※この作品はR-18です。

【俺の女は】ハイスクールハックアンドスラッシュの世界に転生したけど、なんか質問ある?【俺のもの】   作:笛吹き用

16 / 39
いつものことですが今回本当に多数の独自設定入ります。

あとここから数話全くグロくはないですがちょっと残酷ですので読んでいただける方はご注意ください。

あと、前話後書きに武器の攻撃力と職人の腕の相関関係について追記しました。


第十五話 統計という名の現代の神託が仰るには 1

 宝箱があった玄室から移動した俺たちはしばらくして次の玄室を発見し、再び獲物目掛けてふらりと俺が中に入った。なお今回は玄室内に13匹のゴブリンがいたが、とある理由から俺が一人で入って全て戦闘不能にした後、大貴くんと千歳さんがそれぞれ6匹ずつにトドメを刺しただけなので戦闘については割愛する。だって俺がやったのなんて奴らの足元に向かって小鬼薙ぎを数回振った後に、地面に崩れ落ちたゴブリンどもの残った四肢を切り落としただけだもの。

 

 そして戦闘はほぼ終了した後の玄室の中で俺たちはいくつかのグループに分かれていた。

 

「大貴くん! 大貴くん!」

「千歳ちゃん! 千歳ちゃん!」

 

 まず一つ目のグループが、大貴くんと千歳さんのカップルである。彼らは今現在玄室の片隅にて大盾(タワーシールド)を申し訳程度の遮蔽物にしてその裏側で再び獣になってセックスに耽っていた。先ほどまで散々恥ずかしがってもう今日はダンジョンではエッチしない! と言っていた二人だったが、今回仲良く6匹づつゴブリンにトドメを刺したところレベルが二人してクラスチェンジ可能な10に到達したのだろう。二人して戦闘終了後すぐに顔を真っ赤にしてお互いの顔を見つめ、二人してモジモジしながらジリジリと玄室の隅へと後退していき、最後に大盾(タワーシールド)で自分達の姿を隠して先ほどを超えそうなほどの勢いでエロいことを始めた。ほとんど隠せてないから見えまくってるんだけどね? これには正直笑った。そしてまた先ほどのようにお互いの名前を呼び合うだけのラブラブ獣エッチへと突入した。う〜ん、これはエロい。

 

 次、二つ目のグループ。

 

「ね、ねぇ。あんた、ほんとに大丈夫なのよね? 私、あんたに言われた通り目をつぶったままだけど大丈夫なのよね? このまま振り下ろすだけでいいのよね?」

「そうだよ、美亜子ちゃん。大丈夫だからそのまま薙刀思いっきり振り下ろして〜」

「わ、わかったわよ、えい! …………や、やったの? もう目、開いていい? ……やった。やったわ! あっ、なにこれ熱い! あんた、なんか私、急に熱くなってきたんだけど!?」

「えらいえらい! うまく一発で仕留めたね。で、その熱いのはレベルアップの副作用かな」

「これがレベルアップの副作用……。はっ、あんた! い、いつまでくっついてんのよ! 一回離れなさいよ!」

「おっと、美亜子ちゃん、暴れちゃ危ないって!」

「うるさいうるさいうるさい! 離れろ、この馬鹿! 気付いてないとでも思ってんの? 私のお尻にアンタのキモいおちんちん当たってんのよ! 言わせんな! この馬鹿! 変態! 変態! 大変態! 大ッッッ嫌い!」

「不可抗力なんだけど、これは失礼しました……。いや、本当に。……それにしてもこの嵐のように繰り出される言葉のチョイスから滲み出る隠しきれない圧倒的才能。コイツはすげえ……」

 

