ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた 作:ぐらんぐらん
メロリィ・ハイレッツェは乙女ゲーへの捨てきれない夢と、現実を受け入れる柔軟さ、両方の性質を併せ持つ♥
つまるところ、現状に適応して新たな環境でなんとかやっていこうと思っていた。
マフィという転生仲間もいるし、最近では彼女の友達でもあるキリーネヤと打ち解けている。
考えてみれば乙女ゲー転生ってとりあえずいじめられたり命狙われたり散々だ。
乙女ゲーじゃなくても転生モノといえば危険がつきもの。
『異世界』と言われて思い浮かぶ世界なんて、文明も文化も法も何もかもが現代日本ほど平和じゃないのだから。
シリアスなやつだと世界を救ってくれだとか多くの人の運命を左右するとか、重責にもほどがある使命を受けたりする。
会社じゃないんだぞ。なに存亡の危機を外注で済まそうとしてんだ。
そうした死と隣り合わせの世界に飛ばされるより、平和で安全なこの国でちょっと特別な人間として生を受けたのは幸運ではないか。
男はいないけど。
前世で熱中していたゲームの世界だと思っていたのに攻略対象はどこへやら。
せっかく悪役令嬢はいたというのに。
「まぁあんな縦ロール、ゲームにはいなかったけど……」
放課後、寮への道を歩きながらメロリィは頭の中で現状を整理している。
今の暮らしを受け入れながら、夢は捨てない。
まず大きな目標は海の向こう──島国であるカミガリの外に男がいるのかという調査。
手段は船。
その船も含めて色々と不確かだ。
まずこの国が世界地図でいうどの辺りかが分かっていない。
日本みたいにすぐそばに大陸があればいいけど、そうじゃなかったら外海に出る必要がある。
そこまで行ける船がこの国にあるのか?
この国に遠洋漁業という概念は無い。漁業といえばどれだけ沖に出ても近海だ。
そもそも技術も大航海時代に達しているのだろうか。
さすがにワールドエンドの最後でジャックが乗ってたような小舟じゃ海なんて越えられないぞ。
パイレーツオブカリビアンまた金ローでやらないかな。
……思考がスパイラルするにつれて楽観的な考えはどんどん薄れていく。
こんなのでイケメン逆ハーなんてできるのか?
男がいないせいで見かけるカップルはみーんな女同士。
もはや女と女がイチャついてるのを不自然に思わなくなった。
もうマフィみたいに誰かと百合百合するしかないのか? チンコは付いてるわけだし。
「(いやいやいや……)」
それで満足してしまったら自分のアイデンティティ的なものが揺らぐ気がした。
とにかく今は学院を休んだ友達のお見舞いだ。
一緒に行こうと思ってたマフィはさっさと帰ってしまった。誘ってくれてもいいのに。
城下町で適当に果物でも買い、キリーネヤの住む寮へ。
そういえばマフィの部屋と隣だとか。
もしかしたら心配すぎて真っ先に帰ったのかも。
「キリーネヤ! お見舞いに来てあげ──」
びゅぐぐるるっ!!♡♡ ぶびゅぶぶびゅびゅっ♡♡♡ ぼびゅびゅびゅるるるっ♡♡♡
「──へ?」
メロリィは自分の目と耳を疑った。
部屋には下半身に何も穿いていない黒髪美少女がいて、その股にはハチミツ色の髪が……
2人はこちらを向き、目を見開いている。
こっちも見開いてる。3人揃って硬直。
「んぶっ、ずろろろっ……め、メロリィ……」
最初に言葉を発したのはマフィ。
長い長いソレを根元まで咥えていたものだから頭をずいぶん後ろに動かす必要があったようだ。
その口元には大量の唾液と、白濁した液体……
「いやああぁぁぁぁ!!」
「ちょっ、待っ──ぐえっ!」
メロリィが籠からリンゴを取り出し投げる!
マフィの頭に当たった!
「っ、い、『石の羽衣、不可視の鎖、得物は逃げられない』っ!」
キリーネヤの神術! 逃げ出そうとしていたメロリィの動きが止まる!
