※この作品はR-18です。

ちょっと風紀のゆるいアナグラ   作:弦弾

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今話の元ネタはこちら
『GOD EATER』のプロモーションアニメですね
……15年前ってマ?


08

 西暦2065年。

 旧ロシア地区、連合軍作戦司令基地。

 

 吹雪の中、軍用ヘリが降り立った。中から現れたのは4人、うち2人はまだ幼い子ども。どう見てもふざけているとしか思えない援軍の内容に、湧き上がる怒りのままに大尉は通信を繋いだ。

 

『女子どもを寄越して援軍など、正気とは思えませんな……!』

『彼らの戦力はそれぞれが一個大隊と同程度……一人に関してはそれ以上の戦略的価値を持っていると自負しています。万が一も無いでしょう。それに今回はあなた方連合軍が主役の作戦、大尉殿の奮戦を期待していますよ』

 

 優雅に腰掛けたヨハネス・フォン・シックザールは、余裕綽々の笑み……悪く言えば舐め腐った態度……で通信を切った。礼儀正しいとは言えない対応に、そばに控えていた新人のオペレーター橘サクヤが心配そうな表情を浮かべている。

 

「リンドウ君たちの安否が心配かね、サクヤ君」

「え⁉ええと、はい」

「であれば問題ない。向こうには『魔弾の射手』を送った。一騎当千の狙撃手、極東の魔弾。君も噂は聞いているだろう」

「…………はい」

 

 出立前、ヘリに乗り込むリンドウとツバキを見送った。その際に見かけた2人の少年のうち、1人。平凡な容姿をしたあの少年が世界最強と目されるゴッドイーターだとは、サクヤには到底思えなかった。隣の少年の方は、支部長の息子という出自やすべてのゴッドイーターの祖という立場からして、見た目にも凄みがあったのだが。

 

「君にもじきに分かる。彼に疑問を抱いた人間は、全員結果で黙らされた。……この私さえも」

 

 黙らされたと言いながらどこか嬉しそうな様子の支部長に、サクヤは内心を飲み込んだ。

 どちらかといえば、支部長の失礼な態度が不安なんだけどなぁ……と。

 

 

────────────────────────

 

 

「──本作戦は、ユーラシア地区全土からアラガミをおびき寄せ、核融合炉を臨界させ爆発、バケモノどもを一網打尽にする計画である。この作戦が成就した暁には、当面の間欧州からアラガミの脅威は無くなることになる。連合軍の威信を掛けた崇高な任務であり、失敗は許されない。成功すれば我らは英雄となり、親愛なる隣人や誇るべき祖先たちから誉れ高く勇者として迎え入れられることだろう。……そして、極東支部からお越しの神機使いたちには、万が一が無いようアラガミを作戦地点まで誘導してもらいたい……牧羊犬のように、な」

 

 HAHAHAHAHAHA!と会議室の軍人さんたちの嘲笑が響く。

 ばうばう、とか言ってあげた方がいいんだろうか。全然面白くないんだけど。

 

「おう、ボウズ。今回が初任務なんだろ?リラックスしていけよ」

「ボウズじゃねえ、ソーマだ、おっさん」

「お、おっさん……せめてお兄さんでいいじゃんかよ、まだ20歳だぞ……」

「からかうなリンドウ。……そうやって子どもをからかいたがるところがおっさん臭いぞ」

「そーだそーだ」

「てめぇホムラ、便乗だけしやがって、許せねぇ……!」

「はしゃぐな、この愚弟が!」

 

 慣れない海外に大はしゃぎのリンドウを咎めたツバキさんが関節技を極めた。

 おしおき代わりに極められたリンドウが「ギブギブギブ……!すんません姉上!」と呻いている。バカめ。そのまま折檻されてろ。

 

「なあ、ホムラ」

 

 リンドウとツバキさんが離れたタイミングでソーマが声をかけてきた。

 ソーマの父、ヨハネス・フォン・シックザール支部長との直談判以来、ソーマはフードを被ることをやめ、若干だが明るくなった。理由を聞いたが答えようともしなかったので流したんだけど、やっぱ恋かな、恋なんかな。相手は誰だ、リッカか、サクヤさんかそれともツバキさん……?大穴でもうシオに出会ったとか……?でもアンジェリカだけは勘弁な!

 

 ほら、僕に相談してくれよ、ロシアならお父さんの目もないわけだし。

 安心して好きな人教える修学旅行みたいなことやろうぜ!僕、仲人実績()もあるから!

 

「──親父と、榊のおっさんで勝負してるんだろ。俺は、親父を負かしてやりたい。教えろ、俺は何をしたらいい?」

 

 スン、と一瞬で真顔になった。

 まさかその話題が出てくるとは思わなかった。聞かれていたのか。その可能性を考えていなかったのは失態だったけど……まあ、知られて困ることでもない。

 

「──なにも」

「……教える気はないってことか」

 

 ソーマの声に怒気が混ざる。それと、多少の失望も。

 蚊帳の外、そんな風に思ったのだろうか。

 

「そうじゃない。『特別なことは何もしなくていい』。ありのままのソーマでいてくれれば、それが最良の未来になる」

「預言者みたいなこと言いやがって。余計な気を使うな、『役に立たないから何もするな』ってはっきり言えよ」

「──逆だよ。ソーマが一番重要なんだ。シックザール支部長と榊博士の因縁は、どうあがいてもソーマが起点になっている。はっきり言おうか、この物語の主人公はソーマなんだよ。気遣いなんかしていないし、むしろ、一番大変なポジションだ。ソーマの一挙一動が二人の勝敗に直結すると言ってもいい。だからこそ、特別なことは何もいらない、そうお願いしているんだ」

「…………意味がわからねぇな。俺なんかに、いったいなにができる?」

 

 心底不思議そうにしている。

 そんなソーマの目を見つめて言う。

 

「普通のこと。ありのままの生活。ソーマが思ったように、すべきだと思ったことをして欲しい。それが榊博士の勝ちに繋がる、不可欠で大切な要素なんだよ。ソーマなら、それができると僕は信じている」

「……………………納得はできねぇ。だが、わかった」

「ごめんね、うまく話せなくて。ほんとはちゃんと話したいんだけど……」

「わかってる。その代わり、全部終わったらちゃんと聞かせろ、それが条件だ」

「約束するよ。……ソーマは、支部長を泣かせるとか興味ある?」

「──ああ、ものすごく」

「ならよかった。上手くいけば、あの人がボロ泣きするところを見られるかもしれない」

「それはいいな、すごくいい。それだけでやる気が湧いてきた」

 

 いたずらっ子のように、ニヤリとソーマと笑い合い、一致団結したところで、

 

「──来る」

 

 と、突然ソーマが呟いた。

 その瞬間、会議室が大きく揺れた。照明が落ち、警報が鳴り響く。

 

「……来やがった」

 

 どうやらもう、──仕事の時間らしい。

 

 

