【俺の女は】ハイスクールハックアンドスラッシュの世界に転生したけど、なんか質問ある?【俺のもの】 作:笛吹き用
完成した【玄天上帝】を手に俺が最初にやったこと。それはなんとか備え付けの電話のところまで行くことだった。何しろもはやまともに立ち上がる力もなかったんだ。
それでどうにか助けを呼ばないといけなかったんだが、ここは俺が貸し切ってる【工房】の一室でおまけに入り口には俺自身が張った結界があった。
外の世界とは違い学園敷地内には薄いとはいえ
残ったか細い外との連絡手段が電話だ。元から繋がっている道からこちらの意思を発する形ならワンチャンいけると判断した俺は、炉の火が消え照明も消えて真っ暗になった工房内を這いつくばるようにしてどうにか内線のところまで辿り着き、震える指でなんとか生徒会監査室へと連絡を入れた。
プルルルという呼び出し音に安堵の息が漏れる。何とか第一関門は突破したらしい。やがて電話が繋がる音がして「監査室、吉行ですが……、どなたかな? ……もしもし? もしや若様ですか?」という電話越しの返答に掠れた声で俺は助けを求めた。
「吉行さん……、ですか? 達郎です……。申し訳ありませんが、俺今立てなくて……。結界を破って先日の【工房】の中まで迎えに、きてくれませんか?」
「若様!? す、すぐに参ります! しばしの間だけお待ちを! 美里! このまま電話で若様へのお声がけを続けてくれ!」
慌てた声と何かがぶつかる音、それから電話越しの声が悲鳴のような女性のそれに変わった。
「若様! 美里でございます! ご無事ですか? 若様!」
「あぁ、美里さん、どうも。……なあに、死にはしませんよ。ところで美里さん、今日は何日で、今は何時ですか?」
「え? 本日は、4月27日の水曜の午前7時でございますが」
「ほぼまる二日ってところか……。ありがとうございます」
「動けないと聞こえましたが、一体何が……?」
「いやいや、いつも通りちょっとだけ無理しただけですから大丈夫です」
「ちょっとと申されますが、動けなくなるほどの御仕事をなさるなら誰かをお側に置いてくださいませ! あぁ、やはり
「ちょっ! 絶対に志乃にはこんなこと言わんといてくださいね!? 何言われるかわかったもんやありませんから!」
そんな昔馴染みとの取り止めのない話を続けている間にキィィンという音が工房の空間全体に響き、同時に内と外を隔てていたものが斬り払われた感覚が。
直後に【工房】の扉が開いて光が差し込んだ中に最初に飛び込んできたのは電話でお願いした吉行さんではなく女性だった。
「坊っちゃま! ご無事でございますか!?」
「あら? 由里お婆様。おはようございます。朝からお騒がせして申し訳ありません、電気…
…、つけてもらえますか?」
「はい。……坊っちゃま。ッ! その
照明が付き俺を見た由里お婆様の最初の言葉に俺は困惑と同時に震えた。
「え? 髪の毛? どうなってます?」
若干15歳にしてハゲたか!? と咄嗟に手をやるとちゃんといつも通りのごわつきヘアーが健在だったのでとりあえずハゲてはないことに安堵する。
「……真っ白に。あぁ、坊っちゃまの
「俺は男なんでハゲてなきゃ別に髪の色とかどうでもいいですよ」
「なんてことをおっしゃるのです! まだ二十歳にもならぬというのにそんな真っ白なお髪など皆がどれほど悲しむ、……ときに坊っちゃま、その真っ黒な大薙刀は一体? もしや!?」
髪の毛のインパクトに気を取られていたお婆様が言葉の途中で気づいたのだろう、俺の傍に俺を守るようにして在った【玄天上帝】の存在に気づいた。
「えぇ、正真正銘【
誤魔化すために可愛くてへぺろする俺。息を呑んで驚愕の表情をあらわにするお婆様。同時に俺はこの【玄天上帝】に宿る神に感謝した。「あぁ、俺が招いたわけではない
