「何しに来たのよ?」
社長に対する口の利き方とは思えないミオリネ。
もちろん、公的な場では控えるが。
「社長が仕事しに来たらいけないのか?」
「充分仕事してるでしょうが!あんたが休まないと社員も休まないのよ!帰れ!そして休め!」
王我の身体をズイッと押すミオリネ。
「まあまあ…副社長、いいじゃないですかぁ」
社長室のドア付近からだるそうな声が聞こえた。
振り向くとそこには銀髪に褐色肌で胸元を開けたスーツを着て、タイトスカートから覗くムチムチの太ももが特徴的な美女が立っていた。
彼女の名はセセリア·ドート。
『シルバーキングス』の経理部長で、見た目とは裏腹にかなり優秀だ。
「いいわけないでしょ。このワーカーホリックソ社長が休まないと社員も休まないの!分かる?」
自分の上司をクソ呼ばわりするミオリネ。
王我も慣れているので何も言わない。
「それじゃあ社長、私と一緒に仮眠室行きましょう」
「よし、行くか」
「行くな!もっと休めなくなるでしょうが発情期猿!」
社長の襟首を掴んで引き戻すミオリネ。
「なんなら副社長も混ざります~?」
「嫌よ。こいつと2人きりなんて死んだ方がマシ」
今の会話から分かる通り、セセリアもミオリネも王我の愛人である。
しかもミオリネは人妻。
セセリアは良い男相手に遊びたいくらいの気持ちだが、ミオリネは条件付き。
その条件とはスレッタも混ざった3P限定であること。
ミオリネは王我と2人きりが嫌なだけで、スレッタはただ単に男と2人きりだと恥ずかしいのでミオリネと一緒がいいという理由。
「とにかく帰れ!クソ社長!」
ミオリネは王我の背中を押して社長室から追い出した。
「…はぁ、行くか」
王我は観念して歩き始めた。
社長なのに会社から追い出されるとはおかしな話だ。
「まあ、あいつらなら大丈夫か」
ミオリネとセセリアは一見馬が合わなさそうに見えるが仕事中は見事な連携で会社を支えてくれるキーマンだ。
「本当にいいのぉ?」
王我がいなくなった社長室でセセリアがミオリネに問いかける。
「いいに決まってるでしょ」
「強がっちゃって。本当は怖いんでしょ?社長にハマっていくのが」
「うるさい。それより今日は午後から調査が入っているんだから仕事するわよ」
ミオリネの言う調査。
実は例の『デストロイ』が『シルバーキングス』のガンダムシリーズに似ているということで疑いがかけられているのだ。
今日の午後から日本IS委員会、国際IS委員会、警察、検察の調査が入っていて、その調査結果を会見で発表することになっている。
王我も社長なので当然知っている。
部下に任せたのは信頼しているからである。
もちろん『シルバーキングス』は無実であり、何もやましいことはない。
実際、この後の調査で無事潔白を証明したのはまた別の話。
そもそも王我が愛莉を危険に晒すような真似をするわけがないのだ。
◇◇◇
午前10時。
『シルバーキングス』は言うまでもなく大企業である。
プライベートジェットが羽田空港に待機している1機だけということはありえない。
佐世保基地にも1機待機させてある。
王我達はそれに乗って東京まで戻っていった。
プライベートジェットなのに兵士達が敬礼して見送っていたのは何とも異様な光景だった。
その後、何事もなく羽田空港に到着。
1機はそのまま待機、もう1機は佐世保基地へ飛んでいった。
こうして王我達は1週間ぶりに東京へ戻ってきた。
「IS学園が久しぶりに感じるな…」
「そうだな。濃密な1週間だった」
シャルとラウラが感想を漏らす。
この1週間、まずフランスへ行き、次の日からドイツでザビ家と面会、パーティーで楽しんでいたらテロリストの襲撃に遭いベルリンで戦闘、強敵と出会い己の未熟さを痛感し、昨日は日本を守るエースパイロット達に出会った。
こんな怒涛の1週間は普通信じてもらえないだろう。
羽田空港で自動運転タクシー2台呼んで2組に分かれて乗り、IS学園に向かう。
何事もなく到着すると、正門の前で誰かが立っていた。
王我達がタクシーから降りるとその人物はこちらに走ってきた。
