聖騎士イズヴァルトの伝説【新編】・忠烈編 作:CHACOとJAGUAR
机の上に並べた機械を眺めて、ふうむ、とアーノンレンシは唸った。
前世で見た文庫本サイズで、スピーカーがついたそれには、音声録音と再生術式を仕込んだ魔法石が入っていた。
これは彼女が作ったものだ。ヨーシデンにもできた『いけえい麺』が食べられるお店のマスターに、呼び込みに使える魔法機械を作って欲しいと頼まれたのだ。
こういうものを作るのが割と得意だと、モスマに言い広められたので作らされる羽目になった。『いえけい』が食える店はマイア=テクニカの飲食部門が運営しているものだ。しかもマイヤが是非とも再現したいと語っていた、『らあめん』をこの世界に再現させた。
つまりアーノンレンシは、曾祖母であり前世の母の手伝いをしているようなものだった。電子回路では無く魔法で動くものなのだったので、作りは簡素。しかしだ。
(マヌケな音が流れるやつ。一体どういう目論見でそんなものを注文したのかな。)
しかも音は小笛の様な音質で、「ぴぽぽぽぴーぴぽぽぽぴー」という感じの曲が良いという。
さて、困った。アーノンレンシはその機械の横に置いた楽譜を開いた。このヨーシデンにあるマイヤの書庫にあったものだった。
マイヤは楽器については不得意だった。壊滅的に音感も駄目で、歌となれば音痴であったと聞いていた。アーノンレンシもその頃まだ乳児だったが、前世の母の歌声はなんとなく覚えている。カラオケでコップの水ぶっかけられるぐらいひどかなったな、あれ。
しかも母が子守歌にする曲のチョイスが意味不明だった。なんとなく覚えていて曲も思い出せるのだが、
「好きだよと言えずに終わった初恋は、君の姿を振り子細工のごとくスナップをきかせてちんちんをシュッ!シュッ!シュッ!とするしかなかったよ」
的な歌詞の名曲や、
「好きなあなたが望むなら、私、どんなプレイをされてもいいわ。インモラルな娘だと噂にのぼったりしてもいいの」
みたいな感じの青い果実的な曲など、赤ん坊に聞かせる者ではないものばかりを歌っていた。イズヴァルトにそのことを話すと、
「あれは、年相応という言葉が辞書に無いのでござるよ」
と、さもありなんという感じで返された。アーノンレンシは母の事を頭が良い天才であるがゆえにズレている、ということにした。
さて、この機械に入れる為の曲選びを始めよう。楽譜を手に取った。アーノンレンシは楽譜が読める。イズヴァルトに教わった。ついでにギターもいくらか弾けた。
4歳ぐらいの頃は弦が抑えられないと「なにくそ!」と怒鳴りながら、指に硬いリングをつけて工夫する、という事もして諦めが悪かったから、すっかりギターは趣味みたいなものになっていた。
ついでだが前世では育ての親の伯父と伯母に薦められて、ピアノを習っていた。こっちは『セーラー戦士』のオープニング曲や好きだった『えふえふ』のフィールドの曲を弾けるぐらいだった。
さて、とアーノンレンシは置いてあった子供用のギターを抱え、楽譜を開いた。
タイトルが違ったから初めての曲だと思いきや、つらつらと並べられているおたまじゃくしを見て弾いてみると、どこか聞いたことがあるような曲だった。
(なんだかな、これ。シオリコママが好きだった曲に似ているな。)
別れた女にプレゼントしたルビーのリングを返さなくていいと言った気障ったらしい男の歌とか、ただの観光客の女がストレンジャー気取りでポエムっている歌の楽譜だった。
他の楽譜も似たようなものだった。「ぴぽぽぽぴーぴぽぽぽぴー」という感じの、お間抜けな曲は見当たらなかった。
(ふうん。難しいな。)
アーノンレンシは曲が作れなかった。仕方が無いからルチアちゃんたちに作ってもらおう、と思い立ち、屋敷の別の部屋にいる四姉妹の所に向かおうと廊下を出た時だった。
「姫ちゃん。一体どこに行くんだい?」
見知らぬ顔だった。金髪の美青年。その右横に釣り目の美人がいて、女の後ろにほっそりとしたきれいな脚が隠れていた。
「姫ちゃんじゃないよ。シオリだよ。あなたは誰?」