「……坊っちゃま。貴方様は一体どこまで……」
「若様! ご無事でございますか!?」
その時、そう言って飛び込んできた吉行さんがお婆様と同じように驚いた反応を見せ、それでも壁にもたれかかって座る俺のところにやってきたので肩を貸してもらいながら立ち上がる最中、「ぐうううううう」と俺の腹が鳴った。
苦笑いを浮かべながら吉行さんを呼び出した理由を告げる。
「助かりました、吉行さん。もう俺、腹減って動けなくて……」
俺がそう言うと二人が呆れたように、同時に何かを思い出すような顔で俺を見た。まるで成長していないとでも思われたんだろうなぁ。子供の頃は鍛治にも剣の修行にもそしてガンプラ作りにも熱中しすぎて飯抜いてぶっ倒れるとか日常茶飯事だったから。
情けないことに十五歳にもなってそのままおんぶで学食へと運ばれた併設されている華組用の個室(和室)の中で次々運ばれてくる食べ物を軽く10人前ほど食べて腹を満たした俺はようやくひと心地ついたのだが、当然それで終わるわけがなかった。
「さて、坊っちゃま。この婆が今から言いたいことがお分かりですね?」
「ハイッ!」
説教である。テーブルが片付けられた俺の正面に由里お婆様が座りこの時点で俺は速やかに正座へと移行した。隣には俺と同じように正座で顔を真っ青にした吉行さんの姿もある。ごめん吉行さん、巻き込んで。
「坊っちゃまがお食事中に事のあらましは吉行から聞きましたが、まず今回の鍛治において素材代をこの馬鹿孫から借りたそうですね? 坊っちゃまに言われたからと言ってほいほいと貸した吉行は後できっちり仕置きをするとしてなぜそのようなことを? 学園内では家のものからの助けを受けることは極力控えるようにと、事前に御家で定められているルールをお忘れになったわけではないでしょうに」
「あれ? 手見せはまだ見ておられないのですか?」
と俺が吉行さんに尋ねると、
「申し訳ありません。まだでございました。実は今朝、お婆様が私とともに駆けつけられたのはそれをお見せする約束になっていたからでして……」
と返ってきた。
「あらま、そういうことでしたか。ともかくお答えいたします。前にお婆様たちにお願いした第十階層への移動と同じで、無駄な時間の短縮のためです。今回30億ほどお借りしましたが、正直その程度であれば時間さえあれば既に楽に稼げる程度の能力はあると自負しております」
そう言い切った俺にお婆様が息を飲む。この人、間違いなく学園最強の一角なんだけど逆に言えば学園の常識に染まってる人だからまぁ仕方ない。実際、俺が異常なこと言ってるだけだし。
「……随分と簡単に仰いますね。30億銭ともなれば
「お婆様、少し話は変わりますが、学園内オークションでのダンジョン産の神刀ランクの刀の相場は現在どのくらいでしょうか?」
「はて? ダンジョン産の刀は希少ですしそれが神刀ランクともなれば……、物にもよりますが最低100億からでしょうか。しかもその場合、A上位とSランク倶楽部に華組所属のもの、そして私のような学園所属のOBやOG限定のシークレットオークションが開催されるでしょうから実際の落札価格は200〜300億の間でしょう」
「なら、俺が
「……最低で500億。なおそのお話が本当になったら何があってもこの
「ええ、そういうことです。ちなみに俺が神刀を最初に打ったのはちょうど一週間ほど前ですよ」
「……ご自分が何をおっしゃっているのかわかっておられますか? 【
「【
「普通科の坊っちゃまがまだ五月にもならぬこの時期に第三段階!? 4月10日、坊っちゃまにせがまれてレベルキャップ解放のため、確かに我らは第十階層にお連れいたしました。けれど本当にお連れしただけ。しかも約束通りに翌日以降、第一階層に戻られたのですよね? なのにどうやって!?」
