【俺の女は】ハイスクールハックアンドスラッシュの世界に転生したけど、なんか質問ある?【俺のもの】 作:笛吹き用
「さてと……、急に暇になったけどどうすっかな……」
火曜の昼下がり。気晴らしに食堂での昼食を楽しんだ後、そう誰にいうでもなく呟きながらブラブラと校舎の中を歩いているのは新進気鋭のBランク倶楽部メンバーである【
明らかに手持ち無沙汰なのだがそれも無理はない。火曜日は普段なら昼から美由か誰か【
(お、今の子可愛いな。……でも目が死んでてイマイチちんこにこねぇんだよなぁ)
外にいる頃から変わらない癖で、すれ違う女子をチラリと見ては品定めをしながら歩いていく。どうしようもないほどの女好きで中学時代に手を出してはいけない上流の女に手を出してしまいその代償として学園に叩き込まれた蓮であるが、未だその悪癖は治るどころかこの学園の環境もあってますます酷いことになっていた。
とはいえ彼のようにチラリと確認する程度はこの学園では可愛いもの。むしろ紳士的ですらある。いや、道ゆく女子が蓮のことを知ればその大多数が喜んでその場で股を開いて媚びを売り喜んで身体を差し出すだろうし、そのことを蓮自身も十二分に知っていた。
それほど今の蓮は強い。入学からわずか三ヶ月ほどで【
王様のように振る舞うことが許される強者であるが、本当の王様の力を思い知らされている蓮は以前の未熟な自分のようなお山の大将には戻れないし戻る気もない。
そう思うのは今の自分は環境に恵まれていることを理解しているから。例えば今のパーティのメンバー一つとってみてもみんな付き合いやすいいい奴らなのだ。
一見気難しいが責任感があり頼れるリーダーである修斗。
そのパートナーで控えめな眼鏡美人でありダンジョンでは頼れる探索役であるなずな。
考えなしの馬鹿だが熱血漢で気持ちのいい馬鹿である慎之助。
ビビリで小心者の癖に変に開き直るのがうまく、とっくに【グループ】でも屈指の強者なのにいつまでも自分を凡人だと思い込んで努力をやめない一平。
そして入学当初からしばらくは自分が囲っていた女だったが、そこから離れて生きる道を見出し今キラキラと輝きながら自分を翻弄してくるまでに成長した美由。
強さだけでなくどいつもこいつもこの地獄のような学園の人間とは思えないほどいい奴らであり、自他共に認めるちゃらんぽらんである蓮も最近自分自身の中に変化を感じていたところだった。
(結局俺がヤりたくなるようなイイ女はちゃんと生きている女ってことだ)
昔のようにヤレる女なら誰でもいい頃なら、今頃道ゆく女に片っ端から声をかけて物陰に連れ込み気が済むまで腰を振っていただろうが今の自分はそれでは物足りなくなってしまった。
「……帰るか」
ぶらり歩きに飽きた蓮がそう呟いて踵を返したその時である。
「ねぇ、そこの貴方。少しお話がしたいのだけれどいいかしら?」
という女の声が蓮の足を止めた。
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学園に12枠だけ存在するAランク倶楽部の一つ【
(うわ、自動ドアじゃん! 懐かし!)
