ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた 作:ぐらんぐらん
城である本校舎の大聖堂で行われた入学式は豪華なものだった。
校長のヨボヨボおばあさんの話もそこそこに、有名な芸人や劇団のステージもあり、ちょっとしたイベントみたいだ。
実際、ここで生徒の心を掴もうという意図もある。
ちなみにやっぱり組み分け帽子なんてものも無く、「そうかパイズリンは嫌か……」と囁くシーンも存在しない。
しかしクラス分けはあった。
学期自体は先月から始まっているので、先月入学した生徒は前半クラスとして分けられ、今月入学の生徒は後半クラスに。マフィは1組となった。
このクラス分けは必修科目を学ぶ時のクラスになる。1年生のうちは必修授業が多いので顔を合わせることも多くなるだろう。
クラス用の教室の形は後ろに行くほど段が上がるアレ。
一番後ろの席に座ったキリーネヤの隣に当たり前のようにマフィも座った。
「やっぱこういう初日って緊張するよな……自己紹介滑らないようにしようとかさ、結局無難な事しか言えなくなるの」
「無難以外に何かあるの?」
「一発ギャグとか。そこでウケればスクールカースト上位か、どう扱ってもいいお笑い枠になる」
逆に滑れば……皆まで言うまい。
「まぁでもキリーネヤがいてくれてよかったなぁ。友達いるかいないかで違ってくるし」
「……友達?」
「え、違うの?」
「ぶつかってハンカチを届けてもらっただけの知り合いでしょう」
「この友情一方通行だったの?」
キリーネヤの態度は終始こんなものだ。
朝、同じタイミングで部屋から出てバッタリ会い「一緒に行こう!」と誘って今まで行動を共にしてきたが、もしかしたら迷惑だったかも……とマフィがしゅんとしたところに、高飛車な声がかかる。
「あーら後継者から外されたモフテイル三位官令嬢。あなたも同じクラスですのね」
「またお前か……あと外されたんじゃなくて辞退したんだ」
昨日食堂でひと悶着起こした豹族イリーゼの髪は、今日もバッチリ決まった縦ロールだ。
耳も尻尾もかなり気を遣ってケアしてるのかふわふわでモフりたくなる。
「ホームルームの次はさっそく神力の測定らしいですわね、同じ三位官家として低位貴族に負けるような無様を晒すことのないようお願いしますわ。あ、そういえばあなたは神力雑魚でしたわね! これは失礼オ~ッホッホッホ!」
絵に描いたようなDESUWAお嬢様だ!
実際マフィは神術の才能があまり無いので言い返せない……
「うるさい三位官令嬢様ね。食堂だけじゃなく教室でも騒がないと生きていけないの?」
言い返した! でもマフィじゃない。
狐耳を挟んで、黒猫と豹の視線が繋がる。
「なんですってぇ……?」
「確かに生まれ持つ神力に血筋は関係する。高位になればなるほど天才と呼ばれる神術使いが生まれる可能性は高い」
「あら、分かっているじゃありませんの」
「でもそれがすべてではない。あなたの嫌いな低位貴族の中にも稀に出現する。突然変異のように」
「それがあなただと言いたいのかしら? あなた、名は?」
「キリーネヤ・ロマネフ。五位官家よ」
「五位官……」
位を聞き、イリーゼが吹き出す。そこには嘲笑が混ざっている。
「モフテイル三位官令嬢、お友達は選ぶことをお勧めしますわ。五位官などというボーダーギリギリの血と仲良くして得があるか──」
「キリーネヤを友達にすることに、お前の意見は必要ない」
マフィが立ち上がる。音を立てたせいで注目を集めてしまったが、両者ともに気にしない。
「どれだけ粋がっても、あなたは所詮輿入れする身。相手の家のことをを考えるなら、ここで周囲にどう思われるかを考えた方がよろしくてよ? 『ホウジョウが嫁に迎えるのはあんな女か』などと見られたくないでしょう?」