 なぜかポンと剥き出しに設置された核融合炉と、それを守るSFのバリアーみたいな二重の障壁。

 でももうすでに一枚破られてますね、見た目と違って紙装甲。

 

 迫るのはアラガミの大群……うわ、地平線まで見えるやんけ。

 これを4人で、しかも一般人と一緒にとか、地獄みたいな戦場だなぁ。

 

 そもそも、核爆発でアラガミが死ぬのか……まあ、死にそうではある。たしか、マグマみたいな高エネルギー物質を食べるとアラガミってケロイド状に破裂して死ぬんだったと榊博士から聞いたような覚えががが……。貧弱な僕の記憶に頼るのもあれだが、ある程度有効性があることは認めざるを得ない。でも、それと引き換えに核の灰を撒き散らしてどうする気なんだろう。放射能を放つアラガミが生まれたら、とか考えないんかな。そういう考えなしの行き当たりばったりしてばかりだからアラガミが生まれたんでは、といちおう批判してみる。

 

 ……ダメだ、行き当たりばったりは僕もなので批判しきれない。

 僕も所詮は人だった、これが……人類の業……!

 

 残り一枚の障壁を時間まで守れ、とか大尉殿は命令してくるけど、それって核爆発の時間までここにいろってことじゃんね?バケモノどもって言って、アラガミごとゴッドイーター殺す気満々だし……連合軍の威信とやらのために使い潰されるの、しょうもないな。

 

 そんな自滅上等の作戦に付き合う筋合いはない。

 どうせゴッドイーターだけで殲滅すれば、自動的に連合軍の威信()は消える。彼らのしょうもないプライドに時間を払う価値はない。

 

 牧羊犬とは言うが……別に、噛み殺してしまっても構わんのだろう?

 ウルフドッグなめんな。

 

 舐めた態度の連合軍人(羊飼い気取り)に目に物言わせるため、僕は全力を出すことを決めた。

 

「リンドウ、ツバキさん。僕も、狙撃じゃなくて普通のスナイパーやるよ。狙撃ポイント無いし」

「となると、私とリンドウは予定通り追い立て役か」

「ごめん、友達に良い格好したくてさ」

「好きにやれよ、普段楽させてもらってるしなぁ」

 

 まったく、付き合いの良い人たちだ。

 

「俺は、どうしたらいい?」

「──そばで見てて。君の一番の親友が、どれだけ凄い奴か。……でも危なくなったらたすけて……!」

 

 ……おう、といちおうの返事が返ってくる。

 マジで助けてね、防御面スライム並みにクソ雑魚だからさぁ!!

 

 そうして、僕は連合軍の方々を背にアラガミたちの前に立つ。

 各種アンプルとドーピング剤を服用。

 

 『唯我』を構える。

 

 前方左右にはリンドウとツバキさんが布陣し、正面の僕の方にアラガミを追い立てている。

 さあ、──殺戮の時間だ。

 

 呼吸を止める。

 

 振り絞った集中力に、時間感覚は喪失し、あらゆる動作が緩やかになる。

 その中で、『唯我』と僕だけが通常通りに動いている。

 

 撃つ。

 正面のクアドリガ、一撃でコアを飛ばす。

 

 撃つ。

 飛んでいるサリエル、頭を弾けさせる。

 

 撃つ。

 コンゴウ、ボルグ・カムラン、シユウ。

 

 息を吸う。

 吐き出し、時間を緩やかに。また撃つ。撃って、撃って、ひたすらに撃ち続ける。くるくる廻り、円回転のエネルギーで照準をつけて引き金を引く。自分という人間に一本の縦軸を想起し、それを軸に『唯我』を振り回す遠心力を補助に、流れのままバレットを放った。秒の瞬きに刹那を撃ち、命を弾け飛ばす。須臾の間に、直線状の閃光が幾筋も舞い、戦場という空間を彩るように輝くラインが躍る。花火みたいだ、と人ごとのように思った。

 

 全てのアラガミを一撃で殺し、倒れ霧散する一瞬の隙に呼吸を整え、OPを補充。

 刹那、飛んでくるミサイルを、後ろから出てきたソーマが当然のように叩き落とす。……流石わが友、わかってる。

 

 正直、通常形態は負担が無くて楽だ。

 狙撃状態と違い、威力確保のためにOPを無駄に消費しなくていいから本当に助かる。継戦能力的にも、身体にかかる負担としても。

 

 なんとなく、後ろの人々に唖然とした目で見られているのを感じながら、三桁のアラガミの大群を殲滅していった。

 

 

 大部分のアラガミを倒し、残党どもをソーマたちに任せて作戦は終了した。

 

 話が違う、と喚く大尉殿。

 その後ろでアラガミの脅威に晒され抵抗することも出来なかった軍人さんたちが畏怖の感情をこちらに向けている。

 

 背後には死屍累々としか言いようのない光景。アラガミたちの死骸の山だ。

 しかし、人的被害は少なく、ゴッドイーターに関しては無傷。

 

 核兵器が必要な状況をたった4人で対処できる。

 その事実を連合軍の皆さんには噛み締めていただきたい。

 

「このことはフェンリル本部とヨハネス・フォン・シックザール支部長にも報告させてもらう!」

 

 どうぞご勝手に、という話だ。

 僕も今となってはフェンリルと支部長にとってそれなりの手駒になっている。フェンリルにとっては新時代の英雄という広告塔として。支部長からはそれを所有している飼い主として。

 

 だから、大尉殿がなにを申し立てたところで命令違反以上の処罰はない。せいぜい謹慎とか都合良く別の仕事に回されるだけ。こちとら、黙って死ぬまで戦え、なんて命令に従うはずもない。そもそも今回の連合軍の作戦に駆り出されたのだって、時代が変わったことを理解していない軍人派閥の人々にトドメを刺すためだ。だから、どういうやり方をするにしろ、大尉殿の末路は決まっている。

 

 通信端末が震える。相手は、支部長。

 

『やってくれたね、笹木君。おかげで連合軍の取り込みには失敗、本部の方々もお冠だ……という建前はこの辺にしておこう。──よくやった。旧人類最後の足掻きを鼻で笑う英雄の所業、しかと見届けさせてもらったよ。あとは処分だが、謹慎ということで話が通っている。()()()()()()、一週間くらいロシアを観光してくれたまえ』

 

 あいあいさー、と適当に返事をして通信を切った。

 ロシア支部でお世話になるかぁ、と3人を迎えに行く。

 

 歩き出した僕の背に、風に乗って連合軍人たちの噂話が聞こえてきた。

 

『────あれが、極東の魔弾……』

 

 

 ロシア支部に到着したら、めっちゃビックリする状況になっていた。

 なんと一連の戦闘がフェンリル本部の計らいで全世界の支部に中継されていたらしい。支部長、どこで見ていたのかと思ったらそれか。先に言ってよ。

 

 おかげで辿り着いた途端、ロシア支部の人たちに歓迎されてしまった。

 ……プロパガンダに都合よく使われているなぁ。

 

