ユニコーン作品にはカッコいいおじさんが多すぎる!
ISを含めて原作について勉強不足なのでご容赦ください。
午前5時半 渋谷スクランブル交差点。
早朝だが通学や通勤でそれなりに人通りの多い東京の大型モニターに若手の人気女優のCMが流れていたが突然、映像が切り替わり放送スタジオとアナウンサーが映し出された。
《速報です。現在、沖縄県がテログループ『亡国機業』の襲撃を受けており自衛隊が交戦中。犯人の目的は『マスドライバー』と沖縄基地の武装解除とのことです。県民は全員、既に避難を完了しています》
映像がさらに切り替わる。
遠くからドローンで撮っているのだろう。
黒いユニコーン『バンシィ』と青い翼の天使『ストライクフリーダム』が空中で対面している。
ちなみに束の件は報道に情報が入っていない。
映像が再びスタジオに切り替わる。
《続報が入り次第、お知らせ致します》
アナウンサーが一礼すると、映像は元のCMに戻った。
ニュースを見た者達の反応は様々だった。
「『亡国機業』ってベルリンの時の…」
「あいつら、マジクソだな!」
怒りを覚える者。
「ヤバッ、こっちには来ないよね?」
自分のことしか考えない者。
「沖縄って俺のばあちゃんが住んでるとこじゃん…大丈夫かな?」
親族を心配する者。
沖縄にいる避難民に電話をかけようとしたり、ネットやSNSで情報を集めようとしたりする者が多く、電話やネット回線がパンクした。
テレビなどでも放送され、日本中は大パニック。
国民を不安にさせるようなニュースは避けたいところだが、自分の国で今何が起きているのか知っておくべきだろう。
混乱の中、現地では戦闘が続いていた。
◇◇◇
ストライクフリーダムのパイロットである王我の正面には黒いユニコーン『バンシィ』が滞空していた。
「フリーダムゥ…」
そのパイロット、リベルの喉からは怨嗟の声が漏れ出ている。
「死ねぇ!」
言い放つと同時に右手に持つ『アームド・アーマーBS(Beam SmartGun)』の引き金を引いて紫色のビームを放つ。
「っ!」
王我が左側に機体を動かして避けるがビームはそれを追うように曲がる。
「(カレンと引き離れる…)」
王我は孤立されていることに気づいていた。
「王我!」
カレンが叫ぶ。
「自分の敵に集中しろ!」
心配するカレンに王我はそう応える。
その言葉通り、カレンを狙うようにベータの狙撃が襲いかかる。
カレンは後退してそれを避ける。
「フリーダム!この時をずっと待っていた…お前を殺すこの時を!」
憎悪の叫びと共にビームを連射するリベル。
もちろん王我もただ避けているだけではない。
回避をしながらビームライフルの引き金を引いて応戦している。
しかし、リベルはそれを実体シールドで防いでいる。
次第に2機の位置は戦線から離れていく。
◇◇◇
「フリーダムと敵機、戦線から離れていきます!」
那覇基地指令室でオペレーターが報告する。
「王我!」
カガリは通信で王我に向かって呼びかける。
《カガリ、悪いが前線の指揮も頼む。こいつ1人に集中させてくれ》
「…分かった」
王我の真剣な声のトーンにカガリは了承した。
「王我…死ぬなよ」
《当たり前だ》
カガリの言葉に王我はそれだけ答えた後、通信は終了した。
「…アークエンジェルに通信を。防衛ラインを押し上げる」
◇◇◇
カガリから命令を受けたアークエンジェルは前進していた。
「左から4機!」
「面舵10!ヘルダート、ってぇ!」
艦長のマリューの指示で無人機IS4機のミサイルを躱しつつ、艦橋後方ミサイル発射管対空防御ミサイル『ヘルダート』を4発発射して無人機ISを撃墜する。
「道を開く!ゴッドフリート照準!」
二連装高エネルギー収束火線砲『ゴッドフリート』の発射準備を開始し、敵艦に目標を定める。
「ってぇ!」
放たれた緑色のビームが敵艦を貫き撃沈する。
10隻以上あった敵艦も一桁まで減ってきた。