「……ご忠告どうも。ありがたく胸にしまっておこう」
「そろそろ時間ですわね。私も席に戻らせていただきますわ」
イリーゼが座るのは一番前。向上心あふれる生徒だ。
周りには取り巻きらしきご令嬢方が数人。本当に絵に描いたようなカースト上位お嬢様である。
「ほらね。友達にはならない方がいいわ」
「学院はそういうの無礼講じゃないのかよ……」
「表向きはね。だから官位関係なくクラスは分けられるし、わざわざ誰が何位官家の者かを示すものも無い……でも自ずとグループが分かれるでしょうね」
シリアスすぎて鳥肌が立つ空気だ。
だが美しい友情には厳しい環境が必要なのだ信じてくれ。
「あなたは三位官令嬢なのだから、彼女の言う通りに友達は選んだ方がいいわ」
特に私のようなのとはね──と呟いたキリーネヤの表情は髪色より暗い。
「でもっ、せっかく知り合ったじゃんか」
「そうね。2年もある学院生活の中のたった一日交流した程度ね」
「なんでそんなに冷たいんだよー……私のこと嫌いなのか?」
「気を遣ってるのよ」
「遣う必要ないって! 今みたいに言われても私が言い返せばいいだけだ!」
「…………はぁ、好きになさい。知らないわよ」
神力測定は案の定マフィにとって喜ばしくない時間。自分の才能の無さをひけらかすだけだ。
とはいえ三位官令嬢。才に乏しくても馬鹿にせずお近づきになりたいというクラスメイトは山ほどいて、自分の名前を覚えてもらおうと必死。
このクラスには二位官以上の令嬢がいない。元々数も少ないので学年にひとりかふたりいればいい方で、そのひとりかふたりさんは別クラス。
実質的なカーストトップであることを、あの能天気ギツネは分かっているのだろうか。
同じようにイリーゼの元にも多くの生徒が集まる。
「モフテイル三位官令嬢は神力に恵まれていないのですね」
「だから後継者を辞退なさったという話では?」
「やっぱりターカビーシャ三位官令嬢の方が優秀ですよ! 神力の才能もあり、次期当主であらせられる!」
まぁなんというか、女子はグループを作るのが早い。
ふたなりと女、このふたつの性別は分かれているようで分かれていなくて、この学院の雰囲気はなんともいえない。
マフィは自分を中心に女子が集まるという前世で体験しなかった状況にあたふた。この中の約半数にちんちんが生えているのを忘れそうになっている。
「まったく……婚約者がいるんでしょうに」
「神力の才が無くともモフテイル三位官令嬢はそのままでいいんです!」と言われて苦笑いを浮かべるマフィを見て、イリーゼ・ターカビーシャは吐く息を深くする。
あのいけ好かない狐との馴れ初めは8年前、ターカビーシャ家で開いたお茶会でのことだ。
イリーゼの母が開いた『母娘参加のお茶会』に、同じ主神をいただき同格であるローラが参加しないはずもなく、娘であるマフィ(と、ついでに幼いリアリス)もそこにいた。
互いに7歳、小学一年生くらいだがイリーゼは既に次期当主としての教育も受けていて、小難しい言葉も話せた。
「ごきげんようモフテイル三位官令嬢! 同じ次期当主として親交をあたためましょう!」
「だれ?」
「あら? ホストの顔と名前も分からないのに三位官家を継ぐおつもりですのぉ~? ぷぷぷ~」
「なんだおまえ! いきなり失礼なやつだな!」
マフィもまだ前世を思い出す前のこと。年相応のクソガキであり、無意識に男児っぽかったのもあり……あろうことか手をあげた。
「びえええぇぇぇぇ~~~~!!」
誰かに叩かれることなんてなかったイリーゼはめちゃくちゃ泣き……
「こンの馬鹿者があああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃああああぁぁぁ!!」