 とはいえ、集まった人々に悪意はない。

 いっそアメコミのヒーローになった気分でファンサしてきた。

 

 『世界最強』と呼ばれることを否定せず甘んじたのは、そうすると決めたから。

 どこかで、ヨシノさんが聞いて笑ってくれたらそれでいい。そう、願っている。

 

 ……中継映像を確認したら、ほんとにアメコミみたいな挙動をする僕の姿が映っていた。

 

 ちょっと笑って、それから反応に困った。人間をやめるぞー、とは言ったけど、ここまでやめるとは言ってない。反射神経加速剤ぶち込むとか、サイボーグ化手術とかした覚えはないんだけど。自前サンデヴィスタンとかマトリックスとかやめてもろて。

 

 ええ……と自分で自分にどん引きしてたら、リンドウには「お前、自覚なかったのか……」とちょっと引かれ、呆れられた。ソーマは「いつか、ホムラみたいに成れるよう頑張る」と真顔で言っていた。やめろ、本当にできそうだから困る。実際、ブラッドアーツとか覚えることになるわけだし。……これも、年齢一桁で偏食因子打ち込んだことの結果なのかなぁ。GE3主人公とか、そんな感じだったな。

 

 ともかく、ロシア支部の住民たちには思いのほか歓迎されてしまったので、おかげで居心地よく過ごすことが出来た。三人もヒーローの仲間みたいな枠で扱われていて、ソーマが凄く居心地悪そうだった。うん、でも君はどう考えてもこっち側だよ。自己肯定感的な意味でも、今のうちにヒーロー扱いに慣れておきな。ほら、お菓子貰っとけ貰っとけ。

 リンドウはサクヤさん一筋で女性に言い寄られてもスルーだし、ツバキさんはロシア男性たちに口説かれて酒飲み勝負持ちかけられたりしてたけど返り討ちにしていた。……ロシア人顔負けの酒豪ってなんだよ。酔っぱらって逆レイプの黒歴史作ったりしてもいいのよ。

 

 そうして一週間は何事もなく過ぎ。

 支部長からロシア支部伝いに帰還命令を受け取った。

 

 謹慎と言いつつロシア支部に滞在することがその内容だったので、神機の取り扱いに制限はなかった。ということでその間、お世話になり通しのお礼代わりにアラガミ退治を手伝ったりした。連合軍の作戦の影響で強力なアラガミは出現しなかったけど、狙撃型神機が存在することのメリットを見せつけることが出来たと思う。こうやって討伐数稼いで素材を確保させてロシア支部の戦力を底上げしておくんじゃ。

 ついでに例の黒くてカサカサするやつを撃っておいた。一瞬で隠れて逃げられたけど、まあええじゃろ。無事、こっちにいる期間に済んでよかった。ダメなら僕だけ長期滞在だったからね。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()である不愉快な人物がいたので、これを機に理由をつけて排除しておいた。いやあ、こういう時、英雄っていう肩書は便利だよね。

 

 ロシアですべきことを全部片づけて、すっきりした気持ちで極東に帰った。

 極東支部のほうは、討伐班の主力が一週間もごっそり抜けて大丈夫なのか……?と最初は思っていたけど、全然問題なかったらしい。後輩や防衛班の方々が頑張ってくれたようだ。後進の成長というやつはとても気分がいい。背中を預けられるようになることほど、先輩として嬉しいものはないのだ。

 ロシアで貰ったお酒とか、マトリョーシカとかを後輩たちにプレゼントして、ロシア美人の美しさを自慢していたら、後輩のうち一人がなんか爆発した。

 

「ずるいっすよ、ホム先輩ばっかり美人を独占して……!俺も美人彼女欲しいっすわ!」

 

 僕に彼女はいないが??

 じゃあ海外行ってみる?と聞いたら、

 

「……アリよりのアリっすね、なんで思いつかなかった俺!ちょっと転属願い出してきますわ」

 

 と、ターミナルに一目散に申請を出しに行ってしまった。

 この後輩、どうにも本気だったらしく、なんやかんや転属申請を出してしまった。性欲に支配されすぎだろ、頭ゴッドイーターかよ。なんならどこの支部がいいか相談されたので、とりあえずイギリスを勧めといた。ウナギのゼリー寄せでも食べておいで。

 

 で、ビックリなことに申請は通ってしまった。

 数週間後、身辺整理した後輩はイギリスへと旅立っていった。

 

「ホム先輩にはお世話になりました。また一緒にナンパ遊びとかやったりましょう。今度会うときは、お互いプレイルームに行ける年齢になってから凱旋っすよ!」

「元気でね、ハルオミ。もし手を借りたいことがあったら、いつでもメールして。何があろうと駆けつけるから」

 

 頼りにしてますわ、とにっこり笑って、真壁ハルオミはグラスゴー支部へと転属した。

 到着した次の日にはもうメールが届いていた。

 

件名:グラスゴー支部最高!

本文:サイコーにマブい美人神機使いがいましたわ!死ぬほど口説いて絶対恋人になってやるっす!グラスゴー支部勧めてくれてマジ感謝!先輩もどうぞお元気で!

 

 ……どうやら、楽しくやっているみたいだ。

 その後もちょくちょくメールが届いたので、順調らしい。このまま幸せになってくれ。

 

 もう一人の防衛班の後輩の方は、外国に行く気は特になく。

 

「俺は外部居住区のガキンチョどもの面倒見てやりたいんで、一生極東支部でいいっすよ。まあ、可愛い子がフェンリルに増えたら嬉しいですけどね」

 

 だよね、と僕も同意。

 後輩は「でもホム先輩が手を出すのは勘弁してくださいね」と苦笑い。すまん、彼女がいるわけでもないし、女の子から誘われたら断れない。すべて節操のないこの下半身が悪いんだ……!

 

 あ~、俺も彼女欲しい、とぼやく後輩。いい感じの子が早く極東支部にも来てくれるといいね。個人的に、神機適合率が低い仲間としては肩入れしたくなってしまうんだ。仲人やってあげられたらいいけど、今紹介できるのは既婚のアンジェリカくらいだし……そもそも未婚だったとしても、あれを人様に紹介するのは流石に気が引けるから。……DQN?人じゃないからセーフ。子どもを殴るようなやつは、僕の中では人じゃないんだわ。今はフェンリルで大人しく真面目に働いているようだけど、かつての同僚に蔑まれながら働くのってどんな気分なんだろうな。しらんけど。

 

 そんな感じで2065年は順調に過ぎていった。

 ソーマも可愛がられて順調に馴染んでいっているし……誰にも死神だなんて呼ばせないぞ。

 

 

 

────────────────────────

 

「もーいいかい」

「まぁだだよ」

 

「もう、いいかい」

「まあだだよ」

 

「もーいいかい……うわあ!!アラガミだ、アラガミが出たぞ!!」

「アリサ、隠れて!絶対に出てきちゃダメよ!」

「パパ……?ママ……?」

 

──パァン。

 

