ケモミミ貴族令嬢にTS転生したら、ふたなりたちに玩具にされた 作:ぐらんぐらん
マフィにはちゃんと貞操観念が備わっている。
シュガー族としての一般常識、前世の価値観、それらはパング族と結婚するうえで申し分ない。
だがその貞淑さは、この半年に満たない期間で既にズタズタ。
今のうちになんとかしないと割と取り返しがつかないところまで来ている。
もうこんなことを止めにしないといけない。
なのにできない。
頭では分かっている。
婚前に誰かとまぐわうなんていけないことだ。普通に考えて不貞行為だし、あまつさえゴム無しで行為に及ぶなど……
だが体はとうに開発されて、心まで崩されかけている。
もう逃げられないところまできているのだ。
ピンクに染まったマフィがとれる、今もっとも合理的な行動。
それが体──疼く雌の部分を鎮めること。
自慰では足りない。ディルド等の道具も持っていない。ならばどうするか、相手を探して性行為をするしかない。
ここで「殿下にムラムラを抑える薬があるか訊く」という選択肢が出てこないあたり、マフィの中の価値観がおかしくなっている。
薬の存在を訊くよりもセックスする方が手っ取り早いと、手段として選択肢に入っている時点でお察し。
とはいえ誰彼構わずというわけではない。そこまでビッチに堕ちたわけではない。時間の問題だけど。
もしキリーネヤがいたら「友達だからいいよな!?」と襲い掛かっていたかもしれない。修行中でよかった。
ジャスリン以外に発散を頼れる相手を探してあっちこっち。
ほとんど人のいなくなった島だ。探し人はすぐ見つかると思っていた。
しかし目当てのブリュンヒルデは城にも道場にもいなくて、マフィは次第にイライラしていく。
最後の望みをかけて彼女の寮を訪れる。
ブリュンヒルデの馬鹿はどこだ!
中川……じゃない、常駐の管理人さんはこう答えた。
「シュターナ一位官令嬢なら帰省すると……」
マフィは膝から崩れ落ちそうになった。
なんて奴だ。ヤるだけヤッてさっさと帰りやがったあの女。
というか本来帰る予定だったのかもしれない。
灯台まで案内してマフィをペロリするためにわざわざ残ってくれていたのだとしたら、むしろ感謝だ。
だがマフィの心に芽生えたのは怒り。
怒っているのだ。
マフィからしてみれば散々っぱら体を好き放題食い荒らしておかしくしてきたくせに、いてほしい時にいない。
普段なら相手の事情を汲むなりするのだが、イライラとムラムラに支配された状態ではそうもいかない。自分勝手に考え、脳内で殴るくらいには責めた。
余裕はどんどんなくなり、一度自分で発散するために部屋へと戻る。
帰り道をとぼとぼ歩き、たまに人とすれ違う。
「(あの人は生えてるのかな……)」
もうその辺にいる人に頼もうかな──
いやそれはダメだろ。明らかにライン越えてるだろ──
「……そうだ!」
マフィは前世でチラッと見た文言を思い出す。
『性欲は運動でも解消できる』
たとえばトレーニングとか。体を動かしてスッキリすることは有用だ。
さっそく部屋に戻り動きやすい服装に着替え、その辺を走ることにした。
小さい頃は外で遊んでいた元気っ子だ。運動へのダルさはない。
今日は勉強も何もかもを休む日。休暇らしい休暇な日だ。時間はある。
エロい展開になると思った? 残念でした!