ファーストコンタクトから失敗した感は否めなかったが、この場において非があるのは完全にマフィだ。ホストの顔と名前は覚えて当たり前、まして同格家。
勉強嫌いの令嬢は貴族としての前提で負けていた。
公衆の面前でホストの令嬢を泣かせ、自身は母の拳でギャン泣き。母と共に頭を下げることに。
ターカビーシャ夫人が「子供のやることですから」と大目に見てくれなければ家同士の問題になっていたかもしれない。
まぁ夫人がこの場を水に流したのは、娘に怒鳴りながら拳骨を叩きつけるローラにドン引きしたのもあったが……結果的に丸く収まった。
「マフィ、謝れ」
「ぐ……ごめんなさい、ターカビーシャ三位官令嬢」
「いやですわ! ゆるしませんわ!」
「じゃあ許してもらわなくていいし! チンコついてるくせに俺より女々しいやつだな!」
ローラの拳骨が再び振り下ろされ、すごい音がお茶会の席に響いた。
それからは家同士の交流こそあったものの、2人の令嬢は疎遠に。
しかしイリーゼはあの無礼で無粋な狐を忘れることはなかった。
子供の頃に泣かされた相手がトラウマになるアレである。
「信じられませんわ! あんな野蛮狐が私と同じ三位官家を継ぐなど!」
その日からイリーゼは勉学に励み、神術訓練とチントレを欠かさなかった。
『チンコついてるくせに俺より女々しいやつだな!』──あの屈辱を怒りに変えて頑張った。
すべてはモフテイル家より優れた三位官家となるため……しかしそれはマフィの後継者辞退によって霧散する。
一方的だったがライバルが突然消えたのだ。少女イリーゼには衝撃だった。
そしてチャンスだと感じた。
あの生意気な狐を妻に迎えれば、自分好みの貞淑な妻に教育すれば溜飲も下がるのではないか、と。
「お父様! モフテイル家のマフィ嬢を婚約者にしてほしいですわ!」
娘がようやく嫁を決めた! と喜んだ親はさっそく婚約の申し込みをしたが……時すでに遅し。
次期当主の座を退いてすぐによく分からない別派閥の家に輿入れすることを決めたらしい。
「ごめんもう決まったので」という感じにフラれた。
しかも相手は二位官家。
そう、二位官家。すっげぇ負けた気がした。
「キィィィィーーーー!!」
イリーゼは新たな怒りという名の燃料を燃やして自己鍛錬に励み続けた。
その後もちょくちょく何かしらの会で顔を合わせることもあったが、あまり関わらないことにした。話すとしても挨拶程度。あとはバレないように睨んだりとか。
成長してどんどん女っぽくなるマフィを熱い視線で見続けてきたとも言う。変態か?
学院で再会しても、マフィは相変わらずの感じだった。それがイリーゼの神経を逆撫でしている。
「(マフィ・モフテイル……あなたのせいでまだ私は婚約者も決まってないというのに……!)」
せっかくこの私が結婚してやろうと持ち掛けたのに、お前が断ったせいで自分はなんだかんだ婚約者を見つける気になれない……イリーゼは一方的に拗らせていた。
数日経って、教室の雰囲気には慣れたと思う。
ここでマフィには誤算があった。
「前世の知識があるってことは高校レベルの授業で無双できるってことじゃん!」と思っていたのに、今世で勉強をおろそかにしていたせいで大した無双ができなかったのである。バカだった。
無双できたのは算数くらいだ。まだ複雑な関数式などが存在しないからか、前世では苦手だった計算問題が得意科目になった。
閑話休題。
学院は授業を受けるだけではない。部活や委員会的なものも決めないといけない。新入生は多忙である。
生徒会というのもあるが、ああいうのは一位官や二位官とか上に立つ家柄の者がなるのが通例。マフィには縁のない話だ。
「キリーネヤはクラブどうするの?」