 俺と美亜子ちゃんである。目をつぶった美亜子ちゃんを俺が後ろから抱える様にして手を貸し、無事に俺が四肢を切り落とした哀れな経験値(ゴブリン)にとどめを差すのを手伝っていた。事前に聞いたところによると彼女もダンジョンで魔物を倒したのはこれが初めてだそうで、早速顔を息を荒く顔を真っ赤にしながらレベルアップによる精力急上昇の洗礼を受けていた。その後地面にへたり込もうとした美亜子ちゃんが俺の息子の粗相のせいで腕の中で暴れたので、ゆっくりと彼女を地面に下ろした後、気まずそうに頭をかいた。昔からの俺が何かを誤魔化す時の癖であるが客観的に見ると結構キモい。あと遠い昔、どこかで聞いた気がする畳み掛けるような罵倒に俺は驚愕しながらゾクゾクしていた。おかしいな、俺Mじゃないはずなのに。

 

 次、三つ目のグループ。

 

「達郎さま! 達郎さま! すごい! ズンズン、ズンズンきます!」

「あやか、気持ちいい?」

「いいです! だからもっとして! もっとギュッとして! あやかを愛して!」

 

 ()とあやかである。先ほどの約束通りに俺とのダンジョンセックス真っ最中。なお、俺は今現在駅弁スタイルで腰振ってます。てか駅弁って外から見てるとあんな感じなのね(棒)。

 

「あは、あやちマジかわちぃ。ダーリンもエロすぎ。こんなんウチももっかいしたくなってくるわ」

「あわわわわわ……」

「う〜ん、う〜〜ん。あかんわ。なんやろ、どうやってもどうこねくり回しても俺が邪魔で性に合わへんこの感じ……」

 

 そして最後にそんな駅弁セックスをしている俺とあやかを外から眺めながら雑談している()とエリカと真っ赤な顔してあわあわするだけのゆみりさんのグループ。

 

 つまりこの場には俺が三人いたわけだ。おかしくない? と聞かれたら、いいや何もおかしくないと答える。なぜならこれこそ先ほど俺が【スキルオーブ】から得た新しいスキルの力だからだ。

 

 ーー盗賊系スキル【分身(ドッペルゲンガー)

 

 盗賊系第二段階職【忍者(ニンジャ)】の代表的なスキル【分身(ドッペルゲンガー)】は文字通りSPを消費して自分の分身を作り出すスキルであり、俺が元々狙っていた最優先取得スキルの一つ。これによって今俺は三人に増えていた。

 

 そんなことはさておき今大事なのは目の前の俺たちである。てかあやかである。いつもあやかやエリカ、そして彼女たちとのセックスそのものに夢中になってたからこうして自分達のセックスを客観的に見るのは初めてだ。

 

 え? そんなもんハメ撮りでもしない限り普通はそうだろって? それはそう(笑)。

 

 たださ、こうやって見ているとあやかの顔がトロトロの真っ赤になってるのほんとエロ可愛いすぎるのよ。てかこんな可愛い子に現在進行形でこんなにも求めてもらえてんのか、俺。分身同士、ある程度感覚が繋がってるから美亜子ちゃんに怒られる羽目になったけどこんなん無理。勃起収まらん。マジで前世のVRモノのAVなんて目じゃないわ、この二視点セックス。やば、写真撮りたい。いや、動画撮りたい。実家に置いてきたガン○ラ撮影用の機材一式が本気で恋しい。

 

 たださぁ……、俺AVでは極力男優さん映らないでほしい派なんだけど、例え男優役が自分自身でも画角の真ん中に男とかマジで許せねえな。切実かつ早急に画像修正ソフトが欲しいぜ。

 

 そんなことをつらつら考えていると、息を荒く顔を赤くした美亜子ちゃん(と付き添いの俺の分身1号)がこちらに合流してきたのだが、なぜか先ほど振り解いたはずの分身一号の制服の裾を俯いたままつかんでいた。あれ? 状況的にもっと罵詈雑言浴びせられると思ったのになんでかな? と思っている最中、俺がイったことで精液を(なか)で受けたあやかも同時に叫びながら果てたことで俺も一号もお役御免となったのでドロンした。

 

「うわ、ダーリン消えた!」

「わぁ、消えちゃった!」

「えっ! 嘘でしょ……? 消えちゃったじゃない……」

 