この術は対象の動きを止めるものだ。ポッター好きはペトリフィカス・トタルスでなんとなく分かるだろう。
さっきまでIQが3くらいしか無かったが、射精による賢者タイムと、見られたことによるショックがのぼせた黒猫の頭に氷水をぶっかけた。
ここで逃がしたら絶対まずい。この誤解は今すぐ解かないといけないものだ。
「ふぎゃっ!!?」
メロリィが倒れる! ピクリとも動かない!
「ど、どうしようマフィ……!」
「どうするって……とりあえず部屋に入れて説明するしかないだろ。服着とけよ」
唾液まみれのチンポをしまい、ショーツの中でグチュるのが不快だが仕方ない。
マフィは誰かが通りかかる前に急いで倒れるピンク兎のもとへ行き……
「……は? おい息してないんだが……」
「えっ」
「メロリィ!? メロリィ! 返事しろ!」
「あ、あわ、あわ……」
「キリなにやってんだ! 神術解け!」
なんだいきなりドシリアス展開か? なんだこれは。
さっきまでチンしゃぶ狐だったマフィは顔を青くし、キリーネヤはいつものクールっぷりをどこかに忘れている。
息をしていないメロリィに呼びかけ、彼女の胸に耳をあて、何も反応が無いことにマフィは嫌な汗を流す。
「くそっ、まだダメか! 悪いメロリィ!」
そして始まるCPR。つまりは胸骨圧迫と人工呼吸。
「キリ、人工呼吸頼む!」
どうしていきなりメロリィが心停止しているのか。
どうしてマフィがこんなに手馴れているのか。
怒涛の展開すぎてついていけない。
説明すると、これは金縛り神術で稀に起きる事故だ。
この術は動きを止めるが、効果が強すぎると対象の生命活動すら止めてしまう。
そうして起きるのがメロリィのような症状。
キリーネヤは神力に恵まれている突然変異の天才。しかし大きすぎる力を扱いきれないのだ。
これがメロリィにとっての不運。
しかし同時に幸運もすぐそこにある。
三位官令嬢としての教育を受けてきたマフィは、こうした事故も起こり得るというのを「自分には縁遠いだろう」と思いながらもたまたま覚えていた。
さらにマフィは日本人。子供の頃に受けた保健の授業での心臓マッサージのことも覚えている。
しかもかなりテキパキとしている。もしかしたら前世で蘇生経験済みか、医療従事者だったのかもしれない。
とにかくこれがメロリィにとっての幸運である。
「いいか、俺が合図したら口に息を2回吹き込め!」
「え、ええ」
こんなエロ小説で人死になんてあってはならない。頑張れマフィ!
「──ぷはっ、ごほっ! ごほっ!」
メロリィは生き返った!
「よ、よかったぁ……」
汗だくになったマフィたちがへなへな座り込む。
「いっつ……なに、胸痛すぎ……口もヒリヒリするんだけど……」
「メロリィ、俺が分かるか? 調子は?」
「はぁ……? マフィ……キリーネヤ……っ、あんたたち!」
「じっとしてろ! まだ安静にするんだ」
まだ寝ぼけているピンク兎を2人がかりでベッドへ運び、場の空気が弛緩する。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
キリーネヤはぶつぶつと俯いている。
自分の術で人を殺しかけたのだから仕方ない。
目撃者を逃がしてはならないと神術を使ったが、そもそも彼女は神術の使用を親に止められている。
そのことを忘れるくらいに慌てていた。
射精管理されたり神術事故を起こしたり、初登場時の人を寄せ付けないクールで孤高な美少女はどこへ行ったんだ。
一方メロリィは蘇生直後に起き上がれるくらいピンピンしている。
この世界の人間は基本頑丈(定期)。
「あ、あんたらさっき何して……」
「幻覚だ」
幻術か? いや幻術じゃない……また幻術なのか!?