「……意外と持つな」
そうして走ること30分ほど。
ランニングなど初めてやるのに、時たま衝動を振り払うように全力疾走するのに、全然疲れない。
運動らしい運動なんて数年ぶりって感じなのに、息の一つも上がっていない。
この世界の人間が獣と混ざっているのもあるのだろうか。
頑丈な上に体力まであるとは。
なお理由は他にもある。
前世の記憶が戻ってから体は変わった。
それはエロ方面の開発という意味でもあるが、もうひとつ。
発情期の頃に比べ、全体的にシュッとしてるのだ。
これはセックスという激しい運動を連日行った賜物でもある。
貴族令嬢というあまり体を動かさないが故の無駄肉はほとんどが落ち、女の子らしい柔らかさを保ちながらも引き締まっている。
特にお腹周り。何度も何度もイキまくってビクビク震えたおかげでインナーマッスルが鍛えられまくり、腹筋にはうっすら縦線が浮かぶまである。
いつの間にか良い感じのスレンダー体型を手に入れていたのだ。
まぁヒップ周りは相変わらずだが……
記憶を取り戻してからはあまり見ていない鏡と向き合えば「あれ? 俺なかなかじゃね?」となること間違いなし。よかったね。
自分のポテンシャルに驚きながら汗を流していたら性欲も多少は収まってくる。
気付けば城下町なんかとっくに出て、港の方まで走ってきていた。
孤島である学院には食料や必需品などの物資を積んだ輸送船がひっきりなしに来ては帰り来ては帰り。
今も船がいくつか港に停泊していて……
「なんだあれ?」
一隻だけ、見慣れない船があった。
大きさは中型船ほど。
前から後ろまで華美な意匠の施された船のマストには国の紋章。
物ではなく人を運んでいると分かる。それも国の中枢に関わる、VIPと呼ばれる類の人間を。
まぁこの学院は国内唯一の貴族学校。お偉いさんの娘が通うのだからお偉いさんが来てもおかしくないか。
ぶっちゃけ自分とは関係ない。
そう思ってマフィが再びランニングを再開しようとすると、嫌でも自分が関係させられる展開が襲い掛かってくるのだった。
「クラリッサではないか!」
「え?」
不意に声をかけられた。
やけに低い位置から。声の高さ的にもおそらく子供……そう思って振り返れば、やはり子供。
リアリスと同じくらい……いや、もっと小さいかも。
「む? クラリッサかと思ったら違うのか……ここの生徒か?」
「そうだけ──そうですけど」
咄嗟に言葉遣いを変えた理由、それは話しかけてきた子供の姿を見れば分かる。
前世でいうアンティークなロングドレス、どう見ても高価なアクセ類。
灰色の髪の上にはぴょこんと犬っぽい耳が生えていて、尻尾も犬っぽいモフモフ。
これは犬ではない。狼だ。
似たような人間を見たことがある。いや見慣れている。
王族だこの人。
「そうか! なら案内してほしいのじゃ!」
切り過ぎたんですか? と訊きたくなるおでこ丸見えぱっつん前髪の少女は、見た目に違わぬ明るい笑顔を見せた。
のじゃロリだ! すげー、創作の中だけの存在だと思ってた。
……なんて思う前に、マフィは畏まる。相変わらず目上の人間に怖気づく庶民メンタル。
「あ、えっと、あの、どこへ?」
「
「そういうのってお供の人とかがするもんじゃ……」
「妾の供は学院に詳しくない者ばかりでの。じゃから案内役が城から来るのを待っておったが、連絡ミスで日時を間違えたらしく不在だったのじゃ」
そこのお前! 妾という一人称は高貴な女性の一人称としての印象が強いが、元々は武家の女性が自分をへりくだって呼ぶ時の言葉だったんだぜ!
語源は『
こんなWikipediaを齧ったうんちくで文字数を埋めるな。
なるほど事情は理解できた。
このやんごとなきお方は、城にいるであろう妹を訪ねてきたと。
で、案内する人が手違いでいないから立往生していたと。
で、たまたま居合わせたマフィに王族を案内する栄誉を賜ると。
「そういうことならいいですよ」
断ったらめんどくさそうだ。というよりも困ってる人を助ける親切心を取り戻すくらいにはマフィのムラムラが晴れていると言える。
「うむ、よろしく頼むぞ。名はなんという?」
「マフィ・モフテイルです」
「やはりクラリッサの娘であったか! よく似ておるの~」
「さっきも思ったんですけど、なんでお父様の名前を?」
「奴とは職場でよく会うからじゃな」
「職場?」
こんな少女から出てくる単語とは思えない。
それを見抜かれたのか、彼女は「ははーん」とニヤリ。
