沖縄本島から南西300㎞に位置する宮古島。
王我を乗せた船が港に到着する。
透明な海、白い砂浜、まさにリゾート地。
毎年100万人以上の観光客が訪れている。
王我は船を降りて、丘の上にある廃教会をリニューアルした児童保護施設に向かって歩いていく。
目的の場所に近づいてくると外で遊んでいる子供達が王我に気付いた。
皆小学生以下ぐらいである。
「あ~王我兄ちゃんだ!」
「王我兄ちゃん!」
「王我兄ちゃんが帰ってきた!」
「おい、俺を兄と呼んでいいのは愛莉だけだと何度言わせりゃ分かるんだ」
王我が来たことを喜ぶ子供達に王我が一言言う。
「ラクス様!王我兄ちゃんが帰ってきたよ!」
「聞いちゃいねぇ」
子供達が施設の奥の方へ走っていった。
「おかえりなさい。王我」
すると、子供達に連れられて現れたのは可愛らしいピンクのエプロンを着けたラクスだった。
料理でもしていたのか髪はポニーテールで結んである。
まるで新妻のようであるが子供達に囲まれていると聖母のようでもある。
左手の薬指には亡き母の形見の指輪がはめられている。
結婚しているわけではなくラクスの美貌は街に出たら全員が振り向くほどなのでナンパ対策である。
「ただいま」
おかえりと言われたので一応合わせる王我。
「オウガ!」
その時、ラクスの横から飛び出して王我に抱きついたのはステラだった。
病院から退院して現在はここで療養中といったところだ。
「また会えた!嬉しい!」
「ああ、俺もだ」
王我との再会に喜ぶステラ。
尻尾があったらブンブン振っているであろう。
抱きついているステラの頭を優しく撫でる。
《オウガ!オウガ!オマエゲンキカ?》
その音声と共にラクスの足元に転がっているのはボール型の小型ロボットのピンクハロ、通称『ピンクちゃん』。
王我が作ってラクスにプレゼントしたものである。
ハロの会話には特に規則性はないので王我はスルー。
「もうお昼は食べましたか?」
「ああ、けど足りないな」
「なら良かったですわ!ちょうどおにぎりを作ったところですの。召し上がりますか?」
両手をパンッと合わせて笑顔で訊くラクス。
「いただこう。ステラも来るか?」
「うん」
ステラは王我の腕に抱きつきながら返事する。
「え~!王我兄ちゃんと遊びたい!」
子供達が早く王我と遊びたがっている。
「待っててくださいね。後で一緒に遊んでくれますから」
「う~…分かった!待ってるね!」
一瞬考えた子供達もラクスの言葉に納得して遊びに戻る。
「では行きましょうか」
ラクスの先導で食堂へ向かう。
食堂のテーブルの上にはまるで王我が来るタイミングが分かっていたかのようにハロの形のおにぎり(ハロむすび)が3個置いてある。
王我が座り、その両隣にラクスとステラが座る。
「さあ、召し上がれ」
「「いただきます」」
王我とステラがハロむすびを食べる。
その様子はラクスが横から幸せそうに眺める。
「美味い」
王我が素直に褒める。
「ありがとうございます」
ラクスも喜んでいる。
王我は2つ目もあっという間に食べ終えてしまった。
「ごちそうさま」
「お粗末さまです」
2人がまるで夫婦のように言葉を掛け合う。
「ごちそうさま!」
少し遅れてステラも食べ終えた。
「お粗末さまです。それじゃあ、私はお皿を片付けてから行きますので先に子供達と遊んで来てください」
ラクスがおにぎりを乗せていたお皿をシンクに持っていく。
といっても1枚だけだ。
「はあ…ガキ共の相手か…」
王我が天井を仰ぎ見る。
「フフ、皆さん王我と遊びたいんです」
「ったく…妙に懐かれたもんだ。…仕方ねぇ…行ってくるか」
《ミトメタクナイ!》
重い腰を上げる王我。
ピンクちゃんも茶々を入れてくる。
「いってらっしゃい」
まるで仕事に行く夫を見送る新妻のように見送るラクス。
「ステラ、行くぞ」
「うん!」
ステラを連れて王我は庭に向かったのだった。
◇◇◇
庭に出ると子供達以外に5人の大人がいた。
「やあ、久しぶりだね。王我君」
ガーデンチェアに座っててコーヒーを飲んでいる男が挨拶してきた。
「バルトフェルドさんもお久しぶりです」