と、学園に来てからついぞお目にかからなかった自動ドアの開閉する様子に妙な感動を覚えた彼がお宝を見つけた子供のように目をキラキラさせてその場で座り込んだからだ。
「……えっと、蓮くん。自動ドアがそんなに気になる?」
「ああ、すんません。学園来てから自動ドアなんてお目にかかってなかったんでつい」
「そう……。なら気が済むまで見ていてもらっていいけれど……」
「いや、もういいっすよ」
と言い立ち上がった蓮は今度こそオフィスビルそのもののようなAランク倶楽部の部室に足を踏み入れた。
(ふ〜ん、Aランク倶楽部の部室ってこんな感じになってんだな)
以前は当たり前に感じていた鉄筋コンクリートでできた機能的でシンプルな美しさを繁々と見ながら蓮は同時に、
(……拡張性が低くて使いずらそうだな。この辺が達郎さんがわざとAランクを目指さなかった理由か? それだけじゃないんだろうけどな)
と感じ自分たちの群れを統べる王様の考えに少し触れられた気がしたことに嬉しそうに笑う。そうして興味深くエントランスのあれこれを観察する様を、格上のAランク倶楽部の部室へと足を踏み入れた感動と勘違いした女子がこれも嬉しそうに話しかけてくる。
「どうかしら? 私たち【
「そうっすね。すげーっす」
それに対して蓮は感銘を受けた様子もなく返したので、彼女は肩透かしを食らった気分になった。
(なんなの? この子。何を考えているかさっぱりわからない。それ以上に新入生のくせにこの場に連れてこられて一切何も緊張を見せないのは何故? ただの阿呆なの? それともとんでもなく豪胆なの?)
今まで彼女が培ってきた学園の常識がまるで通用しない。今まで自分がここに連れてきた入部候補者は大なり小なり緊張し可愛らしい姿を見せたものだがそんな様子は目の前の男の子にはカケラも見られなかった。ただ興味深げに色々と見て、そして何かに納得したような表情を浮かべることを繰り返す蓮のことを異常なものを見る目で見るようになっていった。
わずかな間無言で煌々とLEDの光が灯るビルの中を進む2人。受付の奥にあるエントランスホールの片隅にあるソファースペースまで来たところで男の声がかかる。
「ようこそ、【
「うっす。こんちわ先輩」
立ち上がって声をかけてきた男の先輩に対して軽く会釈を返すことで挨拶に変えた蓮は笑顔を浮かべて目の前の男を観察する。
(……今の俺よりは格上だな。クラスは流石にわかんねーけど第四段階職の【
身のこなし、その身に秘めた
GW明け最初の相談会での達郎とのやり取りを思い出す。
『君はとても優秀な【
そう前置きをした達郎から【
いや、部分的には既に超えているとさえいえる。
(
つまりは典型的な【
「ははは、すごいね君は。物怖じしないのかな?」
「したほうがいいすか?」
「いや、面白い! 選ばれたエリートたる【
(……聞いてた通りの選民思想。ここまで来ると笑えるな)
そう言って嬉しげに笑いながら話し続ける男に内心での評価をさらに下げる蓮。暇つぶし代わりに噂のAランク倶楽部とやらを見にきたものの正直肩透かしもいいところだ。見るべきものは見たと感じた蓮はモードを切り替え、この選民思想に染まった空間から敵対せずにさっさと出ていく方針に切り替えた。
「先輩すげーっすね。かなりレベルの高い【
「ほう……、君は見た目の、そのなんというか……、軽やかさに反して随分と勉強熱心なんだね」
「そこは別に普通に軽そうでいいっすよ。いや、勉強熱心というか、いずれ自分も使えるようになるかもしれない魔法のことぐらい誰でも調べるでしょ? 何になれば何が使えるようになるのか、別の可能性を選べばどうなるのか、調べたり考えたりするのは当然っしょ?」
「……皆がそうであればどれだけいいことか。才能に恵まれ【
そう言って肩をすくめた後、真剣な顔になった【
「……失礼ながら君のことを調べさせてもらった。スキップクラスチェンジとはいえ、一年生が夏休みにもまだ随分と時間があるこの時期に【
「……そりゃどーも」
(残念、俺はスキップはしてねーよ。あと情報が古すぎだろ。レベル40とかいつの話だよ。俺はとっくに第三段階職なんだが? いや、俺の情報を抜いた奴は正しく報告したのに、コイツが信じなかっただけか? それとも仮にもAランク倶楽部のくせに高レベル【