「お主、妾のことをガキんちょだと思っておるな?」
のじゃロリの二人称は『お主』、世界の常識だ。
「妾はプルミリア・クルネイル。カミガリ第二王女にして国立技術開発局局長……つまりお主の父親の上司じゃな」
「はい?」
聞いたことを噛み砕くのに数秒かかった。
そして噛み砕き、理解し……
「えええぇぇぇーーー!!?」
漫画みたいな声が港に響いた。
マフィは第二王女を知らなかった。
別に不勉強というわけではない。
王族くらい城のパーティーで何度か見ているし、現にジャスリンのことは覚えていた。
知らないとすれば社交の場に出てこないほど年齢の低い王女らと、あとひとり。
その『あとひとり』が第二王女プルミリア……公の場にもなかなか姿を現さないレアな王女なのだ。
なので見たことない貴族たちは「病弱なのか」「何かヤバい奴なんじゃ?」と口さがなく噂する。
まさか第二王女がこんな幼い見た目をしているとは。
てっきり第六か第七王女が来たのかと。
「まぁ無理もない。妾も自分の見た目がどう見られてるかくらいは知っておるしな」
道すがら、プルミリアは話してくれた。
パーティーなど公の場に出ないのは容姿を気にしているわけではなく、単に仕事が忙しいからだそうだ。
といっても仕事が苦なのではなく、楽しいからつい夢中になって励んでしまうからだそう。
国立技術開発局──『技開』は常に新しい技術を生み出し続けている。
その局長には自分で志願したらしい。ものづくりが大好きだからと。
娘のおねだりに弱い王様は二つ返事でOKしたとか。縁故採用極まってんな。
幸いプルミリアは頭脳明晰で才能もあった。『技開』は順調に回っているらしい。
まぁ色々そっちのけで研究に勤しんでるから、事務仕事は秘書に丸投げしてるようだが。
そんなことを話しながら、プルミリアは「懐かしいのう~!」と城下町を眺めている。
つっても彼女が卒業してまだ2年くらいしか経っていないけど。
「にしても本当にそっくりじゃのう……その顔が普通に受け答えしておるのは落ち着かないのじゃ」
「ははは……まぁ『技開』での父の様子は想像に難くないですね」
「うむ。まぁローラが上手いことサポートしてるから回っておるがの」
彼女は普段なかなか知れない『技開』でのクラリッサのことを話してくれた。
面白い発想を出してくれるとか、プロジェクトリーダーを務めたりなど優秀な技術者として頑張ってるとか。それを上司から言われると、なんというか誇らしい。
お前の父親マジでコミュ障でさぁ! とかじゃなくてよかった。
「あやつも前髪上げたらお主みたいな感じか?」
「そうじゃないですかね、童顔ですし。あ、そろそろ城ですけど」
「ご苦労じゃったな。ついでに訊くんじゃが錬術薬研究会の部屋はどこにある?」
「あー……やっぱりジャスリン様ですか」
「うむ。公務が終わるなりすぐ戻りおって……」
城の7階は迷路。案内なしにはたどり着くのも難しい。自然とマフィも中まで付き合うことに。
実験や勉強はお休みだが、クラブルームにはしっかりジャスリンがいる。
マフィの勉強を見ていない時間はこうしてリンリン・ブライドとしての仕事をしているようだ。
集中していた彼女は扉が開いたことに気付くのが一拍遅れ、そして姉の姿を見て驚く。
「おーいジャスリン!」
「姉上、どうしてここに?」
「んなもん可愛い妹に会いたかったからに決まっておるじゃろうがー!」
ダッシュ! ハグ!
身長差のせいでどっちが姉か分からなくなる光景だった。
クルネイル家は姉妹間の仲が良いことでも知られている。この2人も例に漏れないようで、特にプルミリアは妹全員を溺愛している。
「まったくもー! 長期休みの時くらい家で過ごさんかー!」
「あはは……仕事があるからね。会わずにこっちに戻ってきたのはごめん。ところで姉上は仕事は……」
「2週間休みじゃ!」
プルミリアが妹成分を補充して満足するまでちょっとした時間がかかった。
彼女もまたシスコン。どっかのふたなり妹と違って性欲交じりではない。リアリスにはこういうのを見習ってほしいものだ。
「マフィ、キミが連れてきてくれたのか。ありがとう」
「たまたま会ったので、成り行きで」
「今日の服も可愛いね。初めて見るよ」
「ランニングしてたから動きやすいのがいいかなって。ありがとうございます」
ジャスリンはナチュラルに褒めてくるし、いつの間にかマフィもナチュラルに褒められ慣れた。
今は部屋の中だからいいが間違っても公然とこんなやりとりするなよ?