王我が敬語で返す。
アンドリュー・バルトフェルド。
アフリカ大陸のエチオピア出身で年齢は32歳、ダンディーな雰囲気のある男で元軍人、なんと通常兵器でISを撃墜したことがあり(正確には低空飛行に移った相手を高台から戦車でロードキルしたという荒業)、左目の傷はその時に出来たもので、戦場では『砂漠の虎』と恐れられていたがここでは『コーヒーおじさん』と呼ばれている。
コーヒーのブレンドが趣味。
王我にとっては尊敬する1人なので敬語で接している。
「あら来てたのね」
バルトフェルドの隣に寄り添い挨拶してきたのは黒髪ロングで、細身スタイル、両肩と背中が露出した妖艶な雰囲気の服を着たアジア系美女だった。
アイシャ。
バルトフェルドの妻であり、彼のことを『アンディ』の愛称で呼んでいる。
ちなみに射撃が得意。
「隊長、サボってないで仕事してくださいよ」
そう文句を言っているのは赤みがかった短髪の青年。
マーチン·ダコスタ。
バルトフェルドと同じ元軍人で副官を務めていた名残で今でも隊長と呼んでおり、彼のやることに振り回されている苦労人である。
なお、子供達からはダコスタと呼び捨てにされている。
「う~ん、待ってくれ。今、新しいコーヒーのアイデアが浮かび上がってきそうなんだ」
「そういう言い訳いいですから」
そう言い合う2人。
これはこれでいいコンビなのかもしれない。
「王我、よく来たな」
そう挨拶してきたのはオレンジの髪で髪型はオールバックに近く、右目に眼帯を着けた女性だった。
ヒルダ·ハーケン。
年齢は23歳、性格はきつそうだが面倒見がよく子供達からは『姉御』と慕われている。
ラクスのことを尊敬して『ラクス様』と呼んでいる。
ちなみに右目の眼帯はただのおしゃれである。
「お久しぶりです。王我さん、お元気そうで何よりです」
そう声をかけてきたのは優しそうな盲目の男性。
マルキオ導師。
元は宗教家だったが今は『SEED』について独自の研究をしている。
この5人と館長のラクスを含めた6人がこの施設の職員になっている。
「あっ、王我兄ちゃんだ!」
すると、王我の存在に気付いた子供が走り寄ってきた。
「おや、妖精に見つかってしまったようだね」
バルトフェルドがからかってくる。
「王我兄ちゃん遊ぼ!」
「分かったから落ち着け。で、何すんだ?」
頭を掻きながら面倒くさそうに訊く。
「えっとね…王我兄ちゃんが鬼で…俺達全員捕まえるまでで終われないゲーム!」
少し奇妙なルールを説明をする少年。
子供達はステラを覗いて10人いる。
10対1の変則鬼ごっこ。
「何だそりゃ」
「や~い!捕まえられるものなら捕まえてみろ!」
呆れる王我に対して離れて手を叩き挑発する子供達。
「…ステラ、ちょっとここで待ってろ」
「え、うん…」
ステラをその場に残した王我は子供達を全速力で追いかけ始めた。
「きゃ~!」と叫び声を上げて逃げ回る子供達。
「楽しそうですわね」
洗い物を終えたラクスが戻ってきた。
「彼が来て皆はしゃいでるようだ」
バルトフェルドがコーヒーを飲んで一言。
「彼には人を惹き付ける不思議な魅力がありますわ」
「僕達も彼にスカウトされてここに来たわけだからね」
といってもまたコーヒーを一口。
まるで引退した老兵のよう。
「私はアンディについてきただけだけど」
「私もラクス様がいたからだ」
アイシャとヒルダはそう口にする。
「私はほぼ無理矢理でしたけどね」
そうぼやくダコスタ。
「そうでした。ステラ、王我にもうあのことは話しましたか?」
「ううん…まだ…」
「きっと喜んでくれますわ」
そう言葉をかけるラクスの表情はまさに聖母。
「何の話だ?」
すると、王我が戻ってきた。
両手に2人ずつ男子を抱えて、女子は何故か逆に王我に自ら肩や腰に掴まっている。
王我は全く息が切れていない。
「ステラが王我にお話したいことがあるんですの」
「何だ?」
「オウガ…あのね…ステラ、海が好きなの…お魚も好きなの
…」
たどたどしいステラの言葉を静かに聞く王我。
「だから…それでね…ステラ、水族館でお仕事したいの」
