※この作品はR-18です。

ちょっと風紀のゆるいアナグラ   作:弦弾

9 / 20
──ゴッドイーター15周年、おめでとうございます(2月中だからギリギリセーフ)。
……タイミング逃してすっかりそのまま忘れてました。

……………モンハンワイルズ??知らない子ですね。


09

 2067年はヨシノさんのKIA認定が為された年だ。

 

 2063年以降、僕が彼女を放置し続けたことには理由がある。彼女がいつ、どこで亡くなったのか、その時期が確定しているからだ。逆に言えばその時期が来るまで彼女の安全は原作上保障されている……もちろん僕のようなイレギュラーも存在するが、基本的に『GOD EATER』における一連のシナリオを成り立たせる出来事には蓋然性がある……ので。それはまさしく支部長とソーマが確執を抱えた理由のように。

 逃亡生活は苦難の連続だろうが、生命は保証されている。そしてゴッドイーターであれば、命さえあれば大抵のことはどうとでもなる。それ故に放置しても問題ないと考え、その間の労力を別のことに費やすことができた。

 

 もちろん、ただ楽観視していただけではない。

 アンジェリカを通し、オペレーターの動きからヨシノさんに協力していそうな部隊に目星をつけ、ヨシノさんに関連していそうな動きを探っていた。そのうえでヨシノさんの最大の協力者に当たりをつけておいた。いざというとき、確実にヨシノさんを確保できるように。

 その準備を、着々と進めていたのだ。

 

 ヨシノさんのKIAがどこで起こるのか。

 それはゲームでも描写があった。蒼氷の峡谷と呼ばれる、旧神奈川県に所在していたダムだ。

 

 では、それがいつ起こるのか。

 それもまたゲームにヒントがあった。

 

 1つは2067年という時期。

 そしてもう1つが……ラケル・クラウディウス博士の来訪。

 

 ラケル博士はヨハネス・フォン・シックザール支部長にお世話になったと発言し、過去に交流があったことを示していた。つまり、原作前の時期にラケル博士が極東支部に足を運んでもなんら不思議はない。そして倒れ伏すヨシノさんの前で泣きじゃくるナナを迎えに来たのはラケル博士だった。だから2067年に彼女が極東を訪れたタイミングで、ヨシノさんに悲劇が訪れる。そこさえ抑えていればどうとでもなる。色々と推測は立つけど、あの支部長のことだから『お世話』の内容が”ナナの引き渡し”であったとしても、僕は驚かない。

 

 そんなわけで僕はシックザール支部長に頼んだ。ラケル・クラウディウス博士が極東を訪れることがあれば教えてくれ、と。それは2人の勝負に関連のない僕の個人的事情によるものだから。

 彼は快く了承し、対価として僕に『勝敗』に関わらない範囲での協力を求めた。僕のロシアへの出向とロシア支部に対する肩入れはその結果であり、シックザール支部長はラケル博士の情報を餌に労せずしてロシア支部への貸しという大きなカードを手に入れた。

 

 こういった目途と方針とをもとに、2063年以降の行動はあって。

 そして、来る2067年が訪れた。

 

 極東支部では、新人ゴッドイーターとしてブレンダン・バーデルが入隊し、防衛班に所属することになった。相方になった僕の後輩である大森タツミ……2063年に入隊したハルオミの同期……とはいい関係が築けている様子だ。ブレンダンは生真面目で堅物、一方のタツミは爽やかでゆるい。一見、対極にも見えるがそのバランスが案外ちょうどいいようで、2人で行動する姿をよく見かけるようになった。タツミが19歳、ブレンダンが18歳と年齢が近いのも理由なのかな。とにかく、仲良さそうで何より。あとはピンク髪の森ガールが来れば原作通りの防衛班だ。

 

 そして新人はブレンダンだけではなかった。

 

 オペレーターとして、フェンリルに入隊した竹田ヒバリが加わった。彼女は神機適性があるということで採用されたのだけど、適合する偏食因子が見つかっていなかった。そのため偏食因子が見つかるまでは、という条件付きでオペレーターとなった。

 本人もゴッドイーターになることに前向きで、確かに戦場向きの冷静さがあり、神機使いとして適性があるように見える。おまけにしっかり者の彼女が来てから、ロビーはちょっと明るくなったような気さえした。13歳で1つ年下という年齢差もあって、僕やソーマともすぐ仲良くなれたのも嬉しい。原作前の時間軸なので、まだJCっぽい感じが非常に可愛らしい女の子だ。

 

 そして入れ替わりにオペレーターからゴッドイーターに転身した人もいた。言わずもがな、リンドウの恋人であるサクヤさんだ。

 彼女は新人オペレーターのヒバリがある程度成長するのを見計らって、神機適合試験を受けた。兵種はスナイパー。が、まあ、指導は僕ではなくリンドウとツバキさんが行った。どうも笹木ホムラという神機使いは、もうイロモノ枠として認識されてしまっているらしく、僕を隔離してサクヤさんにはスナイパーとしての健全な成長を促す方向になったらしい。イロモノで悪かったなぁ!!

 

 新人たちが定着し、仲間として背中を預けられるようになった頃。

 僕はシックザール支部長からのメールを受け取った。

 

 ……それは、ラケル博士の来訪日程を知らせるものだった。

 

 

「で、ヨシノさんたちは今どこら辺にいるんですか?」

 

 おら、キリキリ吐け、糸目白髪眼鏡。天パ梳いてサラサラストレートにするぞ。

 

「君、私に対する態度が年々雑になっていくよね。……櫛を持つのはやめるんだ、話せばわかる。……さてはこれが反抗期、というやつかい?」

 

 問答無用!

 ……けど、反抗期はちょっとあるかもしれない。僕が気兼ねなく接することのできる大人というのは、もはや榊博士くらいのものだ。どんな馬鹿なことを言っても受け入れてもらえる安心感は大きい。……今年14歳なのに、なかなかに極まった生活だ。僕だって、転生するならもっとゆるい世界観がよかった……ポケモンとかね。僕、生まれ変わったら盛るペコになるんだ……。

 

 ポケモンと引き換え、僕はといえば……目覚めた瞬間からの、怒涛の展開と押し寄せるシリアス……生存のための訓練と試練……自我崩壊レベルの危険性を持つ性欲……客観的に見て、あまりにも不憫すぎる。僕がいったい何をしたって言うんだ、奨学金でパチ打っただけじゃないか。

 

 かなしい第二の人生を自覚させられた僕は、流石に落ち込んだ。

 

「おっしゃる通りです……。僕は黒幕顔の眼鏡に親愛を覚えるタイプの反抗期真っ盛りクソガキゴッドイーターだ……。うつだしのう」

「黒幕顔の眼鏡……テンションが乱高下している様子だね、情緒不安定かな」

 

 あとで医療班に連絡しておこう、と榊博士は独り言ち、

 

「それで、香月ヨシノ君の消息、だったかな。たしかに、私の知り得る範囲だけど。及ばずながら助力はしたが……既にもう私の手を離れている。今更語ることのできる内容は少ないが……何が聞きたいんだい?」

 

 と、真剣な表情で僕に向き直った。

 

 かつて出会った頃の、モノクルに軍用コートをかけた若かりし榊博士はもういない。2064年のシックザール支部長との決別を機に、榊博士はイメチェンした。原作通りの、博士というイメージがしっくりくる大正ロマン染みた和と洋の折衷した衣服を纏う、いくつもの眼鏡を首から下げた、日本かぶれで柔和な糸目の榊博士がそこにいた。

 

「……言うまでもないことですが、確認です。香月ヨシノ上等兵および、その娘のナナの逃亡を手助けし、腕輪のビーコン反応を抑える細工をしたのは榊博士、あなたですよね」

 

