ピットゲート搬入口で王我は既にISを装着していた。
機体は先程とは別の機体。
頭、腕、脚は白、胴体は黒、二対八枚の青い翼。
ZGMF-X20A ストライクフリーダム。
「天道王我、フリーダム出る!」
王我はスラスターを噴射してステージに入場した。
その関節部は金色に輝いている。
ストライクフリーダムを見た愛莉は、
「大人げない」
そう言った。
「待ってましたわ!」
セシリアの機体は鮮やかな青で4枚の機械仕掛けの羽が背中で浮いていて、王国騎士のような気高さを感じさせる。
手には2メートルを超える六七口径特殊レーザーライフル『スターライトmkⅢ』が握られている。
ブルーティアーズ。
それがセシリア·オルコットの専用機だった。
王我の機体を見たセシリアは、
「さっきと機体が違うではありませんの!」
憤慨していた。
セシリアは己の実力を疑っていない。
故に情報収集を怠っていたため王我が複数専用機を所有していることを知らない。
「同じ機体でやると誰が言った?」
「小賢しい真似を…」
セシリアのこめかみがピクピクと震える。
不機嫌の理由はそれだけではなかった。
気高さを感じさせるブルーティアーズに対し、ストライクフリーダムには神々しさを感じさせるものがあった。
その証拠に観戦している生徒の中にはうっとりした目をしている。
「(まあ、いいでしょう。わたくしが勝利すれば問題ないですわ)」
セシリアは気を取り直して目の前の相手を見据えた。
「最後のチャンスをあげますわ」
「ほう」
「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですからボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝るというのなら許してあげないこともなくってよ」
セシリアが『スターライトmkⅢ』を構える。
「残念だが俺が跪くのは人生で一度きりだ。そして、それはもう使いきっている」
「そう?残念ですわ。それなら…」
試合開始のブザーが鳴り響く。
「お別れですわね!」
試合開始と共にレーザーが放たれる。
王我は左腕のビームシールドで防御し、高エネルギービームライフルで撃ち返す。
セシリアも避けて撃ち返す。
お互いに距離を取りながら射撃戦を繰り返す。
「やりますわね。ならこれならどうかしら?『ブルー·ティアーズ』!」
セシリアが自分の機体と同じ名前の機械仕掛けの羽を4基を射出する。
王我に向けて飛んでいきレーザーを撃っていく。
王我はそれを全て躱していく。
「精々逃げ回りなさい。逃げ切れるものならね!」
四方八方から王我を追い詰めていく『ブルー·ティアーズ』。
それらを王我は全て躱し切っていた。
「(なるほど…これでエリートとは笑わせる)」
王我は気づいていた。
『ブルー·ティアーズ』が全て直撃狙いだったこと、使用中は集中するためにセシリア本人が動けないことを。
「(あいつが弱いのかイギリス全体のレベルが落ちているのか…後者なら問題だな)」
戦闘中であるにも関わらず考え事をしている王我。
回避に徹している王我を見ている一夏は、
「何だよあいつ、逃げてばっかじゃねぇか」
「確かに、男ならこうガッといくべきだ!」
「まだまだだな」
一夏と箒が非難していると、関係者席にいるはずの千冬が声をかけてきた。
「千冬姉がっ!」
「織斑先生だ。馬鹿者」
千冬が一夏の頭をバインダーで叩いた。
「先程のはどういう意味ですか?」
箒が千冬に質問した。
「奴はただ避けている訳じゃない。様子見と情報収集しているんだ」
「様子見と?」
「情報収集?」
一夏と箒が首を傾げる。
「全くお前らは…奴はオルコットの実力を測りながら武装、攻撃パターン、癖、弱点を洗い出している。そろそろ終わる頃だろう」
千冬の言葉通り王我は口を開いた。
「ここまでだな」
「あら、敗北を認めますの?」
「いや、もう終わる」
「何ですって?」
眉を動かすセシリアをよそに、王我は急上昇した。