「……………………行った……のか……?」

「そうみたいね……アリサ、どこにいるの!?もう出てきて大丈夫よ!」

 

「パパぁ……ママぁ……!ごめんなさい!」

「アリサ……!無事でよかった!ああ、神に感謝します!」

「心配かけてこの子は!……なんとも無くてよかったわ、本当に……」

「……アラガミは、もう大丈夫なのかな」

「ああ、それが急に立ち止まったと思ったら、どこかへ行ってしまったんだ。さあ、今のうちに安全な場所まで逃げよう」

「そうね、いつまた襲ってきてもおかしくはないわ」

「……あの、ごめんなさい。パパとママに迷惑かけて……」

「いいんだ、アリサ。いつも寂しい思いをさせて申し訳なかった。きっとこれは神の思し召しだ。この幸運に感謝して、これからは家族の時間をいっぱい作ろう。な、ママ?」

「ええ、あなたの言う通りだわ。アリサ、これからはずっと一緒よ。ほらほら、泣かないの。そろそろ我が家に帰りましょう、それからうんと美味しいご飯を食べて仲直りしましょ?」

「うん!」

 

「…………でも、あの音はなんだったのかな」

「音?何か音が聞こえたのかい」

「うん……パァンて、遠くから、弾けるみたいな」

「じゃあ、もしかしたら、ゴッドイーターが遠くから助けてくれたのかしらね」

「ふーん」

 

「ゴッドイーター、か」

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 2066年。

 ついにエイジス計画が始動した。

 

 ヨハネス・フォン・シックザール支部長は、極東支部の職員を全員集めて演説を行い、今後は内部居住区拡張のリソースを全てエイジス計画に注ぎ込むことを発表した。

 

 支部長によれば、エイジス島の完成()2071年予定。5年間の辛抱を極東支部の住民に求め、それと引き換えに人類安住の地を約束した。遠くない未来、アラガミに怯えることのない生活を保障された極東民は歓喜し、ヨハネス・フォン・シックザールの名とフェンリルを称えた。

 

 それと同時期、極東のアラガミが一段階強化されることになる。職員たちは対応に追われ、殉職するゴッドイーターも少なからず出たが、徐々に適応していった。原作からすれば、これはエイジス島にて終末のアラガミ、ノヴァが培養されたことによるものなのだろう。ノヴァが発生し、それを求めてアラガミが押し寄せる。集まったアラガミ同士の喰い合いによって極東に現れるアラガミが強化される。それをゴッドイーターたちが狩ることにより、そのコアによってノヴァが強化される。そのようなサイクルが発生してしまったのだ。

 

 榊博士も同様の見解だった。極東は今後絶え間ないインフレに襲われ、ゴッドイーターたちは常に成長と進歩を求められる、と。

 ……逆に言えば支部長がやらなかった場合はどこかでノヴァが発生し、気付いたときには人類が立ち入ることのできない魔境になっていて、そこにノヴァが魔王のように君臨することになる。そのうえ特異点がふらふらと引き寄せられることになり……つまり世界終焉待ったなしの状態になっていた。背水の陣ではあるが、リスク回避としてとても合理的で、最善手としかいいようがない。戦略家としてシックザール支部長がどれだけ有能かわかる話だ。

 ……しかしどうあれ、極東の人々にとって厳しい時代が到来していた。

 

 そんな中、極東支部では新人のゴッドイーターを3人も迎えることになった。

 

 誠にめでたい。

 しかも、うち一人は女性であり、とてつもない美人だった。

 

 名をジーナ・ディキンソン。

 スナイパー使いの後輩として僕が教練を受け持つことになった、狙撃型神機の候補生である。

 

 ほか2人はそれぞれブレード使いの小川シュン、そしてアサルト使いのカレル・シュナイダー。どちらも不機嫌そうな顔だった。

 

「シュンとカレルはリンドウが担当で、ジーナはホムラくんの担当になってます。いずれ新人3人で組ませて行動することになるから、その辺りのすり合わせもよろしくね」

 

 そういう予定を伝えてきたのは、去年から極東支部のオペレーターとして入隊したサクヤさんだった。以前、雨宮家のお食事会にお呼ばれしたときに顔合わせして、それ以来の仲ではある。ただ僕個人としてはそこまで仲良くはない。職場の同僚で、同期の彼女。それだけ。ツヤツヤストレートの黒髪ボブが似合う美人だな、と思う程度。

 

 ともかく、僕とリンドウもそれなりに中堅と言える年数を働いてきた結果、新人教育が任されるようになったのだ。特に、リンドウは困ったときの頼みの綱として扱われている。リンドウと組んだ場合、そして戦闘法の教授を受けた場合、著しく生存率が高いことが明らかになっていたからだ。

 そして、今回僕が新人教育を任されることになったのは、ひとえにジーナさんに狙撃手としての適性があったからだろう。僕が活躍するようになって以降、フェンリルでは狙撃型神機を採用することが目標になっていたらしく、いつの間にか通常のスナイパーを狙撃型に換装する技術まで編み出されていた。もちろん、盾パーツと引き換えという鬼畜仕様。

 ただ、同じスナイパー種であっても神機のコアによって、狙撃型に換装出来るものと出来ないものがある。多くの場合は出来ないが、ジーナさんに適合したスナイパーは比較的新しい神機であり、換装が可能だった。そのうえで、彼女には狙撃手としての適性があり、また本人も狙撃型に対して意欲を示していたため、先達として僕が担当することになっていた。

 

 狙撃型なんて大変なだけやぞ、と思いつつ、原作ジーナさんの言動を思い返す限りやれそうな気もする。いずれにせよ彼女は候補でしかなく、本決まりではない。彼女がやりたいようにやってもらおう、そう決めて僕は彼女の教育を始めることにした。

 

 しかしその直前、リンドウの方に引き取られたはずのシュンが僕の方に向かってくる。

 

「おい、笹木ホムラ。世界最強だかなんだか知らねーけど、俺はお前にだけは負けねぇからな」

 

 と、微妙に宣戦布告っぽいことを宣言した。

 ……よくわからんけど、やる気があるのはいい事だ。がんばれよ、と上から目線で何か言うのも違うので、頷き一つ返しておいた。

 

「チッ」

 

 舌打ちしたシュンがリンドウの下へ戻る。なんだったんだろう。

 

 リンドウたちが出発準備を済ませ、アナグラから離れていくのを眺めてから、僕はジーナさんに向き直った。身長は170くらいだろうか、すらっとして高く、それでいて細身だ。モデル体型と言えばしっくりくる。服装はそれこそファッションショーのようなスタイルを見せつける衣装。そして美しい銀髪に隠されているが、左目には眼帯をつけていて、残った赤い右目はなんだか熱っぽく僕を見つめていた。

 