 博士は頷きを返した。

 まあ、2063年当時の状況で他に手を貸すような技術者が、榊博士くらいしか思いつかなかったのだけど。

 

 ゴッドイーターがつける赤い腕輪は、一生涯外すことが出来ない。そして、偏食因子が練りこまれているため、装着者本人がアラガミに捕食されたとしても、腕輪だけは残る。そして腕輪にはビーコンが仕込まれているため、ゴッドイーターの死亡判定が非常にわかりやすくできている。

 

 ビーコン反応を弄ることは重罪だ。そして、そもそも腕輪に細工が出来るほどの技術者はそうそういない。そうでなければ逃亡ゴッドイーターが頻発する事態になっていただろう。

 

 装着者の静脈に一定期間ごとに偏食因子を投与する、その機能を損なわずにビーコン反応だけを無くす、そんな卓越した知識と技術を持つ人間は限られている。

 

 そして神機とゴッドイーターの産みの親である榊博士には当然それが出来る。そして、生まれただけの子どもと、その母親を生かすという選択が出来る良識を兼ね備えている。だから、確証は無くても、状況的にそれを為しうるのは榊博士しかいなかった。

 

「……不憫だった。しかし、私が匿うこともまた、不可能だった。それをすれば、極東支部内の状況を管制しているヨハンには一目でバレただろう。そしてヨシノ君自身、私に対して不信感を持っていた。……いや、あれはフェンリル自体にだろうね。彼女はもはや直接的な利害関係を持つ人間以外、誰も信用できなくなっていた。私は餞別にビーコン反応を偽装し、携行型偏食因子を一定期間ごとに用意した。……それくらいしか、私に出来ることはなかったんだよ」

 

 それでも、無いよりはずっとマシな生活が出来たはずだ。ヨシノさんの問題は、ゴッドイーターの婚姻と出産に関わる、フェンリルが持つ組織体質の問題でもあった。榊博士にとってはフェンリルに属するものとして、片手間の贖罪に過ぎない行為だったかもしれない。だけど、直接的な利害関係に無くても手助けしてくれる誰かが存在することは、ヨシノさんにとってある種の救いになったんじゃないだろうか。

 

「……偏食因子を供給している立場上、彼女の居場所はわからなくても、彼女に協力している部隊は把握している。……君は、助けに行くんだろう?なら、これを持っていきなさい」

 

 と、用意していたらしいまとまった数の携行型偏食因子を手渡される。

 これは……。

 

「……榊博士。もし僕がヨシノさんのことを言い出さなかったら、僕が自分から助けに行くよう唆すつもりでしたね?」

 

 バレた?と榊博士が笑んだ。

 隠す気ゼロじゃん。……でも、ありがたい。これで最低一週間は潜伏できる。

 

「……君には、いつも面倒事を押し付けてすまないね。私の至らないところばかり尻拭いさせてしまっている」

「それは……むしろ僕の台詞では?」

「……さあて、ね」

  

 ヨシノさんを僕の専属護衛に選んだのは、いったいどこの誰だっただろうか。全てを知る立場にいながら僕とヨシノさんを引き合わせたのは、決して偶然ではないはずだ。ヨシノさんにはきっとメリットを提示したのだろう、『いざという時が来たらビーコン反応を弄る』代わりに、僕の護衛をやってくれ、とかね。それはそれとして、僕の方にも護衛という立場を通して和解してくれたら、という願いがあったのかもしれない。だとしたら、あれこれと心を砕いて貰った礼を述べるべきなのは、僕のほうだ。……これだから、榊博士は。

 

 ……まあ、どうせあとで死ぬほど面倒事を押し付ける立場だし。本人が貸しだというなら、今のうちに貸しを稼いでおくんだ。どんどん僕に対する負債と罪悪感を抱えてくれ。……大変な頼みごとをする心理的ハードルが下がるからね。

 

 研究室を出て、自室へと戻る。

 狙撃手らしく潜伏するべく、僕はテントなど野営の荷物とヨシノさんのための道具をバックパックに詰めて背負い込んだ。出発前に自室の鏡の前に立つと、否が応でも自分の成長を自覚させられる。成長期を迎え、いつの間にか身長は160cmまで伸びていた。それでも大人と呼ぶにはやはり幼い顔立ち。しかし、4年前に比べればずっと”男”っぽく見えるようになったんじゃないだろうか。

 

 そしてゲートへと降り立ち、長期の調査任務を申請して僕は出発することにした。

 

 昔とは違って、今のゴッドイーターは層が厚い。後輩たちが切磋琢磨して成長してくれたからだ。討伐班のツバキさん、リンドウ、ソーマ、サクヤさん。防衛班のタツミ、ブレンダン、ジーナ、カレルにシュン。僕が無茶をやらかさなくても大丈夫、そう安心できるくらいに戦力は充実していた。なので、わりと気軽に極東支部を空けることが出来る。ヨシノさんを探しに行く、なんて突拍子もないことに時間を割けられる。……私情で離れるのは申し訳ないけども、その頼もしさが今はありがたい。

 

 夜の暗闇の中、神機とバックパックを担いで外壁から降りた僕は、ダムを目指し歩き始めた。

 さて、──潜伏の時間だ。

 

 

 

────────────────────────

 

 

 香月ヨシノはアラガミの襲い来る森の中を駆けていた。

 

 右手には神機を、左手に泣きじゃくる娘を抱きかかえながら、アラガミの襲撃から逃げ回る。これまでの日々と同じであり……しかし、今までにない危機が訪れていた。

 

(どこにいっても……囲まれている……)

 

 薄暗い森では、少しの判断ミスが命取りとなる。間断なく隙をついて加えられる攻撃に対処し続けることで、ヨシノは通常時の倍以上疲弊させられていた。そのうえ、どこへ向かうとも行く手を阻むように現れるアラガミの姿には、辟易する以上に諦めを抱かざるを得ない。

 

(もう、どうしようもないかもしれない……)

 

 暗い感情が芽生えた心に、左腕に掛かる重さが強くのしかかっていく。それは、ヨシノを”諦めてはならない”と奮い立たせると同時、”手放してしまえ”と囁く悪魔のようにも感じられた。

 

(そんなことは出来ない……決して)

 

 手放すことはできない。

 そんなことが出来たなら、初めからそうしていた。

 

 それが出来ないから、他の全てを諦めた。この腕にもたれた重さを守るために。そのために、それ以外の全てを諦め、切り捨て、利用してきた。

 

 癇癪を起こして一向に泣き止む様子のない愛しい娘を強く抱きしめ、ヨシノは立ち止まる。

 

(たしか、今日は協力者との合流予定日。予定通りなら、例のダム付近に誰かがいるはず。押し付けるのは心苦しいけど、なりふり構っていられない……)

 

 想定外の事態に対処するため、予定よりも早く合流地点に向かうことを決めて走り出す。

 

 

『おかあさん……もうやだよ。ナナ、もう疲れた……はやくおうちに帰りたい』

『おうちにはもう帰れないの。何度も言ったでしょう、ナナ。聞き分けのないことばかり言って、お母さんを困らせないで』

『……うぅ。やだ!やだやだ!!ナナ、おうち帰る!!お友達に会いたい!!おでんパン食べたい!!こんなの、もうやだよぉ……!!』

『ナナッ!泣いちゃダメ!いつも言ってるでしょ、あなたは泣いたり怒ったりしちゃダメな子なの!どうしてお母さんの言うことが聞けないの!?』

『だって、だってぇ……うぇああああぁぁ!!』

 

 

 アラガミの追撃を躱しながら、頭に浮かんだのは娘が泣き出すまでの経緯。

 