 と驚く三人の女子の声を聞きながら、分身を戻した俺はあやかと繋がったままゆっくりと地面に腰を下ろしたんだが、そうすると剥き出しのケツが硬い石畳の地面に触れて冷てぇ。おかげでまだあやかの中に入ったまま硬さを維持してる息子がびくんとしたのであやかも同時にびくんとはねた。それでも腰を振るのを再開するのをなんとか耐えた俺は賢者タイムの余韻に浸りながら慣れない分身をいきなり二体も、しかも長時間使用したことによる副作用だろう、ぐらぐらする脳みその処理に精一杯だった。いきなり二体も分身出すもんじゃねーなぁと抱きついてくれているあやかの髪を撫でながらゆっくりと一つ息を吐いた。

 

 

 

 ……なお、念のために言っておくと、断じてセックスのために【分身(ドッペルゲンガー)】のスキルを欲しがっていたのではないのでそこは間違わないでほしい。

 

 ……本当だからな? フリじゃないから、本当に。ちゃんとした使い道がいくつもあるから。本当に。

 

 

 そしてしばらくして落ち着いた俺とあやか、そして再度水をぶっかけられた大貴くんと千歳さんが離れてギリギリ身支度を整え終えたところでタイムアップを迎え、【界門(ゲート)】を通って現世へと叩き出されることで午前の部は終了した。

 

 光が乱回転し、視界が捩れ、それにともない魂と肉体の関係性が元へと戻り、やがてこの約1ヶ月で見慣れた景色が目に飛び込んできた。

 

 

 

「おや、みんなおかえり。……って大丈夫? 大貴くん、千歳ちゃん。あとは……、美亜子ちゃんもみたいだね。とりあえず『死に戻り』ではなかったようだけど、これは午後からが少し不安になるね……」

 

 そう言って俺たちと顔が真っ赤なままの大貴くんたちを出迎えてくれたのは本日の午後組で、男装が似合いそうなショートカット美人の美園さんとその後ろに隠れるようにしている二人の女の子だった。俺が服装や荷物を見るに三人とも準備は万端といった具合だったが、流石に腹は減ったので一度食堂に……、と思ったがそれよりも先に行くべきところとやるべき事があったのでともあれ全員で場所を移動することにした。

 

 そう、行くべきところは【聖堂(カテドラル)】。そしてやるべきことはもちろん転職である。

 

 

 ○ーーーーーーーーーー○

 

 

 結果からいうと二人とも割と意外なクラスにクラスチェンジした。特に大貴くんは細身とはいえ身長190cmの恵まれた長身男子だから、その見た目のイメージからまさかそのクラスになるとはとその場にいた全員が一斉に声を上げたほどだった。

 

 それで順番に説明していくのだが、千歳さんは戦士系の中の一系統である【拳士(パンチャー)】にクラスチェンジした。

 

 主に拳や足を用いて豊富なスキル群を武器に戦う戦士職の一角であり、原作小説だと主人公たちの同盟倶楽部であり学園屈指の武闘派として描かれているAランク倶楽部【黒蜜(ブラックハニー)】の事実上の副部長、『香瑠』のクラス系統である。かなり当たりの部類ではあるが、実は案外苦労するタイプのクラスでもあったりする。

 

 何故なら【拳士(パンチャー)】の武器は己の五体とスピード、そして豊富なスキルの組み合わせた多段攻撃(コンボ)であり、長所はその戦士職切ってのスピードと低コストで豊富なスキルによる連撃は敵単体相手には滅法強く、さらに他の戦士系クラスに比べると比較的装備にコストがかからないのが長所である。

 

 ただ短所は見事なほどに長所の裏返しであり、クラスの性質上ダンジョンの魔物とは徒手空拳のリーチの短さから超のつく近接戦を強いられることでそもそも被弾リスクが高く、メインのスキルが単体攻撃が多いために対集団戦も苦手で、そしてスピードの維持のために装備にかなりの制限がかかることである。なのでどうしてもその分被ダメージリスクは高くなるし、動きを制限する重い金属鎧なども装備できないので防御面にも不安が残る。