その人物とは1年1組の副担任の真耶だった。
スイカのように大きい胸をブルンブルン揺らして走っている。
「皆ざん~!おがえりなざい~!」
真耶は泣きながら王我の胸に飛び込んだ。
「私…わだじ…ニュース見て…毎日心配で…心配で…うわぁぁんん!!」
真耶は王我の胸で泣きじゃくっていた。
「先生、落ち着いてください」
「…ふぇ?…っ!///」
王我に声をかけられて真耶はようやく自分が王我に胸を押しつけて抱きついていることに気づいた。
「す、すみません!私ったら生徒になんて破廉恥ことを…あ、でも天道君の胸板逞しかった…///」
バッと王我の胸から離れて、自分の世界に入ってしまう真耶。
女性陣の視線が王我に突き刺さるが、王我は全く気にしていない。
「先生」
「お、王我君、ダメです…私とあなたは教師と生徒なんですよ…あ、そんなとこ触ったら…///」
妄想が止まらない真耶。
呼び方もいつの間にか下の名前になっている。
「先生」
「王我君…あなたが望むなら私は………あれ?」
妄想の世界から帰還した真耶。
「~~っ!///…あ、あの!今のは忘れてくださいんっ!」
真っ赤な顔をして真耶が逃げるよう走り出すがつまずいて転んでしまう。
「わ、忘れてくださ~い!」
すぐに立ち上がって学園の方へ戻っていった真耶だった。
「何がしたかったんだあの人は」
真耶の1人コントを見終えた王我が呟く。
「山田先生は生徒思いなので迎えに来てくれたんだと思いますよ。…ところで兄さん、いつの間に先生に手を出したんですか?」
愛莉の顔は笑っているが目が笑っていなかった。
「まだ出していない」
「まだ?」
「あちら次第だな」
王我が歩き出して正門を抜ける。
「先程は抱きつかれて随分デレデレしていたご様子で?」
言葉に棘がある愛莉。
王我の隣を歩いてジト目を向けている。
「さぞ気持ちよかったのでしょうね。山田先生の胸」
「…愛莉ちゃん、妬きもち?」
「嫉妬だな」
「嫉妬だね」
「Yes、嫉妬ですね」
「そこうるさい」
後ろを歩いてヒソヒソ話すシャル達に釘を刺す愛莉。
そこで王我が方向を変えると、
「兄さん、どこへ行くつもりですか?」
「ラボだが」
「ダメです。ミオリネさんから言われているんです。兄さんを休ませるように」
「だからラボで休もうと…」
「嘘です。兄さんがラボに行ったら休むわけないじゃないですか。今日と明日、兄さんは働くの禁止!女の子とイチャつくのも禁止!それからスマホも禁止!はい、スマホ出して!」
「…分かったよ」
王我がスマホを取り出すと、それを奪い取ってポケットにしまう。
「だが、スマホないと会社から連絡来た時に困るんだが」
「問題ありません。ミオリネさんが全て管理してますから」
どうやら銀髪美少女コンビの対策は完璧なようだ。
「こうでもしないと兄さんは休まないので我慢してください」
「愛莉、まるで束縛系の妻みたいです」
「誰が妻ですか!?」
「そっちを取りますか」
ノクトが呆れた反応をする。
「腹減ったな。飯行くか」
「欲望のままですか」
「食堂行くか」
現在の時刻は12時を回っている。
朝から何も食べていない王我は食堂に向かった。
◇◇◇
寮の中に入ると、休日にも関わらず生徒が多く残っていた。
「王我様!」
「王我様、おかえりなさい!」
「よくぞご無事で!」
「王我様のご活躍、お聞きしました!」
「さすが王我様です!」
食堂に入るなり、女子達(主に2組)が出迎えた。
食券機までの道がまるでパレードのように女子達が並んでいる。
王我は適当に相手をしながら食券を買った。
「師匠!」
「王我さん」
料理が乗ったトレーを持って席につくなりフーカとリンネが声をかけてきた。
「わしも師匠と共に戦いたかったのじゃ!」
「うんうん」
フーカの言葉にリンネが頷く。
「あれはアクシデントだ。それにお前らはまだまだ半人前だ」
「うぐっ…」
「だけど2人なら一人前です」
言葉に詰まるフーカと反論するリンネ。
「修行して出直してこい」
「押忍!」
「…はい」
勢いよく返事するフーカと渋々引き下がるリンネだった。