「ジャン=ギャバンさ。これから君の護衛を務めることになった。魔竜様の部下でもあるんだ」
魔竜、と聞いてアーノンレンシはすぐにうなずいた。イズヴァルトとイナンナから聞いていた。アスカウとヨーシデンには魔族がちょくちょく来ている。だが表向き、ご機嫌伺いや護衛などと言い表しているが、その実のところは監視そのものだった。
そもそもが、ホーデンエーネンを乗っ取ろうとした祖母のトーリ=カツランダルクが原因だった。あまりにも強大過ぎた人物だったと聞いた。そうであればその子や孫も疑うのはわからなくは無い。
幸い、トーリの娘や孫たちには魔族が危険視するほどの才は無かった。だから遠目での監視、少しの関わり合いで済んでいた。祖母のロゼも母のトリーネも、サキュバス的な能力はあったそうだが、クーデターを起こせるぐらいの千や万の兵を心理掌握する魔法と魔力は持ち合わせていなかった。
だが、アーノンレンシは違う。そもそも魔族として産まれてしまった。育ての父から厳禁されたが、心理掌握の魔法も少しは使える。
だが、彼女はやらかしてしまった。幼く淫らな身体と排泄物まで愛されてしまうその魅力と、青春の荒んだ心にもう1つの道理を与えて懶惰の道から少しだけ心構えを変えてやった者達に支持され、自分を『殿』と呼ぶ悪ガキの一団を作り上げてしまった。
自分を支持する集団を作ったアーノンレンシは、彼等や彼女らとの乱交をやりながら、合戦ごっこや見回りごっこを繰り返した。男の子と馬に乗って股をちんぽで喜ばせて貰いながら、石合戦や騎馬組打ちの見物をしたり、イズヴァルトらから学んだ隊列の取り方を指示したりだ。
いわば、彼女の前世でいう『尾張のうつけ者』が少年時代にやったようなことを為した。それがナントブルグの息がかかった大学の運営者たちに危険視された。
そしてもう1つ、彼女を要注意と見たのがコンゴウアミダラデンだった。イズヴァルトが頬を叩くほど注意したのはそういう事もあった。心理掌握の魔法を使ったのがばれた時にだ。
「力の誇示は決してなさるな。シオリ殿のお味方となられるはずの魔竜どのが、かえって疑ってしまうでござるよ?」
そして、目の前の『護衛役』の2人である。アーノンレンシは微笑んで見せた。愛くるしいことこの上無かったが、ジャンには察知できた。この子、警戒しているな。
「君が魔竜様にたてついたり、ホーデンエーネンを滅ぼそうなんて思わなければ危害は加えないさ。とんでもない子供だから闇討ちするなんて真似はしない」
「疑っているの?」
「怖がっているのがばれているよ。そこにいるマリィに誓って俺たちはそんなことを絶対にしない。あくまで護衛として姫ちゃんの側にいさせてもらうよ」
ムーランがほら、と後ろに隠れていた娘に呼びかける。恐る恐るといった様子で、女の子が前に出て来た。すらりとしたサキュバスの少女だ。ツノや翼は生えていないがれっきとした魔族である。瞳が紅い。
「は、はじめまして……マリィといいます、アーノンレンシ様」
「シオリと呼んで。わたしは前世の名前で呼ばれたいの。シオリ=コーサカ。これが本当のわたしの名前だよ?」
「は、はい。ショリィ様……」
変わった女の子だな、と転生人のジャンは思った、いや、その名前に反応する誰かを探っているのかもしれないとも。ただ単に我が強いからかもしれないが。
マリィは少しの間、黙っていた。それからほんのりとだが、目は輝き出した。アーノンレンシの前世の本名を聞いて、もしかしたらと思ったからだ。
娘の様子を見てムーランが呼びかけた。
「ショリィ姫ちゃん、ちょっとうちの子とお話ししてくれないかしら。例えば前世の事とか」
「だったらマリィちゃんだけでなく、みんなにも話すよ。さあ、部屋に入って」
□ □ □ □ □
部屋に招き入れたアーノンレンシは自分の前世の事を語った。
マイヤの前世を母に持ったこと。
仕事で忙しくなった父親が彼女を実家に預けたこと。
その実家は大きな屋敷で、大学教授で歴史学者の伯父とその妻が、親代わりに育ててくれたこと。
ただ、頭と心が不十分だったから、普通の子とは違う学校に入ったこと。