「右からさらに8機!」
「イーゲルシュテルンで牽制しつつ前進!」
対空自動バルカン砲塔システム『イーゲルシュテルン』で敵を牽制して接近を阻む。
攻撃が来たら防御か回避するようにプログラムされている無人機ISはダメージ覚悟で突撃するという行動ができない。
「僚艦を援護しつつ敵母艦を狙う!」
マリューの視線は敵艦の最後方に向いていた。
◇◇◇
その母艦でスコールは内心苛立ちを募らせていた。
「(遅い。いつまで時間をかけるつもり?そろそろこっちの戦力もまずい…)」
だが、スコールにはまだ勝算があった。
「(強化人間2人…そして、バンシィがいれば…)」
ここで引くわけにはいかない。
ベルリンでの失態を取り返す必要もあるのだから。
◇◇◇
先程の空域から数㎞離れた空域で王我とリベルは向かい合っていた。
「フリーダム…お前が…全てお前のせいだ!」
「あん?誰だお前?」
リベルの言葉に王我は訝しげな態度で返す。
「私の名はリベル!忘れたとは言わせないぞ!1年前、サウジアラビアでお前がしたことを!」
「リベル?」
『サウジアラビア』『リベル』『1年前』というワードが情報検索に引っかかり空間ウインドウにデータが表示される。
その顔写真を見た王我は、
「(こいつ、たしか監獄島で収監されていたはずだがまさか脱獄してきたのか…いや、それは俺が考えることじゃない。こいつは俺の敵だ。敵は排除する。それだけだ)」
即座に意識を切り替えた。
「お前さえ…お前さえいなければぁぁ!!」
リベルの叫びが戦場に響き渡る。
◇◇◇
彼女には妹がいた。
石油で豊かなサウジアラビア。
しかし、そこには貧富の差が存在する。
毎日ステーキを食べてワインを飲む者がいれば、今日食べるパンだって無い者もいる。
夜でも明かりが途絶えない都市部、真っ暗な闇に包まれるスラム街。
親なしのリベルと妹のラプラスはスラム街で育った。
スラム街からは色とりどりの明かりに照らされた都市部が見える。
そこではなに不自由ない暮らしをしている者がたくさんいるのだろう。
自分達は都市部に行っては食べ物を盗むしかない惨めな暮らしを送っているというのに。
同じ人間なのに生まれが違うだけこんなにも差が出来る。
理不尽だ。
リベルは都市部を憎々しげな目で睨んでいた。
「お姉ちゃん…」
隣にいるラプラスが心配そうに見上げてリベルの手を握る。
「っ…ラプラス、大丈夫だ。飯にしよう」
リベルはラプラスを安心させようと笑顔を作って家に戻る。
「今日は2個もパンがあるぞ」
リベルが懐からパンを取り出す。
「わあ、すごい…」
ラプラスが喜ぶ。
2人で1人1つ、それでもいつも2人で1個の2人には充分豪華だった。
「「いただきます」」
2人はそれぞれ1個の貴重なパンを大事に味わって食べる。
「おいしい…」
「明日はもっと盗ってくるからな」
「うん…でも、お姉ちゃん…大丈夫?」
ラプラスがリベルの体を見る。
彼女の体のあちこちには傷や痣ができていた。
相当無茶をしたのだろう。
「大丈夫だ。お姉ちゃんは無敵だからな!」
そう言ってニカッと笑うリベル。
しかし、心の中では不安があった。
こんな生活がいつまで続けられるのだろう。
今日だってパンを盗んで逃げる途中で捕まりそうになり危なかった。
今日だけじゃない。
殴られたり蹴られたりしたこともある。
もしも、それが妹に向けられたら。
とはいえ親もなく仕事もない自分達にはこれ以外の生活の選択肢がない。
大きな幸せはいらない。
ただ妹と笑って生きられたらそれでいい。
翌日の晩。
「どうした?食べないのか?」
ラプラスはパンに口をつけなかった。
「うん…昨日のパンでちょっとお腹いっぱいで。お姉ちゃん、食べていいよ」
ラプラスは笑ってリベルにパンを渡す。
「大丈夫か?無理してないか?」
「大丈夫!平気だよ!」
ラプラスはなおも笑顔を崩さない。
「そうか…お前がそこまで言うなら」