「おかえり、王我」
「聞いたで~大活躍やったって?」
フェイトとはやてが挨拶に来た。
「お前ら…飯ぐらい食わせろ」
王我の前には料理があり、このままでは冷めてしまいそうだ。
「ほんならうちが食わせたるわ。はい、あ~ん」
はやてが王我の隣に座るとスプーンを持ってご飯を王我の口に入れようとする。
「あ~」
王我が食べようとすると、
「兄さん、イチャイチャは禁止と言ったはずです。自分で食べてください」
反対側に座っていた愛莉がはやてからスプーンを奪って王我に持たせる。
「…分かったよ」
王我はおとなしく昼食を食べ進める。
「あ、それともう1つ聞いたで。ヴィータ達に会ったんやって?元気してた?」
「ああ、元気だった。元気過ぎるくらいにな」
王我は昨夜の八神家とのエッチを思い出す。
それを察したはやては王我の耳元に口を近づけると、
「…次はうちも混ぜてな」
小声で囁いた。
愛莉が訝しげな目を向けるが、はやてはニコニコ笑いながら手を振って誤魔化した。
「お、おおお王我さん!お、おかえりなさいませ!」
「おい、緊張し過ぎてメイドみたいになってんぞ」
「アハハ…」
緊張マックスのスレッタが挨拶しに来て、チュチュがツッコミを入れて、ニカが苦笑いしている。
「さっきから何なんだお前らは?」
王我が呆れた返事をする。
王我の周りのテーブル席はいつの間にか大所帯となっていた。
「ああ…スレッタ、ミオリネに会ったぞ」
「ほ、本当ですか?」
「相変わらずだったよ」
「そうですか」
「何だ?反応薄いな」
「その…毎日夜に電話してるので…」
スレッタは両手の人差し指をツンツンとつついて返す。
夫婦関係は良好のようだ。
「それと例の件も完成しそうだ」
「本当ですか!?」
急に身を乗り出したスレッタ。
しかし、すぐに周りを見渡して、
「ご、ごめんなさい!つい興奮してしまって…」
大声を上げたり縮こまったり忙しいスレッタ。
「近いうちにな」
「は、はい…」
人前で大声を上げてしまったことに恥ずかしさを感じながらもうつむいて返事したスレッタ。
「おう。久しぶりだな」
そこへ一夏が入ってきた。
「何の用だ?モブムラ」
「織斑だ!」
もはや定番のやり取り。
「ちょっと一夏、そこ邪魔」
一夏の背後にトレーを持った鈴音が立っていた。
「あ、わりぃ」
一夏はどいて道を開けた。
鈴音は王我のテーブル席の隣、ちょうど背中合わせになる席に座った。
すると、食事を終えたシャルとラウラが席を立って鈴音に近づいた。
「鈴、セシリアがどこにいるか知らない?」
「セシリア?…あいつなら第二アリーナで自主練してたわよ。何かここ最近機嫌悪いのよね」
「そう…ありがとう」
「別に」
シャルのお礼に鈴音は短く返して食事を始めた。
「王我、僕達セシリアに用があるから行くね」
「別にいちいち俺に許可を取る必要はないだろ」
「そうだね…行ってくる」
「またな…王我」
シャルとラウラはトレーを下げに行って、セシリアのところへ向かった。
「で、お前はいつまでそこでアホヅラを晒しているんだ?アホムラ」
「織斑だ!ただ、友達に挨拶しに来ただけだろ」
「友達?お前はあれか?知り合えば人類全員友達になれると思っているのか?」
「違うのか?」
「(ダメだこいつ、早くなんとか…しなくていいや)…お前の幼馴染みは地球一のバカだな…篠ノ之」
「そうだな…そして、どけ一夏」
いつの間にか一夏の背後に立っていた箒に声をかける王我。
その箒は通路に立っている一夏に冷たい目を向けた。
「あ、わりぃ」
学習しない一夏。
箒は王我のテーブル席より2つ隣、鈴音の隣のテーブル席に座った。
一夏の幼馴染み2人はそれぞれテーブル席を1人で占領するという暴挙を働いている。
「フーカ」
もはや目の前の男に関心など微塵もない王我は対面の席に座っているフーカに声をかけた。
「なんじゃ?」
「俺にも師匠がいるんだが…誰か分かるか?」
王我はまるで世間話のように話し始める。
「師匠の師匠…つまり大師匠!誰なのじゃ!?」
フーカが興奮したテンションで問い返す。