 10歳の少女には過酷すぎる旅路だった。

 友達や近所の人に囲まれ、雨風をしのげる暖かい家があって、なかなか帰ってこれないけれどそれでも母親がいた日々。それらを一夜で失い、6歳の時から、アラガミに襲われる危険な外で旅をしながら生活してきた。

 

 アラガミを倒すための神機があり、最低限の物資補給はあったものの、大人であっても困難な苦しい生活だ。子どもでしかない娘には限界があり、当然のようにその限界を迎え決壊したのが、今日だった。むしろ4年もの間、不平を言わずに母親についてきたことが奇跡と言えるくらいの放浪だったのだ。

 

 しかし、子どもであれば当然の癇癪、ストレスの極致による不満の爆発は、ナナという少女にとって致命的に命取りとなる行為だった。その強い感情は、強い『意志』は、彼女が生まれ持っていた力に多大に影響を与え、指向性を持って暴走していた。

 

 ヨシノはアラガミではない。しかし、P53偏食因子を投与した以上、どうしてもアラガミの性質を得ることになる。ヨシノの持つそのアラガミとしての部分が叫んでいた。『この子のそばにいたい』『離れてはならない』と。本能に直接訴えかけるように、脳裏に干渉される。

 それがオラクル細胞を通じたものであることを理解しながら、それでも母親として、人間として冷静に受け止め、受け入れた。何があっても、何であっても、この子を守ると。

 

 しかし。

 

 これまではどうにかなった。どうにかしてきた。強力なアラガミが現れたときも、同じく放浪する人間に襲われた時も、どうにか()()して生き延びることが出来た。

 

 だが、これから先。

 私は、ナナは、どうやって生きていけばいいのだろう。

 

 何があっても娘を守る。

 そのことだけを胸に生きて、そう生きてきた自分を支えに今日まで歩いてきた。幸い、娘は素直で明るい善い子に育ってくれた。今回の癇癪も一時のもので、いつかは治まる。それから仲直りして、未来の幸福を思って笑ってくれれば、辛いけれど、苦しいけれど、生きていける。大したメリットもないのに助けてくれる人たちもいる。そうした支えの中で生きていくことができる。

 

 けれど。

 

 こんな生活がいつまで続けられるだろうか。香月ヨシノの神機使いとしての耐用限界はとっくに超えている。平時であれば引退勧告どころか、アラガミ化のリスクを考えて強制的に引退させられてもおかしくはない。神機だって4年もメンテナンスを受けておらず、あちこちにガタが来ている。いつ神機が破損してもおかしくはなくて、だからこそ最近のヨシノは戦闘すら避けていた。避けられない戦闘に、たった一度、臨まねばならないときのために。

 

 このまま娘の力が強くなれば、逃げることもできなくなる。

 その疑念が頭を離れない。

 

 むしろ、その瞬間がもう訪れているのかもしれなかった。

 

 ……もしかしたら。

 自分は今日、死ぬのかもしれない。

 

 その考えが過ったとき、左腕がふっと軽くなった。気が付けば、ヨシノは協力者との合流地点であるダムに辿り着いていて、見れば協力者たちも既に到着していた。息が上がって呆然としている間に娘は泣き止み、協力者の姿を発見してヨシノのそばを離れていた。

 

 ……結果的に、それが良かった。

 

「あァッ!?」

 

 突如、舞い降りるように上空から現れたアラガミ、ヤクシャ・ラージャに背後から急襲されたヨシノは吹き飛ばされた。ごろごろと硬いコンクリートの上を血まみれで転がっていく。

 

「おかあさんっ!?」

 

 悲鳴のような声が上がる。そばにいた神機使いが守るようにヤクシャ・ラージャへと駆け出し、倒れ伏すヨシノに近寄ったナナをかばった。

 

 おかあさん、おかあさんと泣き喚く娘に、ヨシノは手を伸ばした。

 

「ナナ……、あなただけでも……逃げて……」

 

 やだ、やだと涙を零しながら首を振る娘。その手はヨシノの腕を強く握りしめて離さない。強い『意志』に、またあの力が発露し、強い偏食場パルスに赤い血のような靄が渦巻いた。

 

『行かないで』『誰でもいいから』『誰か来て』

 

 そんな感情を色濃く伝えるように、偏食因子はヨシノを促し、そして周辺のアラガミにも影響を与えた。次々とヤクシャ・ラージャに従属するヤクシャが降り立ち、ヨシノたちを囲む。絶望的な状況に協力者たちが戦意を奮い立たせるも、想定に無かった戦闘に動揺した男たちは、アラガミの脅威にたやすく蹂躙されていく。

 

 血のように赤い力の暴走によって、ヨシノの姿さえ見ずにただただ強い感情を振り回すナナは、ヨシノから見ても正気を失っているように思えた。その間にアラガミは男たちを倒し、やがてヨシノたちを取り囲んだ。

 

 巨体に囲まれ、血に染まる視界の中で、ヨシノの目には空が見えた。アラガミだらけの隙間から覗く空だったが、雲一つなく晴れ渡る、青空だった。

 

 きれいなそらだ。

 

(ごめんね、ナナ)

 

 娘に普通の生活をさせてあげられなかった、不出来な母親だった。けれど、やれる限りのことをした。私はきっと愚かな母親だ。もっと、出来たことがあったかもしれない。他の人ならば、もっと違う選択が出来たはずだ。でも、私に選べたのは、単純なことだけだった。

 いつかすべてを知ったら、娘でさえ蔑むような母親だ。

 

 けれども、それでも。

 胸を張って、娘のために生き抜いた。それだけは、誰に対しても胸を張れる。

 

 

 ──私は、『おかあさん』をやり抜いたのだ、と。

 

 

 迫るアラガミが腕を振り上げると同時。

 涙のたむけを(はなむけ)に、香月ヨシノは目を閉じた。

 

 

 ──パァン。

 

 なにか弾けるような音がして、ヨシノは目を開いた。

 そして目を疑った。

 

 青い空と、視界にいっぱいのアラガミ。

 その空隙に、無数の閃光が迸っている。

 

 それはアラガミの異形を刺し貫き、致命的な弱点であるコアに損傷を与えていた。だが、それをもたらすような神機使いの姿は周囲にはなかった。まして、そんな芸当ができる神機使いは限られている。

 

 アラガミたちの姿が霧散し、黒い影となって消える。コアを失ったアラガミの末路だった。

 

「どう……して……」

 

 衝撃のあまり、苦痛に呻くヨシノの口から言葉が溢れた。

 

 どうして。

 あの子が……まさか、そんな。

 

 いや……今際の際にみる都合の良い夢、か。

 

 ほんの少し、笑いが漏れる。自分が切り捨てた、かつての幸福を最期の瞬間に思い描くなんて、何様のつもりだろう。そんな資格、私にはないのに。自嘲に笑みは深まり、傷が痛んだ。それでも笑うことをやめられない。馬鹿々々しくて、バカバカしくて。そんな自分があまりにも憐れで、滑稽で。

 

 笹木ホムラくん。

 私のせいで、家族を亡くして戦場に送られた少年。最後に顔を見てから4年の月日が経っている。もう、私のした所業には気付いただろうか。きっと気付いただろう、賢い子だったから。

 それでも、忘れたことはない。あの子のそばにいられた日々は、娘との時間とはまた違った幸福で、ひとつの天国だった。何度も何度も夢に見て、その度に自分の未練を嘲笑った。

 

 自分で切り捨てた幸福だ。自分が損ねた幸福だ。

 

 一回り以上年下で、娘くらいの年齢の男の子。

 そんな人から与えられた恩を、都合よく受けて、何もなかったように放り捨てた。

 