「もう決まってる」
「え、マジ? どこ?」
「言えない」
「えー! 私のこと嫌いかよー!」
普段なら「はいはい」と流しながらも付き合ってくれる友達(予定)は、いつもの余地すらなく立ち去ってしまった。言えないクラブとやらに行ったのだろう。
「モフテイル三位官令嬢! よければ手芸クラブはいかがですか!?」
「いいえ文学クラブを!」
「チンボールクラブはいかがでしょう! 運動も大事ですよ!」
「お、おお……ごめん、ちょっと色々考えるねー……」
女子に群がられるのは悪い気はしないが、あまりにすし詰め状態になるとお尻に硬いものが当たり身の危険を感じて撤退。
時間は放課後。もう帰ってもいい時間なのだが、せっかくだしクラブ見学もしようかなと校舎を見回ることにした。
しかしだだっ広い城内は無駄に入り組んでいる。簡単に迷ってしまった。
立ち入り禁止の場所には取り扱い危険な下級眷属が飼われているというし、下手にひとりで彷徨うのは危険かもしれない。無駄な場所でホグってる学校だ。
「はぁ……迷ったなこれ」
適当に歩いていたせいで人気のない場所に来てしまった。
城内にいくつもある噴水中庭のひとつ。その傍を通りかかった時のことである。
「あぁん!♡♡」
「!?」
曲がり角の向こうから高い声が聞こえてきて、マフィの耳と尻尾がピーン!
「そこぉ、そこいいです♡ イッちゃう♡」
声のする場所にそろそろ近付くたび、向こうで何が起きているかが確信になっていく。
神聖な学校でお盛んなことだ。ホグワーツじゃこんなこと起きないぞ。起きてたのかもしれないけど。金ロー知識の限界である。
これも学園モノあるあるなのかもしれない。知らないカップルがおっ始めていて、そこに偶然通りかかって知り合ってしまうやつ。だいたい口止めしようとしてくる。
なお立ち去ろうとしても物音を立てたり落し物をしたりして後日「あの時いたよね?」と話しかけられたりする理不尽イベントでもある。
どの道回避できない状況、マフィはどうするのか……
「…………ごくり」
出歯亀した。
うん、健康的だね。
そろーりそろーり角に近付き、まるで事件現場を覗くように目を出す。
そこには案の定、貫き貫かれる女が2人。
立ちバックの姿勢でのセックス。貫かれている山羊族の女子が壁に押し付けられながら嬌声をあげている。
「(うわ……あんなの絶対深いところまで……)」
突いている方の背は高い。よく見たら女子は足が床についていない。
ただ出し入れするのではなく、奥の方を責める執拗な腰使い。昨日今日卒業した童貞ではない。
引いて、挿れて、もっと奥まで押し付けて……引いて、挿れて、もっと奥まで……
マフィもつい最近までされていたから分かる。あんな風に奥をゴリゴリされてしまえば、山羊女子のようによがり狂ってしまう。
「(…………って、思い出すなボケ!)」
自分を戒めても目が離せない。太ももを擦りあわせてもじもじしながら見入って数秒、いや数分。お腹の奥の方が熱を帯びてきた気がする。
そして思い出す。突いている方には見覚えがある……というか国民のほとんどが知っているし、貴族なら知らない方が無理があるというレベル。
「(第四王女じゃねーか!)」
それは紛れもなくジャスリン・クルネイル・シュガー……神国カミガリを治める現王朝の第四王女様。
灰色の耳と尻尾は、まぎれもなくオオカミのそれ。ああ本当に王族じゃないか。
「(女抱いてそうな奴だと思ってたけどマジで抱いてるとは……)」
王子様……そんな言葉が似合う女というのは、こういう女なのだろう。
背が高くて、7頭身くらいあって、切れ長の目で……イケメン女と言っても過言ではない。
スカートが制服指定されているのに何故かスラックスみたいなやつを穿いたパンツスタイルだし。
