※この作品はR-18です。

聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・忠烈編   作:CHACOとJAGUAR

17 / 82
第五回

 アスカウは、ホーデンエーネン中南部のちょうど中央に位置する。

 

 その本拠となるアスカウの村は、西に『暴れ河』として有名なヤマート大河で、国王の直轄地と隣接していた。

 

 この頃、ヤマート大河のアスカウ側の岸にはびっしりと魔法の防壁を張っていた。

 

 カントニアのエルフが張ったかなり強固な代物で、なかなかに抜けないと言われていた。

 

 設けられたのはこの数年前、現大公の妹で王妃だったフレッダが崩御してからである。

 

 王国暦374年当時の大公は、三代目となるコリアンナ=カモセンブルグ。アスカウ公初代当主トーリの長女だ。カモセンブルグはトーリの父の姓である。

 

 カツランダルクの姓を名乗ることを許されなかったのは、現王妃・レーアの意向があったからだ。

 

 アスカウ公は本来なら、対岸のタカイチゲンシュタットも領していたはずだったが、先代で兄のオルフレッドがパラッツォ教国の『教帝』となった折に王家に返上された。

 

 その当時の貴族達の手記によれば、ケノービ=ソーローが関わっていたという。

 

 その理由。丞相ケノービと彼が後押しするレーア=カツランダルクは、トーリとその一族を激しく嫌っていたのだ。

 

 それゆえ彼は信頼する実弟・アナキンをナントブルグ防衛兵団の総大将に就かせ、タカイチゲンシュタットにその一大拠点を築いた。

 

 いわば彼等は、アスカウ公の敵であった。コリアンナは彼を警戒して、エルフの腕利き魔道士を雇い、術式防壁を張った。

 

 岸辺に設けられ、柱にまじないの言葉が刻まれた鉄条網が、その象徴であった。

 

 とはいえヤマート大河の大橋の、西側の出入り口に建てられたアスカウ城は、魔道の防備をあまり施していなかった。そこまでの資金や労力がアスカウ公には無かったからだ。

 

 ただ、アスカウは領地内にいくつもの堅固な砦や狼煙台がある高台があった。そこに二千以上の兵が駐屯していた。

 

 その多くと彼等を置く為の物資や金銭は、ナガオカッツェを隔てた南にあるアスカウ公の姉弟領、ヨーシデンから送られていたものであった。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

 アスカウのあたりでのヤマート大河の流速は、一番強くなっている。流れが曲がりくねっているからだ。

 

 氷雪の栄光で凍らせて渡るには、もっと勢いがなだらかな上流か下流でなくてはだめだった。そかもどちらも、かなり長く崖が続いていた。

 

「上流からではたぶん、ここから1日ぐらいかかるのでござるよ」

「だから城を抜く、というわけじゃな?」

 

 横に並び馬上の人となったアーノンレンシ姫に問われ、イズヴァルトはうなずいた。

 

 姫は器用に蔵の上に立って乗り、しっかりと手綱を引いていた。

 

「ただ、アスカウ城はややこしい造りをしているでござる。あれを見ていただきたい」

 

 イズヴァルトが指をさしたところに、アスカウ城があった。本丸こそ3階建ての館で尖塔は建てられていなかったが、壁は分厚かった。土塁と石垣が混在していた。

 

 城のその周囲にはいくつも、柵で囲われた外曲輪が設けられていた。丸太組みの物見台もあった。

 

「本丸付近に比べて外側は、えらく簡素じゃの?」

「外曲輪は意外と広いでござる。いつもは200もおらぬようでござるが、戦時にはそれで8000程の籠城兵を入れられると、聞き及んでいるでござるよ。更に本丸は、河の水を引き入れた内堀で区切られていて普通の攻略が難しいそうでござる」

 

 本丸を設計したのはトーリ=カツランダルク本人だ。前王の愛妾で牧童の妻だった彼女は、意外と城づくりの才があった。軍記物や築城書をよく好んで読んでいたそうだ。

 

「ふうむ。トーリおばあちゃまはそんなものを造れたのか。ただのおまんこぐるいだと思いきや、なかなかに面白きお方だったのじゃな?」

「アスカウ城だけではござらぬ、ナーガハーマやヨコヤマヴァールもでござる、大まかな城割りづくりに加わっただけらしいでござるが……」

「では、おじいちゃま。あれをどう攻め落とす?」

 

