【俺の女は】ハイスクールハックアンドスラッシュの世界に転生したけど、なんか質問ある?【俺のもの】 作:笛吹き用
世の古今東西を問わず男であれば誰でも、一生に一度ぐらいは女の子に好きになってもらいたい、愛してもらいたい、そう思うもの。
その相手が可愛い女の子であればなおさらであるが、さてはてそんな栄誉に給われる男が果たしてこの世にどれほどいるものであろうか? せいぜい……二、三割といったところだろうか?
顔も平凡以下、運動神経も良くなく、体力はなく、筋肉もない。そんな男に女子と仲良くなれるコミュ力などあるはずもなく、当然のようその幸せな二、三割には入れなかった俺。そんな自分で言うのもなんだがうだつの上がらない人生を送ってきた俺だが、そんなパッとしない一度目の人生の最後については何も覚えていない。
病気か、事故か、はたまた自殺か、まぁ今となってはどうでもいい。とにかく俺は転生した。生前流行りに流行っていたファンタジーお決まりの転生ってやつだ。それを経験した俺が物心ついてすぐやったことは「ここがなんの世界なのか?」を調べることだった。
そもそも今のこの世界が、『異世界転生』であるかどうか? これがわからなかった。
なぜなら俺が生まれたのがどう考えても日本だったから。
だって二度目の人生も畳、障子、ふすま、日本語に囲まれ、箸で米食って味噌汁飲んで育ったんだもの。お七夜、お食い初め、七五三、他にもたくさん全部やったんだもの。そんなイベントを全部体験した俺としては、ここが現代日本、もしくはそれに極めて近い世界であることだけは確信していた。ていうかこれだけ揃ってて他のどこだっていうんだよ。もちろん文字も共通で、お陰様でひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字、あとは基本的な英語ぐらいならなんの勉強をせずとも読めたし、それだけ同じで今さら数字だけ違うなんてこともなく、おかげさまで俺は子供時代に勉強した記憶はほとんどない。
当然、天才扱いされた。いや、神童扱いだった。(ただのズルだから)恥ずかしくてあんまり褒めないで欲しいと行ったらこの歳で謙遜するとはこの子は生まれながらに礼儀を知っていると褒められる始末だった。
まぁ、俺の幼い時の自慢エピソードはどうでもいいと思うので続きを話すことにする。
そんな前世と差を見つける方が難しいぐらいには現代日本に酷似した世界だったから、調べること自体は拍子抜けするほど簡単だった。なんのことはない、死ぬほど裕福な家庭だった新しい我が家はそこそこ長い歴史を持ち、家業そのものは日本の誇る伝統工芸である刀を扱う家だったが、新しいものを取り入れることにも積極的で、前世の最後に使っていたPCやスマホと比べればバカみたいな値段でバカみたい遅かったが、もう俺が自分で動けるようになる頃には当然我が家には最新式のパソコンがあった。パソコンがあり、文字が同じならばインターネットで世界とつながることができる。
あとは拍子抜けするほど簡単だった。父の書斎に忍び込み事前に父の膝の上でコッソリ確認しておいたパソコンのパスワードを入力。あとは幼い指でキーボードを叩いて小さな手でマウスを操作し、ただ検索するだけでよかった。
だから俺が実際にやったのは俺の魂にきざまれたキーワードをとにかく検索にかけていく作業だけだった。
ーー【スピード●ゴン財団】。ヒットせず。ほっとした。
ーー【冬●市】。ヒットせず。かなりほっとした。
ーー【中央トレ●ン学園】。ヒットせず。ちょっとがっかりした。
ーー【●pple.inc】。ヒットした。一応創業者の名前を確認後、親に頼んでお年玉で株を買った。
ーー【株式会社●ANDAI】。ヒットした。神の実在に感謝を捧げ、親に頼んでお年玉で株を買った。のちに株主特権にものを言わせた俺の部屋は前世と同じく積みガンプラでいっぱいになる。
ーー【●シア教】。ヒットせず。思わず渾身のガッツポーズした。
ーー【ノストラダムスの大予言】ヒットしまくった。ただ既に世紀末は数年前にすぎていた。
ーー【テイエ●オペラオー】ヒットしまくった。それはもうヒットしまくった。ただ主戦騎手が変わっていて、あのレジェンドを背にクラシック三冠を制覇した後、翌年凱旋門賞を日本馬で初めて制覇し、日本の世紀末覇王ではなく世界の世紀末覇王になっていた。俺はそのせいでこの世界がウ●ニングポストの世界かと本気で疑った。