リベルは妹の言葉を素直に聞いた。
その翌朝、ラプラスは死んだ。
餓死だった。
彼女は姉に嘘をついていたのだ。
本当は死ぬほど空腹だったのにそれを必死に隠していた。
姉を生かすために嘘をついた。
「ラプラス…どうして…こんな…ああ…うあぁぁぁぁ!」
妹が眠る墓の前で彼女は涙を流す。
「可哀想に」
その時、背後から声が聞こえた。
振り返るとローブを纏った女が立っていた。
顔はよく見えないがフードの中からは美しい金色の髪が少し出ている。
「あなたや彼女のように飢えに苦しむ人間がいるというよにこの国は何もしてくれない。彼らは毎日贅沢な暮らしをしている。不平等だと思わない?人間は本来平等であるべきでしょう」
「そんなこと分かっている!だがどうすることもできない!仕方ないじゃないか!私には何の力もない!」
ローブの女の問いにリベルはそう言い返した。
「ならあげるわ。あなたにこの世界の理不尽を覆す力を」
そう言い笑みを浮かべて取り出したのは待機形態のIS。
リベルが触れるとそれは眩い光を放った。
「あなたは…」
リベルがローブの女の顔を見上げる。
「私はスコール·ミューゼル。あなたを導く者よ」
ローブの女はフードを脱いでその美貌を晒した。
リベルはまるで女神を見たような反応をする。
「導く者?」
「共にこの世界を変えましょう。彼女のような世界の被害者をなくすために。全ての人間に平等を」
スコールが手を差し出す。
「(そうだ。ラプラスのような人間を増やさないために…この国を変える!)」
リベルはその手を取って『亡国機業』に加入した。
そして、同じ志を持った仲間と一緒にテロを起こした。
もうすぐだった。
もうすぐでこの国を取り、革命が達せられるはずだった。
だが、それは叶わなかった。
フリーダムに邪魔をされたせいで。
フリーダムさえいなければ全てが上手くいった。
許さない。
フリーダムを許さない。
いつしか彼女の怨念は国からフリーダムに矛先が変わっていった。
◇◇◇
「お前さえいなければ!」
リベルがそう吠えて『アームド・アーマーBS』を放った。
王我は上昇飛行で躱して『スーパードラグーン』を射出して包囲射撃する。
「予測AI起動!」
リベルがそう言い放つと同時に彼女の脳内に『スーパードラグーン』の次の動きがイメージが流れてくる。
彼女は機体を上下左右に動かして包囲射撃を躱しきった。
「あん?」
「ハハハ!見えるぞ!お前の動きが全て見える!」
訝しむ王我に対し、リベルは高笑いする。
機体で隠れて見えないが彼女の頭部にはヘッドギアが装着されており、敵の動きを感知したAIがデータに基づき次の動きを彼女の脳内に直接伝達するようになっている。
「これで倒せる!フリーダムを!この世界の悪を!」
リベルは加速して王我に接近しようとする。
「ニュータイプみたいな動きしやがって」
王我はそう言って舌打ちしながら『スーパードラグーン』を射出する。
今度は直接狙わず相手の動きを誘導しようとする。
「無駄だ!」
リベルはその攻撃を全て紙一重で躱す。
王我は躱した先を狙い腰のレール砲を放つ。
だが、リベルは直撃する寸前で背面飛行に切り替えて『アームド・アーマーBS』を撃つ。
王我はビームシールドでそれを防御しつつ、腹部のビーム砲を撃ち放つ。
リベルは武装をビームマグナムに持ち替えて引き金を引いてスパーク光を帯びたビームを撃ち放った。
その威力は並のISなら掠っただけでも撃墜できるほどである。
2つのビームがぶつかり合い、やがて相殺して消滅した。
それでも両者は止まらない。
ビームサーベルを抜いて振ると激突して鍔迫り合い状態となる。
「お前のせいで私の…私の妹は!」
いつの間にかリベルの中で妹の死因は王我のせいということになっていた。
「…興味ねぇな」
しかし、王我の答えは冷酷なものだった。
「他人の不幸自慢ほどつまらない話はない。俺は見知らぬ人間が死んでいちいち悲しむほど感受性豊かじゃないんだよ」