 きっと傷つけただろう。きっと軽蔑しただろう。

 

 そんな子が、こんな僻地で、私を助けてくれる夢を見るなんて、どうかしている。

 ……ほんとうに、どうかしている。

 

「──お待たせ、ヨシノさん。ちょっと遅くなったけど、助けに来たよ」

 

 その顔は、私の知っている彼よりも、ずっと大人びていて。夢の中に現れた彼よりも、ずっと逞しく、男らしくなっていて。私の想像できなかった現実が姿を為して現れたことに、認めざるを得なくなった。

 

 ──ほんとうに、ホムくんが来たんだ。

 

 

 

 

────────────────────────

 

 強い偏食場パルスの発生……干渉的な力場が形成されたことで原作通りの展開がやってきたことを感じたのは、山中に潜伏を始めて6日目のことだった。てっきりラケル博士が極東支部に到着してすぐに事態が始まるものだと思っていたものだから、拍子抜けを食らってしまった。結構時間かかったな。

 

 しかしまあ、始まってしまえば拍子を抜いてる暇なんぞなく。付近のアラガミのおぞましいまでの数に対処を余儀なくされた。……大山鳴動して鼠一匹くらいでいいじゃん、なんで丹沢方面の山中から大群のアラガミが来るんだよ、ふざけろ。

 

 そんな状況だったため、例によって狙撃形態で連射していた結果、ヨシノさんたちの救援が遅れてしまった。アラガミたちがなにかを……ナナを目指して一目散だったため、狙撃自体はやりやすかったが、単純に数が多すぎて時間がかかってしまった。

 

 危ういところではあったけれど、助けられてよかった。ほんとうに。

 ……と思ったタイミングで、僕の神機はぶち壊された。

 

 周辺にアラガミの姿はなかった。だから気を緩めていた。それにも関わらずミサイルは現れ、『唯我』をピンポイントに爆撃していった。その直前、空間が捻じ曲がるように歪曲していた。

 

 ……こんな真似が出来るのは、アレしかいない。

 視界の先、僕とヨシノさんとの間に立ちふさがるような位置に現れたアラガミ。

 

 ──テスカトリポカ。

 

 クアドリガ神属の接触禁忌種。クアドリガ神属の特徴は、キャタピラを足にしていて、戦車を服に編み込んだような柔軟で硬質な胴体。そしてミサイルを主な武装として射出する、火力の高い厄介なアラガミだ。

 そしてその接触禁忌種……同種のアラガミによる相互捕食の結果発生した、隔絶した能力を誇るアラガミ種……であるテスカトリポカの最大の特徴は、怒り活性時に時空間を歪曲させるワームホールのようなものを作り出し、それを通して距離を無視したミサイル爆撃ができること。その射程は、視界の届く範囲ならどこまでも。

 

 ──つまり、固定されて動けない狙撃形態の『唯我』にとって、最大の天敵だ。

 

 見事にその弱点を突かれた結果、『唯我』は大破し、……しかし、狙撃用のパーツのみが破損した状態になっていた。狙撃形態はもうできないが……通常状態のスナイパーとしてなら運用できる。即座にパージして余計な荷物を捨てた。……ごめん、『唯我』。

 

 ただ、──最悪なことに、弾切れだった。

 

 6日間の野営中、OPを節約したもののアラガミを何度も倒している。そのうえでさっきの大群に連続狙撃した結果、OPも補充手段もすべて失っていた。残っているのは、消費最低威力極小のバレット一発分程度のカッスカスOP。

 

 しかし、今ここで倒さなければ、テスカトリポカに殺される。

 僕も、ヨシノさんもナナも、他の彼らも。

 

 だから、やるしかなかった。

 つまり、まあ──がんばりの時間だ。

 

 『唯我』を構え、テスカトリポカに向かって突撃。ミサイルポッドから打ち出される小型の連射ミサイルを連続で転がって躱し。空間歪曲によってピンポイントに打ち出された拡散ミサイルを躱し。跳躍とともに地面から吹き上がる神属性のオーラを避け。

 

「一点……ただ一点」

 

 思考はシンプルに。

 狙うもののことだけを考え、単純で合理的な世界にすべての情報を落とし込む。自分の身体は、精神は、一点を貫く、その機能のためだけの道具となる。──だから、『唯我』の断片が刺さっていても体は動く。

 

 躱し、躱し、躱し。

 躱しきれないミサイルは最小限のダメージで抑え。

 

 そしてやってきたチャンス……特大の追尾トマホークミサイルが、開かれた前面装甲の穴から射出されるその瞬間、『唯我』を抜き放ち、ミサイルごと内部のコアを撃ち抜く。

 

 バレットの一撃でトマホークが盛大に爆発し、その衝撃もあって、テスカトリポカが一撃で倒れ伏す。そのまま影に溶けるように、靄となって消えていった。

 

 そんなテスカトリポカを無視して走り抜く。

 ヨシノさん、ヨシノさんの容体は!?

 

「………………どう…して…」

 

 微かな声が聞こえた。

 倒れている第五部隊の神機使いたち。暴走して泣いたままのナナ。そして、血溜まりに倒れているヨシノさん。ああ、間に合った……。よかった、ほんとうによかった。

 

「──お待たせ、ヨシノさん。ちょっと遅くなったけど、助けに来たよ」

 

 安心させるように笑いかける。

 ヨシノさんは困ったように笑って、涙を零した。

 

 

 とりあえず、意識が低下してヤバそうだったので、ヨシノさんには回復球をぶち込んだ。接触によって体内のオラクル細胞に賦活させ、身体を修復させるオーブ状のHP回復アイテム。数に限りがあるので、優先すべき人から与えなきゃなんだよな。

 まずはヨシノさん。それから倒れていた第五部隊の3人。いずれも意識不明の重体だったので、似たような回復アイテムの回復柱を使って三人とも回復させた。意識は戻らないままだが、出血は止まり、呼吸は安定した。これで一安心。

 それから僕自身も回復させ、『唯我』の破片をわき腹から抜いた。……めちゃくちゃ痛かった。アドレナリンどばどば出てるときはむしろ気持ちいいくらいなのに、戦闘終わった途端死ぬほど痛いのはなんでや。だから僕は、マゾにはなれない……。

 

 一番面倒な状況にあったのはナナだった。P66偏食因子に由来する血の力が暴走状態にあるのか、泣き喚いたまま意識を取り戻さない。……意志の力が暴走して、宿主であるナナを動かしているのか……?

 怪我人しかいない状況でアラガミが現れることだけが心配だったけど、さっきの狙撃で倒しつくしたのか現れる気配がない。まあ、これからもっとヤバイ、別のやつが現れるんですけどね。

 

 時間的にはギリギリかもしれない。意識の戻らない第五部隊を放置し、ヨシノさんをそっと抱えてダムから離れた森の中に身を潜める。その途中で、ヨシノさんも目を覚ましたようだった。

 

「ホムくん……どこに、行くの……?ナナは……?」

「あの子なら大丈夫。周辺にアラガミはいないし、今はヨシノさんの安全を確保しないと」

 

 ナナの状況が見渡せる位置、それでいて向こうからは見えない場所に移動し、ヨシノさんを木陰で安静にさせる。もう少しの辛抱だから、ちょっとだけ耐えて欲しい。

 

「もうすぐここにある人が来る。その人は養護施設を運営していて、ナナちゃんを見つけたら引き取ってくれる。彼女はフェンリル最高の頭脳を持つと言われる偏食因子の優秀な研究者でもあるから、ナナちゃんの持つ力の対策もしてくれる」

