ゆるキャン△ 少女達の秘め事 作:斉藤プロダクション
「あ、恵那ちゃん」
「あおいちゃん!おはよー♪」
新しい週の始まる月曜日。日本で生きている人の大多数が嫌っている曜日だが、皆それを乗り越えながら生きていると思えば不思議と勇気が湧いてくる。
そんなことを考えていると、下駄箱で不意に背中から声をかけられる。
「月曜やのにえらい元気やなぁ」
「そうかなぁ、別にいつもと変わらないよ?」
「ほんま?」
「ほんまほんま〜」
「ならええんやけど」
普段はマイペースでだらけているイメージの強い恵那。しかし、先日のセックスで気持ちよくリフレッシュすることができたため、今日はいつもよりほんのちょっぴりお肌の調子が良かったのだ。
「せや、恵那ちゃんってどんなバイトしとるん?」
「ん?どうして?」
「ごめんごめん、いきなりやったな。そろそろウチも新しいキャンプ用のテントを買いたいなぁって思ってん。でもスーパーのバイトだけやとなかなか稼げんくて……」
「野クルでの活動もあるもんね」
「そうなんよ……。これ以上バイト増やしたらキャンプに行く時間も無くなってまいそうで、恵那ちゃんやったら割の良いバイト知らんかなーって」
「そういうことね〜」
状況を理解した恵那は頭を捻る。
「恵那ちゃんってちくわ用のテントとか結構良いお値段のするもの買うてるやん?あれって自分のお金で買うとるんやろ?」
「そうだね、ちょっと高かったけどちくわのためだし」
「お願い!この通りや!ウチにもアルバイト紹介して!」
「えーっ?うーん、困ったなぁ……」
自分のやっているアルバイトがあおいに合っているかは分からない。そもそも、セックスの経験はおろか、異性との交友もあまり無いように思えるあおいを誘って良いものか。
「うーん……まぁ、一応考えておくよ」
「ほんまに!?いやぁ助かるわぁ」
「まだできるって決まった訳じゃないから、そんなに期待しないでね?」
「考えてくれるだけでも十分や。ありがとうな〜」
嬉しそうに身体を上下に揺らすあおいをじっくりと観察する恵那。
まず特筆すべき点はセーターの上からでも分かる大きなおっぱい。揺れ方からして柔らかさも相当なものだろう。スカートから覗く黒いストッキングに包まれたむっちりとした太もも。安産型のどっしりとしたお尻があるのにも関わらず、ウエストはしっかりと締まっている。別レイヤーに存在している眉毛も、彼女の可愛い顔を引き出させるチャームポイントになっていた。
(……うん、このドスケベボディならすぐに稼げるな)
しっかりと吟味した結果、あおいは同性の恵那から見ても才能の塊であった。
「ほな、また連絡してな〜」
「……うん、結果分かったら返事するね♪」
それでも、あおいは大事な友達だ。確かに稼げるアルバイトだったとしても、男の人とえっちなことをして嫌な思いをして欲しくない。
しっかりと彼女の意志を確かめて、もしも大丈夫そうなら誘ってみようと決心する恵那であった。
「リーン、おはよー」
「うぉっ!お、おはよう……」
そんな出来事があった放課後、図書委員をしているリンの元へとやってきた。土曜日に行ってきたというキャンプの土産話を聞きに図書室に来たのだが、何やら様子がおかしい。
「そんなにびっくりした?」
「べ、別にそんなんじゃないけど」
「ふーん?……あ、今日も髪やったげよっか?」
「え?きょ、今日は遠慮しとこうかな」
それじゃ、と言いその場を後にするリン。いつものように親友と駄弁ろうとしただけだったのだが、何故か恵那の顔を見た途端顔を赤らめて挙動不審になってしまったのだ。
「体調でも悪いのかな?」
◇
「……」
図書室から逃げるように廊下へと出たリン。親友からの誘いや、約束していた土産話の事を全て差し置いてこの場から離れていく。
「結局聞けなかった……」
彼女がこんな行動をするのにはもちろん理由があった。
時は少し遡り、山梨県某所。リンは級友のなでしこと共にキャンプへ来ていた。
「今日恵那ちゃんも来たら良かったのに〜」
「しょうがないよ、アルバイトが忙しいみたいだったし」
「でもこんなに犬がいっぱい居るキャンプ場はそんなに無いよ!」
「確かに」
彼女らは以前より目をつけていたドッグラン併設のキャンプ場へと足を運んでいた。