ーー【ディ●プインパクト】ヒットした。というか現在進行形で盛り上がっていたので三冠最後の菊花賞の時に父にせがんで招待してもらい馬主席で観戦した。俺は号泣した。そしてなぜかその年の有馬記念も激戦ではあったが勝利し、翌年あのレジェンドに二度目の凱旋門賞制覇をプレゼントしたことで、俺はやっぱりここがウイニングポ●トの世界ではないかと再度本気で疑った。
そうして思いつくままにさまざまなキーワードを検索していた俺がふと気まぐれに思い出したとあるキーワードをまだ小学生にもならない幼児のたどたどしい手つきで入力した。前世でハマった18禁小説の舞台であり、それを元にした人生で一番どハマりしたゲームの舞台でもあった場所の名前。原作小説通りならネット検索では引っかからないと知ってはいたがそれでも検索せずにはいられなかった。
ーー【豊葦原千五百秋水穂学園】。ヒットせず。
安堵のあまり思わず胸を撫で下ろし後ろを振り返った瞬間、目にしたものに俺は絶望のあまり天を仰いで絶句した。
19●●年 豊葦原千五百秋水穂学園 卒業アルバム
これが俺が【ハイスクールハックアンドスラッシュ】の世界、もしくはそれをもとにした同人RPGゲーム【ハイスクールハックアンドスラッシュ バトル&バイオレンス&サバイバルラブな1Year!】の世界に転生したことを自覚した最初の瞬間である。
なんで父親の部屋にこんな特急呪物があるんですかねぇ? と本気で父を問い詰めたかったがそれをやったら全てが終わる気がした俺は全ての検索履歴を消して逃げるようにパソコンから離れ、『あー、どうしよ』と考えた。転生して新しい人生を歩む上で、確かにモテたいとは思っていたがモテる代わりに命がケツを拭く紙より安いあの学校に行きたくはなかった。
とはいえ、よっぽどのことがなければ俺には無関係だろうと自分に言い聞かせた。家は明治の頃に興ったそこそこ歴史のある名家だったし、そしてうちを本家とする企業グループはとにかくデカかった。というか日本の四大財閥になぜか一個プラスされていたのが我が家だった。そして逆に不安になった。事業規模がでかければでかいほど没落したら学園送りになる! と恐怖に駆られた俺は次期財閥総帥と現総帥である父と祖父に「テレビで言ってた。バブルが弾けて大変だって。お家は大丈夫?」と子供らしい心配のふりをして探りを入れたら、父と祖父は目を見合わせて笑いながら大丈夫だと断言し、異口同音に「日本そのものが経済的に崩壊しても我が家は生き残るから」と言った二人の目はマジだった。
とりあえずそのことで俺は安心した。【豊葦原学園】はうちのような名家からなら比較的安全な特待生枠の『華組』での入学になるという設定があったはずだし、父もその特待生枠の『華組』を卒業したに違いないし、存在自体がダンジョンへの生贄以外の何者でもない『普通科』での入学は家が落ちぶれさえしなければそもそも行かなくて済む、はず。そう思った俺は一旦このことを記憶の隅へと追いやった。現実逃避したといっていい。
そうしてその後の十年、家業(事業ではない)について学び、実践し、それを本当に理解するのに必要だと剣術、槍術、薙刀術などの武芸を習わされ、学び、実践し、今世の俺の頭脳と体の優秀さはそれらをスポンジのように吸い込み気が付けば夢中になってそれらにのめり込んで、その合間合間にガンプラを買って積んで作って積んで飾って積んでその様を見られるたびに弟や妹、さらには口うるさい同年代の従姉妹や又従姉妹たちに呆れられながら、この世界が【ハイスクールハックアンドスラッシュ】の世界だとかどうとか本っ〜〜〜〜当に全部完璧に頭から忘れ去って、そろそろ高校受験だなぁ、でもうちの中学は中高一貫校だしエスカレーターでいいし楽だな! なんて呑気に考え始めた中学二年生の元旦のこと。
ーー俺は父親と祖父に初代様からのしきたりで家を継ぐための絶対条件だし、あと俺たちもいったからと【豊葦原千五百秋瑞穂学園】
頭、真っ白になったわ。
とりあえず二人からの話を最初から最後まで聞き終わってから俺はおもむろに拳を握りしめて立ち上がり、前世も含め人生初めての取っ組み合いの大げんかをした。ついに息子(孫)に反抗期が来たか! と大喜びの二人に簡単に鎮圧されたが。
最後に一言。クソ親父とクソ爺! 五年後、実家帰った時覚悟しとけよおおおおおおおおお!!