「⁉…………それは、ほんとうなの?」

「誓って本当のことだよ。……ただ、彼女は危険人物でもある。ナナちゃんに危害を加えることはないだろうけど、ナナちゃんを都合よく扱うためだけにヨシノさんを狙う可能性がある。だから、ヨシノさんは公式的にはここで死んだことにする。そうすれば、ナナちゃんを安全な環境で養育してもらいつつ、ヨシノさんの無事を守ることが出来る。……娘の様子を把握できないのは不安だろうし、勝手に親子を引き離して申し訳なく思うけど、僕にはそれしか思いつかなかった」

「……そう」

 

 ヨシノさんは、ぼーっとあらぬところを眺めていた。負傷の影響がまだ……か。

 

「……ホムくんは、どうしてここに?あなたのことだから、もう、知っているのよね。……どうしてこんなところまで……私に助ける価値がないことなんて、わかっていたでしょう」

「…………」

「私の選択のせいで、あなたはご両親を亡くした。私がナナを産まなければ、あなたはきっと今もご両親と平和に暮らして、神機なんて関わらず戦場で過酷な日々を送ることもなかった。何でもないテレビを見て、家族で誕生日を祝って……あなたは、私を恨んで当然の立場にある」

 

 それなのに、どうして?とヨシノさんの目は告げていた。

 理由次第では、今すぐここを飛び出して娘を迎えに行く、と。

 

 ずっと娘を守り抜いてきた、『強い母親』の眼差しで、僕に問うていた。

 

「──僕さ、両親の顔がよく思い出せないんだよね」

「…………っ」

「写真とかあったらよかったんだけど……オウガテイルが家をめちゃめちゃにして、そのあと火事まで起きたらしくて。僕がそれまで生きてきた痕跡とか、両親の痕跡とかもうどこにもなくてさぁ。思い出そうとしても、思い出そうとしても、浮かぶのは全然別のことで」

 

 それが心の防衛機構だと、今では納得しているけど。

 『笹木ホムラ』がろくでもない前世を手に入れたのは、そういう事情もあるんだろう。

 

「でも、あの日食卓に家族が揃っていたのは、あの日が僕の誕生日だからだったんだろうな。きっと父親は仕事を早上がりなんかして、母親は少ない収入からご馳走をがんばって作って待って。……結局一口も食べないうちに吹っ飛ばされちゃったけど」

 

 そのせいか、未だに料理の味とかわからないし。コーヒーとかお茶の味くらいだよ、わかるのは。……おでんパンが美味しいとか、適当なこと言っちゃったよな。高級だから美味しいだろう、手料理だから美味しいだろう、いつもそんな感じで。案外、みんなにバレていたりするのかもだけど。

 

 貧しいながらも特別で幸福な日。──それを突然喰い荒らされる絶望。

 その怒りを、僕はヨシノさんとナナにぶつけるべきなのだろうか。

 

「僕がヨシノさんの問題を見ないふりしていたのは、きっとそういう理由もあったんだと思う。どう判断したらいいか、わからないから。……きっと誰にでもそうだよ」

 

 ……前世の『僕』の判断は、情状酌量の余地があるから、ゆるすしかない。

 ──今いる『僕』の判断は、……わからない。

 

 わからない、と言うのは直視したくないってことで、だからきっとそこには、怒りや恨みがある。悲しみもある。けれど、その感情に日の光を当ててさらけ出してしまえば、ヨシノさんの事情にも平等に目を向けざるを得なくなる。望まない経緯で子どもを妊娠し、周囲の圧力に逆らって必死に子どもを産み、仕事をしながら娘を育て、それすら難しくなって外の世界にたった2人で出て行くしかなくなった親子を、天秤に据えなければならない。

 

 それはつまり、過酷な現実に立ち向かうということだ。

 

 果たして僕の悲しみは、2人の運命よりも優先されるべき感情なのか?

 では情状酌量の余地があれば、僕は恨みを抱いてはいけないとでも?

 

 望まずして悲劇を背負い、しかしその運命に負けずに立ち向かった人に、僕のちっぽけな悪意を向けるのは正しいことなのだろうか?そこに正当性はあるのか?

 

 ……彼女の事情は、結局のところ、僕の感情と全く別のところにある。

 ヨシノさんの事情はヨシノさんの事情であって、それに対して僕が幸福を損なわれた恨みを抱くのはまったく別のことだ。だから、それらは両立できる。ヨシノさんはヨシノさんでがんばって生きていて、僕は僕でそこに至る背景とは無関係に、ただ家族を失った苦しみを吐き出すことに正当性を見出すことが出来る。出来てしまう。

 

 でも、それを為すには……復讐なんて考えるには、過ごした日々があまりにも温かすぎた。

 

 状況的に、僕は復讐心を抱くべきなのかもしれない。

 けれど、その心に従うには、ヨシノさんは……大切になりすぎてしまった。

 

 ──この人の人生が、どうか、報われてほしい。

 4年の月日を経て、気が付いたときには、もうそういう感情だけが胸の内にあった。

 

 過酷な現実に立ち向かうとき、僕のそばには、寄り添ってくれる誰かがいる。そこから生まれる勇気の炎が、あったはずの感情、手のひらに握りしめていたはずの悪意を燃やし尽くして、ただ、一握り大切にしたい気持ちだけを、僕に届けてくれる。その感情は、なにもかもを超越していて、それ以外のすべてを空白のようにして、無駄な思考を停止させる。

 

 そのおかげで辿り着いたのは、ヨシノさんへの素直な気持ちで。

 

「────それでも僕は、そばにいたい。僕()、そばにいたいし、ヨシノさんにずっといてほしい。幸せそうに眠っていてほしい」

 

 自分でも何考えてたんだかわからなくなっちゃったけどさぁ、言いたいことはそれだけだよね。うだうだ考えてばっかりだから逃げられたんだぞ、そういうとこだからな。

 

「いろいろと、整理をつけなきゃいけないとは思う。決着をつけるべきことが山ほどあると思う。でも、それを独りで背負う必要はきっとない。僕はずっと、そばにいるよ。どんなことがあっても、ヨシノさんの隣にいる。──僕はそうすることを、そういう自分であることを、決めたんだ」

「──そんなこと、私は頼んでない」

 

 ヨシノさんの言葉は震えていた。三角座りで顔を膝に埋めていて、その表情はわからない。

 

 ヨシノさんがどういう感情でいるのか、僕にはわからなかった。もしかしたら誰かに裁いて欲しかったのかもしれない。生きるため、生かすためと言って、彼女は罪を重ねすぎた。手を汚しすぎてしまった。先行きの見えない放浪の果て、娘のために死を迎えることだけが、彼女にとっての救いだったのかもしれない。

 

 でも。

 

「頼まれなくても知ったことじゃない。僕がヨシノさんと一緒にいたくてそうするんだ。いつかヨシノさんが、ヨシノさん自身幸せになることを許せるように」

「……………………」 

 

 厳しい言い方をすれば、そうして生きていくことが、ヨシノさんにとってある種の贖罪になる。それまで彼女を支えることが、僕の役目だと勝手に思っている。

 

「あ、ほら。ようやく来たよ」

 

 視界の先で、いつの間にか彼女が到着していた。

 ──ラケル・クラウディウス博士。長い金髪に喪服のような黒い服。車椅子に乗って、人形のように美しく澄ましているが……その奥底には、怪物のような感情を潜めている。

 

 原作通りなら『貴方が……呼んでいたのね……』とでもしたり顔でナナに語り掛けているところかな。ラケル博士はソーマのようにP73偏食因子を埋め込まれており、その性質はアラガミに近い。ナナの血の力に誘われてここまで来たのだろう。

 