「今のうちにいっぱい写真撮って後で見せてあげよう!」
「だな。……そろそろ暗くなってきたし、夜ご飯食べて寝ようか」
「もっとわんちゃんと遊びたいよぅ……」
「我儘言うな」
「むぅ」
今回のキャンプでもなでしこが料理に気合を入れ、満腹になった彼女らはすぐに眠気に誘われる。
冬の日は短く、辺りもすっかり暗くなってしまう。二人は別々のテントに別れ、少し早めに就寝することにした。
「……目が覚めちった」
いつもより早く寝たということもあり、リンはなでしこよりも一足先に起きることとなる。
「おーい、なでしこ?」
「ぐぅ……」
「まぁ寝てるよな」
念の為隣のテントに行き確認するも、なでしこは大きな鼻ちょうちんを作りながら眠りこけている。この状態にった彼女はもう数時間は目を覚まさないことを経験から知っていたリン。
「……二度寝する気分じゃないし、ちょっと走ってこようかな」
かじかんだ手にグローブをはめ、愛車であるビーノのエンジンを点火させる。まだ朝日が登りきっていない早朝ツーリング、そんなのも乙だななんて思いながらキャンプ場を出て来た道とは逆方向へとビーノを走らせる。
「うわ」
いくつかのワインディングやトンネルを抜け、スマホの地図を頼りに細い道を通っていく。行き止まりまで来たら引き返そうと思っていた矢先、開けた場所に出たと思ったら目の前に現れたのは大きな建物。
「……これってそういうホテルだよな」
田舎の山にある大きなホテル。休憩や宿泊という文字がでかでかと書かれた看板も相まって、事実へと簡単にたどり着いた。
本を読んだりネットを良く見るリンとって、そこは言ったことは無いものの存在自体は知識としては知っていた。
「こんな山奥にあるのによく潰れないな」
以前行ったキャンプ場の近くにある温泉は潰れていたのに、ここは綺麗なまま残っている事実に少し微妙な気持ちになるリン。
「ん?誰か出てきた」
少し離れたところから観察していたリンは、エントランスから出てくる人影に思わず隠れる。少なくとも自分のような女子校生が近付いて良い場所では無い、という意識はあるが、どんな人が出てくるのか少し興味が湧いてしまったのだ。
「……え?」
出てきた人物は、思っていたよりも若い。いや、若すぎる程の少女。下手をしたら自分と同い年なのではないかとい思えてしまう。童顔だなという感想と共に、徐々に露になるその顔を見たリンは、思わず声を漏らす。
「斉藤?」
私服を身にまとった恵那は、年上の男性と二人で楽しげに会話をしている。いつも会っている親友が、いつもと変わらない表情で話している。たったそれだけなのに、場所という要因だけであまりにも非現実的な状況が作り上げられていた。
「!」
リンの居るところから何を話しているかは聞き取れないが、目の前に停っていたタクシーに乗る前に、何の恥ずかしげもなく男性とキスをしている現場を目撃する。
恵那を乗せたタクシーがこちらにやって来る。
咄嗟に草陰に身を隠すリン。草の合間から顔を覗かせ、すぐ側を通り過ぎるタクシーに目を向ける。
「……やっぱり」
ちらりと後部座席に映る人影は、自分の親友である斉藤恵那本人であった。
そんな出来事があった後、起きがけで頭の回っていないなでしこと噛み合わない会話をしつつ、その日は解散することとなる。
翌日の日曜日。休みであるのにも関わらずリンは精神が休まることは無かった。
(斉藤、あんなとこで何を……。いやそういうホテルから出てきたんだから何ってナニしてたとしかーーいやいや、何言ってんだ私……)
いつもなら撮った写真を共有し、すぐにその日の思い出を共有していたはず。しかし、彼女の手はメッセージを打っては消し、打っては消しをひたすらに繰り返す。
(……明日直接会って聞こう)
とうとう勇気が出なかったリンは、思考を放棄し明日の自分へと全ての責任をなすりつけるのだった。
「いつから……?」
現実へと戻ってきたリンだが、今までの彼女を振り返っても恵那はそんなことをしている素振りなど今まで見たことがなかった。
(私が気付かなかっただけ……?いやでもそんな完璧に隠すことできるか?うぁぁぁぁあ!!もう、これからどんな顔であいつに会えばいいんだよ!!)
髪を乱暴に掻き乱しながら、リンは親友との関わり方を考えるためいつもより早く帰宅するのであった。