「別にとにかく効率よく数をこなしただけですよ。ちなみに
「……婆は頭がおかしくなりそうです。聞きたくありませんが坊っちゃま、ここまでの約一ヶ月でダンジョンに何回お入りになりました?」
「え〜と、ひーふーみー……、う〜ん、14、いや15かな? ファーストダイブも含めれば16回ですね」
「じゅっ! あり得ません! ファーストダイブから数えればまだ24日しか経っていないのですよ! それを16などと! 貴方は死にたいのですか!」
「若様、16とは誠ですか!? 4月4日から今日までの24日間の間に16回!? そんなの不可能だ!」
「……お二人とも、何をそんなに慌てているのか理解に苦しみます。この狂った学園を本当の意味で生き抜きたいのならこの程度のこと、別に普通のことでしょう? あとこの一週間は色々忙しくて逆に二日しか入れてないですからね? だから時間短縮のためにお金を借りたんです」
前を見ても横を見ても恐ろしいものを見る目で俺を見る二人の顔しかないのだが、首をかしげざるを得ない。おかしいな? 俺、散々実家でも似たような無茶はやってきたはずなのにな。今さらたかだか命の危険がある程度で大騒ぎする方がおかしいだろ。
「……御当主様方から『最初の三ヶ月は好きにさせよ。干渉せず見張りもつけるな』というお言いつけがあったため、あえて家のものにも干渉無用と厳命し何も知らずに過ごしてきたことを婆は今心の底から後悔しております。志乃さんがいないとはいえまさかこれほど御命を容易く危険に晒すようなことをなさっておられたとは……」
志乃は別に関係ねーだろ。いたらガミガミ言われて大変だったとは思うけど。
「別に志乃がいようが関係なかったと思いますよ。なんならこれでも少しダンジョンに行く回数に関しては控えた方ですしね」
「……で、その果てにお造りなったのが【
「ええ。合わせて制作途中での失敗は死を意味すること、そして仮に成功しても何らかの【代償】を伴うこと、全て承知しておりますとも。ああ、ただ念のために言っておきますと今回のは本当にただの事故です。たまたま条件が整いすぎて玄武神が降りてきただけで俺は別に招いてはいませんから」
本当に事故みたいなもんなだよなぁ。ただ今になって考えてみれば水と氷属性の龍の牙に大亀の甲羅なんておあつらえ向きの素材だもんなぁ。そりゃ降りてこられても文句は言えないわ。そんなのは全部出来上がってから気づいたけどな。
「【
そんな話をしていると気づいていなかったらしい吉行さんが立ち上がって俺の側に立てかけてある大薙刀を見た。
「ええ、髪の黒色を失うという【
そう言ってから【玄天上帝】の柄を撫でると『もっと褒めよ』と言わんばかりのオーラを感じた。失敗時の死の危険も成功時の代償も当たり前のように全てを受け入れている俺を化け物でも見るかのように祖母とその孫が見つめる中、俺はとある大事なことに気づき急いで正座を崩してその場で立ち上がった。
「坊っちゃま! どちらへ! まだお話は終わっておりませんよ!?」
「お婆様黙って! お願いですから後ろ向いてください!」
「急に一体何をおっしゃるのですか?」
「お願いです! 一生のお願い! 早く!」
お婆様が後ろを向いた瞬間に俺は急いでズボンのベルトを緩めてズボンとパンツの前部分をまとめて持ち上げて恐る恐る自分の股間を確認した。
「セーーーーーーーーーーフ!!!! 下は黒いまま!!」
心の声が抑えきれなかった俺はそのまま叫んでしまった。だってちん毛は黒いまま!
「ぼ っ ち ゃ ま?」
ひぃ! いつの間にかこっち向いてたお婆様が怖いっぴ!