あと、遊んでるという噂も絶えない。王族なのに継承権が低いからか婚約者もまだ決まっていないようだし、イキまくってメロメロになっている山羊ちゃんも婚約者ではないのだろう。
「ふぅぅ、そろそろ出すよ、ちゃんと産んでね」
「はいぃぃっ♡♡ うみましゅ♡ しきゅーにおうじょさませーしくらしゃいっ♡♡」
肉と肉のぶつかる音の間隔が狭まる。
音、匂い、光景、それらすべてでマフィも思い出す。
きっと自分もああやって浅ましく快楽に溺れていたのだと。
「っ……!」
「んぐい゛ぃ゛ぃ゛!!♡♡♡」
尻が潰れそうなほど密着し、動きを止める王女。
王女と壁とのサンドイッチになり宙ぶらりんになった脚をガクガクと震わせる山羊ちゃん。
傍目にも体内から体内へ種をドクドク注いでいるのが分かる。
「(わ、中に……てか生!? 『産んで』って色々大丈夫なのか?)」
長い射精が終わり、ジャスリン王女が腰を引く。
支えていたものがなくなった山羊はようやく足を床につけ、そのまま砕けた腰が耐えられずに壁にへばりついたままアヘ顔でへたり込む。
「(ッ!?)」
ズルリと秘所から抜けた王女の陰茎は、見るだけで腹の温度をさらに上げるような……
「でっっっっ!」
「ん?」
「──あ……」
思わず「でっか!」と口にしてしまった。
無論、気付かれる。
「おやおや」
端麗な顔がニマリ。ヅカみたいな声の向く先はもちろんマフィ。
「覗き見とは良い趣味だね」
「ひっ……!」
「やはり学園での逢瀬は人に見られちゃうのかなぁ……『晴天、吹く風、靡くシーツ』」
神術で汚れたモノを綺麗にしてからきっちりしまう王女。ブランブランさせながら歩く趣味はないようだ。
一歩、二歩、マフィとの距離が縮まる。
「キミは……ああそうだ、見覚えがある。王城のパーティーに出席したことがあるよね? 多分高位貴族の──」
「──な、なにもなかった!」
「え?」
「俺はここにいなかった! あんたのことも見てない! あんたも俺を見てない! お互い何もない! 以上! それじゃ!」
マフィは逃げ出した! しかし回り込まれ……てない! 逃げることができた!
ジャスリン王女は終始穏やかな目を向けてきていた。
「見られたからには……」的な雰囲気も無く、「道に迷ったのかな? お姉さんが助けてあげようか?」みたいな手を差し伸べる人間のそれだった。
だが逃げてよかった。マフィは自分の判断を疑わない。
王女に接触を許して絡めとられてしまったら、流されて色々させてしまいそうだったから。
ああいう手合いは常に優しくしてくる。油断させてぱっくり食べてしまうのだ。
相手はオオカミ。肉食獣なのだから。
全速力で廊下を走り、ようやく見つけた教師に泣きついてなんとか学校を出ることができた。
その後まっすぐ寮に帰り、キリーネヤも帰っているのかなとか思う間もなく自室へ。
「はーーーー…………変なの見た」
どっと疲れた。鞄を放ってベッドに倒れ込む。
「そういや先輩でいるんだったなぁ、王族……」
まさかあんな出会い方をするとは思わなかったが、相手は王族。
下手したらマズい状況かもしれない。どう見てもかなり無礼な対応をしてしまった。「ごきげんよう殿下、今日もチンポが麗しゅう」とか言えばよかったのだろうか。
「……あんなの全部挿れてたのか」
思い出すのはやはり2人のぶつかり合い。
一目見て声をあげてしまうくらい大きなモノを、あの山羊族の女子は全部挿れられていた。
もし自分がアレに貫かれたら……まず全部は入らないだろう。
「おへそまでは確実に行くよな……」
無意識に右手をお腹に持っていく。見た感じでどこまで入るかを想像して……さっきから自分を苛むムラムラを再認識。
「………………いやいやいや、発情期じゃないんだし……」