それは前に言っていた治療が終わったら王我からのご褒美の話。
改めて自分の夢をちゃんと伝えることが出来たステラ。
「今、そのために色々お勉強しているところですわ」
ラクスがステラの肩を抱いて補足する。
「そうか…頑張れよ」
「っ!…うん!」
王我にそう激励されて花が開いたようにパッと笑顔を浮かべて喜ぶステラ。
「よかったですわね」
「うん!」
ラクスとステラ。
笑顔で喜び合う2人の画はなんとも微笑ましい。
「王我兄ちゃん、もっと遊ぼうよ!」
すると、我慢できなかった子供達がねだってくる。
「遊び相手ならそこの暇そうなダコスタがいるだろ」
男子を下ろしながらダコスタに押しつける王我。
「ちょっと!私は暇じゃないですよ!」
「ダコスタ!」
「ダコスタ!」
「いくぞ!ダコスタ!」
「ちょっと!まだ仕事があぁっ~!」
すると、子供達の標的がダコスタに移り連行されていく。
完全にナメられている。
「そういえば王我はこの後どうされるのですか?本島に戻られますか?」
「いや、今日はここに泊まる」
ラクスに訊かれた王我はそう答える。
「お泊まり!?やった!」
それを聞いたステラが喜ぶ。
◇◇◇
那覇基地 ラボ内。
「ねえ、エリカさん」
「なに?」
「このISはなに?」
束が目の前で仁王立ちしているISを見てエリカに訊ねる。
アカツキとはまた違う金色の機体。
「それはフェネクス。シルバーキングスが設計してうちが開発したIS。理論上では光の速さで動くことが出来るわ。ただ…」
「…パイロットがもたないよね」
束が言葉を紡ぐ。
ISにもGを緩和する機能は付いているがそれでも限界がある。
つまり、このフェネクスは…
「パイロットのいないIS…」
束は優しくその機体に触れる。
「君も早く生まれたいんだね…」
その眼差しはまるで赤子の誕生を待つ母親のようだった。
◇◇◇
日本領海外海域 海底。
そこには潜水艦が潜んでいた。
その艦内の格納庫でリベルはあるISを見ていた。
その視線の先には黒いガンダムが立っていた。
「それがあなたの新しい機体よ」
スコールが後ろから声をかける。
「これで…フリーダムを殺せる」
「ええ、作戦開始は明日の夜明けと共に行われる。期待しているわ。リベル」
「ああ、任せろ」
スコールの言葉にリベルはそう応えた。
「そんな奴で大丈夫か?」
そう言って現れたのは人造人間のアルファとベータと同じ顔の女だった。
その目つきは人を小馬鹿にしているような印象。
「前にフリーダムと戦って無様に負けたんだろ。何ならあたしが倒してやろうか?」
「私の獲物に手を出すな!」
瞳孔開いて怒鳴るリベル。
「お~こわっ!」
両手を挙げておどけてみせる。
「シグマ、あまり挑発するな」
彼女の横から口を出したのはベータだった。
「弱い奴は死ぬ。強い奴は生き残る。結局世界ってはそういう風に出来てんだ。あたしはアルファとは違う」
「…」
シグマの言葉にベータは何も言わない。
彼女達人造人間は同類ではあるがそれほど仲間意識はない。
しかし、ベータだけは少し違う。
アルファがデスティニーにやられたあの時から何かがおかしいのだ。
「とにかくフリーダムは私が殺す。余計な真似はするな」
「へいへい」
シグマは手を振って返す。
「そうよ。あなた達にはそれぞれ役割がある。それを守ってちょうだい」
スコールがまとめ始める。
「はい」
「分かってるよ」
ベータとシグマが返事する。
「私はフリーダムさえ殺せればそれでいい」
リベルは相変わらずだ。
「さあ、皆で倒しましょう。この世界の悪を」
スコール達が乗る潜水艦。
その周りにどんどん潜水艦が集まってきて、やがて艦隊が出来上がりつつあった。
新たなる戦いが始まろうとしていた。
最初はアイシャを出身·年齢不明にしようとしましたがそんな人、日本に住めないなと思ってやめました。
マルキオのセリフは少なめですが原作もそんなになかったので出番は少なめにしておきます。
ちなみにフェネクスの正式名称はユニコーンガンダム3号機ですがそれだと1号機も出さないといけなくなるので機体名はフェネクスのみになります。