後書きのキャラ紹介は今後ヒロイン中心でやっていきます。
7月中旬の水曜日 正午。
王我と束を乗せた輸送機が那覇基地に到着しようとする。
「おーくん、あの戦艦なに!?すごくでかいよ!」
束が窓に顔を張り付けて、那覇基地に停まっている戦艦を眺める。
「あれは強襲機動特装艦、アークエンジェルだ。全長420mある」
「おおっ!」
「ねえ、あれは?」
束が指差した先には巨大なカタパルトがある。
「あれはマスドライバーだ。まだ建造中だが電磁力で艦船とかを宇宙に飛ばす装置だ」
「宇宙!?本当に?」
「完成したらな」
「宇宙…宇宙に行けるんだ…」
天才の束でもこれには興奮するようだ。
というのもこれらは王我が設計したものなので、束は王我が作ったもの全てに興味が尽きない。
やがて輸送機は那覇基地に着陸した。
「…長崎もだが、やっぱ7月の沖縄はあちぃな」
首元の襟をパタパタとあおぐ王我。
輸送機を降りると那覇基地の士官が中央を空けて整列していた。
「お疲れ様です。天道空将」
前に出て挨拶したのは士官の制服を着た金髪の美女だった。
「そしてはじめまして、篠ノ之博士。航空自衛隊那覇基地指令室指揮官を務めるカガリ·ユラ·アスハです」
「こちらこそはじめまして。シルバーキングス技術開発部部の篠ノ之束です」
カガリが手を差し出すと束は握手で応じる。
ここは公式な場なので敬語だ。
「やはりその制服…」
「はい。まだ新人ですが用意していただきました」
束が見せるシルバーキングスの制服は、上は白を基調としていて左胸には銀の王冠のエンブレム、下は黒のタイトスカートになっている。
「よくお似合いです」
「ありがとうございます」
そこで一旦会話を切る2人。
「キサカもご苦労だった」
「ハッ」
輸送機から降りたキサカがカガリの労いにそう返す。
「それとご紹介します。マリューラミアス1等空佐とトダカ1等佐です」
「アークエンジェル艦長のマリューラミアス1等空佐です」
「タケミカヅチ艦長のトダカ1等海佐です」
士官の制服を着た栗色セミロングでグラマラスな美女とイケオジ風の男が敬礼する。
「アークエンジェル!あのおっきな戦艦の!?」
急に食いついてマリューに近づく束。
「あっ…はい…」
突然、距離を詰められて戸惑うマリュー。
「あ、すみません。私、あんな大きくてかっこいい戦艦みたことなかったら興奮しちゃって…」
我に返った束は少し離れて頭を掻く。
「いえ…艦長として光栄です」
背筋を伸ばして胸を張るマリュー。
ちなみにマリューを知る男性士官の間で陰では「おっぱい艦長」「乳揺れ艦長」などと呼ばれている。
「暑い中、長い立ち話もなんですからこちらへ。お父様…知事がお待ちです。お前達は仕事に戻ってよい。キサカ達は休め」
「ハッ」と士官達が敬礼して仕事に戻る。
キサカとカレン達も休憩に入る。
カガリが先導して歩いていく。
カガリが先頭、その後ろを王我と束が続く。
「知事?」
「カガリの父親は県知事だ」
「そうなんだ」
「はい。私の父はニュージーランド出身で日本に帰化してから知事になりました。私は父が帰化してから生まれたので日本生まれになります」
「海外出身で知事ってすごいね」
少し敬語が崩れている束だが咎めるほどでもないだろう。
「そうですね。初めは余所者扱いで苦労したそうですが父の人柄と徐々に増えていく人望の強さで知事に選ばれたそうです。私が生まれる前の話ですが」
「まあ、詳しい話は本人に聞くのが一番だろ。それよりあの出迎えはなんだ?堅苦しいのは嫌いだって言っただろ」
「そうもいかないだろ。お前はもっと自分の立場を理解しろ」
完全に敬語が抜けているカガリ。
これが王我に接する本来の態度なのだろう。
「沖縄と佐世保をはじめ、日本の防衛力を高めたお前の貢献は大きい」
「俺は俺のやりたいようにやっただけだ」
王我は思ったことをそのまま口にする。
愛莉と平和に生きるためにやったことなので褒められても困るのだ。
その後、カガリが車を手配し県庁に移動。
やがて県庁の知事の部屋に到着した。
カガリがドアをノックする。
「知事、天道空将と篠ノ之博士をお連れしました」
「通せ」
中から声が聞こえる。
カガリがドアを開けて2人が部屋に入る。
部屋にいたのは50代くらいの壮年で、髪はオールバック風で、背筋が綺麗でかっこいい男性だった。
『沖縄の獅子』と呼ばれている。
「長旅ご苦労だった王我君。それとはじめまして篠ノ之博士、沖縄県知事のウズミ·ナラ·アスハです」
「はじめまして。シルバーキングス技術開発部の篠ノ之束です」
王我への労いと束への自己紹介をしたウズミに対して束も自己紹介で応じる。