「僕は笹木ホムラ。よろしく、ジーナさん」

「ジーナでいいわ。私もホムラって呼ぶから」

「OK。それじゃ教育方針から話すけど、まずジーナにはスナイパーの一般的な戦闘をやってもらう。狙撃型に換装するにせよ、接近されたら応戦しなきゃいけないから最低限の戦闘能力は得る必要がある。よって出来なければ狙撃型の話は無し。中型アラガミを単独であしらえるようになったら合格ラインだ。それを達成して以降、好きに狙撃型に換装するか選んでもらう。ここまでの方針に異議はある?」

「ないわ。だけど、一つだけ聞かせて頂戴。……狙撃って、たのしい?」

「……僕個人の感想でよければ答えるけど、あんまり楽しくないよ」

「……そうなの?てっきり、最高にハイってやつなのかと思っていたわ」

「いつかの中継のせいで、そういう感想を持たれていることは知っているけどね。狙撃そのものを楽しんだことはないよ。ただ、それこそもう手足同然に動くから好きに使ってはいるけど……もし僕が神機を選べたなら、バスターブレードを選んでいたと思う」

 

 実際、ゲームの時はバスター一択だったし。つべこべ言わず、一撃でアラガミを叩き伏せるのが好きだった。……狙撃とあんまり変わって無くない?じゃあいいか。……いや、良くないわ。盾がないのはやっぱり殺しにきてるだろ、ゲームでいえば防御力0じゃん。一撃で死ぬやん。ハイリスクハイリターンどころじゃないんだが。やっぱりバスターというか近距離一択、間違いない。

 

「……なんとなく、あなたがどんな人間かわかってきたわ。面白い人ね」

 

 ジーナは手の甲で口元を隠すようにして柔らかく微笑んだ。

 なんというか、純度100%の好意を感じる。

 

 照れ隠しに頭を掻き、僕は口を開いた。

 

「まあ、とりあえず行こうか。嘆きの平原でオウガテイル狩りだ」

 

 ジーナは、何も言わず自分の胸元を抑えていた。

 ……なんかごめん。空いてる場所がそこしかなかったんだ。

 

 

 ジーナは優秀だった。状況を把握し、戦闘を組み立てるのが上手かった。オウガテイルに対し、ステルスフィールドを張っての奇襲で一方的に倒すという、スナイパー使いとして完璧な対応を示した。危なげなくオウガテイルの棘も躱し、完勝と言っていい内容。無駄そのものはあったが、こなしていくうちに削ぎ落されていく程度のもので。つまり特に教えることは無さそうだ。

 

 せっかくなので、と周辺にコンゴウがいるらしくおびき寄せてもらう。数分後現れたコンゴウに、当然というべきかジーナは苦戦し、時間こそかかったものの最後には倒していた。サポート付とはいえ、初陣でコンゴウを倒すとは素晴らしい。疑いなく将来有望だ。

 

 休憩のため、安全地帯に二人で向かい、楽にしながらジーナの戦闘内容について話し合う。

 

 ジーナは、ゾクゾクする、と言った。

 スコープという神機の目が、私の右目と一体になった気がした、と。

 

 狙撃する一匹のアラガミになったつもりで、二足歩行する脆弱な人間になったつもりで、一撃を重ね、壊していく。私の生を押し付け、アラガミの生を受け取り、生と死の交流の果てに小さな花を咲かす。

 

 自分が生きていることを実感した、とも。

 

 ……言いたいことはわかるんだけどさ、なんでそんなにエロチックに言うねん。もしかして発情してる……?いや、冷静そうだな。僕が男性として見られてないだけかもしらんが。

 

「うん、まあそれはそれとして、改善の余地はあったね。オウガテイルの時と違って、場当たり的に対処している感じだった。そこは経験でどうとでもなるけど、混戦になったときの優先順位が混乱しそうだな、と」

「……そうね。私の個人的なお楽しみはともかく、仲間の命には代えられないもの。……狙撃型にしたら、それも変わるかしら?」

 

 ジーナはどうも狙撃型に夢を抱いているらしい。

 じゃあ、実際に見た方が現実的になれるかもね。

 

 僕はサクヤさんに連絡し、周辺の偵察班にアラガミをおびき寄せてもらうようにお願いした。コンゴウ、シユウ、ヴァジュラ。時間差で来てくれるらしい。僕は周辺の高台に陣取り、連れてきたジーナにはステルスフィールドで潜伏するように指示する。

 

「スコープでアラガミを見ていてもいいし、僕の動きに注目してもいい。しばらく狙撃しているから好きにしてて。ただ、自衛だけは忘れないように」

 

 そう言付けて、狙撃に入る。

 嘆きの平原にコンゴウがエントリー。きょろきょろと獲物を探して竜巻の渦巻く高台の足元に降り立つ。のんびりと徘徊を始めたタイミングでジーナに合図を出し、撃った。

 

 狙ったのは胸部のコア。

 損失が勿体無いけど、今回は遠距離式のみのパーティーだし、採算度外視。

 

 コアを正確に狙撃し、コンゴウの巨体を霧散させる。

 

 次に来たのはシユウ。

 まず頭を結合崩壊してダウン、それから爆発系に変えて両腕羽、下半身と破壊する。特に下半身の破壊、これだけで剣撃が通り易くなる。立ち上がったところでもう一度頭蓋を撃ち抜き、倒した。

 

 最後にヴァジュラ。

 破壊しない程度の威力でコアに届かせる一撃で倒す。

 

 三通りの倒し方を見せて手本とした。狙撃形態を解除し、偵察班の方にシユウとヴァジュラのコアを回収してもらう。せっかくだからそっちで貰ってってくだしあ。働いて貰っちゃったし臨時ボーナスってやつですね。

 

 ぺこぺこと遠巻きに頭を下げられながら、僕は戦闘状態を解除し、なぜかスナイパーを構えて興奮気味のジーナに向き直った。ちょっと頬が上気していて怖いよ。

 

「……濡れちゃった」

 

 なんでこのタイミング。

 お茶目な言い方だけど、ちょっとわけがわからない。

 

「私とは全然違うのね。交流ではなく、一方的に死を押し付ける。さながら、死神のように。アラガミにとってはあなたこそが無慈悲な神。抵抗の一切を挫き、ただただ効率的に、作業のように自在に死を与える存在。もはや次元が違うわ。私や他の人たちにとっては対等な交流だけど、あなたにはまな板の上の魚をどう捌くか、その手順の違いしかない」

「…………………………」

「そこに至るまで、いったいどれほどの花を咲かせたのかしら。あなたの背後には、積み上げてきた死と同等の花畑が広がっている……綺麗だけど強い毒を持つ彼岸花が。そして、それを為すために、あなた自身犠牲を払っている。けれどそれはある意味で私とは別種の交流……だからこそ、美しく儚いのね」

 

 この人の目には、世界がどう映っているんだろうか。

 美しく儚い、それは貴女こそ。

 

「ふふ、そんなに熱く見つめないで頂戴。蕩けてしまいそう。……ところで、今夜は空いてる?ちょっとムラムラしてきちゃった♡」

 

 イタズラっぽく笑う彼女が、淫靡に舌なめずりした。

 

 

