セシリアの特大謝罪が終わりアリーナの廊下を王我が歩いていると前から愛莉、ノクト、フェイト、はやてが歩いてきた。
「お疲れ様です、兄さん。どうですか?ハイスペックの機体で相手をボコボコにした感想は?」
開口一番、毒舌を吐く愛莉。
それに対して王我は顎に手を当てて、
「オルコットか…あれは上手く育ててれば…」
「いいパイロットになりますか?」
「いい女になりそうだ」
「そっちですか!何なんですか!戦闘中にそんないやらしいこと考えてたんですか!発情期ですか!猿ですか!」
「絶好調だな、妹よ」
兄妹漫才を披露する2人。
「大体フリーダムとブルーティアーズではパワーが違うんですよ」
口には出さないがストライクフリーダムの動力源には小型の原子炉とデュートリオンビーム送電システムを載せた『ハイパーデュートリオンエンジン』を搭載している。
つまり核エネルギーで動いているのだ。
「Yes、鬼ですね」
「悪魔やな」
「そこまで言わなくても…」
ノクトとはやてが罵倒し、フェイトが苦笑いでフォローするのだった。
◇◇◇
サーッとシャワーの音が流れる。
それを浴びているセシリアは一矢纏わぬ均整の取れた肢体だった。
「天道王我…」
今日闘った相手のことを思い出す。
今まで出会ったことのない強い男。
彼女の父親は婿入りで母に頭が上がらなかった。
セシリアは幼い頃から情けない男とは結婚しないと思っていた。
母親は経営者で厳しい人、セシリアにとって憧れの人だった。
しかし、両親はもういない。
3年前に事故で他界した。
彼女には莫大な遺産が残った。
それを守るために猛勉強し、その過程でIS適性でA+判定をもらい、政府からの提案で第三世代装備ブルーティアーズの第一次運用試験者に選ばれた。
そのデータと経験値を得るために日本に来た。
そして、出会ってしまった。
天道王我と。
「天道王我…」
胸が熱くて無意識に唇に手を触れる。
彼女は自覚してしまった。
王我に対する想いに。
だがこの時、彼女は忘れていた。
自分が犯した過ちがどれだけの事態を招いてしまうのかということを
◇◇◇
翌日の朝。
「一夏さん」
セシリアは1年1組の教室で一夏に声をかけた。
また何か言われるのかと警戒する彼に対してセシリアは頭を下げた。
「先日はあなたや祖国を侮辱してすみませんでした」
「え?」
謝罪したセシリアを見て一夏は目を丸くする。
他のクラスメイトも何が起きたんだと動揺していた。
あれ程プライドが高かったセシリアが頭を下げている。
「いや…俺も言い過ぎたよ。ごめん」
一夏も彼女に対して謝罪する。
「ありがとうございます」
お互いに謝罪を受け入れて和解する。
「じゃあ決闘はなしってことには…」
「それはそれ、これはこれですわ。わたくしの誇りにかけてあなたと正々堂々闘いたいのです」
「…分かった。俺も全力で勝ちにいく」
改めて決闘の約束をする2人。
昨日のようなギスギスした気持ちではなく、晴れやかな気持ちで。
「席に座れ。それからオルコット、話がある。放課後、職員室に来い」
教室に入ってきた千冬がセシリアに話しかける。
「分かりました」
セシリアはそう答えた。
代表候補生が呼び出しをされていることにクラスメイトがざわつき始めるが「静かにしろ」という千冬の一言で黙らざるを得なかった。
◇◇◇
放課後。
セシリアは職員室の前に来た。
電動ドアが開き、
「織斑先生、セシリア·オルコットです」
「来たか。ついてこい」
そう言われるままについていくセシリア。
着いたのは空き教室、どうやら外部には知られてはいけない内容のようだ。
中に入るとカーテンを閉めていて薄暗い。
「よお」
教室には既に王我と2組の担任のヴィレッタがいた。
「今朝、学園へ電話があってな。内容はお前が天道兄に対してしまったことについてだ」
「はい。その件は申し訳なかったですし彼に対して誠心誠意謝罪して許しをいただきました」