「なんじゃ知り合いじゃったか? そういえば迷路みたいな廊下も普通に通ってたのう」
「彼女はボクの弟子ですよ。錬術薬の」
「なんと!? お主が弟子をとるとは!」
たいそう驚いたプルミリアはパッと妹から離れる。
「クラリッサの娘がわが妹の弟子とは……縁とは不思議なものじゃのう」
「私も殿下が父上の上司とは思いませんでした」
「ジャスリンとここでいつもズコバコしとるわけかぁ」
「ええまぁ……って、は!? はぁ!?」
あまりに自然に訊かれたせいで普通に答えてしまった。
どう考えても今の話の流れで言うことじゃないだろ。
「いや、ズコバコ、してなっ、なんのことです!?」
「誤魔化さずともよい。わが妹は多くのおなごをメロメロにしてきたからのう~」
「ジャスリン様!!」
「いやボクは言ってないよ」
「ふふん、なんとなく分かるんじゃよ。姉妹だから好みも似ておるのか」
結局バレてしまった。
しかし第二王女様の反応は学生の乱れた関係に引くとかではなく、まるで妹を賞賛しているかのよう。
実際そんな感じだ。この姉は妹全肯定系のシスコンなのだ。
「さすがジャスリン、また女の子を堕としたのじゃな!」と誇らしげ。どうなってんだ王族は。
「なるほど……すぐに学院に戻ったのはマフィにハマってたからというわけじゃな」
「そうなんだよ。あまりにも可愛くて」
「ほほう! ではついに妃を娶る気になったか!」
「そういうわけじゃないけどね。マフィには婚約者いるし」
「え、お主、婚約者いるのにわが妹と爛れとるのか? 引くわー」
「なんでそっちは普通の反応なんだよ!」
マフィはとうとうツッコミを入れてしまった。
最初こそ恥ずかしがりながら「バレた! どうしよう!」と考えていたマフィだったが、この王女姉妹のやりとりに「なんだコイツら……」が強くなる。
やっぱりこの世界の高貴な方々は性に関することとなると頭がおかしいのかもしれない。
「なぁなぁジャスリン~、妾にもマフィ貸してはくれぬか?」
「いいけど、マフィは猛勉強中なんだ。あんまり時間は……」
「時間なら合わせるぞ。どうせ休みの間はここに滞在するし、まさか一日中ずっと机に向かうわけじゃなかろう?」
「うーん、ならいいかな?」
「えと、なんの話ですか?」
「妾がお主の体を好き放題する話じゃ。いいじゃろ?」
よくねーよ。なんなんだこの姉妹は。人のことをなんだと思っているんだ。
言ってやれマフィ!
「あのー……もしかしてプルミリア殿下も、その、生えてるんですか?」
期待してる……仕方ない。マフィも溜まってるんだ。
もうこの際、出会って間もない王女に体を許してもいいかもなんて思ってるんだ。なんてことだ。
「うん? 妾はふたなりではないぞ」
「え、違うんですか?」
プルミリアは純然たる女である。
話が変わってきた。
アンニャの時(11話)の前書きで『レズセは今回限り』って宣言しちゃったんだぞ。この物語はふたなりに堕とされる話なんだ。女はすっこんでろ! 全員女だった。
いっそ前書きを無かったことにするか……
「姉上は少々特殊でね。なんというか……」
「マフィはこっちはもう経験済みかの?」
そう言いながらプルミリアがぽんぽんと叩くのはマフィの尻。
「こっちっていうのは……?」
「尻じゃ。お尻の穴」
「え……!?」
マフィの反応を見たロリっ子は「ほほう未経験か」と舌なめずり。
「姉上は人のお尻を開発して喜ぶ変態なんだ」
そう、プルミリアは変態なのだ。
のじゃロリで前髪パッツンでも変態なのだ。
実の姉妹ですら変態と評するくらい変態なのだ。
そして変態に目を付けられてしまったマフィはどうしようもない。
普段は嫉妬深いジャスリンも姉に対しては甘々だ。
「(お、お尻で……)」
なによりムラムラが発散しきれていないマフィ自身も興味を持ってしまう。
エロ展開からは逃げられないんだ。