「まずはおかけください」
ウズミが着席を促し、2人もそれに応じる。
ウズミも座り、カガリはその後ろで立っている。
「まずはこれをお返しします」
王我が取り出してテーブルに置いたのはアカツキとM1アストレイの待機状態のIS。
ちなみに王我が敬語で接するのはそれに値する人間にだけで他はタメ口である。
社会人としてはマナー違反だがこれが王我流の付き合い方である。
「うむ…カガリ」
「はい」
「これを後でラボに届けなさい」
「分かりました」
仕事モードのカガリは父親のウズミに対しても敬語で返す。
「それにしても驚きました。博士が彼の会社に入っているとは」
ウズミの視線が束に移る。
「もう逃げるのはやめました。これからは自分の道は自分で決めておーくん…社長についていきます」
「そうですか。それがいいでしょう…」
そう返したウズミの顔はどこか浮かない。
「やはりまだ受け入れ切れませんか?ISを」
その言葉に束が反応する。
「…今の若者の未来を守るのが我々大人の役目…だが今の世の中は我々が若者に戦わせてしまっている。そうしなければいけないことを私は何よりも憂いている」
ウズミの言葉からは己への不満とそこから滲み出る優しさがある。
「ウズミさん、私は…」
ISの開発者がウズミに何かを言おうとする。
「おっと…すまない。今のは老いぼれの愚痴だ。忘れてくれ」
「(老いぼれ…ってあなたまだ50代でしょう)」
束の言葉を遮ったウズミの言葉に心の中でツッコミを入れる王我。
「それより娘を早くもらって欲しいものだな」
「お父様!」
ウズミの一言にカガリがついいつもの呼び方に戻る。
「ウズミさん、俺は婚約者がいますし、この国で重婚はできません」
「分かっている。娘との関係も。とはいえ未婚のままというのは父親として思うところがある」
「(あ~なるほど)」
その言葉に束は納得した。
「もういいだろ!この話は終わり!それよりアカツキをラボに届けてくるから!」
カガリがこの話題を強制終了させる。
「束、お前も行ってこい」
「いいの?」
「ああ、さっきからそわそわしてたみたいだしな」
「やった~!」
両手を挙げて喜ぶ束。
「あ、すみません」
我に返った束は両手を下げる。
「いえ。カガリ、博士を案内してあげなさい」
「はい。博士、こちらへ」
カガリが束を連れて部屋を出ていく。
「あっ…王我、ラクスが会いたがってたぞ。会いに行ってやれ」
カガリが顔だけ出してから言った。
「ああ。ラボに行った後にな」
「それじゃあな」
今度こそカガリは行ってしまった。
部屋には王我とウズミだけが残った。
「ウズミさん」
「何だね?」
「あなたの理念『他国を侵略しない』、『他国の侵略を許さない』、『他国の争いに介入しない』。その理念は立派だと思います」
「…」
「でも俺の考えは少し違います。俺は愛莉との平和のためなら手段を選びません」
「…サウジアラビアの件は私も聞いている。王我君、私と君は違う人間だ。もちろん考えも違う。だから君の考えに対して私が強制することはできない。そこには自由がないからだ。君は君が信じる道を進めばよい」
「…やっぱりあなたは偉大な人だ」
王我はそう呟いた。
前世で観たこの人の最期を知る人間として王我はウズミを尊敬している。
「さて、あまり時間を取らせても申し訳ない。君もラボへ行ってきたらどうだ?」
「そうします」
2人は同時に立ち上がり、ウズミは王我が部屋から立ち去るまで見送り、その後仕事に戻った。
◇◇◇
那覇基地 ラボ。
「王我!」
ラボに着くなりカガリが険しい顔で迫ってきた。
「どういうことだ!これ!」
カガリが展開状態のアカツキを指差す。
「ボロボロじゃないか!どう戦ったらこんなになるんだ!」
「そうだな…殴ったり蹴ったり竜巻起こしたり…」
王我が指を折りながら数える。
「お前…沖縄の守り神をそんな風に!」
王我の肩を掴んで揺さぶるカガリ。
「はいはい。それくらいにしなさい」
パンパンと手を叩いて現れたのは作業着を着た美女、エリカ·シモンズ、ラボの技術部顧問を務めている。
「過ぎたことをいつまで言っても仕方ないでしょ」
「くっ…分かった。次からは気を付けろよ」
カガリが渋々引き下がる。
「またまたそんなこと言って~」
「本当は王我に会えて嬉しいくせに~」
「天の邪鬼~」
すると、別の声が3つ入ってきた。
声の主は3機のM1アストレイからのようだ。
「出たな三バカ」
「「「三バカって言うな!」」」
3人がISを解除する。
「アサギ!」
「マユラ!」
「ジュリ!」
少しクセの強い金髪、短めの赤髪、青髪ロングにピンク色の眼鏡、3人娘のパイロットが名乗る。