 

 どうしても本人のセンスと度胸に依存しやすいクラスなのだ。

 

 そんなことは知らない他のみんなは「戦士系じゃん、当たりだね! すごいね〜」といった具合で喜んでいただけだったが、俺は懸念とともに驚いていた。そもそも女子が戦士系に転職する確率は男子に比べると統計的に約半分とかなり少なく、さらにその中でも女子の【拳士(パンチャー)】となると少ないを通り越し、普通に珍しい部類に入る。

 

 気になったので千歳さんに何か心当たりはないかと話を聞いてみると、どうやら幼い頃親の都合で中国で育ったらしく、その時期に太極拳を習い始め帰国後も太極拳を続けた彼女は学園入学前には大会で結構好成績を出していたそうだ。話を聞いてみれば納得のクラスチェンジ結果である。

 

 そして同時に違和感の謎が解けた。通りで槍を渡した時使っている時に槍そのものを持つことに戸惑いはなかったのに、扱いに戸惑っているのが一目でわかるほど明らかにしっくりきていなかった。太極拳に限らず中国拳法の多くがその中に武器術を内包しており、その中でも中国では槍は『武器の王』とすら言われるので、嗜む程度とはいえ触れていたのは想像に難くない。

 

 一方今日俺が渡した槍はあくまで西洋のスピアであり、ましてや短槍で柄は短く固いので、細くてしなる中国式の槍の扱い方を知っていればこそ戸惑ったのだろう。

 

 疑問が解けたところで俺のゲーマー的な思考が回り出す。彼女の装備プランとクラス分岐をどうするかの提案内容を脳が勝手に考え始めたのだ。あーでもないこーでもないと無数に存在する組み合わせから比較的現実的なものをいくつかチョイスしていく。実は『拳士(けんし)』という字面ほど【拳士(パンチャー)】というクラスとそれに連なる転職先は拳一辺倒なクラスでもないので、やり方次第で融通は効くクラスでもあり、一人の職人、一人のゲーマー、そして一人のクラスチェンジチャートマニアとして装備のプロデュースもクラスチェンジのアドバイスもやりがいがあるクラスだ。

 

 正直、楽しい。めっちゃ楽しい。ノートがあったら成長ツリーチャートを用いてこの場でプレゼン始めてるぐらいには楽しい。だって、まだ文官ということ以外は未確定なあやかもはともかく、エリカは山賊系と俺自身は職人、しかも刀鍛冶ルートと最初の段階から割と決まりきっていたし、この後もどうなるのかおおよそ検討がつくのでこういう楽しさはあんまりなかったんだけど、千歳さんはこの先考え方ひとつで火力を追求するのか、バランス重視でいくのか、それとも防御や補助に重きを置いた成長を選ぶのか好きに選べるので、どういうルートにも振れる一番楽しい状態なのだ。もちろん【聖堂(カテドラル)】でのクラスチェンジは相当に融通が効かないので狙った通りに行くかは博打の部分は常にあるけどさ。

 

 だからこそ狙い通りになった時に面白いって面もある。やばい、ニヤニヤが止まらん。どうしてこう、クラスチェンジとかっていうのは楽しいんでしょうね? 

 

 そして俺がそんな妄想に取り憑かれている中、意を決したようにパートナーでありどう見ても恋人である大貴くんが【聖堂(カテドラル)】の中に消え、しばし経って帰ってきた大貴くんの顔ときたらなんと表現してよいものか。

 

 目をギュッと細めて口元は口角が少しだけ上がり、でもこちらに向かって歩きながらも何度も頭をかしげるばかり。嬉しいのか、悲しいのか、どちらとも取れるようでどう表現していいかわからないそんな顔で帰ってきた。正直全員どう声をかけていいものか迷ったよ。だって一言で言うとチベットスナキツネみたいな顔をして帰ってきたんだもの。

 

「……大貴くん。どうだったの? クラスチェンジ、ダメ……だった?」

 