 傍で2人の話を聞いていたドワーフが笑った。

 

「簡単なことじゃよ。飛翔術式がつかえるもんが壁をひとっとび。裏から門を開けるんじゃ」

「そらを飛ぶ魔法! そんなものがあるのか!」

「くひひ。そうじゃよ、はだかんぼうのおじょうちゃん。儂は使えんがエルフの衆で何人か使えるもんがおる。それとイズヴァルトさんなら問題なく扱えるじゃろうて」

「拙者が使えるのは、ちょっとだけでござるよ」

 

 飛べるのはほんの十数秒だけ。期待しないでほしいとイズヴァルトは言った。城との距離はおよそ500メートル近く。もし相手が奪取しているのなら、とっくの昔に投石砲や狙撃中で撃たれているはずだった。

 

「5分して出発。一気呵成に突っ込むでござる」

 

 イズヴァルトは背後で休憩中の仲間達に伝えに行ってくれ、とドワーフに呼びかける。アーノンレンシ姫には自分の馬に乗れ、と呼びかけた。

 

「大事無い。そんなことは不要ぞ」

「狙われるかもしれぬでござるよ?」

「撃たれたらそれまでよ。わらわもここで死ぬ程度の運命だった、と思ってくれればよいだけじゃ。覚悟はできておる」

「考えの至らぬじいじで申し訳ござらぬ……」

 

 かくしてイズヴァルト達は出発した。先手組として10名のエルフ達が前に出た。

 

 英雄の友が治めるヒッターチの北部に住む、金色エルフ達だった。

 

 彼等の飛翔術式であれば、馬ごと空を飛ぶことができる。敵がまだいなければアスカウの兵士達に、イズヴァルトが来たことを告げればよいだけだ。

 

 その一団の先頭、馬術名人として知られるカヤックツキーが後ろを振り向いた。

 

「イズヴァルトさん。ちょっくら先まわりしてくるべ!」

「『亜人殺しの弾丸』に注意いたすでござるよ! ホーデンエーネンの狙撃隊なら袋に入れているかもしれぬでござる!」

「花火の出来損ないみたいなもんに、そう簡単に殺されねえべよ!」

 

 カヤックツキーが鞭を入れた。彼等が乗るあちらの馬はキンキ大陸のよりも小柄だが、耐久力があり、速度もあった。みるみるうちに引き離された。

 

 一方、城のほうではアナキンの命を受けた狙撃部隊が、城壁の上から身をかがめ、イズヴァルト達の一団をうかがっていた。

 

 物見台の壁の隙間や銃眼から、相手がどう出るかじっと睨んでいた。

 

 本丸の城壁の上に、この一団の隊長があぐらをかいていた。銃眼から外を覗いていた射手が這って来た。

 

「隊長。10騎。カントニアの騎兵らしいもんが走ってきます」

「カントニアっぽい、か。エルフかもしれん」

 

 カントニアのエルフがどれほどの魔法の使い手なのか、この隊長は知っていた。武者修行で訪れたことがあったのだ。

 

「壁を飛び越えてくるかもな」

「じゃあ、どうします?」

「本丸にいる皆に伝えろ。奴らが本丸に入って来るまで撃つな。だが、入って来たら構わず撃て。徹甲弾を使って構わん。きっと亜人だ」

 

 外曲輪に配置されている者はそのまま身を潜めて待機しろ。彼の読みは当たった。

 

 カヤックツキ―らは伏兵に気づかぬまま、馬ごと飛翔魔法をかけて外曲輪の手前から飛び上がった。

 

 幻術としか言いようがない術に、目にした兵士達は驚いたが、精鋭として鍛え上げられた彼等は身を隠すのに務めた。

 

 本丸にはカヤックツキーが最初に着地した。一番乗りだべ。喜んだ彼だが漂う空気に異様なものが漂っているのに気づいた。後から着地した仲間達に怒号を放った。

 

「城のもん、だあれもいねえ! こりゃあ罠だべ!」

 

 しくじった。苛立ちを覚えながら彼は周りを見渡す。

 