「よし終わったな。もういいや」
「「「聞け!」」」
3人のツッコミを王我はスルー。
「ところで束は?」
「彼女ならラボの中を走り回ってるわよ。猫みたいに」
王我の問いにエリカが答える。
「そうか」
「呼んでくる?」
「いやいい。これをあいつに渡してといてくれ」
王我がエリカに渡したのは、『X』の形をしたブレスレットとウルトラマンXのBlu-rayBOX。
「分かったわ」
「それとこいつを直せ」
王我がアカツキを指す。
「はいはい」
エリカはそれも受ける。
大人な対応だ。
「ラクスに会いに行くのか?」
「いや、その前にアークエンジェルに寄って行く」
「そうか。ラミアス艦長によろしくな」
「ああ」
「おーくん、行っちゃうの?」
すると、探検から戻ってきた束が聞いてきた。
「ああ…束、お前はどうする?」
「ん~今日はこっちにいようかな。まだまだ見たいものもあるし」
「そうか。じゃあ俺はあっちで泊まる」
「うん。また明日!」
「ああ」
そう言って王我はラボから立ち去った。
◇◇◇
アークエンジェル 艦内。
「あいつ、怒ってんだろうな」
アークエンジェルの艦内の通路を歩く王我。
当然顔パスで入れる。
「あら、王我君」
すると、マリューが声をかけてきた。
「どうしたの?」
「あいつに会いに来たついでに昼飯を食べようと思ってな」
「それなら彼女とお昼だろうから食堂にいると思うわ。一緒にどう?」
王我をランチに誘うマリュー。
「そうしよう」
マリューの誘いを王我は受けた。
食堂に入った王我は目的の人物を見つけた。
「げっ」
そう声を上げたのは癖っ毛のある茶髪で後ろが外にハネていて、体格は小柄で可愛らしい美少女。
ミリアリア·ハウ。
航空自衛隊3等空尉でアークエンジェルのオペレーターである。
「いきなりご挨拶だな」
「思わず出ただけよ」
ツンとした態度を取るミリアリア。
「私が取ってくるわ。あなたは座ってて」
マリューは王我をミリアリアの正面に座らせて、2人分の食事を取りに行った。
「連絡は取ってただろ?」
「…全然会いに来ないじゃない」
「そんなに俺に会いたかったのか?」
「このっ…」
ミリアリアが睨み付けてくる。
「ハハハッ!嬢ちゃん、やたらあんたのこと気にしてたからな!」
「マードックさん!」
ミリアリアが今度は整備主任のマードックを睨みつける。
「いっ…さ、さて…仕事仕事…」
昼食を終えたマードックは食堂を足早に去る。
「逃げた…」
ミリアリアがマードックを軽く責める。
「お待たせ」
昼食を持ったマリューが戻ってきた。
時刻は13時前、食堂には王我達3人しかいない。
王我とマリューも昼食を食べ始める。
「この後はどうするの?」
「宮古島の児童保護施設に行ってステラに会う。そっちで一泊してからこっちに戻ってからそれから東京に戻る」
「そう。ラクスさんもあなたに会いたがってたから喜ぶと思うわ」
「カガリにも言われたよ」
「それだけ罪な男ってことよ」
そう口にするマリューの顔は優しい。
「その内、刺されるかもね」
ミリアリアが皮肉を口にする。
「お前とか?」
「キッ!」
ミリアリアが王我を睨み付ける。
「まあまあ、ミリアリアもあなたに会うのを楽しみにしてたのよ」
「艦長!///」
ミリアリアが頬を赤くして机をバンと叩く。
「ねえ、王我君」
すると、マリューが王我の耳元に口を近づける。
「明日、こっちに戻ったら時間あるかしら?」
そう甘い声で囁いた。
「…まあ、出発までは時間があるかもな」
「楽しみにしておくわ。ミリアリアと一緒に」
「私は別に…///」
ミリアリアは照れ隠しとばかりに食事のペースを早める。
「ごちそうさま!///」
食事を終えて足早に食堂を去った。
「相変わらずツンツンしてるな」
「そこが彼女の良いところよ。さあ、私達も食べましょ」
「ああ」
王我とマリューも食事を再開して13時半頃に食べ終えた。
「それじゃあ私は仕事に戻るわ。ラクスさんによろしくね」
「ああ」
マリューは仕事に、王我は船で宮古島に行くため停泊所に向かった。
「ステラ…」
カガリ·ユラ·アスハ
原作:機動戦士ガンダム FREEDOM
年齢:19
国籍:日本(ニュージーランド出身)
所属:航空自衛隊 那覇基地 指令室 指揮官
マリュー·ラミアス
原作:機動戦士ガンダム FREEDOM
年齢:29
国籍:日本(アメリカ出身)
所属:航空自衛隊 1等空佐
アークエンジェル艦長
ミリアリア·ハウ
原作:機動戦士ガンダム FREEDOM
年齢:20
国籍:日本(ニュージーランド出身)
所属:航空自衛隊 3等空尉
アークエンジェルオペレーター