 みんなが声を変えあぐねている中でやはりそこは彼女だということなのだろう、千歳さんが躊躇いがちに声をかけた。すると大貴くんは慌てたようにこう言ったのだ。

 

「あっ! ううん、ダメじゃない。ちゃんとクラスチェンジできたよ! ごめんね、みんな。変な顔して。でも正直どう考えたらいいのかわかんなくてさ……」

 

「……隠しておきたいなら尊重するけど、俺でよければ相談に乗るよ?」

 

「ううん、ほんとにそんなのじゃないんだよ。えっと、僕【術士(マギ)】になりました。本当は僕も千歳ちゃんと同じ戦士系が良かったんだけど」

 

 その大貴くんの返答にその場にいた全員の声が重なった。

 

「「「「「え?」」」」」

 

 細身とはいえ高校一年生にして身長190cm男子で、ついさっきまでのダンジョンダイブでも最前線で盾を構えて頑張っていた大貴くんの転職先がまさか後衛職代表の【術士(マギ)】とは。

 

 流石の俺もこれには本気で驚いた。俺の予想では一位が直前の堂がいった立ち振る舞いから戦士系の【盾士(シールダー)】。二位が生来の気質が強く出るなら本人の穏やかで聡明な気質を考えるとこれもあるかなと【文官(オフィサー)】。三位がまぁ大貴くん体でかいし順当に【戦士(ファイター)】かなとか考えてたのにまさかの【術士(マギ)】。

 

 ただでさえ【術士(マギ)】への転職率は基本六職の中でもぶっちぎりに低い5%であり、さらに男子のそれはさらに下がって3%程度である。多くのガチャのSSRの確率と大差ない確率を引いた大貴くんに対して、よっぽど【術士(マギ)】系への適性が高かったんだろうなぁというのが偽らざる俺の感想であった。

 

 こんなふうに色々ネガティブよりのことばかり考えてはいるが【術士(マギ)】自体は普通に当たりである。大当たりと言ってもいい。

 

 入学1ヶ月以内のこの時点ではほぼ唯一といっていい遠距離攻撃可能な優位性、物理攻撃ではなく魔法攻撃という唯一性、高い火力を広範囲にばら撒ける殲滅力。燃費がすこぶる悪く継戦能力に欠けるという欠点こそあるもののそれを補ってあまりある魅力が【術士(マギ)】にはある。

 

 しかもパートナーの千歳さんとの組み合わせも悪くない。スピードに優れ単体に対する高い攻撃能力を誇る前衛である【拳士(パンチャー)】と後衛火力の【術士(マギ)】の組み合わせなら敵との遭遇時、最初に大貴くんの魔法攻撃で先制してその後ダメージを負った魔物を千歳さんが各個撃破する。かなり攻撃的なスタイルではあるが、敵が格下であれば十分に成立する。

 

 そんな内容ををネガティブな部分を取り除いて大貴くんに話してみたら返ってきた返答がこれである。

 

「うん、達郎くん。ありがとう。やっぱり強いんだね、【術士(マギ)】って。でもさ僕は自分は守られる側じゃなくてさ、できれば今日みたいにみんなを守りながら戦えるクラスがよかったなぁと思っていたからそこがちょっとだけ残念でさ」

 

 そう言ってはにかむように笑う大貴くん。そんな大貴くんを惚れ直したと言わんばかりにうっとり見あげながらモジモジと内股を擦り合わせる千歳さん。

 

 おいおい、ちょっと聖人すぎんか大貴くん。そして気持ちはわかるよ、千歳さん。彼氏のこんなにかっこいいとこ見せられたらまだまだ昂ったままの精力が抑えられなくて(メス)でちゃうよね。

 