さてとはいえいつまでもこんな話をしていても始まらない。そんなつもりで立ち上がったわけじゃないがちょうどいいタイミングだとパンツとズボンを元に戻した俺は右手に【玄天上帝】を持ってそのまま出口へと向かう。
咄嗟に立ち上がったお婆様が行く手を阻もうとするがそれを軽く手で制する。
目があった。しばし視線がぶつかるが先に折れたのはお婆様の方だった。
「……坊っちゃま。どちらに?」
何をおっしゃいますか。新しい武器ができたらやることはただ一つでしょう。
「もちろん、ダンジョンへ。試し斬りをしないと。だから後の話はダンジョンの中で伺います」
レッツ、試し斬りである。
○ーーーーーーーーーー○
朝の10時。そのまま俺は購買へと向かい防寒具をひと揃い購入した俺は、まだ誰もいない【羅城門】前でお婆様たちを待っていた。別に一人でいいんだけどなーとは思うが、さすがの俺もこの流れでソロダイブするほど空気が読めてないわけじゃない。ただ今の俺と一緒にダンジョンダイブをするなら防寒具は必須と思い、各自に第十二階層【
やがて由里お婆様、吉行さん、そして吉行さんのパートナーである美里さんの3人がやってきた。チラリと見たところ見た目も中身も全員完全防寒装備。そんなまるで季節にそぐわない格好の3人が俺のところまでやってきて代表してお婆様が口を開く。
「お待たせいたしました、坊っちゃま」
「いえ、お手数をかけました。では行きましょうか? 俺は別にどこでもいいんですが、とはいえ第一や第二では困ります、だから多少の手応えのあるどこか適当な階層の適当な場所がいいんですが」
しばし思案して吉行さんが言った。
「では前回と同じ第十階層【
「問題ありません。ではそれで」
と俺が返すと、由里お婆様も小さく頷き、それを見た前に美里さんが前に出て彼女を先頭に全員が手を繋いで【羅城門】をくぐる。
ダンジョンダイブ時特有のぐにゃりと空間が歪むような感覚に身を任せてしばしすると景色は一変していた。先ほどまでの人工的な学園の景色とはまるで違う巨大な原始的植物に視界全てが覆われた世界、これこそ第十階層以降の特徴であるネイチャーフィールドでありその中でも原始の恐竜時代の景色そのままのこの場所こそ第十階層【
ゲームの時にはどれほど通ったかわからない【
ゆっくりやってる暇はないと判断し、いきなり【玄天上帝】を【
真っ黒な刃を天に向け真っ黒な柄を両手に握り【玄天上帝】から伝わってくる第一の【
ーー「【
この超広範囲への攻撃能力こそ【玄天上帝】の持つ第一の能力。本来一部の第四段階【
起動に俺の最大SPのざっと二割を持っていかれたがそれも計算通り、いや本来の計算よりも随分と軽い。あとはこのままこの場に留まって場そのものを変えていくだけだ。何しろ一度起動さえしてしまえばあとは俺は立ってこの状態を維持するだけで【玄天上帝】自身が周囲の
俺があとやることといえば周囲を満たしつつある【冬】の属性の
だが世界を白く塗り替えるが如き冷たい風の源をこの【
「囲まれています! 接敵まで58、57秒! 敵はヴェロキラプトル! 数は22! いえ、まだまだ増えます!」
「各自自分の身は自分で守ってください! 奴ら、自分達の縄張りのど真ん中で自分たちが滅ぶ原因となった【冬】の概念をぶちまけられて頭にきてるはずです! これからどんどん来ますよ!」