○ーーーーーーーーーー○
そんなわけでこの学園に入学する以前に学院卒業生の父(【刀匠】クラス持ち)や祖父(やっぱり【刀匠】クラス持ち)、曽祖父(ひい爺様。当然【刀匠】クラス持ち)、さらにはいまだに存命である高祖父(ひいひい爺様。当たり前のように【刀匠】クラス持ち)からも古今東西の伝統的な製法から現代的なプロセスで作るものまで思いつく限りの刀剣造りのノウハウを叩き込まれたこの俺は、初めからこと刀剣製造、特に刀鍛治とその研ぎに関しては他の学園生とは一線を画す存在だった。
そんな財閥の御曹司なんてもんどうでもいいわい、うちの跡取りは鍛治の才能と研ぎの才能が全てだろ! ってノリの鍛治師と研ぎ師の家に生まれて子供の頃から鍛治と研ぎに関して『神童』の看板を一度も下ろすことなくこの歳まで来たんだが、学園に来てまさかの原作でも主人公パーティのアタッカーであり天才剣術少女である沙姫以外にはいなかったはずの人間カテゴリ【
そりゃダンジョンダイブ解禁後二日目に拾った【ゴブリンの槍】をその日のうちに【
口にだして初めて気づいたわ、我ながら無茶苦茶なことしてんな! でもできると思ったし実際できたし仕方ないんだよなぁ……。
そんな俺が【
そりゃ鍛治師パワーにして100万パゥワーぐらいありますわ。もうウッキウキですわ。
だからあとは己が思うがままに作るだけである。
身は事前に寮で清めてきたのでまず最初に実家でも鍛治を行う時には着ていた白い作務衣に着替え、神棚に御神酒を備えてお参りをすることから始める。
その後、購買で買ってきた大量の炭を鍛治用に適当な大きさに炭切りし、それが終わったら炉の前に必要なものを全部揃えた上で炉に火をつける。そして【
まずは実家から持ってきた玉鋼を炉にくべていく。それが充分に中で溶けたら大量に取ってきた【ゴブリンシリーズ】の中でも質の良いものを選んで同じように炉にくべていく。本来ダンジョンの中に充満する
そこからは通常の段取りで取り出した玉鋼をひたすら叩いてはまた熱することの繰り返しで鉄から余計な炭素と一緒に余計な概念を取り除いていく。やがて出来上がったのはゴブリンという余計な属性が完全に抜け去った純粋な
すっご、これやばいかも。手に持って感触を確かめつつ、【鑑定】スキルでよく見てみたら七割が変質して未知の物質になっていた。マジかよ、これダンジョン産のマジックアイテムの基本素材だろ。とりあえず俺は便宜上、これに
こいつはすごい素材だ。【小鬼鉄】と違いゴブリンへの特効は無くなったがそんなものの必要のないほどこの鋼は良い。いつまでも見ていたくなるが今日はやることが山盛りなので早速作業を進めていくことにする。
次に小割を行い
初めて触る素材の鋼だが、今までとは段違いに俺の感覚が研ぎ澄まされておりなんの問題もなく順調に仮付けを行い、またテコ棒を炉へと戻す。それから数回同じことを繰り返し良い頃合いになったので金敷に載せ数回打ち叩く。古い藁灰を払って新しい藁灰と泥の汁をかけ再度火床へと戻す。それを繰り返しながら打ち固める。残念だが向こう鎚(相槌ともいう)がいないので機械で代用。その後も作業を続け本沸かしを経て、刀鍛冶といえばこれだという折り返し鍛錬に入る。
その後もいくつもの工程があるが流石に割愛する。水減しも沸かしも折り返しもそうだけど焼き付けなんて家の秘伝すぎてこれ以上話せるか。研ぎなんてもっと話せんわ。ガチで家のものに殺される。
夜があけ、登校時間を過ぎた頃、俺の手には一振りの短刀の刃があった。
ーー短刀【御守】。
出来上がった短刀の姿を眺める。ちょうど一尺(約30.3cm)。透き通った肌が美しい平造りの直刃の短刀。それが青白い清浄なオーラを放っていた。我ながらいい出来である。惚れ惚れするような力を感じる。現状最高傑作といっていい。
というわけで俺が純魔玉鋼で作った最初の一振りはあやかへのプレゼントだ。どうせ俺に付き合って碌でもない学園生活になるんだ。少しくらい願いを込めた贈り物をしてもいいだろう。何しろ俺の初めてのパートナーだしな。
……じゃあ、次。エリカのマチェット行ってみよかぁ! 見てろおおおお! 最高傑作更新してやるぜええええ!!
Foooooo! テンション上がってきたぁ!