 そんな二人を眺めていたら俺の脳裏にとあるレアクラスの存在がよぎった。原作序盤で原作ヒロインの一人である麻衣が言った「【魔法剣士】というクラスがないのか?」という問いに対し諸事に詳しい彼女の男であり主人公に並ぶメインキャラクターである誠一が即座に「ない」と断言するくらいには知られていないし、下手をすれば学園図書館の資料の中にさえ記録がないかもしれないが、俺の記憶の中にはそれがある。確かに前提条件が厳しすぎて超がつくほどのレアクラスだが、俺たちの無限の選択肢の中には【魔法剣士】系や【魔法騎士】系といったクラスは存在しているのだ。そして【術士(マギ)】の魔法攻撃力と大貴くんの望む守りに優れた【盾士(シールダー)】系や【騎士(ナイト)】系の防御力を併せ持つそんなレアクラス系統も三系統、確かに存在する、はずだ。

 

 そして、それらのクラスへは【戦士(ファイター)】系からはほぼ辿り着けず、実質転職ルートは【術士(マギ)】からのみ。なので大貴くんはそのクラス系統へのスタートラインに立っているといえる。だがその道は茨の道だ。何しろそれらのクラスへとたどり着くには身体能力への補正がほぼない【術士(マギ)】の身で行動蓄積点を稼ぐために常に前衛で盾を構え続ける日々を送る必要があるから。しかもそれを保証するのは俺の中にある記憶だけ。

 

 そしてもしそれを信じて頑張り続けてついに第二段階にクラスチェンジしたとしても、必ずそのクラスへとクラスチェンジできる保証は俺にはできない。

 

 それほどか細い可能性。そしてそんなことしなくても【術士(マギ)】は普通に成長するだけでパーティの主役になれる間違いのない強クラスである。それなのにあえて報われるかどうかもわからないそれを目指して命懸けで生死の境に立ち続ける覚悟が大貴くんにあるだろうか? そう思ってみんなに「おめでとう」と口々に言われ千歳さんに抱きつかれてはにかみながら笑う彼のことを見た。

 

 ……あるんだろうなぁ。 

 

 となぜか素直に心からそう思えた。別にここで俺が独りよがりしてても仕方ないし、とりあえず提案だけでもしてみるかとあえて気軽な感じで行こう。どうせ俺が言ったらそっち選ぶだろうしと割り切った俺はみんなを促してひとまず購買経由で大食堂へと向かうことにした。

 

 まずは【スキルオーブ】の金も含めて午前の稼ぎを精算してからだな〜と思い実際にそうしようとしたら全員から「そんな大金怖くて受け取れない! しばらく預かっておいて!」との猛抗議を受け、とりあえず【スキルオーブ】の分を除いて普通の精算だけを人数頭割りで分けた後、なんでかなぁ?と思いながら手に購買で買ったばかりのノートを二冊携えて食堂へと向かったのだった。

 

 

○ーーーーーーーーーー○

 

 

「さて、今までで基本となる第一段階の六職の説明が終わったわけですが、皆さんどうです? なんとなくでも理解できました?」

 

 俺がそう尋ねると首を縦に振るもの、かしげるもの、興味なさげに見えるもの、悲壮感すら漂わせているもの色々だったが概ね理解はしてくれているようだった。

 

「簡単におさらいしますね。ダンジョンに挑むパーティの基礎になるのは【文官(オフィサー)】クラスで、ダンジョンでの道案内が主な役割です。さらに追記すると【モンスターカード】というレアなアイテムを手に入れて上手い事育てられたら、【文官(オフィサー)】クラスの弱点である戦闘力を彼らが補ってくれますし、なんならパーティに足りない役割すら埋めてくれますがこれは応用編なので今はこれ以上無しにします。次に……」

 

 こうして俺はこれまで時間をかけて話してきたことを簡潔にまとめていった。理解が追いついていなかった子たちもこれで少しでも理解が追いつければいいのだが。

 

 ーー何しろ俺はこれから彼らにとってこの後ひどく残酷なことを言うことになるから。

 

 そう思いながらも最後の【職人(クラフター)】もダンジョン攻略にとって大事なクラスなんだよとあらためて説明を結んだ俺は気合いを入れるために一度両手で両頬をパァンと叩いたので全員突然何事? と俺を見てきたが、気にせず「さて皆さん。これから本題に入ります」とだけ言ってからおもむろに後ろを振り返り、チョークで黒板にまずこう書いた。