その俺の言葉にそっと刀に手をかける由里お婆様と吉行さんの二人。一方俺はというと美里さんとほぼ変わらないタイミングで奴らの接近に気づいていた。ヴェロキラプトル。およそ7000万年前、中生代白亜紀後期に生息したと言われる中型犬程度の大きさの恐竜だ。この恐竜を一躍有名にしたのが映画【ジュラシックパーク】なので、それを見たことがある人は多いだろう。そして映画の描写とは違い現在の研究では群れを作っていなかったとされているのだが、人間の認識が異界そのものに影響を与える特性により現在俺たちに向かって群れを成して襲いかかってきているというわけである。
そんな恐ろしいハンターどもの接近にいち早く気づけたのが【玄天上帝】第二の能力、範囲内における知覚能力。その場に満たされた冬の気そのものが【玄天上帝】と俺の触覚そのものであり、一度展開さえしてしまえば俺への不意打ちはほぼ不可能となる。
しばらくして最初にその鋭い鉤爪を剥き出しにして飛び出してきたヴェロキラプトルを【玄天上帝】を振るって切り裂いた。その黒い刃で恐竜の硬い皮膚と骨をものともせずに首と胴を泣き別れにして、そのまま俺は踊るようにこの大薙刀を振るい次々と飛び出してくるヴェロキラプトルどもを返り討ちにしていく。
やばい、【小鬼薙ぎ】なんて比較にならない圧倒的斬れ味。そして斬ったあとは液体窒素でもぶちまけたかのように真っ白に凍り付いていきやがる。刃そのものに宿る超強力な【冬】の属性により斬られたものは全て凍り付くってわけね。とことんおっかないな、この武器!
それでも所詮ここは第十階層の一番浅いところである。敵のレベルはおよそ50程度。ここにいる人間は俺を除いて全員
「……恐竜どもの、動きが悪い?」
さすが御明察。第一段階の【
「新手来ます! 接敵まで……、速い! アロサウルスです! 推定レベル70! 数6!」
「ちぃい! なぜこんな浅い場所でアロサウルスなんてものが出てくるんだ! 若様、撤退をご検討ください!」
「却下です! それよりも皆さん心を強く持ってくださいね! 行きます!」
ーー「【
俺がそう第二の【
そんな吹き荒れる吹雪の中でも密林をかき分けて見上げるような大型恐竜がやってきたのだが、明らかにその動きは悪い。アロサウルス。およそ一億五千〜四千五百万年前の中生代ジュラ紀後期
に生息していたとされる大型肉食恐竜で日本人に身近なところでは国内初の恐竜の骨格標本が展示されたことでも有名な恐竜だ。平均全長8、5m、体高3mをゆうに超える巨大生物でその巨大な顎から繰り出される食いちぎりや鋭い前肢の鉤爪で狩りをしていたと考えられている。そんなアロサウルスであるがこの【
そんな待ち伏せ大好きなアロサウルスが本来の生息地を離れてまで半狂乱になりながらも俺へと向かってきている事実こそが俺が造った【玄天上帝】の威力を証明していると言えるだろう。奴らは本能でヤバイと感じ、全力でなりふり構わず俺を潰しに来ているのだ。
象よりでかいアロサウルス相手に大薙刀といえども刃の大きさが足りないと感じた俺は柄に力を込め、己の意思を【玄天上帝】に伝える。すると俺の意のままに今まで刃渡り4尺(約120cm)だった刃が周囲の瘴気を纏って6尺(約180cm)以上へと急激に巨大化した。
そのまま顎を開いて突っ込んでくるアロサウルスの脇を抜けざま横振りでその巨体を一刀両断する。その様は先ほどのヴェロキラプトルの時とほとんど変わらず、そして切り裂いた後の体が白く凍りついていくのも変わらなかった。その後現れた後続も同じように始末して敵の第二陣も全て退ける事に成功する。
さて、小型恐竜のヴェロキラプトルと大型恐竜のアロサウルスを同じように切り裂いたように見える【玄天上帝】だが、実は少し種がある。その種こそ【玄天上帝】の最たる特徴にして最大の能力である降らせた雪に付与したとある能力が関係しているのだ。
漫画版封神演義という作品をご存知だろうか?