 ぶっちゃけ、初陣の付き添いというやつはほぼ性処理まで含んでいる。新人のゴッドイーターはほぼ十代で、プレイルームに行けないからだ。だからジーナに僕があてがわれたのは「初陣おめでとっくすしといてね」という意味合いがある。もちろんお互いの同意ありきだけど。どちらかが拒否した場合は慰安部に連絡が行き、適切な相手が部屋を訪れる。デリヘルみたいに。

 リンドウは今回、事前にジーナの相手を拒否した。サクヤさんがいるので女性相手にはいつもそうだけど。そのため相性もあって僕にお鉢が回ってきた。そして同じく今日が初陣のシュンとカレルは年齢的にプレイルームに行けないので、今頃リンドウがデリヘルを手配しているだろう。

 

 というわけで、帰投した僕はジーナの到着を部屋で待っていた。

 ジーナはシャワーを浴びてくる、と言ったので別れた。女性のプライベート空間に安易に踏み入れるのはいくない。

 

 メールを読んだり、ニュースを眺めたりして時間を潰していると、部屋のインターフォンが鳴った。

 

『私よ』

 

 その一言でドアを開けた。髪を濡らしていて、眼帯も変えた私服姿のジーナ。香水の香りがふわっと漂ってきて、それだけで背筋がぞくぞくと震えた。美人だな、と思う。

 

「来る途中、カレルに声を掛けられちゃった。申し訳ないのだけど、あなたのことしか頭になくてつい袖にしちゃったわ」

 

 なんかごめん、カレル。シュンと一緒にデリヘルを楽しんで欲しい。

 水飲む?とグラスを差し出す。

 

 そのままダラダラと2人でゆっくり過ごした。

 フェンリルに来る前のこととかをぽつぽつと話していく。

 

「……私ね、処女なの。もし神機に適合してなかったら、どこかのタイミングで売ってたと思う。私自身、納得していた。だって、それ以外に出来そうな仕事がなかったから」

 

 ……正直、高く売れただろう、と思う。ジーナは間近に見てもやはり美人だ。顔面の解像度が高すぎる。月の光のような銀髪に、鳩の血のごとく赤い瞳。細身の身体に、造形の整った顔立ち。アンニュイでミステリアスな瞳。どれもが男女を問わず魅了する美しさだ。

 

 文明崩壊前ならモデルをしていてもおかしくはなかった。しかし、今の時代に需要があるだろうか。少なくとも人々の心にその余裕はない。それこそエイジス島完成後でもなければ。だから、細く繊細な体つきのジーナには、風俗くらいしかできることがなかった。……ゴッドイーターに成らない限りは。

 

「一年前、旧ロシアでの映像を見て、神機使いに成りたいと初めて思ったの。あの時は狙撃ではなかったけど、超人的に動き回って屍山血河の華を咲かせるあなたは、とても美しかった。ぞっとしたわ。恍惚が背骨を通して、全身が震える感覚がした。それこそ、魂を鷲掴みにされるかと思った」

 

 それからゴッドイーターの適性検査を受けたら大当たり。それも望み通りのスナイパーを、狙撃型への換装も可能という至れり尽くせりで。そうして今に至る、という話だった。

 

「馬鹿みたいな話に聞こえるでしょうけど。……私、あの映像を見ながら何回も自分でしちゃった。それからたびたび思い返して、何度もした。そういう変わったエッチな女は、嫌いかしら?」

 

 いつの間にか、ジーナは情欲に濡れた瞳で僕を見ていた。

 はあ?そういう子、だいすきだけど??

 

 一気にムードがそっち方向に流れ、ジーナの腰に手を当てながらそっとキスをした。

 

「ふふふ、嬉しい」

 

 と、喜ばれ、嬉しいのでひたすらキスを交わす。

 そしてこれからどうしようか考えて、初陣直後の処女にも関わらず思いのほか冷静なジーナを見てふと思いついた。

 

「では、これから狙撃型神機の特別訓練を開始する」

 

 戦場でエッチなことがダメなら、私室でヤればいいじゃない。

 素敵な天啓をありがとう、マリー・ドスケベ・アントワネット。これからも助けてね。これが……Dの一族の力……!僕もその高貴な一族になりたいぜ。

 

 ジーナをベッドの上に腹ばいにさせ、狙撃体制をとらせる。

 これは狙撃状態の耐久訓練である。なので、ジーナはどんなことがあっても反応せず、冷静に狙撃の瞬間を待ち続けなくてはならない。セクハラされても、イキ潮吹いても、狙撃のために我慢だ。合格したら換装許可を出しますね~。

 

「くっ、それを条件にされたら、従わざるを得ないわ……♡いったいどんなことをされちゃうのかしら……♡」

 

 ジーナ、ノリノリじゃん。

 そうして部屋に置いていたモデルガンを手に寝そべったジーナ。まずはソフトなやつから始めて行こう。

 

 レベル1、くすぐり。

 ジーナのうなじをフェザータッチする。そして足裏、脇をくすぐり、爪先が触れるか触れないかくらいのところでツー、と背筋を走らせていく。

 

 ジーナは、時折びくっと悶えていたけど、なんともないように耐えきっていた。

 

 さあ、次のレベルだ。

 レベル2、マッサージ。これでも、マッサージというか人の急所を見抜く目はそれなりだと自負している。相手のどこが弱いか、触った感触と観察によって丸裸である。

 

 足先から始め、全体をいたわるように揉み解していく。ジーナの下半身は、新雪のように白く、それでいて柔らかく温かな血の通った見事な脚線美を誇っている。細い肉付きは繊細さの裏返し。丁寧に触れることで、血流の増加を促していく。

 

 でも、異性に触れられている、それだけで気持ちよくなれるんだよね。

 

 腰のあたりまでたどり着いたときには、鼠径部から淫臭が香っていた。明らかに濡れている状態。だが、今は放置し、臀部をわざと外し腰に行き、背中から肩首元まで行く。狙撃の邪魔にならないよう、両腕は避けて首元から頭部に移行し、さらさらの銀髪の根本の頭皮を優しくマッサージする。そのまま抱きしめて頭頂部にキスを降らせていった。

 

 そして、またゆっくりと上半身を下りながらマッサージしていく。この頃には全身のコリはほぐれ、ぽかぽかでトロトロの状態。感度も上がりきった様子で、真剣に狙撃待機しているはずの横顔は赤らんでいる。

 

「あっ……♡」

 

 満を持して、胸に手を持っていく。嘆きの平原と愛を持って揶揄されたジーナの貧乳は、たしかに肉付きは薄いものだったが、繊細で敏感だった。こりこりした乳首周りを弄るだけで、ジーナの口からは嬌声が漏れた。これほど感度の良い乳とか、最高じゃんね?