「分かっている。だがイギリス本国からはそれでは足りないというらしい。オルコット、先に言っておく。これから通信をつなぐ相手に失礼のないようにしろ」
「え、あ、はい。分かりました」
セシリアは戸惑いつつ返事をする。
千冬は少し同情した目をしながら持っている端末のスイッチを押した。
目の前に空間モニターが展開し、相手とつながる。
「ごきげんよう。セシリア·オルコット君」
「シュナイゼル殿下!ご、ご機嫌麗しゅうございます!」
通信相手はなんとイギリスの第2王子で宰相も務めている、シュナイゼル·エル·ブリタニアだった。
つまり王族である。
貴族のセシリアとは比べ物にならない程の地位である。
セシリアは電光石火の速さで跪いた。
「立って顔を上げてくれ」
「イエス、ユア·ハイネス!」
セシリアはバッと立ち上がった。
「話は情報部から上がっている。君が彼にしてしまったこと、謝罪し彼が許してくれたことも。だが政府では彼がナイトメアシリーズの輸出をしてくれなくなるのではないかと気が気でなくてね」
「それについては大変申し訳ございませんでした!」
セシリアは直立のまま声を張る。
「俺は気にしていないんだがな」
一国の王子に対して失礼な態度を取る王我を見てセシリアが冷や汗をかく。
「そうも言っていられなくてね」
「どうせうるさいのは政府のジジイ共だろ?」
「ああ、だから本来ならこちらから謝罪に伺いのだが…」
「来んな」
「そうだね。表立って動けば問題になる。なので来てくれないか?イギリスへ」
「嫌だ」
「ちょっ!」
セシリアが思わず声を上げてしまう。
「相変わらずだね。君は」
シュナイゼルがフッと笑う。
「俺はお前が嫌いだ」
「私は君が好きだよ」
互いの言葉は真逆だった。
「君が動かないのなら…そうだね。こちらはクイーンとナイトとルークは動かそうか」
「…なに1ターンで三駒動かしてんだ」
王我は目尻がピクッと動いた。
「フフ…コーネリアにアーニャ、キャサリンが君に会いたがっているよ」
「…今すぐそっちに行ってぶん殴るから待ってろ」
「(ちょっと!)」
セシリアは胃に穴が開きそうだった。
「オルコット君、案内を頼むよ」
「イエス、ユア·ハイネス!(しまった~!)」
セシリアは思わず条件反射で返事してしまった。
「では楽しみに待っているよ」
シュナイゼルがそう言って通信が終了した。
王我はヴィレッタに顔を向けた。
「ヴィレッタ先生、外出届をもらえますか?」
「ああ…事が事だ。公欠扱いにしておこう」
ヴィレッタはこうなることが分かっていたのかスムーズに進める。
王我が教室を出ると廊下に愛莉とノクトがいた。
「お前達、盗み聞きか」
千冬が注意する。
「No、防音だったので聞こえませんでした」
「ですが推理は出来ます。オルコットさんの件で兄さんと一緒に呼び出されてイギリス側がこちらに来るのは問題が起きるから兄さんから行くことになったんですよね」
愛莉が100%の推理を叩き出す。
「そこまで…」
セシリアが驚く。
「愛莉の頭の良さは俺以上だ。チェスで俺に勝ち越している」
「もう1人いますけどね」
「言うな」
「オルコットさん、シュナイゼル様と話している兄さんは愉快だったでしょう?」
愛莉が小悪魔のような笑みを浮かべる。
「い、いえ…わたくしは正直ついていけませんでしたわ…」
セシリアが理解に苦労するのも当然だろう。
一個人の経営者が王族に対して対等に話し合うなど考えられない。
「兄さんとシュナイゼル様はよくチェスをしていたのですが49勝50敗で兄さんが負け越しているんです」
「俺はあいつのスカした顔が嫌いなだけだ。行くぞ」
「私もついていきます」
「Yes、私もです」
「ならヴィレッタ先生のところに行ってこい。俺はもう済んだ」
王我は不機嫌な顔を隠さずに歩き出した。
「はぁ…」
セシリアは胃薬を買っておこうと決めたのだった。
王我とシュナイゼルの会話を一部の女子が聞いたら妄想が捗るだろうな。
シュナイゼル·エル·ブリタニア
原作:コードギアスシリーズ
年齢:35歳