「早く城門を開けるぞぉ!」

 

 それが彼が最後に放った言葉となった。狙撃手が撃った弾が鉄の兜を貫通して頭蓋を砕き、彼の口から飛び出て行った。

 

 1億人に1人いるかいないかの治癒魔法の凄腕でない限りは治らない、致命傷だった。

 

「カヤックツキーがやられた!」

 

 その悲鳴とともに次々と銃声が鳴った。エルフ達とその馬はハチの巣にされた。

 

 城から銃声を聞いたイズヴァルトはアーノンレンシ姫と共に目を見開いた。

 

 敵に動きが読まれていた。しかし引き返す事はままならない。

 

「姫様! 拙者の後ろにさがるでござる! 皆、密集錐陣にて突っ切る!」

「わらわの呼びかけでは寝返ってくれぬのじゃろうか?」

「無駄! むしろ狙われるだけでござるよ!」

 

 一団はイズヴァルトを先頭に、重装の騎兵がアーノンレンシ姫を取り囲むように集まった三角の陣形がつくられた。

 

 しかしこの歩調はあわせない。最も強力な『飛び道具』がたった1人で先陣を切るからだ。

 

「皆の衆、姫様を頼むでござる! ベートベンどの、背後の挟撃に気を付けられよ! では、先駆け御免!」

 

 イズヴァルトは単騎駆けで城へ向かった。最初からこうすればよかったと自分を恥ながらだ。

 

 果たして王国で最も顔と図体が知られている男が近づいて来ると、狙撃手達は色めき立って震え上がった。

 

「イズヴァルトさんが……イズヴァルトさんが来たぞォ!」

「俺達にやれんのか? あの『歩く災害』みたいな無双の武者に!」

 

 狙撃兵達は怯え始めた。だが、隊長は城壁の上に立ち、アナキンから貰った旗を振り上げながら皆を鼓舞した。

 

「5つの大陸に名をとどろかせる英雄、全人類の女性の膣を疼かせる世界一の孕ませ魔たるイズヴァルト卿も所詮、人の子だ! 俺達には亜人を滅ぼす神器がある! 俺とお前たちが後生大事に抱えているこの銃と、マイア=テクニカの特別製の徹甲弾だ!」

 

 そして。

 

「イズヴァルトを殺せるやつは、この世界にはただ一人いた。それが『おしゃぶり姫』だ! 俺達が持つこの銃は、あの『尻女神』の加護が宿っている! 恐れず撃ちまくれ! ここが生涯で一番の晴れの舞台と心掛けろ!」

 

 力強い鼓舞に狙撃手たちは勇気づけられた。誰もが銃口をイズヴァルトに向けた。見敵必殺の非情さを持ち直し、引き金に指をかけた。

 

「色男伝説をここで終わらせてやる!」

「イズヴァルトを討てば、俺が次の無双の英雄だ!」

「剣と魔法の時代の終わりを、俺達が世に知らしめてやるってばよ!」

 

 1発の銃声が起こると、発砲音が連なった。時間差斉射だ。しかも狙撃手たちはとその銃は、王国の中で最も優れていた。

 

 だが悲しいかな。剣と魔法の時代はそこで終わりを告げなかった。

 

 『おしゃぶり姫』の遺産など所詮はこんなものとあざ笑うかのように、『氷雪の栄光』に刻まれた魔法文字が輝き、イズヴァルトの前方にびっしりと、宙を浮かぶ氷の板が作られた。

 

 ありとあらゆる弾は、凍て付く盾に吸い込まれ、閉じ込められていった。

 

 その光景に兵士達は悟った。

 

 生まれてからたった20年近くの科学技術など、数万年、数十万年も進化してきた魔道には到底かなわぬ。

 

 その悔悟は、氷の砲弾に変化した氷板によってますます重くなった。

 

「狙い撃ちは苦手でござるが、乱れ撃ちならばきっちりお返し申す!」

 

 氷塊群は投石砲を遥かに超える速度で、一直線に城へと飛んで行った。

 

 ぶつかっただけで木組みの櫓は吹っ飛び、石垣が崩れ地響きをあげながら城壁が割れた。

 

 一番狙いやすかったところにいた隊長は、えぐられた壁とともに肉体を粉砕されてしまった。

 