その後、さすがに本来やるつもりだった薙刀までは時間が足りず、その日の深夜、完成した短刀とマチェットを持って【海燕荘】へと帰り着いた俺は、寝ずに俺のことを待っていてくれた二人に感謝と謝罪の言葉を一言告げてそのままあやかのベッドに倒れ込んで寝た。というか気絶した。
全く情けない。
何が情けないっていくら作業中スキル全開で使っていたからって、たかだか一徹程度でダウンしたことである。家で鍛治をやってたときは普通に三徹とか当たり前だったのに。そのことに俺はまだまだレベルが足りないことを実感した。
まぁ、二人に夜には帰るって約束してなかったら絶対意地でもそのまま薙刀も打ってたけどな。そして完成させて研ぎ終わった瞬間、そのまま鍛治場で寝落ちしてたわ。
鍛治師で研ぎ師なんてそんなもんよ。多分俺が死ぬときは鍛冶場で鉄叩いてる最中か刀研いでる最中か、それかガ●プラ組み立ててる最中だもん。
初代様からの家訓にこうある。「畳で死ぬな。死ぬなら鍛治場で死ね」と。
さらに入学前に裏の家訓も教えられたわ。「
子孫に腹上死を推奨してんじゃねーよ、ご先祖様。
4/27 学園のネット検索に関する部分を加筆修正。
オリジナル設定②
純魔玉鋼ーー達郎が生み出した純粋な瘴気と玉鋼の混合物。割と存在がやばい学園における【職人】の到達点の一つ。本来は【素材製造士】の領分だが、こと鋼に関することだったので達郎の天才性がこれを可能にした。これを使って武器防具、装飾品を作るとランクは別としてマジックアイテムが出来上がる。
刀とマチェットの作成時間について
現実の刀の作成に関してですが、本来は一振り仕上げるのにおよそ1ヶ月はかかるそうです(少し調べた結果、期間はバラバラですが刀身のみに限定しても少なくても一日二日でできるものではないようです)。
ただ、前話の考察にも書いていますが、原作内で登場する最も有名な【王虎水刀】の最大製作日数は5日(【ブルーソード】引き渡しから【水虎王刀】お披露目まで)で、しかも材料が足りなかったので完成できなかったという描写があり、さらにその材料を引き渡した翌日に沙姫が完成した【王虎水刀】を初めて使うシーンがあります。このことから作成期間自体はもう少し短い可能性があると私は考えました。
これを踏まえて、学園の職人クラスのスキル、職人自身の腕、さらに工房内の瘴気などの条件があれば時間は大幅に短縮できるものであると考え、主人公の今回の無茶な武器作成時間を設定しています。
もう少しメタなことを言うと、作品全体のテンポを落とさないための措置でもあるので、皆様それぞれにご意見あるかと思いますが、どうかご容赦ください。
なお、本作主人公の鍛冶と研ぎの腕と才能に関してはただの気違いチーターです。
参考資料 名古屋刀剣ワールド様
参考動画投稿者様 プロセスX様 ジャパニーズインダストリー様
ありがとうございました。
なお鍛治描写などで誤りがある場合、全て私がポンコツなせいです。
一応念のための小ネタ解説
ス●ードワゴン財団ーー『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する大富豪スピードワゴンが設立した財団。これが存在するということはスタンドバトルの恐れが大。
冬●市ーー『フェイト/ステイナイト』で登場する主人公たちの住む危険が危ない街。
中央●レセン学園ーー『ウマ娘プリティーダービー』でウマ娘たちが通う学校。
●pple.incーーリンゴのマークの世界的大企業。創業時に近い時期に株を買ってるだけで億万長者になれた。
株式会社BAND●Iーーこの会社の存在がガノタたちの神に『あの作品』を誕生させたのでやはり神。
メシ●教ーー『真・女神転生』シリーズに登場する宗教団体の皮を被ったおぞましい何か。ナンバリングにもよるが大体何もかもコイツらのせい。
ノストラダムスの大予言ーー20世紀末、16世紀の占い師が「1999年に世界が滅ぶかもよ」って言ってたとか言ってなかったとかで世界中が大騒ぎになった。
テイ●ムオペラオーーーG1レース7勝。日本最強馬論争を語る上で絶対に外せない2000年度年間無敗を達成したあまりにも偉大すぎる世紀末覇王。またの名をラクダのおっちゃん。
●ィープインパクトーー同じくG1レース7勝。日本最強馬論争を語る上で絶対に外せない無敗三冠馬にして日本近代競馬の結晶。その衝撃の走りは「走る」ではなく「飛んだ」と評された日本競馬歴代最強馬筆頭候補(※ 異論は認めます)。
ウイニン●ポストーー競馬の馬主兼ブリーダーになって自分の所有馬を国内や世界中のレースで勝たせることができる競馬ゲーム。架空の馬はもちろん、史実の馬も登場し保有でき、さらに馬だけでなく史実のジョッキーも実名で登場するため、本来の馬とジョッキーの組み合わせで楽しむもよし、IFの組み合わせで楽しむもよしとなっている極めて自由度の高い競馬シュミレーションゲーム。
なお、書き溜めた分終了です。ごめんなさい。