「マスター·アジア」
「ブー!」
王我の答えに隣のテーブル席の鈴音が吹き出した。
「誰だそいつ?」
一夏が首を傾げる。
「あんた知らないの!?マスター·アジアといえば流派·東方不敗の創始者にして世界でも有名な武道の達人よ!大会に出たのは一度だけ。それでも彼の実力は武道を極める者の中でも最強と言われているわ!」
鈴音が立ち上がって力説する。
「そ、そんなにすごい奴なのか…」
「こんなもん常識よ!常識!」
このバカと言わんばかりに一夏を指差す鈴音。
「それにしてもあんたがマスター·アジアの直弟子だなんてね…てっきり弟子の弟子かと思っていたわ」
「師匠の弟子は俺1人だけだ。他にはいない」
「気になるのじゃ!師匠と大師匠の話!」
フーカの目がキラキラしている。
「あたしも聞きたい」
鈴音も自国の達人の話は気になるようだ。
「…俺と師匠が出会ったのは2年前くらいだ。己を鍛えるために中国の山奥で武者修行していたら偶然出会った。弟子入りを志願をしたのはその時だ。もちろん最初は断られた。だから手合わせから始めて回数を重ねる内に弟子入りを認められた」
「さすが師匠!それでどんな修行を!」
「崖から突き落とされたり、滝の上から突き落とされたり、滝を手刀で割らされたり、猛獣と戦わされたり、谷間…あ、本当の谷の間の方で師匠と戦ったりもした」
王我の話に全員言葉を失った。
王我の強さの理由が一部でも分かったような気がした。
「いやいや…さすがにあり得ないだろ…そんな話…」
一夏の失言にその場の王我信者からギロッと睨まれた。
「うっ…」
一夏はそれ以上、言葉を発せられなかった。
「どれくらい修行したの?」
「1ヶ月」
鈴音の質問に王我が答えた。
「1ヶ月…」
鈴音が目を閉じて、王我が受けた修行をイメージしてみる。
1ヶ月であの過酷さであの密度…
「(うん…死ぬわ)」
鈴音はそれ以上、考えることをやめた。
「ありがとう。もういいわ」
鈴音は席に戻って食事を再開した。
「大師匠はどんな方だったのじゃ?」
「ISなし相手なら最強…いやあの人ならISにも勝てるな。マスターガンダムも師匠に渡そうと思っていたんだ」
「そうなのですか!?」
驚愕の真実に驚くフーカ。
「残念ながらIS適性がなかったんで俺が使ってるってわけだ」
そう話す王我の顔はどこか懐かしそうだ。
「いつか会ってみたいのじゃ」
「フーカなら気に入られそうだな」
「本当か!?」
「それは会ってみたいと分からん」
「うぅ…」
テーブルに突っ伏すフーカに王我は「フフッ」と笑った。
◇◇◇
第二アリーナ。
セシリアはステージの中央でブルーティアーズを装着して立っていた。
周囲には訓練用のドローンが何十体も倒れている。
「セシリア、って何これ!?」
「凄まじい数だな」
アリーナに入ったシャルとラウラは倒れている訓練用ドローンの数に驚く。
「あら…シャルさんにラウラさん、おかえりなさい」
「ただいま…」
「このドローン…いったい何体あるんだ?」
「そうですわね…ざっと50体ほどですわ」
セシリアは笑顔でそう返した。
「50…」
シャルの顔がひきつる。
「いったいどんな訓練をしていたんだ?」
「それはもちろん狙撃の訓練ですわ。50体同時に相手をして1体ずつ撃ち抜いていくのですわ」
「50体同時!?」
シャルが再び驚く。
よく見ると訓練用ドローンはどれもど真ん中を撃ち抜かれている。
「なんでそんな…」
「だって…」
そこでセシリアが肩を震わせる。
「「だって?」」
シャルとラウラが同時に首を傾げる。
「わたくしだけ仲間外れなんて酷いですわ!わたくしも王我さんと戦ってお役に立ちたかったのに!」
セシリアは何とも子供っぽい理由で拗ねていた。
「「(機嫌が悪かったのはこれか)」」
鈴音の言っていたことの意味を理解した2人。
「シャルさんとラウラさんはいいですわよね!王我さんの傍で戦えて!」
「…そんなことないよ」
「私達も今回の戦いで己の未熟さを痛感したばかりだ」
「?」
シャルとラウラの答えにセシリアが首を傾げる