 まさに生きる災害であった。生き残った狙撃手たちは次々と本丸の館へ逃げ込んだ。

 

 狙う者がいなくなったイズヴァルトは後方の一団に合図した。しんがりのベートーベンが舌打ちした。

 

「けっ! 根性ねえな! ナントブルグ務めの鉄砲撃ちはビビりばっかりか?」

 

 こんなんじゃ先手の10人が浮かばれない。ともあれ城を抜く事は容易そうだ。

 

 そう思ってアーノンレンシの声とともに足を速めて先をゆく一隊に目を向けた後、後ろを振り向いた。

 

「……やべえぞ。ありゃ」

 

 西の方角にいつの間にか、騎馬武者達がずらりと並んでいたのだ。距離は300メートルで、おおよそ1000名といったところだろうか。

 

「くそっ! もう来やがった! ナントブルグの連中に転移魔法なんて、どこのサキュバスが教えやがったんだ!」

 

 そしてその一団の中央、黒づくめの一隊に見覚えが。傍にいたフランツに早く走れとベートーベンがけしかけた。

 

「な、なんでです?」

「ありゃあもしかしたら、アナキン=スカルファッカーかもしれねえ! あいつとだけは戦うな! イズヴァルトぐらいによくやる奴って話だぞ!」

 

 その他の殿たちにも、あれとだけは戦うなと呼びかけるがそもいかなかった。こともあろうにその黒備え達が動き出したのだ。

 

 この一隊がこのあたりの牧場から揃えた、足の速い名馬ばかりだった。対してベートーベンらの乗る馬は駄馬に等しく脚が遅かった。

 

 たちまち距離を縮められた。その一隊、黒塗りの鉄仮面が腰から青白く光る剣を抜き、その切っ先をベートーベンに向けた。

 

「くそったれ! 戦うしかねえみてえだな!」

 

 馬の向きを変え、ベートーベンは抱えていたハルバードを握りしめた。フランツも馬の鞍にぶら下げていた棍棒を手に取る。戦いは始まろうとしていた。

 

 果たしてこの黒仮面とそれに従う騎兵らに、このしんがりたちはなすすべもなくやられてしまうのか?

 

 その続きについてはまた、次回にて。




ここまでお読みいただきありがとうございます。

セクシーな挿絵をどうぞ。

【挿絵表示】


以下はリンクです。(別サイト)


削除したエピソードはこちらでご確認ください。
題名はSEО対策です。

本編
『聖騎士イズヴァルトの伝説 〜無双の武と凶悪無比なデカチンを持つ英雄の一大叙事詩〜』です。
現在ハーメルン版と同じく聖王編まで掲載。
主人公イズヴァルトがちんちんをぶんまわしながら世界を渡り歩き、マイヤやスケベな女達に搾取されるお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/934913837

外伝1 マイヤとトーリが主軸のお話です。
 『前世の記憶を持つ神業尺八使いの狸系美少女の妹と、女帝サキュバスの祖先の才を受け継ぐ清楚ビッチな姉の2人で、搾精の王国を建てちゃいます☆』
トーリとマイヤとそのご先祖について、そのご先祖の家来筋のイーガ魔法王国の王子の物語と、覚醒したトーリがホーデンエーネン王国の実権を握り支配し、凋落するまでのお話となります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/779914728

外伝2 本作の重要人物、魔法戦士ヘラのお話です。
『転生したらあたし、セックス教団の教主の養女でいつでもどこでもエッチがしたくなっちゃう、レベル999のビキニアーマーの美少女魔法戦士でした!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/959004604


以下は旧版のイズヴァルト。題名はSEО対策です。
(内容は大体一緒ですが、細部がいろいろと違います。)

『エリクサーみたいに栄養満点の精液を放つ絶倫聖騎士は、転生美幼女淫魔にまとわりつかれておちんちんをチューチュー吸われる。
』
https://novel18.syosetu.com/n3094lt/


以下のは、副産物となります。

爆焔のダークエルフ
https://h.syosetu.org/novel/378655/

サキュバスレストランへようこそ! Hルート
※別サイト。エロをマシマシにした改稿版です。
https://novel18.syosetu.com/n1061iv/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。