マフィは決めた。
濡れてなかったら勝ち、濡れてたら負け。
誰との何の勝負かまったくの謎だが、とにかく確かめたい。
──ヌチュ……
「…………」
パンツを降ろすと、股と布の間に引かれる糸が見えた。
糸の元は自分の中から溢れたもので……
「……んっ……っ、ん……!」
勝ちだったらそのまま一休みして夕食を食べに行くつもりだったようだが、結果は負け。
どうやら負けたら衝動的にオナニーしてしまう勝負のようだった。
大陰唇をぷにぷに捏ねて、クリトリスに当たらないよう小陰唇を指全体で撫でるように擦る。
それだけでもじゅうぶんに気持ちいい。
異物を挿れることに熟れた膣が「こっちも構え」と言ってきてる気がするが、それをしてしまったら何か引き返せないような気がして、手が出せない。
「く、クリちょっとだけ…………ッ、ぐ、うぅ……っ!」
クリ責めはダメだ。気持ちよさが強くて怖い。
処女を失うまでは発情期のせいとはいえ指ズポしまくっていたはずのマフィは、女の子オナニー初心者みたいな消極的な動きでゆっくりスローに昂っていく。
「んっ……ぅ、くっ♡ 来そう……♡」
弱火でコトコト煮込むスープのように、徐々に訪れるオーガズム。
やがて沸騰が始まって、快楽の泡がコポッと浮き上がり──
「っ♡ っくぅぅぅぅぅっーーーっ♡♡♡」
体がビクビクと震え、マフィは達する。
発情期でもなんでもない、なのにオナニーをしてイッてしまった。
それがどういうことなのか、本人はまだ気付かない。
賢者タイムは訪れず、いまだに少し熱は残っているがご飯は食べなければいけない。
食堂で「王女いないよな?」と周囲を気にしながら夕飯を食べて、自室に備え付けてあるシャワーを浴びて、そういえばキリーネヤあれから見てないなぁと思いながらも気を取り直して鞄から紫色の石を取り出す。
フォンクリスタル、貰った時からほぼ毎日夜になるとアヤと会話するために使っている。
旅の途中も、入学の日も話した。今日も日課のように神力を込めて相手が出るのを待つ。
その日にどんなことがあっても、こうして話せばリフレッシュできる。
『マフィ、こんばんは』
「うん、こんばんはアヤ」
石の中から、あの桜色の少女の声が聞こえてくる。
安心する。家に帰ってきたような気分だ。
『今日もお疲れ様です。学校はどうでした?』
「うまくやってると思う……まぁ、まだ慣れてないから毎日疲れるけど」
『……疲れてるなら、早く寝てもいいんですよ?』
「やだ。アヤと話したい」
『ふふっ、なら話しましょう。私もマフィと話したいです』
話の内容はとりとめのないもの。
今日食べたご飯とか、新しく発見したものとか。
そうした明日には忘れてしまいそうな内容を積み重ねていくのが絆だったり信頼だったりするのだろう。
「そういえば、なんかやたら囲まれるんだよね。やっぱ三位官だからなのかな……」
『そうでしょうね。令嬢の中には学院で繋がりを得ようという人も多いでしょうし、親がそう言ってる家もあるでしょう。それにマフィは卒業したら二位官夫人になると知られていますし』
ちょっと鼻につく会話みたいでマフィはもにょるが、どれも事実だから仕方ない。
アヤの言う通り、令嬢たちにも下心あってのことだというのは直感的にマフィも理解している。それを責める気はないし、表面上でも仲良く出来ればそれに越したことはない──と言うと、アヤも「マフィらしいですね」と笑った。
『でも警戒はしてくださいね。中にはよからぬことを考える人もいるかもしれません』
「よからぬことって?」
『そりゃぁマフィちゃんを傷物にしちゃうような輩よぉ~』
急にアヤのものでない声が石から聞こえてきて、マフィは「わぁっ!?」と声をあげた。