「終わるのはあなたですわ!」
セシリアの言葉と共に『ブルー·ティアーズ』が王我の左右から2基ずつ挟み込む。
王我はビームライフルを2丁持って2発ずつ撃って『ブルー·ティアーズ』4機を撃ち落とした。
「なっ!」
さっきまで優勢だったセシリアが一瞬で形勢逆転したことに驚く。
「まだですわ!」
『ブルー·ティアーズ』は全部で6基あり、4基はレーザーで2基はミサイルが搭載されている。
「手本を見せてやる」
ストライクフリーダムの翼から8基のビット『スーパードラグーン』が射出される。
セシリアからすればまるで上位互換のように。
2基はビット同士の撃ち合いになり、『ブルー·ティアーズ』が落とされた。
あとの6基がセシリアに迫る。
自分のやってきたことがそのまま返ってきたようにビームが放たれて何とか回避していく。
しかし、それは陽動だった。
王我は2丁のビームライフルを連結させてより強力なビームを撃った。
『スーパードラグーン』によって誘導されていたセシリアはビームの網によって包囲され逃げ場がなく直撃を受けてしまった。
バリアーは攻撃を防ぐことができるシールドを上回る攻撃を受けると貫通し装甲にダメージを受けてしまう。
操縦者が死なないように『絶対防御』という機能が備わっているがこれはシールドエネルギーをかなり消費する。
ブルーティアーズのシールドエネルギーが削られ、セシリアは後退しながら『スターライトmkⅢ』でレーザーを2発撃つ。
王我はそれをビームサーベルで弾くという高等技術を魅せた。
「こんな…なぜわたくしが…こんな…」
『ブルー·ティアーズ』6基を落とされ、射撃も通用しない。
自分が追い詰められていることに脳の処理が追い付かないセシリア。
そんな彼女にとどめを刺そうと王我がビームサーベルを手に接近してくる。
「『インターセプター』!」
セシリアがショートブレード『インターセプター』を呼び出して迎撃しようとする。
『インターセプター』とビームサーベルがぶつかり合った瞬間に王我は『インターセプター』をもう1本のビームサーベルで腕の装甲ごと切断した。
「っ!」
セシリアがせめて一矢報いようと『スターライトmkⅢ』を構えるがその前に王我が2本のビームサーベルを交差して斬りブルーティアーズのシールドエネルギーを0にした。
《試合終了。勝者 天道王我》
試合終了のブザーが鳴り響いてもセシリアはまだ現実を受け止められなかった。
地面に着地して呆然とするセシリアを見て、2組の女子達は歓声を上げた。
彼女達は1組の女子達に織斑千冬が担任についていることでマウントを取られていたのである。
王我が顎に手を当てて考えた後、人差し指を天に掲げてこう言い放った。
「キングはただ1人!この俺だ!」
その言葉に2組の女子達がさらに盛り上がった。
言いたいことを言った王我は地面に着地してセシリアに近づいた。
「敗因は分かっているな?」
「っ…ええ…」
己の未熟さを理解できないほどセシリアは愚かではなかった。
「ならばいい」
王我はそう告げた。
セシリアはボロボロのブルーティアーズのまま立ち上がった。
「数々の失言を謝罪致しますわ。改めてイギリス代表…いえ1年1組のセシリア·オルコットですわ」
「天道王我だ」
王我はセシリアの握手に応じた。
「よろしくお願いします。てんど…う…え…あ…」
「頭は冷えたようだな。イギリスのナイトメアシリーズを設計した『シルバーキングス』の社長、天道王我だ」
それを聞いたセシリアの顔がブルーティアーズのように真っ青になっていく。
「いやいや、さすが代表候補生。国際問題も関係なしとばかりに喧嘩売るその姿勢、実に見事だ」
「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!!!」
セシリアの謝罪の言葉がアリーナ中に木霊したのだった。
ストライクフリーダムの戦闘シーンはキラを想像してもらうと分かりやすいと思います。