 

 胸への愛撫もそこそこに、腹を通って下、腰骨から攻めて尻をこねこね、こねていく。胸同様肉付きは薄いが、だからこそ感度は良くて「あっ♡あっ♡」とイイ声で鳴く。絶対にコリなんかないけど執拗に続け、そこからちょっとだけ指を伸ばして、股間に触るか触れないか程度の部分から些細に刺激していく。

 

「ぁ~~~~♡んん、ぁっはぁ♡」

 

 この頃にはジーナも発情したのか、耐えきれないように身を捩ったり、より刺激を求めて各所を擦りつけようとしたのだけど、狙撃訓練中って言ったじゃん、と尻に折檻する。ぱぁん、と綺麗な音が鳴り、その途端ジーナは全身を跳ねさせてイった。

 

 んん?狙撃待機、できないのかなぁ??そんなんじゃ狙撃できないよ?

 と、詰りながら、二度三度ぱぁん♡ぱぁん♡とスパンキングを与えていく。敏感になったジーナはそれらの刺激にあてられ、その度に軽イキするように震え、腰をびくんと跳ねさせ、

 

「ひぁっ♡」

 

 と、可愛い声をあげた。どうにも刺激が強すぎて我慢が出来ないようなので、仕方なく別の部分を愛撫する。右手を回し、腹部のへその少し下あたり……つまり子宮を外側からさわさわっと、とんとんっとマッサージしていく。最初は不思議そうにしていたジーナも、じわじわと理解したようで、悶えながらも快感に背筋をピンと逸らせていった。

 

 そこで余った左手を陰部に触れる。もはや大洪水だ。

 びっちゃびちゃで、ベッドから水気がするほど愛液を滴らせている。右手の制御を適当にして、雌穴に添えた左手をゆっくりと動かし始める。強い刺激は絶対に与えない。全体を通して弱い刺激を常に与え続け、深い絶頂に昇りつめないようにコントロールしていく。するとジーナは、

 

「ぁ~~~~♡ぁ~~~~♡♡」

 

 と、呻き始めた。微刺激の快感に脳をやられそうになっているんだろう。……僕も、エリパパに連れられたVIPルームで嬢にされた時は、感度3000倍になったかと思った。やられたことをしっかり記憶してやり返してやったけど。その経験が今、ジーナという初めてセックスを体験する女性に対して火を噴いていた。

 

 そしてこのままレベル3。

 ASMRっぽい、囁き攻撃。耳元を噛んだり舐めたりしながら、ひたすらジーナを褒めたり愛を囁いたりする。

 

「ジーナってほんとに綺麗だよね、美人すぎて天使かと思った」「冬の月光みたいな銀髪も、宝石みたいな赤い瞳も素敵だよ」「ジーナ」「食べちゃいたいくらい可愛い」「好みの女性ど真ん中すぎて一目惚れしちゃった」「ゴッドイーターとしてアラガミと戦うジーナ、最高にかっこよかったよ」「ジーナ♡」「こんな彼女がいたら幸せだろうなぁ」「もう我慢できないけど、ジーナは許してくれるよね」「ジーナぁ♡」

 

 ポイントは、徐々に声を籠らせて艶を出すことだ。経験上、その手の声の囁きに女性は弱い。本当に心を許した女性にしか出さないような甘い声、で囁かれることに女性は興奮してしまうらしい。これを知ってからは夜のプレイが捗る捗る。

 そしてジーナが反応したタイミングで左手の刺激を強め、反応しなかったら右手を刺激。その繰り返しで脳みそを沸騰させるくらい逃げ場のない興奮に叩き込む。

 

 そうするとどうなるのか?

 女性はイキ死ぬ。

 

「あ~~~~♡!あ~~~~♡♡!!」

 

 案の定、ジーナも狂ったように絶叫し、バタバタし始めたけどそれを覆いかぶさった全身でがっしり抑え込む。ジーナは拷問まがいの快楽に悶え叫ぶことしかできず、ついに弱い刺激で激しくイキ散らかした。そのタイミングで左手を激しく動かし、Gスポットを追撃していく。

 

「~~~~~~~~♡♡!!」

 

 ジーナは全身をのけ反らせ、足ピン状態で凄まじく絶頂し、とめどなく潮を噴き出した。

 

 これにてレベル3は終了。お疲れさまでした。

 いたわるように子宮を腹の上からさすり、ジーナが落ち着くのを待つ。

 

 流石に女性を毎日抱くような生活が5年も続けば、それなりの技術も身に着く。特に、僕にはどんなことをしても喜んでしまうのに抵抗できない、アンジェリカという都合の良い女性がいた。暇つぶしと余興を兼ねて、淫技を磨きに磨いた結果がこれだ。初めての女の子にやっちゃいけない快楽を叩き込むの、最高に楽しいです。

 

 はぁ……♡はぁ……♡と荒い息を吐き出したジーナが一言、

 

「アラガミとの交流より凄かった……♡」

 

 と呟いたのが印象的だった。ご好評頂けてなによりでーす。

 

 それからは訓練という建前をやめ、普通にセックスすることにした。ヌルヌルトロトロで、ほかほかの敏感マンコにペニスを突きつける。

 僕も今では13歳。ペニスも年々増大し、今では13cmとかつての日本人男性の平均チン長に到達した。いちおう子宮口に届く程度の長さにはなったが、やはりまだストローク時の快感に物足りないところがある。まだ成長は続いているし、これから二次性徴が待ち受けている。陰毛も生え始めたので、じきに声変わりして体つきもがっしりしていくんだと思う。それに合わせてチンポも成長してほしい、と未来に期待を込めた。

 

 そして、ジーナの膜をゆっくりと破いていった。

 

「いひっ♡」

 

 ジーナは破瓜の痛みで絶頂を迎えた。それも仕方がない。徹底的に感度を上げられると、もう元には戻らない。あとはボーナスステージみたいなもんで、落ち着くまでずっと何しても気持ちいいままだ。もちろん僕に落ち着かせる気なんてない。ジーナの体への負担を考えて、一定のペースでパンパンと子宮を叩き続ける。それを体力の続く限り続けた。

 

「おっ♡おっ♡おっ♡おっ♡これ凄い、チンポ凄い♡」

 

 という状態から、

 

「あ゛~~~~!?♡あ゛~~~~!!♡♡」

 

 と、唸りイキをするまでひたすら腰振りを続ける。処女マンが精液を搾り取ろうと必死にうごめき収縮され、激しい快感に我慢の限界を迎えた。

 

「こっちもイクよ」 

 

 びゅ~~~♡びゅるびゅるびゅるびゅる、びゅっびゅ~~♡

 粘度の高い人外量の精液を子宮にべっとりと叩きつけた。

 

「んぉああああ゛!?♡♡」

 

 不思議なことに、精液の勢いが凄いのかなぜか女性も感じるらしく。ジーナもまた射精と同時にアクメしてしまい、だみ声の混ざった嬌声を上げ、トドメイキをしてぐったりと失神した。

 

 

「……凄かった。セックスが、こんなにいいものだとは思わなかったわ」

 