それから2人はベルリンでの戦いをセシリア(IS解除済み)に話した。
「そのようなことが…」
2人の話を聞き終えたセシリアがそう言葉を漏らした。
「僕は弱い…」
「私も軍人としてそれなりに戦えると思っていた。しかし、甘かった。直葉達がいなければ今、私はここにいない」
2人が悔しそうな表情を浮かべる。
「…ならば強くなるしかありませんわ」
セシリアは毅然とした態度で言った。
「うん」
「もう足手まといにはなりたくない」
シャルとラウラもそう言って頷く。
「それでここに来たのは提案があってなんだけど…」
「提案?」
シャルの言葉にセシリアが問い返す。
「うん。これからの戦いに備えていくために僕達で同盟を組んでいこうかなって」
「国とは関係ない小さな…私達だけの同盟」
「…いいですわね。欧州三国同盟」
シャルとラウラの提案にセシリアがニヤッと笑った。
「あ、いいねその名前」
「それでいこう」
「では…欧州三国同盟、頑張っていきましょう」
セシリアが手を出すと、2人も手を出して重ねて円陣を組む。
「今度は負けない」
「私達が勝つ」
「勝利を」
「「勝利を!」」
3人が手を上げて誓いを交わした。
こうして欧州3人娘の小さな同盟が出来上がった。
◇◇◇
ここは日本のとあるビル。
その一室である会議が開かれていた。
国際IS委員会。
世界各国のIS委員会の代表が集まる委員会。
アメリカ、ブラジル、カナダ、ロシア、、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ギリシャ、オーストラリア、エジプト、そして韓国。
その委員会のメンバーにはもちろん日本IS委員会の代表も入っている。
彼の名は徳川。
年齢は60を超えた男で、でっぷりとした肥満体型ながらも駆け引きの上手さと名前から『日本の古狸』と陰で言われている。
今日の議題は天道王我についてだった。
「ドイツを襲ったあの機体『デストロイ』、やはり天道王我の仕業なのではないか?」
眼鏡をかけたインテリ系の見た目をしている韓国の代表が王我を非難する。
ちなみに『デストロイ』の機体名はドイツが機体を調べて委員会に報告済である。
「その結果は先程聞いたでしょう。彼はシロです」
「隠蔽などいくらでも出来る!」
会議を仕切っているのは韓国の代表。
「証拠もなしに糾弾するのは無理があるのでは?」
「しかし、あれはガンダムだ!」
「似ているからって犯人扱いはないでしょう。誰だって顔が似ているからお前が犯人だって言われて納得も出来ませんよ」
韓国の代表はどうしても王我を犯人にしたいようでそれらの主張は他国の代表に正論で論破されてしまう。
「くっ…そもそも彼を日本だけで独占していることが問題なのだ!篠ノ之博士以外にISコアを作れる彼は世界で共有すべきだ!」
韓国の代表が取った策は論点のすり替えだった。
しかし、さすがにこれには徳川も黙っていなかった。
「なるほど…つまり、あなたはこう言いたいのですか?天道王我は委員会で管理すべきだと?」
「その通り!ISコアを作れる彼を日本は独占していて戦力を増長しすぎている!これは明らかなアラスカ条約違反だ!」
「その条約に日本は調印していない。国際IS委員会はそれとは別だし、IS学園も特例として建てられたものだ。それはよくご存知でしょう?」
徳川がそう言い返して眉を動かすと、
「ぐっ…だが…」
「そもそも日本には憲法で身体的·精神的·経済的自由が保障される憲法が定められています。彼が誰とどのようなビジネスをしようが秩序に反しない限りそれは自由です。それに聞いていますよ。韓国は彼と手を切ったと」
「うっ…」
韓国の代表が言葉に詰まる。
ロシアの代表も苦い顔をしている。
徳川は論点のすり替えに対して同じように返した。
「彼は日本国民です。国は彼を守る義務がある。あなたは私にこう言いますか?自国の国民である彼を差し出せと?」
「ぐっ…」
徳川の反論に韓国は言い負けた。
他国の代表は内心でこう思った。
「(古狸め…)」と。
「…皆さんはどう思いますか?」