驚いたものの、知らない声ではない。
「お、お義父様!」
『久しぶりねぇ~、わたしも入学前にマフィちゃんに会いたかったわぁ~』
どことなく色っぽい喋り方をする彼女はアヤの父親、ホウジョウ家現当主である。
『お父様! 急に後ろから来ないでください!』
『それがクラリッサ様の新作なのねぇ~、離れたところにいても話せるなんてすご~い!』
『ああちょっと! 今はマフィと話してるんです! 返してください~!』
しばらく親子のわちゃわちゃを聞きながら、「そういえばアヤのお父さんこんな人だったなー」と思い出す。
京美人みたいな見た目の人で、かといって言葉に含みを持たせることはあまりせず、喋り方もおっとり色気がある。
二位官家の親子事情なんてそうそう聞けるものではない。マフィはしばらく黙って静観した。
『はぁっ……はぁっ……もうっ! ごめんなさいマフィ、騒がしくしてしまって』
「いいよ、久々にお義父様と話せたし」
『あらぁ~嬉しいこと言ってくれるわぁ~……それとマフィちゃ~ん、さっきちょろっと言ったけど、学院は色んな人も集まる分、変な人も多いからぁ~……マフィちゃんも気を付けてねぇ~?』
おっとりしたまま、声色は真剣。
本気で気を付けろと言っている。
「気を付ける……というと?」
『変なことに巻き込まれないように~ってこと。特に色恋絡みはダメよぉ~? マフィちゃんはアヤのお嫁さんになるんだからね?』
「色恋……」
『若さ爆発して行きずりの女と寝ちゃダメってこと~』
「しませんよそんなこと!」
色恋、若さ爆発、さっきの第四王女みたいなことだろう。
そりゃするわけがない。不貞なんてもってのかだ。なぁマフィ! お前もそう思うよな!
『アヤの話だと、もう仲良くしてる子がいるんでしょぉ~? その子と友情じゃ済まなくなったりとかぁ~、あとはマフィちゃんにその気が無くても、とかぁ~……』
キリーネヤのことはアヤにも話している。まさか父にも伝わっているとは。
彼女に関しては「大丈夫だろう」としか思えない。あまり興味もないようだし、そういう目で見てくるなんてこともないし。
ん? そういえば彼女には生えてるのか生えてないのか。知る機会がなかったのでマフィも知らないままだ。
『お父様! マフィを信用してないみたいに言うのやめてください!』
『信用していても不可抗力があるもの~』
この話になるとマフィは冷や汗ダラダラ。
不貞だの浮気だの、そんなの学院に入る前に済ませている。言えるわけがない。
「お義父様! 俺は誓って不貞はやってません! やる予定もありません! 愛してるのはアヤだけです!」
『あらあら~、よかったわねアヤ~』
『マフィ、気にしないでください。ウチが気にし過ぎなだけなんですから』
「いや、お義父様の心配はもっともだよ。アヤとホウジョウ家の人たちを安心させるのも婚約者の務めだと思うから、卒業まで自分の身を守ってみせるから」
『その意気よぉ~! それじゃあマフィちゃん、わたしはもう寝るわね。おやすみ~』
「あ、はい。おやすみなさい」
きっと彼女にも厳しいことを言ってるという自覚はあるのだろう。それでもこうして言ってくれるのは、気遣いの表れでもある。
なのでマフィは不快に思うことはなかった。背中に刃物を突き付けられているようなギリギリ感はひしひし味わったが。
その後、アヤと少し話してからマフィは眠りにつく。
油断しない、流されない、体を許さない──この三箇条を心に刻む。
たとえ1年のうちに全部破ることになっても今の時点で誓っているのは本心だった。
■TIPS 王朝
現在はシュガー族のクルネイル家が王族として君臨している
これまで様々な派閥の一位官家が王族になってきたので、歴史の教科書には『○○朝』がたくさんあって大変