父の教え子とその後見人とにとかく可愛がられたこと。
女の子の秘密の喜びを、その父の教え子に教わったこと。
性交にとても浸りやすい身体で、幼いころから沢山の男の人とセックスをしたということ。
死んだ父母に喜んでもらえるよう、赤ん坊を産むのを目当て言い寄る男に股を開くのを繰り返したこと。
そして、赤ん坊を産み、死んでしまった父母の血を繋ぐことが叶ったこと。
12の歳で父の教え子の紹介で預けられた山奥のお屋敷で、そこの病弱な青年との間に男の子を産んだ。
死ぬ前年、15の歳に教え子の後見人との間にも子供が生まれた。
自分は『何もできそうにない欠陥品』として、確かに優れた父と母の遺伝子を残したのだと姫は自信満々に語った。
「でね! シオリのパパはすごいかっこよくてお金持ちだったから、4人も奥さんができたの! シオリにはたくさんの弟と妹たちがいたんだよ!」
「……」
「それでね! シオリはお金に困っているパパの奥さんたちを助ける為に、そのホウジョウのおじさんの紹介でエッチをするだけでたくさんのお金がもらえる仕事をこっそりやって稼いだんだよ!」
前世の自分は、それだけが『価値』だと言わんばかりだった。伯父たちは愛情を注ぎ込んでくれたが、彼女はそれだけでは物足らなかった。人の役に立つ価値があるものは、本当に持って生まれた才能では無く、性愛に溺れやすい幼い身体だけだった。
だがそれを、『天の恵み』と聞き取れる言い方でアーノンレンシはしゃべり尽くした。ムーランは感心していたがジャンは沈鬱な顔をしていた。
「なあ、おい。ショリィちゃん」
「どうしたの? 顔がなんか難しそうだよ?」
「あんた、日本人だったんだろう?」
お金持ちのお嬢様がどうして春をひさいでいたんだ。
前世は貧しい頃の中国人だったジャンは理解できなかった。あの国には下々に至るまで、有り余るほどのお金があったんじゃないのか?
「大体、そういう金なら土地を持っててお屋敷も持っている、育ての親の伯父さんに頼めば良かったんじゃないか?」
「そこまでの愛情を求めるのはダメだよ。もとはと言えばパパが事業に失敗して、借金を残したまま自殺しちゃったんだし」
それに、豊かな日本もお金を持っていたのはごく一部だった。しかも金持ちが金で失敗すると抜け出せられない罠も用意されていた。利子がつく負債というのがそれである。シオリの父は数千万もの借金を背負った。その帳消しの為に彼女は、幼い身体を多くの男に提供したのだ。
「だからシオリがけじめをつけたの。それが馬鹿の子だったシオリの、前世で一番誇れるところなんだよ!」
「おい。イズヴァルトさんにも話したか、そのこと?」
「うん! シオリどのは天下一の女戦士でござった! と褒めたたえてくれたよ!」
秘密にしようと考えていたが、イズヴァルトがあまりにも聞き出したがるので、イーガからヨーシデンに入る前あたりにすべて話した。
警戒すると思っていたが、イズヴァルトはそうではなかっつあ。涙をこぼしながら褒めたたえてくれた。親の孝と義理とを成し遂げる強きお子でござった。イズヴァルトはそう言ってくれた。
だが、ジャンにはイズヴァルトの心境がわかってしまった。いたたまれなくなって涙したのだ。あの男も自己犠牲を厭わぬが、自分の娘がああなったら止めるだろう。
「なあ、姫ちゃん。自分がやったことを他人には絶対押し付けるな。姫ちゃんが強い子だから耐えられた」
「わかるよ。シオリが前世でやったことはあまりにも力が無かったからだって」
「そうじゃない。ただ単純に、誰かにいともたやすく重い荷を背負わせることをやめろ、と言いたいだけだ。姫ちゃんの前世、苛酷過ぎて聞いてられなかったよ」
だが、ジャンの前世も人から見れば苛酷なものだった。少年時代は文化大革命の嵐が荒れ狂っていたし、天安門の学生運動に助力して軍に殺された。
アーノンレンシは「そうする」と言って黙った。何故私のことを信じてくれないんだろう。そういえば伯父もなんか似たようなことを言っていた記憶があった。父がシオリに構っていられないほど、事業を手掛けてて忙しい事についてだ。