「んなわけないでしょ!」
「うぐっ」
「説明しなさい全部!」
どうやら彼女は目の前でとんでもない情事があっても手違いで殺されかけても逃げ出すような人間ではないようだ。
これが友達じゃなかったら一目散に逃げていただろうけど。
「そう、だな……どこから説明したもんか」
「無理よ……私たちには秘密厳守の神術が──」
「まずチン道っていう競技があってだな」
「えっ!?」
「俺そんな術かけられてないし」
そう、完全に迷い込んだだけのマフィには神術がかけられていない。
そもそも秘密厳守の神術はかけられることが前提なので、周囲は「道場に入り浸ってるし」と気にもしていなかった。まさかマフィに術が施されていないなど誰も想像だにしていないだろう。
明らかに問題だけど、今回ばかりは話が早くて助かる。
マフィはとりあえず全部説明することにした。
チン道のことから特訓のことまで。関係者以外に口外してはならないものだが、この状況では致し方なかった。
キリーネヤのマネージャーになったこと、彼女がどうしても大会で優勝したいということも。
長い説明だったので終わる頃には夜に……
「ええええ…………」
メロリィはドン引き。
まだ『マフィが浮気して友達とチョメチョメしてました』と言われた方が単純でよかったまである。
それを隠すための作り話かとも思ったが、マフィとキリーネヤの顔はいたって真剣そのもの。
チン道とかいうふざけた競技の存在を認めざるを得ない。
情報量が多すぎて脳がボンバーダしそうだ。
「分かったか?」
「なにひとつ分かりたくないんだけど……分かった」
「ちなみに今の話は外に漏らすと最悪消されるかもだからな。国のお偉いさんとか関わってるし」
「ちょっと!?」
哀れメロリィ、友達のお見舞いに来ただけなのに知らなくていいことを知ってしまった。
「ていうかマフィ、あんたそれでいいの? 婚約者いるんでしょ」
「ぐっ……言うな」
ドン引きpart2。
もうまともなツッコミがメロリィしか残っていない。
尾行してチン道の存在を知ってしまったのも自業自得みがあるし、同情できそうでできない。
友達のためとはいえ率先して他人の射精管理など普通はできまい。まして婚約者もいるのに黙って……
「はぁ…………もういいわ。なんか疲れた。秘密にしてたのはちょっとモヤるけど内容が内容だし、私を殺しかけたのも許したげる」
メロリィ様! 善性の塊……!
「ありがとう! ほんとごめんな!」
「ごめんなさい……改めて深く謝罪するわ」
「はいはい。受け入れましたよっと」
「にしても」──メロリィの目が黒猫のつむじを捉える。
「キリーネヤってそんなしおらしくもなるのね。いつもクールなのに」
「ごめんなさい……私、神術は使うなって言われてたのに、あなたを殺しそうになって……」
「ちょっ、泣かないでよ! 私が悪いみたいじゃない!」
「あなたは悪くないの……全部私が……」
なんかメンブレモードになっている。
まぁ自分が友達を殺しかけて、その原因も自分が弱いからマフィに特訓してもらってたというのもあるし……仕方のないことだ。
前世分の人生経験があるメロリィですらどう声をかけようか悩んだ。
「気にしてない……ってのは嘘になるけど、別に言いふらしたりしないから」
半ば諦めの籠った声が吐き出された。
ただでさえ転生などという非現実的な現象に見舞われ、15年間もこの世界で過ごした記憶がある。
しかも獣人だの神力だのふたなりだのファンタジー丸出しな非常識世界。
もう『そういうものだ』と捉えるしかない。
冒頭で語ったように、メロリィの順応力は鍛えられている。
「そっか……ありがとなメロリィ」
「…………」
「なんで遠ざかるんだ?」
「いや、あんた……さっきまで……」
順応力が鍛えられたメロリィでさえも、『元は男のくせに他人のアレをしゃぶる』という光景にはドン引きだった。
なんかこう、お前それでいいのかと問い詰めたくなる。
それはマフィも自覚している。
安いもんだ……チンの1本受け入れるくらい……
……とは言えないので既に死んでる空気が死体蹴りされるように暗くなる。
「違うの、マフィは私のために……」
「いや、俺も軽率だったから……」
「ちょっと、浮気現場が見つかったみたいになるのやめてよ。いや浮気現場だけどまた私が悪者じゃない」
このままでは堂々巡りだ。
空気を入れ替えるべく、メロリィはさっき投げつけたリンゴを剥くことにした。
数日後、3人は揃ってとある教師の元へと赴いた。
表向きは副校長、裏の顔はチン道クラブ顧問。
厳格や公正という言葉が似合う人物だ。規律に厳しく、同時に生徒思いの優しい先生だと評判。
名前は……ひどすぎるのでここには書けない。
ポッター好きにインセンディオされるのは御免だ。
老齢に差し掛かった女教師は「これは由々しき事態ですよ!」と怒りながらマフィとメロリィに秘密厳守の神術をかけ、今度こそ安心。
フルチンドール10点減点。
ピンク兎はため息を吐きながらも術を受け入れ、「もう秘密無いでしょうね?」とジト目。
マフィは
友情継続!