 こうしてナナとラケル博士は出会い、ラケル博士はP66偏食因子をナナから見出し、『GOD EATER2』のストーリーに繋がっていくのだろう。ブラッド隊は、ここから始まるのだ。

 

 ラケル博士がなにか干渉したのか、ナナが意識を失って崩れ落ちる。その瞬間、この周辺一帯にのしかかっていた圧力みたいなものが、ふっと消えた。ラケル博士はナナを車椅子の上から抱き留め、そのまま眠らせている。やがてフェンリルから迎えらしき人たちが現れ、ダムの上の惨状を発見して驚いていた。彼らは即座に回収部隊に応援を要請し、そのうちに第五部隊の人やヨシノさんの神機は回収されていった。

 

「──────」

 

 その最後、撤収する直前。

 

 ラケル博士は振り返り、たしかにこちらを見た。

 身を潜めていたはずの僕と、たしかに目が合った。

 

 こっわ。

 流石はラスボス、貫禄あるなぁ。

 

 

「で、そちらの……ええっと、ウサギの着ぐるみのようなものを着ているのが、香月ヨシノ君なんだね?相変わらず、君からは奇抜な発想がポンポン出てくる。……実に興味深い」

 

 榊博士の研究室で、博士がお決まりのセリフを言った。興味深すぎて僕の脳みそがそろそろ解剖されそうだな……夜逃げの準備しなきゃ。亡命、亡命。

 

 そしてウサギの着ぐるみを着た女性、ヨシノさんがこくんと頷く。外見上はファニーでポップな着ぐるみが可愛くジェスチャーしただけだけど。たぶん、GE2をプレイした人ならば見てすぐにわかるだろう、「あ、キグルミの色違いだ」と。

 

 ヨシノさんにこれを着せたのはもちろん偽装のためだ。意識を失っていた第五部隊と現場に残された血痕、そして神機からヨシノさんのKIA認定は確定だろう。その状況でヨシノさんをそのまま連れ帰ったらアウト、しかし、仮に変装したとしても腕輪のせいでどのゴッドイーターかな?と疑われてしまう。ゴッドイーターは数が少ないので管理は徹底されている。そこから漏れているとなれば、直近で死亡判定がされたのに腕輪が見つかっていない人物に関連付ける人がいてもおかしくない。

 

 そこで出てくるのがキグルミの着ぐるみとなる。

 

 近々、極東支部ではエイジス計画の推進に向けて、支部長直下で特務を行う第七部隊が設立されることになっている。原作ではゴースト部隊として、支部長の厄介なお願いを聞いたり、終末捕食に必要な特異点を探すお使いをさせられたりする、まさしく支部長のための部隊だった。ウロヴォロスのソロ討伐みたいな異次元の戦闘をやらされる関係で、所属していたのは公式チート連中のリンドウ、ソーマ、そして原作主人公の3人のみだった。

 

 で、今度発足するその部隊の隊長に僕が内定している。世界最強を名乗る都合上、流石に第一部隊で平の隊員をしているわけにはいかなくなったという状況だ。そして、支部長としてもウロヴォロスみたいな超大型アラガミのコアを得るときのためにダミー部隊が必要で、そのデコイとして僕という人間は非常に都合がよかった。特殊なコアを持つような強力なアラガミを倒してもおかしくはなく、それでいて権力や報酬に興味がない。それでいて支部長の目的や行動を理解していながら、その利害に直接は関わらないことを宣言している、オタクに優しいギャル以上に都合の良い人というわけだ。そのため、僕は名前だけの部隊の、名前だけの隊長になることが決まっていた。

 

 そして僕はそんな面倒くさい仕事をさせられる以上、支部長に条件をつけた。『第七部隊に所属する人員は必ず着ぐるみを着て活動すること』『部隊員はすべて”キグルミ”と名乗ること』。これにはもちろん僕自身も含まれる。これにより全ての荒唐無稽な戦績が、キグルミという謎のゴッドイーターに集約される形だ。

 匿名性を確保できる以上、支部長にもメリットのある仕組みであり、それでも違和感を感じたのか首を傾げながら彼はこのルールを承認した。当然、僕はこの仕組みを悪用する気しかなく、事前に着ぐるみを用意してヨシノさんを迎えに行き、何食わぬ顔で真正面から連れ帰った。きょとん顔で尋ねたヒバリには「今度発足する第七部隊の人員候補と、運用を想定した訓練をしていた」と報告した。彼女はそれで納得し、僕は堂々とエレベーターを使ってヨシノさんを榊博士の研究室に連れ帰った、というわけだ。……まあ、それでも支部長にはバレるだろうけど。

 

「じゃあ、腕輪の封印処置をお願いします」

 

 実際のところ、状況はけっこう逼迫している。ヨシノさんの活動限界はとっくの昔に超えていて、いつアラガミ化してもおかしくはない状態だ。腕輪に封印処置を施しこれ以上の侵食を抑えることは必須だった。

 

「予定では10800秒だね。笹木くんも仮眠でも取って、のんびり待つといい」

 

 処置には3時間ほどかかった。麻酔によって眠ったままのヨシノさんにキグルミを着せ直して、僕は彼女を自室に連れ帰った。

 

「……ここは」 

 

 目を覚ましたヨシノさんは、

 

「──ナナはっ⁉」

 

 意識の覚醒と同時、即座に身を起こして周囲を見回した。そして、ここが僕の部屋であることに気が付くと、ぺたんと力なくベッドに座り込んだ。力を失って立っていられなくなった、という様子だった。

 

「ナナちゃんなら、今頃はフライトを楽しんでいる頃だよ。連れていく様子もちゃんと目撃されたようだから、あとはラケル・クラウディウス博士に任せるしかない。折りを見て様子を見に行くつもりではあるけど、今は成り行きに任せるしかないと思う。……ヨシノさんもね」

 

 ヨシノさんは顔を覆った。

 

「……19歳のときから10年間……ずっとナナと一緒だったの。仕事で会えない日もあったけど、それでもナナのことが私の生活のすべてだった。……今更、ナナを手放して、ゴッドイーターでも無くなって……どうしたらいいのか、もう、わからない」

  

 ──笑えばいいと思うよ。

 ……冗談はともかく、あまりにも急激で予定に無い変化だ。受け入れられない気持ちもわかる。まずはヨシノさん自身、心身を落ち着かせることが大切だ。

 

 そういうわけで、僕はヨシノさんをお風呂に入るように促した。何も考えられない状態になっていたので、僕の言われるがままだった。そんなヨシノさんの服を勝手に脱がし、体を洗い、お風呂に入れた。

 

 ……昔、一緒にお風呂に入ったことがあったけど、その時はヨシノさんにされるがままだった。今では立場が逆転してしまった。その変化を嬉しく思うのは、おかしなことだろうか?