王我にとって最も大切なのは愛莉との幸せな日常。
他の誰かを守るとしたらそれは愛莉が悲しまないため。
例えばテレビが人が死ぬニュースを見る度に泣き叫ぶ人間がいるとしたらそんな人間は精神がもたず廃人と化しているだろう。
身近な人間と見知らぬ人間。
人は意識的かあるいは無意識に命の価値を決めている。
そうすることで精神性を保っていられると言える。
しかし、そんな理屈はリベルには通じなかった。
「貴様あぁぁぁ!!!」
その叫びと共にビームサーベルで押し返し距離を取ると彼女の目の前に『NT-D』と文字が表示されてバンシィの機体が獣のようによじらせて変形する。
角は左右に割れて、関節部がオレンジ色に光る。
顔はまさにガンダムタイプのものとなる。
『バンシィ デストロイモード』。
「おいおい、俺はニュータイプじゃねぇぞ」
王我が呆れたように言葉を漏らす。
直後、リベルが『アームド・アーマーBS』を撃つ。
王我は機体を右にずらして躱す。
その威力は先程とは比べ物にならないもので、海面の水を一部蒸発させていた。
「っ!」
王我が躱した先へリベルが迫る。
左手のクロー型の武装『アームド・アーマーVN』の4本のクローユニットが展開されて振動しながら振り下ろされる。
「チッ!」
王我は右腕のアームでバンシィの左手を掴んで押さえる。
あのクローが当たれば機体はただではすまない。
腰のレール砲をゼロ距離で撃って牽制しようとするが、リベルは機体をひねらせてそれを躱して『アームド・アーマーVN』を振り下ろす。
王我はバックでそれを躱して、『スーパードラグーン』を射出。
それを潜水艦のモニターで見ていたスコールは勝利を確信した。
「(かかった。バンシィの『NT-D』にはBT兵器をコントロールする機能『サイコミュ·ジャック』が搭載されている。これで…)」
しかし、その予想は裏切られた。
『スーパードラグーン』はバンシィにコントロールされることなく包囲射撃を行った。
「なにっ!」
驚いたリベルは即座に予測AIを起動して何とか躱した。
「(そんな…どうして?)」
スコール、そしてパイロットのリベルは理解が出来なかった。
その疑問に王我が答えた。
「エアリアルを作った俺が対策していないわけがないだろう。まあ、言っても分からんだろうがな」
「その程度で勝ったつもりか!」
リベルが加速して突撃する。
王我は腰のレール砲を水面に撃って水飛沫で目眩ましを起こさせる。
リベルは『アームド・アーマーBS』で水飛沫の向こう側に向けて撃つ。
しかし、そのビームは空を切った。
水飛沫を貫いたその先で王我は既にリベルの懐に潜り込んでいたからだ。
「舐めるな!」
リベルも予測AIを起動して王我の動きを予測する。
「(ビームサーベルで斬り上げ…)」
王我より先にビームサーベルを抜いて振り下ろそうとする。
その時、王我の体の奥底で何かが弾ける音がした。
王我はもう片方のビームサーベルを逆手で抜いてリベルのビームサーベルを受け止める。
「なにっ!…ぐっ!」
驚いたのもつかの間、前蹴りを食らって後退してしまう。
「こちらの攻撃に直前でアジャストしてきただと…そんなことが…」
「お前が俺の動きを予測するなら予測を予測するまでだ」
当たり前のように言っている王我だが、AIに計算力で勝るなどおよそ人間業ではない。
しかし、王我も余裕がなくなってきている。
単純な機体スペックではストライクフリーダムよりバンシィの方が上。
しかもストライクフリーダムのエネルギーも無限ではない。
決定打もなくこのままじゃジリ貧確定である。
「(あと一歩…あと一歩が足りない…)」
王我の額に焦りの汗が流れる。
◇◇◇
《……》
それをモニタリングしていたアイは何かを考えているようだった。
あれ?主人公どっちだっけ?
ちなみにリベルのリベはリベンジから取りました。