原作は中国四大奇書の一つに数えられるこの物語はまぁかいつまんでいうと仙人と仙人の派閥がそれぞれ人間の国に加担した戦争を描いた物語なのだが、まぁスケールがでかい。で、その作品を前世でとある天才漫画家がリメイクした名作漫画版封神演義である。で、その最終盤にほんの一回限り登場する【
その名も【
理由その1。魂魄、つまり魂とはこの世界においてはSPであるから。この世界ではスキルを使うのも身を守る防御力も体力すらも全てSPという数値で表現される世界である。で、このSPの正体は魂の力なのだ。つまり触れるだけで敵の体力、防御力、スキルを使うための力全てを一度に奪うことができる。つまり死ぬほどこの世界とこの能力は相性がいいのだ。良過ぎると言っても過言ではない。
理由その2。事実上回避不能。広範囲に吹き荒れる吹雪の中、誰がその雪の一つ一つを避けられるというのか。
理由その3。その雪だけでは誰も殺さないこと。これは俺が事前に組み込んだ手加減の部分に当たる能力で、どれほど吹雪に吹かれようと雪が降り積もろうとそれだけでは死なない。もちろんどれほど強大な敵も最終的には指一本動かせなくなるが。つまり他人のパワーレベリングにはもってこいの能力だといえる。
そして最後の理由。かっこいいんだよね、この【
ーー深々と溶けるがいい。
その後、吹き荒れた吹雪と降り積もった雪によって俺に襲い掛かろうとした恐竜どもは全て近づくことすらできずに雪の下に沈んだ。何もかもが真っ白になった世界で俺はほおと白い息を一つ吐いた。
試運転は上々。欠点はいくつかあるがそれは最初から織り込み済みで、ほとんどは使い手である俺が強くなれば解決する問題だ。ドロップアイテムの回収だけは絶望的に面倒だけど。
そして俺が自己評価する以上に一連の全てを間近に見ていた吉行さんの一言がこの【玄天上帝】の評価の全てだと思う。
「これが……、【
同感である。原作小説で主人公がかなり無法な武器や能力を持っていたが十分に負けていないと自画自賛できる出来になったと思う。勝てると言い切れないのがヤツの本当にやばいところだが。
で、目の前に積もった雪を見ながら俺は今途方に暮れていた。
なぜなら、先ほど言ったようにこれだけでは敵は瀕死なだけで誰も殺せてないので倒すには雪をどうにかしないといけないのだが。
いけないのだが!
ただでさえ4段階の【
あー、しゃーない。お願いだからみんなは耳を閉じていてほしい。あー恥ずかしい。冬を終わらせる方法は簡単だ。春を呼べばいい。
だからーー
「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花」
「今を春べと 咲くやこの花」
競技かるたの「序歌」として有名なこの和歌を俺はこれから何度詠う事になるんだろうなぁ、とものすごい勢いで回収されていく経験値と組み込んだ【SPコンバーター】のスキルによりSPが回復していく感覚を初体験しながら俺はどこか遠くを見ていたのだった。
感想、評価気が向いたらお願いします。
やりたいことの半分以上やりきった。やったぜ。
独自設定
人造遺物(アーティファクト)・降神級大薙刀【玄天上帝】
属性【冬】 降臨した神【玄武】
能力
【覚醒】することで場の瘴気を変換し超広範囲に渡って世界を【冬】に塗り替える魔道具。
その範囲内に吹く風は使用者の敵の動きを鈍らせ、第二段階以降で降る雪は敵のSPを直接溶かす雪となる。
最大第四段階までの【覚醒】が可能。この能力を基本としてその他様々な力を複合的に持つ文字通り超級の武器である。
厨二病すぎるのが玉に瑕。
元ネタは作中でも言及したように漫画版封神演義の【誅仙陣】です。