 

「……いつの間にか、大きくなっちゃったわね。背丈も大きくなって、筋肉質で逞しくなって……あちこち傷だらけ。これも、私のせい……」

 

 ゴッドイーターになったのは不可抗力だけど、戦うことを選んだのは僕自身だ。ヨシノさんの責任に転嫁するつもりはない。生きていれば、ケガすることくらい誰だってある。

 

「……おまけに、おちんぽさまも、こんなに……」

 

 ごくり、とヨシノさんは生唾を飲み込んだ。その発言自体無意識のようだったけど……体に染みついた習性は変わらないってことかな。

 14歳になった僕のアレは、二次性徴を迎え、成長期を迎えていた。13cmから15cmに一気に伸びて、一回りも二回りも太くなった。ズルッズルにズル剥けで、おまけにグロテスクに青筋は浮き、陰毛も茂っている。女性の子宮口を抉る機能を持った、十分に女殺しのペニスだ。彼女のジーナにも大変ご好評いただいている。アンジェリカ?毎回死ぬ死ぬ言ってるけど、死んだことないからセーフ。

 

 お風呂で密着した状態で互いの体温が伝わり、心臓の鼓動が強くなっていく。吐息からは淫気が漏れ、ヨシノさんからは成熟した女性特有の豊潤な甘い香りがした。そっとその首筋に近づき、その香りを味わう。6日間禁欲していた男根はそれだけでガチガチに硬くなり、ヨシノさんの柔肌に触れるだけでビクンと慄いた。……愚息も理解しているらしい。初めての女性、最初の雌が手元に帰ってきたことを。

 

 ヨシノさんは「あっ♡」と小さく歓喜の声を上げ、しかし、抵抗するように僕を押しのけた。

 

「……ホムくん、ごめんなさい。私、そういう気分じゃないの……今はそういうことをしたくない……特に、あなたとは……」

 

 言葉とは裏腹に、手は自然と湯船の中のペニスを撫で始める。……スケベ撫子が。吐息には艶があり、頬は上気していて血の通った温かさだけではない、熱情があった。その瞳は、きっと湿度の高さに関係ない理由で、濡れているのだと思う。

 

「……僕は一週間の申請で長期任務に出ていてね、今日は6日目にあたる。つまり、6日間射精してないんだ。そのうえ、明日は一日休みになっている。予定より早くなったから、僕が帰ってきたことを知る人は少ないし、そのごく少数にも口止めして部屋には鍵を掛けてある」

 

 ──つまり、邪魔をする人はいないってことだ。

 

「そのうえ、ヨシノさんは簡単に逃げることが出来ない。お世話になっている知り合いがヨシノさんの隠れ家を用意してくれているけど、それまでは僕の部屋で匿う予定で、そしてヨシノさんはKIA認定されてはいてもお尋ね者。誰かに助けを求めることが出来ない……そうだよね?」

 

 突如始まった不穏な雰囲気に、ヨシノさんが怯え始める。それとは対照的にチンポはより熱く、硬くなっていき、ヨシノさんの柔肌を侵すようにめり込み始めた。熱がヨシノさんに伝わり、これから始まるであろう情交の激しさを予感させる。逃げないようにと、ヨシノさんの手を捕まえると、彼女はびくっと全身を身震いさせた。

 

「じゃあ、行こうか」

 

 お湯で濡れた状態のまま、連れ立ってベッドに向かう。どうせこれからもっと濡れるし汚れるんだ、構う必要はない。

 

 ベッドに横たえさせると、ヨシノさんは怯えと期待の混ざった眼差しで、僕とおちんぽを交互に眺めた。チンポは天を衝く勢いで反り返り、鈴口からカウパーを垂らしている。

 

 抵抗のない女体にのしかかるように押し倒すと、くちゃ、と股から溢れた粘り気のある水に触れた。相変わらず用意の良い雌マンコだ。いつでもウェルカムのフリーオナホ、ただし今日からは僕専用の専属オナホール。

 

 4年ぶりの穴に、何の遠慮もなくゆっくりと挿入していった。

 

「──ィ、ひっ♡♡」

 

 途端、ヨシノさんは口の端から涎を垂らしながら喜悦の声を漏らした。ヌルヌルのトロトロマンが、ふんわりと剛直に絡みつき、咀嚼するように味わいながら締め上げてくる。思わず、快感に腰が震えてしまう。ヨシノさんも同じ思いだったようで、久しぶりに味わう僕のチンポが、子宮口まで押し上げ辿り着くようにぐいぐいと腰を押し付けてくる。こつん、と硬い奥底に押し当った瞬間、ヨシノさんは全身を激しく震わせ、僕の全身を抱きしめた。

 

「──ッッ♡♡」

 

 ……だいしゅきほーるどじゃんね。4年前は身長低くてそれもできなかったよなぁ。そして、ようやくヨシノさんの子宮口までチンポが届いた。童貞卒業の夜を思い出す。あの時は小さいチンポで、奥まで当たらないことが悔しくてへこへこ腰を振っていたけれど……今ではちゃんと届くんだ、成長したなぁ。

 

 変なところで成長を実感しつつ、ヨシノさんの強い抱擁を味わう。背中と太ももを回って締め上げるように抱きしめられたせいで、腰を振ることが出来ないが……これはこれで好都合だ。

 

「あれから僕も成長してね。僕のチンポは平常時で20発は射精出来て、硬さも感度も衰えない。そのうえ長時間勃起しても壊死しないっていう、えぐいチンポに育ったんだ。そんなペニスが6日間のオナ禁の果てにここにある。今、15cmのペニスがヨシノさんの子宮に密着していると思うけど、僕はここから先腰を振るつもりはないんだ。この誰でもウェルカムなフリーオナホマンコに、誰が主人なのか今日こそ刻み込もうと思ってさ」

 

 ヨシノさんは、ポリネシアンセックスって知ってる?ああ、やっぱり知ってるんだ。本家本元だと、一週間くらい準備を掛けてセックスに至るらしいんだけど、その時間を確保できなかったから超特急でやることにするね。

 

 ──つまり、これから僕は24時間の耐久セックスをする。

 

 だいたい一時間に一回、射精したりしなかったりする。このままチンポをポルチオから動かさず、時折押し上げたり、抱きしめたりキスをしたりしながら、そのペースで射精していく。もちろん、その間にヨシノさんがなにを言ったとしてもチンポを抜くつもりもピストンするつもりもない。

 野営用のレーションとか水は確保してあるし、お風呂はいつでも入れる。暇になったらAV見たりテレビを見ながら、こういう状態を24時間続けるつもりなんだ。幸い、僕もヨシノさんも体は頑丈だしね。どんな無茶なセックスをしてもたいがい耐えられると思う。だから、ヨシノさんもがんばって耐えてほしい。ヨシノさんが何を言ったとしてもやめないし、絶対にもう逃がさない。

 このチンポを、ヨシノさんのマンコに、子宮に、神経に、記憶に、心に、魂に焼き付けて、一生離れられないようにしてやる。そうするってもう、決めてるんだ。ヨシノさんはこの快楽と幸福に可能な限り抵抗して、それでも抗えずに堕ちて、幸せになってほしい。

 もちろん、避妊薬はあとで飲ませるけどね。2人目をこのお腹に孕むには、今はまだ時期が早いと思うし。

 でも、ヨシノさんには今日、僕の子孫を繁栄させるための、孕み袋に永久就職してもらう。それをヨシノさんの体に今から教え込むからさ、ぜひとも楽しんでね。

 

 そういう趣旨の話をすると、ヨシノさんは絶望的な表情をして逃げ出そうとした。しかしまあ、女性の弱点を最大の凶器ですでに抉ってしまっているわけで。じたばたもがくほど、チンポが当たって気持ちよくなっちゃうんじゃないかなぁ。そのうえ、今となっては僕の方が力も強い。抑え込めば、ヨシノさんに抵抗できる余地はない。すぐに彼女は大人しくなった。

 

 まあ、これも人のオナホになっておきながら、何も言わずに逃げた代償。ケジメというやつだ。最大限抗って、抗って、そのうえでおちんぽさまには勝てなかったよ……と敗北してから、きっちり僕の孕み袋になろうな。

 

「──ホムくん、私はそんな卑怯なやり方には屈さない……!どんなことがあっても諦めずに立ち向かってきたの。そしてあらゆるおちんぽさまを屈服させて、満足させてきた。ホムくんみたいな若オスおちんぽなんかに、絶対負けたりしない……!ホムくんにごめんなさいって、もう二度とこんなことしないって謝らせてやるわ!