そんな蓮の内心の呆れに気づかず男は急に嘆き始めた。
「それだけにもったいない! スキップクラスチェンジでいきなり【
「いや、流石にそれは言い過ぎでは?」
「いや、違うね! 仲間を庇う君の思いは美しいが間違っているものは間違っているとこの学園の先達として言わせてもらおう! 君にはそれだけの才能がある!」
「……は、はぁ」
蓮はタガが外れたように熱を込めて語り続ける男の狂気に気持ちの悪いものを感じながらこの場にきたことを後悔し始めたが、当然陶酔している男は何も気づかず見開いた眼を血走らせながら蓮の肩を掴んだ。
「君にいいものをみせてやろう。来たまえ!」
○ーーーーーーーーーー○
「で、エレベーターで連れて行かれた先で引き合わされたのがその子ってわけだ」
夕暮れ時の【
「はい……。エレベーターを降りた先に女の子が何人も拘束されてる空間があって、その場でお近づきの印って言われてコイツを押しつけられました。で、強引にその足でパートナー契約を結びに行かされましてそのまま……。まさかあっこまで頭イカれてやがるとは。帰ってこれてホントよかったー。真白、挨拶して?」
蓮の後ろでずっと静かに正座していた真白と呼ばれた無表情な美少女が主人の命令に従ってまるで機械が話しているかのように無機質な声で挨拶する。
「はい、ご主人様。お二人にはお初にお目にかかります。
そう言って折り目正しく頭を下げる少女。
「……これですよ。……すんません」
そんな彼女に挨拶を受けた2人の様子を座卓に顔をつけたままチラリと確認した蓮は、2人の顔を見ると明らかにドン引きしながら嫌悪感に顔を歪めていたことにやはりそう思うのは自分だけではないのだなと妙な安心感を持ったのだが、流石に自分の軽率な行動が招いた事態を反省したのか身体を起こしてきちんとした姿勢をとりあらためて達郎と純に向かい合って頭を下げた。
「間違いなく
その姿を見た純が真剣な顔で蓮の目をしばらく見ていたが、やがて小さく笑ってつぶやくように言った。
「……【グループ】でも指折りのちゃらんぽらんな色男の君がついに年貢を納めたか。わかった、【
「【
「僕が今から報告してくる。今なら千歳ちゃんが襲い始める前にギリ間に合うはずだから。あとは任せたよ」
「了解。じゃあ2人は早速今から俺んち行ってゆみりに処置してもらっちゃおうか」
「あっ、ありがとうございます! ほら、真白。お前もお礼を言うんだぞ」
「はい。ありがとうございます」
真白のその機械的な返事を受けて思わず苦笑した達郎が立ち上がると蓮が真白を促して後に続く。
そのまま部室から少し離れた場所にある達郎の住まいまでの道行の途中、不意に蓮が前を歩く達郎へ感謝の言葉をこぼした。
「達郎さん、ありがとうございました」
「ん? 何が?」
「あの最初の勉強会の時、俺の鼻っ柱を叩き折ってくれて」
「え? 何? どういうこと?」
そこで思わず振り向いた達郎に向かい、大きく息を吸い込んだ蓮が意を決したように頭を下げた。
「あの日あの時あんたに鼻っ柱折られてなかったら、俺も今日出会ったあの【
しばし呆気に取られていた達郎はやがてふっと抜くように笑ってから、
「さすがに鼻っ柱を折って感謝されたのは初めてかもなぁ」
とだけ言ってから再度振り返って歩き出した。
そのやりとりを見ていた真白の瞳にはその時まだなんの意思も宿っていなかった。
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その後の話を少しだけ。
その日以降、Aランク倶楽部【
それからというもの初めてのパートナーを迎えた蓮は別人のようになった。あれだけ好きだった女遊びがなりを潜め、代わりに歳の離れた幼い妹に対し甲斐甲斐しく世話を焼く兄のように彼女に接する姿を見せるようになり周囲の人間を驚かせた。
そして夏休みが終わる頃。【グループ】でも屈指の実力派である一平をリーダーとしたパーティの中で、自らの意思で無数の魔道具を駆使してイキイキとした瞳で活躍する1人の少女の姿が。
それを見た蓮は満足げに笑い、誰彼構わず自分のパートナーのことを自慢したという。
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