韓国の代表が取った策は他人任せだった。
「リーさんはどう思いますか?」
韓国の代表が意見を聞いたのは中国の代表のリー、長身でチャイナ服、クルッとした巻かれた顎髭がダンディーさを表している。
「…」
リーは考えている。
「天道王我は委員会で管理すべきだと思いますでしょう?」
韓国の代表は日中関係を利用してこの場を掌握しようと考えた。
中国はアメリカやロシアと並ぶ大国であり、彼の意見で他国の反応が変化することもある。
その彼はかつて一度会った王留美との会話を思い出していた。
◇◇◇
「リーさん」
「何でしょう?」
中国のあるパーティーでリーは王留美に声をかけられた。
「我々、中国は日本との付き合い方について今一度考えるべきですわ」
「それはもちろん…」
「わたくしが言っているのは日本の天道王我という男のことです」
「天道王我…ISコアを作った世界で2人目の…」
「ええ。彼とは何度もお会いしています。断言しますわ。彼の指す一手で国が滅ぶこともあり得ます」
「それはさすがに…っ!」
否定しようとしたリーは王留美の目を見て竦んだ。
「わたくしの言葉…信じられませんか?」
◇◇◇
現在。
リーは考える。
次の発言で国の未来が左右されるかもしれないのだ。
「(天道王我…彼はたしか天子様のご友人と聞いている。つまり彼に下手な手を打てばクビ…だけならまだいい。国外追放となれば妻と子供は…それに何より…)」
リーはそこでようやく決断した。
「…今、我々は日本にISコアを作れる天道王我という存在がいるからその力を欲している。だが、もし自国に彼がいたとしたら自国の民である彼を差し出すなどと言えるものだろうか」
リーは日本の立場になって考えを口にした。
その意見に他国の代表は黙り込む。
中には頷く者もいた。
「私は徳川さんの主張に賛成する」
「イギリスも賛成します」
「ドイツも」
「フランスも」
「イタリアも」
リーの意見に続くように次々と賛同の意見が出てくる。
「…アメリカは静観する。本国からもそのように指示が出ている」
「ロシアもだ」
「なっ…ななっ…」
韓国にとってはまさかの展開でパニックに陥っていた。
「…1つアドバイスをしてあげましょう」
徳川が韓国に向けて言った。
「彼のような天才が欲しいならご自分の国で科学者を育ててればよいのでは?そうすればISコアも作れますよ」
徳川は口にはしないがこう言っている。
悔しいなら自分達で作ってみろと。
「~~っ!」
韓国の代表は怒りで顔を真っ赤にした。
その後、会議はそのまま終了した。
徳川以外は実は全員ホログラムで、順に消えていく。
他に誰もいなくなった会議室で徳川は背もたれにもたれかかる。
「はぁ…全く困った人達だ」
徳川はこの場にいない王我と束に向けて呟いた。
「まだまだ定年退職は出来なさそうだ」
徳川は席から立ち上がって仕事に戻ることにしたのだった。
◇◇◇
おまけ。
佐世保基地、出発前。
パァン!パァン!
佐世保基地の射撃訓練場で銃声が響く。
訓練していたのはシグナム、ヴィータ、アグネス、ルナマリア。
昨夜、あれだけ激しく王我とシていたのにもう訓練している。
驚異の回復力だ。
そこへノクトが見学に来ていた。
「おっ…ノクト、お前もやるか?」
射撃用ゴーグルを外したヴィータが声をかける。
「よろしいのですか?」
「構わねぇよ」
「では失礼します」
ノクトは射撃場に入ってハンドガンと射撃用ゴーグルとヘッドホンを借りる。
他のみんなも手を止めてノクトを見る。
ノクトが構えて引き金を引く。
パァン!パァン!パァン!パァン!パァン!
銃声が5回響く。
的に空いた穴は1つ。
しかし、それは1発当たって4発外したわけではない。
1発目に空けた穴にあとの4発をコンマ数㎜のズレもなく通したのだ。
「ピンホールショット…精密機械かよ」
ノクトの神業にヴィータは素直に驚嘆した。
アラスカ条約関連は原作と変えました。
セセリア·ドート
原作:機動戦士ガンダム 水星の魔女
年齢:17
国籍:日本
役職:『シルバーキングス』経理部長