 24時間耐久セックス?かかってきなさい!ホムくんごときの孕み袋に私がなるはずないんだから!せいぜいとろマンに腰へこさせて、精も根も尽き果てるまで絞りつくしてやるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イグイグイグぅ♡♡もう無理もう無理もう無理ぃ♡♡ゆるしてぇ、もうゆるしてホムくん♡♡もう逃げたりしないから♡♡ちゃんと全部話すし、ちゃんと相談するからぁ♡♡」

 

「おっ、イグぅ♡♡ダメ、イケオスおちんぽさま硬すぎて、気持ちよすぎて死んじゃう♡♡飛んじゃう♡♡んぉほおおおおおおぉぉ♡♡」

 

「お願い♡♡パンパンして♡♡パンパンしてぇ♡♡もうなにもないのたえられないのぉ♡♡どうしてパンパンしてくれないの♡♡おちんぽさまずりずりして、オマンコの奥こつこつしたら絶対気持ちいいよ♡♡一緒にしあわせなろっ♡♡ぱこぱこっ♡♡ぱこぱこいっぱいしよ♡♡」

 

「ぐりぐりだめぇ♡♡ずっとイってる♡♡ずぅっとイクの続いて、気持ちよくてふわふわきちゃう♡♡」

 

「──まけましたぁ♡♡こうづきよしのはぁ♡♡ホムくんのおちんぽさまに屈服しましたぁ♡♡ホムくんの子孫繁栄するための孕み袋なります♡♡だから、だからぱこぱこしてぇ♡♡ホムくん専用永久保証のオナホにパコパコ♡♡気持ちいいチンポでパコりまくっていっぱいぴゅっぴゅしてぇ♡♡」

 

「ほんとはホムくんのことずっと好きだったの♡♡でも子どもだから♡♡わたしのせいでひどいめにあったからそんな風に思っちゃいけないって♡♡ずっと我慢してたの♡♡ほんとはいつも会いたかった♡♡夢の中でいっぱいセックスしてその度にホムくんすきぃって思ってたの♡♡助けに来てくれて嬉しくてびしょびしょに濡れちゃってた♡♡かっこよすぎてまた惚れちゃった♡♡それからずっと子宮疼いてムラムライライラしてたの♡♡ホムくんのおちんぽさま貰えて幸せでイキ死にそうだった♡♡ずぅっとイクの続いて幸せすぎる♡♡おちんぽさま天国なの♡♡一生ここでイきる♡♡ホムくんのオナホに永久就職したい♡♡ずっとそばにいたい♡♡」

 

 その言葉を聞いた瞬間、反射的に僕は腰を引いていた。

 ぬろぉ、とぐっちゃぐちゃの粘液が糸を引いて、僕とヨシノさんの間を伝う。

 

 亀頭が抜ける一歩手前くらいで腰を止め、照準を合わせ、それからヨシノさんに問いかける。

 

「──じゃあ、僕の彼女になってくれる?」

 

 ヨシノさんは懇願するように僕を見て、幸せそうに微笑み、頷いた。

 

「赦されるなら──私を、ホムくんの彼女にしてください♡♡」

 

 ──ズパァン!!

 ビュルビュルビュルビュル♡♡ビュビュ~~~♡♡ビュ~~~♡♡

 

 一気に子宮にチンポで一撃を叩き込み、長く激しく射精した。

 ヨシノさんは全身をのけ反らせて快楽のすべてを一心に受け止め、ぶるぶると震えながらイキ続けていた。やがて股間から潮を噴き出して、小便のように長くじゅわぁ~と僕の体に垂れ流していた。凄まじい淫臭を浴びせられた僕は、興奮のあまり再度射精した。

 

 

 それから僕とヨシノさんは予定通り丸一日セックスだけしていた。飽きるまで腰を振り続け、お腹が空いたらご飯を食べながらパンパン、刺激剤にAVを見ながらパンパン。チンポをマンコに突っ込んだままお風呂に入り、眠らずにそのままイチャイチャパコパコし続けた。彼女になることを了承してからのヨシノさんは尽くす雌のサガを全開にして、まるでマーキングするように僕に奉仕していた。そういうところも愛おしく、僕は腰振りをやめられなかった。

 

 そして、予定していた24時間が終わった頃。

 性器が繋がったまま寝転がり、お互いを抱きしめながら眠りに就いた。とはいっても、お互いに離れている間のことやらこれまでの日々について、話題は尽きなかったので、ずっとおしゃべりしていたけど。

 ヨシノさんはジーナのことを知ったら、やっぱり彼女を辞退するなんて言い出したが、ジーナとの約束について説明することで事なきを得た。今度ジーナを連れてくるから3人で話をしよう、それから決めてほしいと伝え、ヨシノさんはそれに了承してくれた。ジーナにもヨシノさんについて相談してあるので、どうとでもなると思う。困ったらまた24時間耐久セックス3P編を開催すればなんとかなる。

 

「今度はちゃんと伝えておくよ。ここ、2人目は僕が予約しておくね」

 

 と、ヨシノさんのお腹に触れる。ヨシノさんは照れ笑いを浮かべて、

 

「心待ちにしてます。……でも、ナナにはなんて伝えようかな」

 

 ああ、そうだった。その辺についても話しておかないと。

 

「予定では、2074年くらいにまたナナちゃんと会えると思う。その頃にはだいたいの問題が解決している目途でいるから、ちゃんと再会して、それからきちんと伝えよう」

「……7年、か。ホムくんがそばにいてくれるなら、どんな困難があってもきっと大丈夫ね」

「……うん、きっと。きっと、そうだよ」

 

 ヨシノさんはもう一人じゃない。孤独を背負う必要はもう、ない。

 これから先の人生、彼女が費やした苦労に見合うだけの幸福が訪れるよう、僕もがんばっていく所存だ。運命だとか、世界とかいうやつは、奇跡を与えてはくれたりはしないから。だから、幸せってやつはふんじばって捕まえておくしかないんだ、亀甲縛りにでもして、ね。

 

 ──こうして、逃げ出したオナホは4年の歳月の果てに、2人目の恋人となって僕のもとに戻ってきたのだ。

 




2025/9/24:誤字修正。報告していただいた方に感謝。
作業用BGM:「みんなおんなじ」(GOD EATER ORIGINAL SOUNDTRACK)

ヨシノさん関連のコンセプトは「娘のために体を売って尽くしてきたドスケベビッチお母さんの私が、筆おろししてあげた絶倫ドスケベショタに激重執着されて、子孫繁栄のための孕み袋に永久就職♡させられる話」みたいな感じ。……女性向けエロ漫画みたいなテイストですね。

しかし、一話を書いた段階ではヨシノさんは原作通りの最期を迎える予定でした。序盤で消えていくチュートリアルお姉さんみたいな立ち位置を想定していたんですね。笹木くんの心の傷として一生残り、一人の犠牲を糧に他の全てを救う、みたいなプロットがありました。めっちゃシリアス。

それが覆ったのは……『香月母娘丼に期待しちゃう』の一言でした。
その感想を目にしたとき、私は思いました。「──たしかに」と。もはや納得しかなかったですね、その結果がこの九話です。私自身、いつか香月母娘丼を見たくなってしまっただけ、という……。煩悩しかない(開き直り)。

ちなみに笹木くんは、半分はただの味オンチです。
素材の味はわかるけど、それの美味・不味が理解できない。もしかしてこれが美味しいなのか……?って自分の感覚を疑ってドツボに嵌るタイプ。

次回は原作前時間軸では最後の話になると思います。ほのぼの+すけべ回の予定。2068~2071年を一気にやるか、分割になるか……。まあ、3月のお楽しみということで。
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