「おじさんはすぐへたれちゃうからね、きみのお父さんを凄いと思っているよ。坊ちゃん育ちだから、融資だの負債などという文字を見るとピンと来ないし、借金という言葉も、怖くて大嫌いだ」
そうなのだろう。納得しかかったところでマリィが口を開いた。
「あのう……ショリィちゃんは前世の事、いろいろと教えてくれたから、わたしも語りたいと思うんだけど……」
ジャンとムーランが興味深そうに娘の顔を覗き込むと、マリィはきれいな額に皴を寄せた。
「パパとママは出て行って。2人きりで話したいの」
「……なんでだよ?」
「出て行って。ドアに聞き耳を立てるのもだめ。魔法で盗み聴きするのもだめなんだから!」
娘の剣幕にやられて、ジャンとムーランは部屋を出て行った。
しばらくいなくなるとマリィはアーノンレンシに尋ねた。
「防諜術式、知ってる?」
「この屋敷は至ところに仕掛けられているよ。念じれば念話術式が届かなくなる。エルフさんたちが施してくれたんだよ」
「わかった。じゃあ、お願い」
アーノンレンシは印を切った。しばらくして部屋全体に力場が生じた。魔封じの術式だ。相当強力なもので、魔道士どころか並の魔族ではまず解析できない、複雑な術式だった。
「すごいね。エルフたちってこんな事ができるの?」
「多分だけど、魔法に関してはこの世界で一番の使い手ばかりなんじゃないかな。でも、盗み聴きを怖がるほど、何をお話したいの?」
問われるとマリィはアーノンレンシを真っすぐに見た。それから彼女の手を取った。
「ショリィちゃん、マサタカ=コーサカという名前に聞き覚えがある?」
アーノンレンシはうなずいていた。前世のいとこの名前だったからだ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
セクシーな挿絵をどうぞ。
【挿絵表示】
以下はリンクです。(別サイト)
削除したエピソードはこちらでご確認ください。
題名はSEО対策です。
本編
『聖騎士イズヴァルトの伝説 〜無双の武と凶悪無比なデカチンを持つ英雄の一大叙事詩〜』です。
現在ハーメルン版と同じく聖王編まで掲載。
主人公イズヴァルトがちんちんをぶんまわしながら世界を渡り歩き、マイヤやスケベな女達に搾取されるお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/934913837
外伝1 マイヤとトーリが主軸のお話です。
『前世の記憶を持つ神業尺八使いの狸系美少女の妹と、女帝サキュバスの祖先の才を受け継ぐ清楚ビッチな姉の2人で、搾精の王国を建てちゃいます☆』
トーリとマイヤとそのご先祖について、そのご先祖の家来筋のイーガ魔法王国の王子の物語と、覚醒したトーリがホーデンエーネン王国の実権を握り支配し、凋落するまでのお話となります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/779914728
外伝2 本作の重要人物、魔法戦士ヘラのお話です。
『転生したらあたし、セックス教団の教主の養女でいつでもどこでもエッチがしたくなっちゃう、レベル999のビキニアーマーの美少女魔法戦士でした!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872528745/959004604
以下は旧版のイズヴァルト。題名はSEО対策です。
(内容は大体一緒ですが、細部がいろいろと違います。)
『エリクサーみたいに栄養満点の精液を放つ絶倫聖騎士は、転生美幼女淫魔にまとわりつかれておちんちんをチューチュー吸われる。
』
https://novel18.syosetu.com/n3094lt/
以下のは、副産物となります。
爆焔のダークエルフ
https://h.syosetu.org/novel/378655/
サキュバスレストランへようこそ! Hルート
※別サイト。エロをマシマシにした改稿版です。
https://novel18.syosetu.com/n1061iv/