 夜半ばにジーナは目を覚ました。

 寒いわ、と言って僕のシャツを引っ張り出してきていた。ごめん、彼シャツっぽいことしてあげたいけど、僕のシャツだと小さいからパツパツだね。でもそれはそれでエロいのでヨシ。

 

 それから興味深そうにアナログレコードに目をつけ、勧めたままの曲を流し、淹れたコーヒーを飲んで部屋のソファに並んで腰かけた。そしてすすっと寄ってきて、くっついて座った。

 

「そう思ってくれたならよかったよ。プレイルームに行けるようになったら、いろんな遊びを楽しめると思う。たまにセックス下手な先輩がハジメテを担当して、嫌いになる人もいるからね」

 

 は?と一瞬ジーナは固まった。

 あれ、プレイルームの話とかジーナは説明受けてないのかな。17歳だって聞いてたし、年齢的に性処理関連の説明はされていると思うんだけど。

 

「……あなた、あれだけのことをしておいて、私を捨てる気?」

 

 え、と今度はこっちが固まる番だった。セックス中に女の子から付き合ってとか言われることはあるけど、本当にシラフの状態で言われたことはない。行為中のノリと言ってしまえばそれまでだけど、あくまで業務の範囲内という認識だった。もちろん、言ったことは全て本心だし、ジーナを抱けてラッキーだと思っていたのは事実だけど。

 

「『好みの女性ど真ん中すぎて一目惚れしちゃった』……なんて、胸がときめく言葉だったのだけど……あれは嘘ってこと?」

「いや、一点の曇りもない本心だよ。……え、僕なんかと付き合いたいの??」

 

 言っちゃなんだが、僕は13歳の少年にすぎないし、いろいろと肩書はあるけど平凡な見てくれの、神機関係ないところでは何の役にも立たない、ただの子どもやぞ??

 

「13歳と17歳ってそんなにおかしな年齢差ではないし、あなたを平凡な子どもと呼ぶには無理がありすぎるわ。昼間のシュンの態度は見たでしょう?ああいうのを子どもって言うんじゃないかしら。誰かのために、笑って損が出来るあなたは、もう素敵な大人だと思う。……もちろん、ホムラが嫌なら泣く泣く諦めるしかないけれど」

 

 嫌なんかじゃない。むしろ、とても嬉しい。

 ジーナのことは外見はもちろん、そのミステリアスで情け深い性格もすごく魅力的で好きだ。

 

「でも、僕はぶっちゃけいろんな女の子と関係持ってるし、たぶんこれからもそうだぞ」

 

 だんだん自分がマジカルチンポになっているのは自覚しているし、それを我慢する気もない。ゴッドイーターの性欲ってマジで地獄だからな。長期任務で発狂して、穴ならアラガミでもいいとか言ってザイゴートをレイプして喰われたり、咥えてくれるなら神機でもいいとか言い出して実際にチンポを神機に喰われるアホがいるのが、ゴッドイーターってやつだ。

 

「……正直、女の子一人ではとても身が持たないわ。だって、私に対してはすごく手加減してたでしょう?一回しか射精してないじゃない。それでも失神するくらいなのに、あなたが満足するまでしたら、きっと死んじゃう♡」

 

 それはそれで最高に気持ちいいでしょうけど、とジーナは陶酔するように甘い息を漏らした。

 ……たしかに、最近は精力が強くなりすぎて、満足するまでセックスできた覚えがない。複数人プレイならそれも解消できるだろうけど、恋人がいるのに他の女性と性交渉を持ったり、何人もの相手と付き合うなんて、女性に失礼じゃないかな。

 

「女性に対して誠実なのは魅力的だけど、あなたの唯一になった女性はたぶん罪悪感で気を病むことになるでしょうね。自分は満足させてもらいながら、恋人を満足させられないなんて、ホムラが誠実であればあるほど苦しくなるだけだわ。それならいっそ初めからあなたを好きな女性たちで囲うことにすれば、誰にとっても幸せだし、喧嘩にはならないと思うけど。そもそも、女性からしたら頭を下げて『囲わせてください』ってお願いする立場よ、ねえ英雄さん」

 

 ……女性側の視点なんて考えたこともなかった。そりゃ僕に恋人ができないはずだ。今までは年齢のせいだとか思ってたけど、強すぎる性欲も女性にとってはキツイよな。ジーナのように理解したうえで許容してくれる女性なんて、他にいるだろうか。……いや、きっといないよな。

 

「私、何股されても許すわ。ただ、愛が無くなったら去るだけ……それでも考えるっていうなら、私は帰る。──ねえ、一目惚れしてくれたんじゃないの?」

 

 私は、一目惚れだったわ。

 

 その一言で我慢が出来なくなって、僕はジーナを抱きしめた。

 

「一生大事にします」

 

 そうして、とジーナは笑った。

 

「一つだけ、約束して。ホムラが死んだら、私も神機で頭を撃ち抜いて死ぬ。だから、何があっても死なないで。……あなた、誰かがそう言わないと、死んでもいい状況ですぐ死んじゃうでしょう?」

 

 約束します。

 僕は死なないし、何があっても生きて帰る。

 

「よろしい」

 

 ジーナは誇らしげに、でも、たしかに嬉しそうに微笑んだ。

 

 こうして。

 2066年のある日、僕に恋人が出来た。

 

 名前はジーナ・ディキンソン。

 銀髪と眼帯の似合う、かっこよくて優しい、最高の美人だ。

 

 

 ……ちなみにジーナは翌朝、こんなことを言っていた。

 

「狙撃型は諦める。だって、狙撃姿勢になるたびにあなたとの行為が頭に過って、ムラムラしちゃいそうだもの。それに……狙撃型は、人類にはまだ10年くらい早いわ。いつか追いついて見せるけれど」

 

 そういうわけで、狙撃型の増員は無しになった。

 まあ、そんなもんだよね。

 

 




作業用BGM:「神々の食卓 -暴食-」→「留まる思い」(GOD EATER ORIGINAL SOUNDTRACK)

今更ですが、作者は『GOD EATER』の外伝小説・漫画には一切手を付けておりません。もしそれらと相違する内容になっていたら、そういう世界線と解釈していただきますようお願いします。作者は原作から組み立てられる程度しか扱いません。が、これはあまりにも違うとなった場合、ちょっと対策考えますのでご指摘いただけましたら幸いです。

BSSはしないと言ったな、あれは嘘だ。
気軽にカレルの脳破壊を楽しんでくれ。

公式カプじゃないからOK理論で(貧弱な)理論武装、作者はプルプル震えてます。ブログの存在は書いてから知ったんだ……そんなのわからんやん……原作でやっといてよ……。
いぢめないで……。た、たたかないで……。

そして皆さんがこの文章を読んでいる頃、私はGE2をプレイしていることでしょう……。週末でどうにかGE2編を、せめてナナの辺りまで終わらせないと次話が書けないんだ……詰みまみた。失礼、神でした。

次回は最後のシリアスパート(予定)、2067年です。

25/2/21 誤字を幾つか修正。誤字報告していただいた方に感謝。
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