ゆるキャン△ 少女達の秘め事 作:斉藤プロダクション
斉藤恵那はどこにでもいる一般的な女子校生だ。短く切りそろえられたショートヘアに、捉えどころのないマイペースな性格。イタズラ好きな面もあるものの、親友や同級生に対する面倒見の良さは誰もが認める一面だ。最近ではキャンプに誘われることも多く、愛犬と共に思い出を作るためアウトドアに挑戦する日々が続いている。
そんなとある日の昼下がり、図書室で休憩をしていた恵那に、彼女の親友であるリンが声を掛ける。
「斉藤」
「ん?どうしたのリン」
「今度の土曜日、なでしこと日帰りキャンプすることになったんだけど、斉藤も来る?」
「なになに〜、遂にソロキャンパーの肩書きを下ろす気になったの?」
「そんなんじゃないし」
「またまた〜」
「別に今でも一人で行くキャンプも好きだよ。ただ、何となく他に人が居てもいいかなって思っただけ」
「もう、リンったらツンデレなんだから」
「べ、べつに……」
ことある事に『一人の方が気楽で良い』という風に、野外活動サークルの面々からの誘いを断ってきた少女のセリフとは思えない。
親友の成長にしみじみと感動しながらからかってあげれば、予想通りに良い反応が帰ってきてホクホクしている。
「……それはそうとして、どう?土曜日空いてそう?」
「そうだったね。えーっと……」
これ以上話を続けるのも悪手だと思ったリンは、改めて恵那に予定の有無を聞いた。何か予定を入れていたかとスマホを確認すると、カレンダーに小さなピンクのハートマークが着いていることに気が付く。
「あー、その日は無理っぽいね」
「珍しいじゃん。斉藤が土日に予定入れてるなんて」
「うーん確かに?」
「まぁしょうがないね。今回はなでしこと二人で行ってくるよ」
「うん。お土産よろしくね〜」
「いや近場だからお土産なんて買わんぞ」
「なぬ?お主、某の頼みが聞けぬというのか」
「誰だよ」
珍しいリンからの誘いだったが、予定が入っていたため仕方なく断ることにした。本当は行きたかったけど、キャンセルしてしまったら評判が落ちてしまうので致し方ない。
「また写真でも撮ってきてよ。お土産はお話で勘弁してあげよう」
「うぃ」
用事を済ませたリンは図書室を後にした。その後ろ姿が見えなくなったのを確認した恵那はスマホを再度点灯させ、メッセージアプリを起動する。
[土曜日よろしくね恵那さん]
[こちらこそ!ーーさんに会えるの楽しみにしてますね!]
[当日はどこかに迎えに行こうか?]
[大丈夫です!19時にブックホテル集合で!]
[了解です。ではまた]
[はーい( ˙꒳˙ )ゞ]
短いやり取りを終え、スマホをポケットにしまう。まだ数日あるというのに、その事を考えると少し体が火照る感覚に見舞われる。
そう、恵那には親友にも話していない秘密があった。(まぁ厳密に言えば聞かれていないから答えていないだけで、特に後ろめたさがある訳では無いが)
それは、自由に使えるお金を捻出するという建前の元、自分の性欲を発散するためのアルバイトに精を出しているということだ。
同級生よりもほんの少しだけ性欲の強い恵那は、気持ちよくなれてお金も稼げるという一石二鳥なアルバイトをしている。住んでいる場所が娯楽の少ない田舎であるのも相まって、最初は暇つぶし程度に知り合った大学生とセックスをしたのが始まりだが、今となってはそれが彼女の生活の一部となっている。
「ふふ、楽しみだな♡」
じんわりと滲み出る何かを自らの秘所に感じた彼女は、煩悩を振り払いながら午後の授業を受けるため教室へと戻って行った。
◇
楽しみにしている予定ほど、やってくるのはあっという間だ。気付けば土曜日の午後15時。恵那は自室で愛犬のちくわと遊びながら準備を進めていた。ピクニックに行く前のような純粋な笑みを浮かべている少女が、小一時間ほど後には会ったこともない男の人と肌を重ねているとは誰も想像できないだろう。
「それじゃあ出かけてくるね〜」
「ワンッ」
「今日は友達のところに泊まりに行くんだったな。道中には気をつけて、楽しんできなさい」
「ありがとうお父さん!うん、楽しんでくる♡」
「?あぁ、行ってらっしゃい」
「いってきまーす」
ちょうど一泊分の荷物が入りそうな小さめのバッグを肩にかけ、恵那は自宅を後にした。
10分ほど歩いた頃だろうか、人気のない道にやってきた彼女は遠くから車のヘッドライトが近付いてきた事に気付く。
その正体は先程呼んでおいたタクシーだ。
恵那の前に停車したタクシーは、後部座席へと続く扉を開いて彼女を車内へと招待する。
「おじさん、今日もよろしくね」
「あいよ。いつものところで良いかい?」
「うんそうそう」
「じゃあ出るよ」
彼女を載せたタクシーは、もうすっかり暗くなってしまった夜道をゆっくりと進んでいく。
「しっかし、あれだねぇ」
「ん?どうかしたの?」
「恵那ちゃんみたいな可愛い子がこんな事してるなんて、いやはやお相手が羨ましいね」
「えー、そんなことないですよー」
「ははは。謙遜することないさ、こないだテレビで見たアイドルよりもずっと可愛いよ」
「……もしかしておじさん、私の事口説いてる?」
じっとりとした声色が耳元で聞こえたことで、思わずハンドルを握る手に力が入る。
「そ、そんなことないさ」
「なーんだ。私、おじさんのことちょっと良いなって思ってたんだけどなぁ」
「ゴクリ」
「ちゃんと予約してくれたら、おじさんにも気持ちいいことしてあげるよ♡」
「……」
「自分の娘くらいの子にえっちなことしてもらえるチャンスってなかなか無いよ〜?」
逃げ場のない車内で、運転手は必死に道を外れないように運転を続ける。しばらく沈黙が支配するも、ようやく目的地が見えてきた。
「……着いたよ」
「ありがとおじさん♪」
メーターに表示された金額を電子決済で支払い、ドアを開いた恵那は去り際にボソッと声を残す。
「さっきの話、考えといてね♡」
その言葉を最後に、山中にそびえ立つ派手な電飾に彩られた建物へと少女は消えていった。
「……来週空いてたかな」