 

全体 22.5% 15% 5% 15% 15% 27.5%

 

 ここまで書いて振り返ったが、この数字の羅列を見て反応した同級生はほぼいなかった。ほとんど全員ぽかんとして黒板を見ているだけ。それは京介くんも大貴くんも千歳さんも美亜子ちゃんもゆみりさんも、そしてあやかとエリカさえ例外ではなかった。ほんの一人二人だけ、察しのいい奴が怪訝そうな目で俺を見てきてはいるが、それでも間違いなく核心に迫ってはいないと確信できた。おそらく最初に気づくであろう学生ではないひなちゃん先生すらこの時点では「ん?」という顔で黒板と俺を見ているだけだった。

 

 俺はその下に続きの数字を書いていく。

 

男子  30% 12% 3% 15% 15%  25%

女子  15% 18% 7% 15% 15%  30%

 

 もう一度振り返りみんなのことを見る。この時点まずひなちゃん先生がその数字の示す意味を気づいた。そして俺がこの後何を書くのかも同時に理解して顔面蒼白になりその場でガタガタと震え出した。流石に俺がここまで理解、把握しているとは思ってなかっただろうのだろう。他にも数人はこの数字がなんなのかには気づいたようだが、なぜ俺がそんな数字を羅列しているのかまでは誰も理解していない。俺は全てを見ないふりを再度黒板に向き直り今度こそ本当に残酷な数字を書いた。

 

全体 23% 17% 4% 9.5% 6.5% 40%

 

男子 35% 20% 3%  8% 4% 30%

女子 11% 14% 5% 11% 9% 50%

 

 最後にこう書いて俺は統計という現代の神の信託を締めくくった。

 

24×40=960 100/960=9.6%≒10% 

10%=4 4ー3で残りは1

 

 ここまで書ききって大きく息を吐き出す。チョークの粉が舞って俺の体にまとわりつくがそんなもんどうでもいい。もう一度今度は大きく息を吸い覚悟を決めて振り返り俺は口を開いた。

 

「さて、皆さん。一番上からこの数字がなんだかわかる人、いますか? ……いるっぽいけど確信は持ててない感じか。じゃあこうしましょう」

 

 再度黒板に向き直り、一番上の数字の列の上に左から漢字を付け加えていくことに。

 

 戦士 盗賊 術士 文官 職人 遊び人 

 

 ここで背中越しにおーという声が聞こえた。そして何人かがガタリと机から立ち上がって音も講堂に響いた。

 

 おおよそこの場にいる全員がこの数字が何を示しているかに気づいたようだ。だから俺は振り返ってあえて明るい調子で答えを告げようとしたがその瞬間に目に飛び込んできたのは、視界の先にはその場でしゃがみ込んで嗚咽を漏らすひなちゃん、数字から真実を読み取り何人か俺の真意に気づいて愕然とした顔の奴らの姿、そして今一理解できずに曖昧に笑っているあやかと「え? どういうことどういうこと」と本当にわかっていなさそうなエリカの姿だった。

 

 二人とも、何もわかってないな、ありゃ。まぁ、その方が気が楽だ。少なくてもお前たちは俺が守るから大丈夫。何も悩まなくていい。

 

 自然と口元に苦笑いが浮かぶ。軽い気持ちでこんなこと引き受けるんじゃなかったと後悔したが全て後の祭り。だからあえて明るく大きな声で答えを告げた。

 

 ーーそうじゃないと俺も同級生相手に一度死刑宣告なんてできないんだって。

 

「皆さん、気づいたみたいですね。そう、この数字はクラスチェンジ先の統計データです」

 

 では上から見ていきましょうと続けて俺は地獄の釜のふたを自分の手で開けはじめたのだった。

 

 




感想、評価よければお願いします。

全ての数字は原作描写などから拾ってある程度の根拠こそありますが基本全て捏造ですので悪しからず。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。