帰り道、城の廊下だが自分たち以外の人気が無いのを確認して立ち止まる。
「………………なぁ、メロリィ」
せっかく打ち明けた仲。さらに転生仲間。
そしてなんだかんだ許してくれた優しい友達に、マフィは頭を下げる。
これから行うのは図々しいものだ。
「ほら、キリも」
「……」
並んでキリーネヤも。
2人で話し合って決めたことだ。メロリィに頭を下げるのは。
「なによ急に。もう謝罪はいいって」
「頼みがあるんだ。聞いてくれないか」
「この流れでロクなこと頼んでくるとは微塵も思えないけど……聞くだけ聞いてあげる」
「その、マジでさ、こんなこと頼める立場じゃないんだけどさ……」
罵倒されて絶交される覚悟で続きを口にする。
「キリの特訓、手伝ってくれないか……」
「……はぁ?」
「俺ひとりだとキリに辛い思いさせるというか……手が回らないというか……」
他にやらなければならないこともあるマフィにとって、避けようのない問題だった。
特に気まぐれで抱いてくる王女の存在が一番のネック。チン道の事情を話すわけにもいかず、彼女の呼び出しは急でも断れない。
今回だってジャスリンがマフィをセフレとして使ったからキリーネヤへのフォローが遅れ、予期せぬ放置プレイになってしまった。
自分の許容範囲を見誤った。言い訳のできない失態だ。
それを自覚した上で、厚顔無恥も承知の上で、メロリィに頼む。
「はぁぁぁぁ!? あんた何言ってんの!?」
「ごめん~~~!! でも頼れるのメロリィしかいないんだ!!」
「なんでこの私がキリーネヤのソレの世話しなきゃなんないの!」
「お前婚約者いないだろ! 頼むよ!」
「逆にあんたは婚約者いるのに何してんのよ! 嫌よ絶対!」
「メロリィ……」
キリーネヤの上目遣い! メロリィの胸にキュンダメージ!
「ちょっ、その目やめなさいって」
「お願い……あなたにしか頼めないの」
「うぐぐぐ……!」
なんやかんやあったがメロリィの中のキリーネヤは『いつも澄ました顔のクール美少女』という印象で定着している。
そんな彼女が、甘える声で媚び媚び懇願をしてきたのだ。
ギャップが胸に刺さって抜けない。
私は百合じゃないと断言する女ですら百合堕ちさせてくるレベル。
キリーネヤ……そんな腹芸もできたのか。
いやいや今の彼女に器用な真似はできない。天然だ。天然媚びだ。
天然だからこそメロリィは揺さぶられる。
「メロリィ、頼む!」
それにマフィは転生仲間で初めての友達。
秘密こそあったものの、目の前の真摯な2人はこれまで一緒に過ごしてきた2人なのだ。
「…………か、考えてあげるわ」
断れなかった。
友達のお見舞いに行っただけなのに、この答えが今後の人生の重要な分岐点となることを、メロリィ本人もまだ知らない。
誤字報告たすかります
評価、お気に入り等もありがとうございます
感想も相変わらず返せませんが、笑ったり心の中の分かるボタンを押したりして読ませていただいております